NK細胞
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NK細胞は、生体内で、ウイルス感染細胞や、一部の腫瘍細胞を認識し、傷害する。
NK細胞の標的細胞障害作用は、抗原特異性や、MHC拘束性はなく、以前に出会ったことがない標的細胞も傷害する(自然免疫)。
NK細胞は、特有の糖鎖を表面に有する細胞、MHCクラスI分子抗原を失った細胞を、標的にして、傷害する。
NK細胞活性は、脂肪摂取を制限すると、増強する:NK細胞活性は、高脂肪食(特に、n-3系の多価不飽和脂肪酸)をすると、低下する。
1.NK細胞の標的細胞障害
NK細胞(natural killer cells:ナチュラルキラー細胞)は、生体内で、ウイルス感染細胞や、一部の腫瘍細胞を認識し(結合し)、傷害する。
NK細胞は、TCR(T細胞レセプター)が発現しておらず、T細胞ではない。
腫瘍細胞を傷害する活性は、キラーT細胞(CTL:cytotoxic T cells)の方が強い。
NK細胞の標的細胞障害作用は、以下の点で、キラーT細胞と異なっている。
・抗原特異性はない:感作を必要とせず、以前に出会ったことがない標的細胞も傷害する(自然免疫)。
・MHC(主要組織適合抗原)により拘束されない(MHC非拘束):NK細胞は、K562(MHCを保有していない)などの、他人由来の白血病細胞も傷害する。
なお、ウイルス感染細胞を傷害するキラーT細胞は、自己と同じMHCクラスI分子を発現したウイルス感染細胞しか、傷害しない:キラーT細胞は、抗原が同じでも、MHCクラスI分子が自己と異なる細胞は障害しない。これを「MHC拘束」と呼ぶ。
反対に、NK細胞は、MHCクラスI分子を発現した細胞に対しては、その傷害作用が、抑制される。
NK細胞は、ウイルス感染の初期から働く。
ウイルス感染時に、ウイルス感染細胞から産生される、IFN-α(注1)、IFN-βは、NK細胞活性を増強させる。
NK細胞活性が低下すると、かぜをひきやすくなる。
ひとつのNK細胞は、次々と別の種類の標的細胞を傷害出来る。
IL-12で活性化されたNK細胞は、IFN-γを産生する(注2)。IFN-γは、NK細胞活性を増強させる(注1)。
NK細胞は、MS(多発性硬化症)の寛解期には、IL-5を産生して、病態の悪化を阻止している可能性があるという。
NK細胞活性は、脂肪摂取を制限すると、増強する(脂肪摂取を全エネルギーの22%以下にする)。また、NK細胞活性は、高脂肪食、特に、n-3系の多価不飽和脂肪酸を多く含む魚油を摂取すると、低下する。
2.NK細胞の形態
NK細胞は、大型で、細胞質にアズール好性の粗大顆粒を持つ、大顆粒リンパ球(large granular lymphocyte:LGL)で、核は、腎臓のような型をしている。
LGLは、正常人の末梢血中リンパ球の1〜8%を占める。
3.NK細胞の表面抗原
ヒトNK細胞の表面抗原の特徴は、下記の如く。
・CD2陽性:CD2(LFA-2)は、羊の赤血球(E)と結合する際の、Eロゼット受容体。NK細胞は、T細胞と同様に、羊の赤血球とロゼットを形成する(E-rosette forming cells)。なお、抗原提示細胞は、CD58(LFA-3)と言う、CD2と結合するリガンドを有している
・CD3陰性(CD3の構成成分のζ鎖ダイマーは持つ)←T細胞は、細胞表面のCD3陽性
・CD4陰性
・CD16陽性:CD16は、免疫グロブリンのFc部分に対するリセプター(FcγRIII)
・CD56陽性
・IL-2レセプター陽性:NK細胞は、低親和性のIL-2レセプターを持つ(注1)。高濃度のIL-2で活性化され増殖したのが、LAK細胞(lymphokine-activated killer cells)
・TCR(T細胞レセプター)陰性←NK細胞は、T細胞と異なる
・免疫グロブリン陰性←B細胞は、表面免疫グロブリン(sIg)陽性
