カルニチン
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カルニチンは、脂肪酸の分解(β-酸化)を促進させる。
1.カルニチンとは
カルニチン(carnitine)は、4-hydroxy-3-trimethylaminobutyric acid(β-hydroxy-γ-trimethyl
ammonium butyrate)のこと。
化学式は、(CH3)3N+-CH2-CH(OH)-CH2-COOH。
古くは、ビタミンBTと呼ばれていた物質。
カルニチンは、体内(肝臓、腎臓、脳)で、必須アミノ酸のメチオニンとリジンから、合成出来る(カルニチンは、肝臓で合成され、血液を介して、筋肉に取り込まれる)。
カルニチンは、赤肉、鶏肉、魚、乳製品などにも豊富に含まれていて、食事からも供給される。
2.カルニチンは、脂肪酸がミトコンドリア内に移行するのに必要
カルニチンは、カルニチントランスポーターにより、細胞内に取り込まれる。
細胞質の長鎖脂肪酸は、細胞質ゾルで、ACS(Acyl-CoA synthase)により、CoA(Coenzyme A)と結合して、アシル-CoA(Acyl-CoA)になる。
アシル-CoAは、カルニチンと結合して、アシルカルニチン(Asylcarnitine)にならないと、ミトコンドリアの内膜を通過して、ミトコンドリア内のマトリックスに移行出来ない(注1)。
従って、カルニチンがないと、脂肪酸は、ミトコンドリア内のマトリックスで、β-酸化されにくい。
3.全身性カルニチン欠損症
全身性カルニチン欠損症では、カルニチントランスポーターに障害があり、骨格筋、心筋、腎臓で、血液中からカルニチンを、細胞内に取り込めない。また、血中カルニチンも減少している。細胞内カルニチンが欠乏するため、長鎖脂肪酸を、ミトコンドリア内へ転送する能力が低下する。そのため、脂肪酸は、ミトコンドリアでβ酸化をされないため、飢餓などで、グルコースからアセチル-CoAを生成できない状況になると、エネルギー産生(ATP産生)が低下する。また、糖新生も低下して、ケトン体の上昇が少ない、低ケトン性低血糖を来たす。
また、中性脂肪(トリグリセリド)が組織に蓄積し、肝腫大、心筋障害、ミオパチーが起こる。
さらに、ミトコンドリア内に有害なアシル-CoAが蓄積し、TCA回路(ピルビン酸脱水素酵素)や、尿素回路(N-アセチルグルタミン酸合成酵素)が阻害されると、エネルギー産生の低下、高乳酸血症、高アンモニア血症などを呈する。
4.CPT-I、CPT-II
CPT-I(carnitine palmityltransferase type I:カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1型)は、カルニチンと、脂肪酸から生成されたアシル-CoAを結合させ、アシルカルニチンとする。
脂肪酸は、アシルカルニチンの形で、ミトコンドリアの内膜を通過して、ミトコンドリア内(マトリックス)に移行する(注1)。
CPT-II(carnitine palmityltransferase type II:カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2型)は、ミトコンドリアのマトリックスで、アシルカルニチンを、カルニチンとアシル-CoAに分離する。
CPT-II欠損症は、乳児期に発症して、筋緊張低下、呼吸障害、不整脈、心肥大を来たす重症型と、成人期に発症して、発作性ミオグロビン尿症を来たすタイプがある
5.CAT
a.アセチル-CoA
ミトコンドリア内のアセチル-CoAは、カルニチンアシルトランスフェラーゼ(carinitine
acyltransferase:CAT)の作用により、カルニチンと結合して、アセチルカルニチンとして、ミトコンドリア外の細胞質ゾルに、汲み出される(ミトコンドリア内に、FreeなCoAが生成される)。
アセチル-CoA+カルニチン→アセチルカルニチン+CoASH
アセチルカルニチンは、細胞質ゾルから、血液中に排泄される。また、アセチルカルニチンは、細胞質ゾルで、カルニチンとアセチル-CoAに分解され、アセチル-CoAは、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(acetyl-CoA carboxylase:ACC)により、マロニル-CoA経路で、脂肪酸に合成される。
b.アシル-CoA
図には示さないが、ミトコンドリア内にアシル-CoAが蓄積すると、CATの作用により、カルニチンは、蓄積したアシル-CoAと結合して、アシルカルニチンとなる(ミトコンドリア内に、FreeなCoAが生成される)。
アシル-CoA+カルニチン→アシルカルニチン+CoASH
そして、蓄積したアシル-CoAは、アシルカルニチンとして、ミトコンドリア外(細胞質ゾル)に輸送され、血液中に排出される。
6.ミトコンドリア内での代謝
a.アセチルカルニチン
低酸素(hypoxia)などで、TCA回路(クエン酸回路)が障害されると、アセチル-CoAが代謝されないので、ピルビン酸の代謝物である乳酸が、血液中に増加する。
カルニチンは、CATにより、アセチル-CoAから、アセチルカルニチンを生成し、アセチルカルニチンとして、血中に輸送する。アセチル-CoAからアセチルカルニチンの生成は、ピルビン酸から乳酸の生成より行われ易いので、乳酸が減少する。
b.高脂肪食は、解糖を抑制する
脂肪酸のβ酸化で生成されるアセチル-CoAは、ピルビン酸脱水素酵素を抑制する。
脂肪の摂取が多い(脂肪酸が多い)と、脂肪酸のβ酸化で、アセチル-CoAが生成され、ピルビン酸脱水素酵素が抑制され、解糖(グルコースのピルビン酸への分解)を、抑制する。カルニチンは、脂肪酸のミトコンドリア内への輸送を促進し、脂肪酸のβ酸化を促進するが、同時に、アセチル-CoAをアセチルカルニチンにして、アセチル-CoAによるピルビン酸脱水素酵素の抑制を、軽減する。
c.高炭水化物食は、脂肪酸のβ酸化を抑制する
炭水化物の摂取が多いと、ピルビン酸脱水素酵素により、ピルビン酸からアセチル-CoAが生成され、アセチルカルニチンとして、細胞質ゾルに輸送され、アセチル-CoAから、アセチル-CoAカルボキシラーゼにより、マロニル-CoAが生成され、脂肪酸が合成される。マロニル-CoAは、CPT-Iを抑制し、脂肪酸のβ酸化を抑制する。
6.抗生剤による、カルニチン欠乏
ピボキシル基を持つ抗生剤(CFPN-PIなど)は、消化管から吸収される際に、代謝を受け、抗菌活性物質と、ピバリン酸に分解される。ピバリン酸は、カルニチン抱合を受け、尿中にピバロイルカルニチンとして、排出される。従って、ピボキシル基を持つ抗生剤を長期間投与すると、血清中カルニチンが、低下する。
注1:アシルカルニチンは、porinと言うミトコンドリア外膜の穴を通過して、ミトコンドリア内に、輸送されるとも言われている。
参考文献
・小児科 40巻8号、1042〜1048頁、1999年
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