ライ症候群(Reye syndrome)

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 解熱剤のアスピリンの代謝産物のサリチル酸は、ミトコンドリアで、PTP(permeability transition pore)という穴構造を開いてしまうので、その結果、プロトンを含めた低分子量の物質が、ミトコンドリア外(細胞質ゾル)から、ミトコンドリア内(マトリックス)に流入して、その為、ミトコンドリアは、膨化(膨張化)してしまい、TCA回路が作動しなくなり、NADH2+の生成が減少し、電子伝達酸化的リン酸化によるATP生成が障害され、また、肝臓では、脂肪酸のβ酸化が進行せず、中性脂肪が、蓄積し、ライ症候群を来すと、考えられる(注1)。
 PTPの開口(induction)は、Ca2+に依存する。その理由は、Bernardiの実験結果から、PTPの開口は、膜電位(the proton electrochemical gradient:刄ハH+)により制御されていて、Ca2+Camの増加)が、ミトコンドリア内で、膜電位(刄ハH+)を変化させて、PTPの開口(induction)を引き起こすためと、考えられる。
 Trost等の実験結果では、細胞外Ca2+濃度(Cao)が高いと、サリチル酸の毒性(ミトコンドリア障害作用)が、増強した。細胞外(extracellular)のカルシウムイオン濃度(Ca2+濃度)が高いと、サリチル酸の、毒性(ミトコンドリア障害作用)が、増強したカルシウム拮抗作用のある薬剤(verapamil、diltiazem、chlorpromazine、nifedipine、nisoldipine)は、サリチル酸の毒性(ミトコンドリア障害作用)を、阻害ないし軽減させた

 わが国では、ライ症候群を予防する為に、アスピリン、アスピリン・アスコルビン酸、アスピリン・ダイアルミネート、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、エテンザミド、ジクロフェナクナトリウムを、15歳未満の小児のインフルエンザや水痘に伴う発熱に対して、解熱などの目的で、原則として、投与しないことになっている。
 インフルエンザ脳症を予防する為に、メフェナム酸を使った解熱剤を、インフルエンザに伴う発熱に対して、原則として、投与しないことになっている。なお、ジクロフェナクナトリウムは、インフルエンザ脳症の死亡率を、上昇させる(悪化させる)。

 生体は、空腹時、激しい運動時、感染時など、ブドウ糖グルコース)を解糖してエネルギーを十分に供給できない時に、主に、脂肪酸をエネルギー源にする(脂肪酸をβ酸化で分解し、アセチル-CoAを生成、TCA回路でNADH2+を生成し、電子伝達系酸化的リン酸化で、ATPを生成する)ので、ミトコンドリアの脂肪酸β酸化系は、重要な役割を果たす。
 そのため、脂肪酸β酸化異常症(FAOD)では、空腹時、激しい運動時、感染時などに、ブドウ糖からのエネルギー供給が不足した時に、低ケトン性低血糖などの症状で、急性発症しやすい。

 1.ライ症候群(Reye syndrome)
 a.ライ症候群とは
 ライ症候群は、急性脳症と肝脂肪変性(肝障害、注2)を特徴とする。
 
 ライ症候群は、B型インフルエンザなどによる上気道炎(90%)や水痘(5〜7%)で発熱して回復した後(5〜7病日以内)に、長時間、嘔吐し(protracted vomiting)、急激に、昏睡などの意識障害痙攣(急性脳浮腫)を来たし、最悪、死亡する。
 血液検査では、肝臓や筋肉由来の酵素(GOTGPTLDH、CPKなど)が上昇し、高アンモニア血症(高NH3血症)、低プロトロンビン血症も、見られる(黄疸は見られない)。
 低血糖は、乳幼児(younger patients)では認められる:しかし、低血糖が見られる場合は、ライ症候群に類似した症状を来たす先天性代謝異常症の可能性がある。

 2歳以下の小児に好発する、先天性代謝異常に合併するライ症候群類似先天性代謝異常とは異なり、ライ症候群は、5歳以上の年長児に、好発する。

 肝臓は、中性脂肪(トリグリセリド)が蓄積する(注2)ので、肝臓は、黄色ないし白色になる(a yellow to white liver)。
 肝生検して、電子顕微鏡で観察すると、特有なミトコンドリアの形態異常を示す。
 肝臓のミトコンドリア内の、OTC(ornitine transgarbamylase)、CPS(carbamylphpsphate synthetase)、pyruvate dehydrogenaseなどの酵素活性が、半分以下に低下している。