・アシアロGM1:抗アシアロGM1抗体をマウスの投与すると、リンパ球系組織のすべてからアシアロGM1陽性細胞が消失し、NK細胞活性も除去される。アシアロGM1は、ガングリオシド(シアル酸を有する酸性糖脂質)のGM1からシアル酸を除いた中性糖脂質であり、細菌や細菌毒素と結合するという。アシアロGM1は、マウスのマクロファージにも発現されている。
4.NK細胞の標的細胞認識と細胞間分子相互作用
NK細胞は、
・特有の糖鎖を表面に有する細胞
・MHCクラスI抗原を失った細胞
を、標的にして、傷害する。
1).NK細胞受容体(標的認識ユニット)
NK細胞表面には、レクチン様分子のNK細胞受容体(NKレセプター)が存在し、標的細胞の糖鎖を認識する(結合する)ものと考えられて来た(レクチンとは、植物などに存在する蛋白質で、細胞表面の特定の糖鎖構造と結合する性質がある)。
NK細胞は、NK細胞受容体(NKレセプター)を用いて、特有の糖鎖(1,3galactosyl epitope?)を表面に有する標的細胞に、結合するものと考えられる。
キラーT細胞は、MHCクラスI分子を介して、抗原ペプチドを、TCR/CD3複合体で認識するのに対して、NK細胞は、糖鎖を、NK細胞受容体で認識する。
KAR(killer activation receptor)
a.CD161
CD161(NKR-P1:NK cell receptor-P1、NK1.1も一員)は、NK細胞(CD3陰性)と、一部のT細胞(CD3陽性のNKT細胞、CD4陽性やCD8陽性のT細胞)、活性化された単球に発現している。
CD161は、レクチン様受容体(2型の膜貫通型C-型レクチンでCa2+依存性)だが、何がリガンドなのかは、知られていない。
CD161(NKR-P1)は、Fcレセプターのγサブユニット(FcRγ鎖)と会合して活性化シグナルを伝達する。
α-(1-3)-Dグルカンは、CD161(NKR-P1)を刺激し、NK細胞やNKT細胞を活性化させる。
なお、β-(1-3)-Dグルカンは、IL-12の産生を誘導し、マクロファージを活性化する。β-(1-6)-Dグルカンは、NK細胞、T細胞、及び、マクロファージを活性化すると考えられている(注3)。
b.NKG2D
NKG2Dは、C型レクチン様受容体ファミリー(Ca2+依存性)に属するレセプターであり、すべてのCD8陽性T細胞、NK細胞、Tγδ細胞に発現が認められる。
ヒトでは、MICA、MICBと言ったnon-classicalなMHCクラスI様蛋白質を、正常細胞は発現していないが、腫瘍細胞は発現している。
NK細胞や、Tγδ細胞では、NKG2D(レセプター)で、MICAやMICB(リガンド)を認識して、細胞障害活性を示す。NKG2D(レセプター)は、C型レクチン様受容体ファミリ、DAP10(アダプター)と複合体を形成して、シグナルを伝達する:DAP10を介して、PI-3キナーゼのP85サブユニットが活性化され、NK細胞の標的細胞障害が行われる。
NKG2D-DAP10複合体は、マウスにも存在し、RAE-1分子をリガンドとして認識する。
2).NK阻止レセプター(KIR:killer inhibitory receptor)
NK細胞表面に存在する、NKB1などの分子は、標的細胞表面の特定のMHCクラスI抗原と結合する(NKB1は、T細胞表面にも存在するMHCレセプター)。
このようにして、NK細胞が、抑制性レセプターのNK阻止レセプターで、標的細胞表面に、自己のMHCクラスI分子(α鎖)を認識すると、抑制性シグナルが、NK細胞内に伝達され、チロシンリン酸化が阻害され、NK細胞の活性化が阻止される(注4)。
そのため、NK細胞は、MHCクラスI分子を発現している自己の細胞を、傷害しにくい(自己寛容)。
そして、MHCクラスI分子を失ったウイルス感染細胞や腫瘍細胞などは、NK細胞により傷害されやすい。
このことは、MHCクラスI分子を介して分子を認識し、活性化する細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocytes:CTL、CD8陽性のキラーT細胞)と異なる。
NK細胞表面のCD158も、KIRとして、標的細胞のMHCクラスI分子(HLA-C)を認識し、NK細胞に傷害作用を抑制するように、抑制性シグナルを伝える。