 なお、脳浮腫(脳圧亢進)に対して、10%グリセロールを点滴静注することは、禁忌と思われる:グリセロールは、肝臓で代謝され、糖新生に利用されたり、脂肪酸とエステル結合され、中性脂肪の合成に利用されるので、脂肪代謝に影響を及ぼす。脳浮腫には、マンニトールの点滴の方が、望ましい。

 b.ライ症候群とアスピリン
 NSAIDsの中でも、古くから解熱や鎮痛を目的に使用されたアスピリンは、ライ症候群の発症に関連するとされる。
 ライ症候群は、インフルエンザ様疾患や水痘に罹った小児が、アスピリンを含有している薬物を摂取すると、発症する危険性が高くなる。

 アスピリンは、ミトコンドリアの形態に、変化を引き起こす:
アスピリンが、体内で代謝されて生成されるサリチル酸は、肝細胞のミトコンドリア膨化を引き起こす 

 アスピリン投与と、ライ症候群の発症とには、密接な関連があることが、多くの疫学的研究が、示唆しているが、サリチル酸が、ライ症候群発症の、重要な因子であると、考えられている。
 アスピリンが、体内で代謝されて生成されるサリチル酸が、ミトコンドリアの機能を抑制し、ライ症候群を発症させるものと考えられる。
 米国では、ライ症候群が多発した時期があった:アスピリンの使用量は、米国のライ症候群患者には、中央値で26.4mg/kg/日であったと言う、日本での小児へのアスピリン使用量は、通常10〜20mg/kg/日と言われる。

 サリチル酸は、ミトコンドリアで、PTP(permeability transition pore)という穴構造を開いて、膜電位を低下させてしまい、その結果、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化が、障害されて、ミトコンドリア内のNADH2+が、減少すると考えられる。

 PTPが開くと、PTPの穴を、プロトン(水素イオン)が通過(流入)して、ミトコンドリア膜の膜電位(the mitochondrial transmembrane potential:Delta Psi )が、低下し、酸化還元電位が変化する。また、PTPの穴を介して、他の物質がミトコンドリア内(マトリックス)に流入して、ミトコンドリアが膨化して、アポトーシスが誘導される(pro-apoptogenic)と、考えられる。

 Trost等の、ラットの培養肝細胞を用いた実験結果では、0.3〜5mMのサリチル酸が、濃度に比例して(concentration-dependent)、細胞を死滅させた。3mMの濃度のサリチル酸を使用して、半数の細胞が死滅する(half-maximal cell killing)は、150分だった。
 また、サリチル酸の毒性(ミトコンドリア障害作用)は、細胞外のカルシウムイオン濃度(Ca2+濃度)が高いと、増強したカルシウム拮抗作用のある薬剤(verapamil、diltiazem、chlorpromazine、nifedipine、nisoldipine)は、サリチル酸の毒性(ミトコンドリア障害作用)を、阻害ないし軽減させた注3)。
 Ca2+濃度の高い緩衝液(buffer)中でも(培養しても)、カルシウム拮抗作用のある薬剤は、ミトコンドリア内の遊離カルシウムイオン(mitochondrial free Ca2+)の上昇を、阻害した。
 ライ症候群は、米国では、1974年以降、4〜12歳(おおよそ、6歳)の小児に多く発症したが、1988年までには、ライ症候群の発症例は、激減している。これは、アスピリン使用が減少したためか、ライ症候群に類似した症状を来たす先天性代謝異常症である、MCADD(中鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症)として診断されるようになったためなのか、定かでないと言う。