KIRは、T細胞も発現している。
KIRには、Ca2+依存性のレクチン様受容体(NKG2、Ly-49など)と、免疫グロブリン様受容体とがある。
3).Fcレセプター
NK細胞表面には、免疫グロブリン(IgG)のFc部分と結合する、Fcレセプター(FcγRIII)が存在する。このFcレセプターの糖蛋白質は、CD16。
NK細胞は、Fcレセプターを介して、標的細胞表面に結合している、免疫グロブリン(抗体)のFc部分と結合し、標的細胞を傷害出来る。
このような、抗体を介する標的細胞の破壊は、ADCC(antibody-dependant cell-mediated cytotoxicity:抗体依存性細胞障害)と呼ばれ、単球・マクロファージも行う。
4).LFA-1
NK細胞表面には、LFA-1(human leukocyte function-associated antigen-1)が存在する。
NK細胞が標的細胞と結合するには、LFA-1を介して、標的細胞表面のICAM-1との結合も必要。
LFA-1は、α鎖(CD11a)とβ鎖(CD18)で構成される。β鎖(CD18)は、補体レセプターのCR3のβ鎖と同じ。
5).Fasリガンド
NK細胞は、細胞表面にFasリガンドを有しており、標的細胞表面のFas抗原(Fas受容体)と結合することで、標的細胞に(核クロマチンの濃縮、DNA断片化による細胞死)を引き起こす。
SLEなどの自己免疫疾患では、可溶性Fas抗原が増加しており、Fas抗原を発現した自己抗原反応性リンパ球が、アポトーシスにより除去されないことが、発症の原因とも言われる。
6).CD57(HNK-1糖鎖抗原)
マウスで、単クローン抗体HNK-1によって認識される抗原分子は、HNK-1糖鎖抗原と呼ばれる。
HNK-1糖鎖抗原は、ヒトのNK細胞などの細胞表面にも発現しており、別名CD57、Leu7と呼ばれている(単クローン抗体を開発したメーカーが異なるために、違う命名がされているが、CD57とLeu7は、同じ抗原を認識している)。
HNK-1糖鎖抗原は、N-アセチルラクトサミン構造の末端に、3位の硫酸化されたグルクロン酸が結合しているという。なお、N-アセチルラクトサミン(N-acetyllactosamine:LacNAc:Galβ1-4GlcNAc)は、ガラクトース(Gal)とN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)とが、β-1,4結合したニ糖類。
HNK-1糖鎖抗原は、免疫系や神経系の細胞に分布している:HNK-1糖鎖抗原は、糖蛋白質や糖脂質に発現されている。糖蛋白質に関しては、細胞接着分子に発現している。
HNK-1糖鎖抗原は、神経系においては、細胞の接着や移動、神経突起の伸長に関与していると考えられている。
HNK-1糖鎖抗原は、多くの神経系細胞接着分子(免疫グロブリンスーパーファミリーやインテグリンファミリーに属する)に見出されているという。
5.NK細胞による標的細胞障害のメカニズム
NK細胞は、標的細胞に結合すると、細胞内顆粒中のパーフォリンが放出され、標的細胞の細胞膜に孔が開けられる。
さらに、顆粒から放出される、ランザイム(セリンエステラーゼ)が、パーフォリンが開けた孔から侵入し、標的細胞の核を断片化させて、標的細胞を傷害する。
NK細胞は、細胞表面にFcレセプターを有しており、免疫グロブリン(抗体)と結合した標的細胞を、ADCCにより、傷害する。
NK細胞は、細胞表面にFasリガンドを有しており、Fas抗原(Fas受容体)を発現している標的細胞に結合して、アポトーシスを起こす。
その他、NK細胞は、NKCF(natural killer cytotoxic factor)も放出する。
注1: NK細胞活性は、IFN-αやIL-2やIFN−γと共に培養すると、増強する:
・ヒトNK細胞活性は、IFN-αと共に培養すると、活性の増強が培養1日以内に見られ、培養2日目以降は、活性が対照レベルに低下する。
・ヒトNK細胞活性は、IL-2と共に培養すると、活性の増強が培養2日目からピークになり、培養3日目も活性の増加が持続する。