 ライ症候群を予防するために、15歳未満の小児がインフルエンザや水痘に罹った時は、解熱などの目的でアスピリンを使用してはならない(原則禁忌)。アスピリンの添付文書には、「サリチル酸系製剤の使用実態は我が国と異なるものの、米国においてサリチル酸系製剤とライ症候群との関連性を示す疫学調査報告があるので、本剤を15才未満の水痘インフルエンザの患者に投与しないことを原則とするが、やむを得ず投与する場合には、慎重に投与し、投与後の患者の状態を十分に観察すること。」と書かれている。サリチルアミド(PL顆粒に含まれる)、エテンザミドは、代謝されてサリチル酸にならないが、アスピリン同様に、使用してはならない。
 また、一般用医薬品では、アスピリン類(バッファリンA、エキセドリン、ケロリン)は、15歳未満の小児には、使用してはいけないことになっている。なお、小児用バッファリンは、成分はアスピリンでなく、アセトアミノフェンが配合されている。アセトアミノフェンは、抗炎症作用は弱く、アスピリンのような血小板凝集阻害作用はない。しかし、アセトアミノフェンは、肝細胞壊死を来すおそれや、水痘の病期を延長させてしまうおそれがある。
 ジクロフェナクナトリウム製剤を投与後に、ライ症候群を発症したとの報告がある。

 わが国では、ライ症候群を予防する為に、アスピリン、アスピリン・アスコルビン酸、アスピリン・ダイアルミネート、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、エテンザミド、ジクロフェナクナトリウムを、15歳未満の小児のインフルエンザや水痘に伴う発熱に対して、解熱などの目的で、原則として、投与しないことになっている。
 インフルエンザ脳症を予防する為に、メフェナム酸を使った解熱剤を、インフルエンザに伴う発熱に対して、原則として、投与しないことになっている。なお、ジクロフェナクナトリウムは、インフルエンザ脳症の死亡率を、上昇させる(悪化させる)。
 
 2.ライ症候群類似先天性代謝異常症
 先天性の代謝異常症でも、ライ症候群に類似した症状を示すことが知られている。
 ライ症候群と異なり、
感染による発熱が下がらないうちに発症し、アスピリンとの関係もほとんど認められず、罹患率の減少も見られない。
 ライ症候群類似先天性代謝異常症は、
2歳以下の乳幼児に好発し、インフルエンザとの関連は、強くない。他方、ライ症候群は、5歳以上の年長児に生じ、インフルエンザとの関連が強く、感染による発熱が、一旦、解熱した後に、発症する。

 a.先天性代謝異常症
 
オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTC:ornithine transcarbamylase deficiency)、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAリアーゼ欠損症、全身性カルニチン欠損症は、従来から、ライ症候群類似の症状を来たすことが知られている。

 OTC欠損症は、X染色体に連鎖した疾患で、男女比は2:1。
 OTCは、アンモニアを処理する尿素回路で、オルニチン(ornithine)をカルバミルリン酸(carbamyl phosphate)と結合させ、シトルリン(citrulline)を合成する酵素。
 男性患者の母親は、保因者のことが多く、女性患者の母親は、ほとんど保因者でない。
 患者さんの半分は親(ほとんどが母親)からの遺伝、残りの半分は新生児突然変異が原因と言われる。
 突然変異は、母親よりも、父親の生殖細胞で起こりやすい。
 OTC欠損症の患者さんは、高アンモニア血症のため、倦怠感、嘔吐などの症状で発病し、次第に、言動異常、興奮、視力障害、意識障害を呈する。黄疸、凝固異常など、肝細胞の実質障害の所見は、著明でない。


 b.ミトコンドリア脂肪酸β酸化異常症(FAOD:fatty acid oxidation defect)
 
FAODは、肝機能障害を伴うライ症候群類似(mimicker of Reye syndrome)の急性脳症を発症したり、乳幼児突然死症候群(SIDS:sudden infant death syndrome)の原因となることがある。

 FAODには、以下のような欠損症が存在する。
 1).アシルCoA生成の異常
 ・カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1型欠損症:CPT-I欠損症(carnitine palmitoyltransferase 1 deficiency)
 ・カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2型欠損症:CPT-II欠損症(carnitine palmitoyltransferase 2 deficiency)
 ・原発性カルニチン欠損症
 ・カルニチン転位酵素欠損症
 ・トランスロカーゼ欠損症

 2).ミトコンロドリア内膜長鎖脂肪酸β酸化の異常
 ・極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症:VLCAD欠損症(very long-chain acyl-CoA dehydrogenase deficiency)
 ・長鎖3-ヒドロキシルアシル-CoA脱水素酵素欠損症(LCHADD)
 ・長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症:LCAD欠損症(long-chain acyl-CoA dehydrogenase deficiency)

 3).ミトコンドリアマトリックス中鎖・短鎖脂肪酸β酸化の異常
 ・中鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症:MCAD欠損症(medium-chain acyl-CoA dehydrogenase deficiency:MCADD
 ・短鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症:SCAD欠損症(short-chain acyl-CoA dehydrogenase deficiency:SCADD)
 ・短鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素欠損症(SCHADD)
 ・中鎖3-ケトアシルCoAチオラーゼ欠損症(MCKATD)
 ・短鎖3-ケトアシルCoAチオラーゼ欠損症(SCKATD)

 4).電子伝達系への橋渡しの異常
 ・グルタル酸尿II型(GA2):ETF欠損症(ETF欠損症、注4)、ETF脱水素酵素欠損症(ETF-DH欠損症)

 5).ケトン体の生成の異常
 ・3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAリアーゼ欠損症(HMGLD)
 ・HMG合成酵素欠損症(HMGSD)

 ミトコンドリアでは、脂肪酸をβ酸化により分解し、エネルギー(ATP)を供給する。
 脂肪酸は、肝臓、心筋、骨格筋では、主要なエネルギー源とされている。
 特に、空腹時、激しい運動時、感染時など、ブドウ糖グルコース)を解糖してエネルギーを十分に供給できない時に、主に、脂肪酸をエネルギー源とするので、ミトコンドリアの脂肪酸β酸化系は、重要な役割を果たす。
 そのため、FAODは、空腹時、激しい運動時、感染時などに、ブドウ糖からのエネルギー供給が不足した時に、急性発症しやすい。
 特に、肝臓、骨格筋、心筋は、β酸化が盛んな臓器であり、FAODの異常所見が出易い。
 FAODの異常所見としては、肝腫大、脂肪肝、筋緊張低下、筋肉痛、心拡大、心筋障害、伝導障害などが起こり得る。
 FAODの検査所見としては、低血糖、血液中のASTGOT)、LDH、CK(CPK)、FFA(遊離脂肪酸)などの上昇や、高アンモニア血症、代謝性アシドーシスなどが見られる。原因不明の高CK血症(高CPK血症)の原因として、ミトコンドリア脂肪酸β酸化異常症(FAOD)が、見つかることがある

 FAODの多くの患者は、安定期には無症状だが、間歇的に発作を起こし、2歳未満(30/39例)に、発症する。
 初発症状としては、急性脳症を発症することが少なくなく(21/39例)、肝機能障害を伴うライ症候群類似(mimicker of Reye's syndrome)の症状を示すことがある。
 乳幼児突然死症候群(SIDS:2/39例)を来たしたり、筋緊張低下や筋肉痛などの骨格筋症状(23/39例)、発達遅滞も見られる。肝機能障害(34/39例)、低血糖(14/28例)、高アンモニア血症(18/22例)が見られる。

 FAODでは、脂肪酸はミトコンドリアに入ってβ-酸化されず、ケトン体は生成されない。
 FAODの乳児は、低血糖があるのに、尿ケトン体の濃度が低いことが、検査所見の特徴(低ケトン性低血糖)。
 
 CPT-II欠損症は、乳児期に発症して、筋緊張低下、呼吸障害、不整脈、心肥大を来たす重症型と、成人期に発症して、発作性ミオグロビン尿症を来たすタイプがある。
 
 VLCAD欠損症は、乳児期(生後3〜4カ月)に発症して、肥大型心筋症、筋緊張低下、肝機能障害、低血糖を主徴とするタイプと、青年期に運動や空腹時に発症して、横紋筋融解症を主徴とするタイプがある。