・ヒトNK細胞活性は、IFN−γと共に培養すると、IFN-αやIL-2の活性増強より、遅れて増強し、培養3日目をピ−クに、活性が次第に対照レベルに低下する。
注2:IFN-γ(interferon-gamma)は、主に、CD4陽性ヘルパーT細胞(特に、Th1細胞)やCD8陽性キラーT細胞(CTL)が産生するが、IL-12で活性化されたNK細胞やNKT細胞も、IFN-γを産生する。
IFN−γは、抗ウイルス効果、マクロファージやNK細胞やCTLの細胞障害活性の増強作用がある。
IFN−γは、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、Fcγレセプター、TNFレセプターの発現を、増加させる。
なお、IL-12は、好中球、樹状細胞が産生する。
インフルエンザウイルスをマウスに感染させた実験では、気管支肺胞洗浄液(BALF)中に、まず、感染初期(感染2日目)に、TNF-αが増加して(約200pg/mg protein)、すぐに、4日目には、減少し(約75pg/mg protein)、8日目には、感染前のレベルに低下した。IFN−γは、2日目、4日目には、ほとんど上昇しなかったが、6日目になって、IFN−γ濃度が増加した(約9pg/mg protein)が、8日目には、ほとんど、検出されないレベルにまで、減少した。
注3:グルカン(Glucans)は、ブドウ糖(グルコース)のみが結合した多糖類で、α-グルカンと、β-グルカンとがある。
β-D-グルカンは、肝臓のクッパー細胞(Kupffer細胞)をも、活性化する。
キノコ類(シイタケ、ナメコなど)の中には、β-(1-3)-Dグルカンや、β-(1-6)-Dグルカンが、多く含んでいる。
注4:免疫系は、外敵の病原体(細菌など)から、自己の体を守るために、発達したシステム。
免疫系で、細菌などの病原体から、自己の体を守るためには、自己の組織(味方)と、非自己の組織(敵)を、識別する仕組みが、存在する。
原始的な獲得免疫である、NK細胞は、NK阻止レセプターで、標的細胞表面に、自己と同じMHCクラスI分子(α鎖)を認識すると、自己(味方)と認識し、攻撃しない。そして、NK細胞は、標的細胞表面に、自己と同じMHCクラスI分子(α鎖)を認識出来ないと、攻撃する。言わば、戦場では、味方(自己)だという紋章をつけていない兵を、敵と見なすように、NK細胞は、自己であると証明するするMHCクラスI分子(α鎖)を、発現していない細胞を、非自己(敵)と、見なす手法だ。つまり、NK細胞は、自己(味方)である証明があるか、監視していると、考えられる。
他方、ヘルパーT細胞の様に、T細胞は、TCR(T細胞受容体)で、単球・マクロファージ表面の、MHC(HLA)と抗原ペプチドの複合体を認識する。これは、どちらかと言えば、自己のMHC(HLA)が変性していないか、認識し、変性していなければ自己(味方)、変性していれば非自己(敵)と、認識する。つまり、T細胞は、自己が変性していないか、監視していると、考えられる。これは、言わば、戦場では、味方(自己)が、裏切っていないか(変性していないか)、監視して、敵の紋章を付けていなければ味方(自己)、敵の紋章を付けていれば敵(非自己)と、見なすような手法だ。
参考文献
・宮坂信之、他:わかりやすい免疫疾患 日本医師会雑誌 特別号(1) 生涯教育シリーズ−67、2005年.
・谷口克、他:標準免疫学(第2版、医学書院、2004年).
・岸本忠三、他:岩波講座 免疫科学3 免疫担当細胞(岩波書店、1986年).
・金田一孝、垣生園子、他:新免疫学叢書10 キラー細胞(医学書院、1983年).
・山村雄一、他:免疫学4 細胞性免疫 アレルギー(中山書店、1982年).
・赤羽太郎、青山香喜、柳沢光彦:特集・新しい臨床検査 リンパ球のSubpopulation 小児科診療 第45巻・第6号、39-46、昭和57年(診断と治療社).
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