 LCAD欠損症は、乳児期より、心筋症、筋緊張低下、肝腫大、低血糖を来たす。

 原発性全身性カルニチン欠損症(primary systemic carnitine deficiency:PCD)では、進行性の心筋症(拡張性心筋症)を、1〜7歳頃に発症する。また、3カ月〜2.5歳頃に、低ケトン性低血糖を呈する、急性脳症で発症することもある。肝生検では、脂肪変性があり、ライ症候群と診断されることも多い。血中のカルニチン濃度は、正常の10%以下の5μmol/L以下に低下する。カルニチンを経口投与すると、症状は劇的に改善する。
 全身性カルニチン欠損症は、カルニチントランスポーター遺伝子(OCTN2遺伝子)に異常がある。細胞膜のカルニチントランスポーターに障害があり、カルニチンを、骨格筋、心筋、腎で、血液中から細胞内に転送(能動輸送)出来ない(腎臓で再吸収されないため、カルニチン血中濃度も低下する)。肝臓では、カルニチンを細胞内に転送出来る。

 注1ライ症候群では、サリチル酸によるミトコンドリア障害のため、NADH2+の生成(TCA回路)、ATP生成(電子伝達系酸化的リン酸化)、糖新生、尿素の生成(尿素回路)、脂肪酸のβ酸化、ケトン体の生成、など、様々な代謝が、障害される。

 注2ライ症候群で、肝臓に中性脂肪が蓄積して、脂肪変性を来すのは、サリチル酸によるミトコンドリア障害の為、TCA回路が作動しなくなり、脂肪酸のβ-酸化も減少し、脂肪組織から放出されている遊離脂肪酸が処理されず、肝臓に、中性脂肪が蓄積する為と、考えられる。
 サリチル酸などのNSAIDsは、PTPと言う、ミトコンドリアの内膜と外膜を貫通する穴構造を、開口させて、プロトンなどを、ミトコンドリア内に流入させ、膜電位(Delta Psi )を、低下させてしまい、ミトコンドリアは、膨化する。
 その結果、電子伝達で生じる、プロトン勾配がなくなり、ATP合成も、阻害される。電子伝達系酸化的リン酸化は、共役しているので、酸化的リン酸化でATPが合成されないと、電子伝達が起こらない。
 アポトーシスを惹起するPTPの開口(induction)は、Ca2+に依存する。その理由は、Bernardiの実験結果から、PTPの開口は、膜電位(the proton electrochemical gradient:刄ハH+)により制御されていて、Ca2+Camの増加)が、ミトコンドリア内で、膜電位(刄ハH+)を変化させて、PTPの開口(induction)を引き起こすためと、考えられる。
 
 注3:ニフェジピン(nifedipine)などのカルシウム拮抗剤や、クロルプロマジン(chlorpromazine)のような精神安定剤は、サリチル酸の毒性(PTP開口作用)を弱め、ミトコンドリア障害を軽減するので、ライ症候群やインフルエンザ脳症の治療に、有用かも知れない。

 注4ETFとは、electron transfer flavoprotein(電子伝達フラビン蛋白)の略。ETFは、脂肪酸のβ-酸化で生成されるFADH2から、電子を電子伝達系に伝達する。

 参考文献
 ・小児科 40巻8号、1042〜1048頁、1999年
 ・小児科 40巻13号、1743〜1751頁、1999年
 ・日本小児科学会雑誌 102巻7号、753〜758頁、1998年
 ・須藤茂行.ライ症候群の病態解明に関する研究 −第1編 ラット灌流肝のエネルギー代謝に対するサリチル酸の影響.日児誌 1998; 102:1057-1065.
 ・Adam Szewczyk and Lech Wojtczak: Mitochondria as a Pharmacological Target. PHARMACOLOGICAL REVIEWS. Vol. 54, Issue 1, 101-127, March 2002.
 ・Egil Fosslien: Mitochondrial Medichine - Molecular Pathology of Defective Oxidative Phosphprylation. Annals of Clinical & Laboratory Science 31:25-67 (2001).
 ・Trost LC, Lemasters JJ.: Role of the mitochondrial permeability transition in salicylate toxicity to cultured rat hepatocytes: implications for the pathogenesis of Reye's syndrome. Toxicol Appl Pharmacol. 1997 Dec;147(2):431-41.
 ・Bernardi P (1992) Modulation of the mitochondrial cyclosporin A-sensitive permeability transition pore by the proton electrochemical gradient. Evidence that the pore can be opened by membrane depolarization. J Biol Chem  267: 8834-8839.

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