ヘルパーT細胞

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T細胞表面のTCR/CD3複合体は、単球・マクロファージ表面の、抗原が結合したMHCクラスII分子を、認識する。
 1.単球・マクロファージは、ヘルパーT細胞に抗原を提示する
 細菌などは、単球・マクロファージにより貪食され、リソソームで、抗原(抗原ペプチド)に分解される。
 抗原(抗原ペプチド)は、MHCクラスII分子注1)のに挟まれるように結合して、単球・マクロファージ表面に提示される。
 単球・マクロファージ表面のMHCクラスII分子が、抗原(抗原ペプチド)を挟む形で、CD4陽性(注2)のヘルパーT細胞のTCR/CD3複合体に抗原を提示する。

 抗原提示細胞である単球・マクロファージ(MΦ)は、細菌を貪食し、細胞内で消化し、細菌の蛋白を、細かく砕き、アミノ酸数が約10〜15程度のペプチド(peptide)にする。
 こうして、ペプチド(peptide)の形にされた抗原ペプチド(抗原フラグメント、ペプチド断片)は、単球・マクロファージのMHCクラスII分子に挟まれるようにして、ヘルパーT細胞のTCR/CD3複合体に、提示(processing)される。

 TCR/CD3複合体は、TCR(T細胞受容体:注3)が、CD3分子(γ、δ、ε、ζ、ηの複合体)と細胞膜貫通部で、非共有的に結合している。
 TCRの抗原認識のシグナルは、CD3分子を介して、T細胞内に伝達される(シグナル1)。

 ヘルパーT細胞が、MHCクラスII分子に結合した抗原を認識する際には、CD4抗原が、補助的に働く。

 ウイルスなどの抗原は、抗原ペプチド(抗原フラグメント)の形で、単球・マクロファージのMHCクラスI分子と共に、CD8陽性のキラーT細胞(CTL:cytotoxic T lymphocyte)に、提示される。

 単球・マクロファージの他に、活性化B細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、組織内の樹状細胞(dendritic cell)なども、抗原提示する(注5)。
 2.T細胞活性化には、インテグリンを介する、共刺激が必要
 T細胞が活性化されるためには、TCR/CD3複合体を介する抗原特異的なシグナルによる刺激と、インテグリンを介する抗原非特異的なシグナルによる共刺激副刺激)が必要。
 1).シグナル1:MHCクラスII分子(抗原提示細胞)/抗原ペプチド/TCR/CD3複合体(T細胞)の抗原認識シグナル

 ヘルパーT細胞は、TCR/CD3複合体が、単球・マクロファージ表面のMHCクラスII分子を介して、抗原ペプチドを提示されることで刺激され生じるシグナル1(抗原認識シグナル)だけでは、活性化されない。
 シグナル1は、抗原特異的なシグナル。

 2).シグナル2:インテグリン(T細胞)/インテグリンリガンド(抗原提示細胞)の副シグナル
 ヘルパーT細胞は、T細胞表面のインテグリン(受容体)が、単球・マクロファージ表面に発現されるインテグリンリガンドで刺激され生じるシグナル2(共刺激シグナル)も、T細胞活性化のために必要。
 シグナル2は、抗原非特異的なシグナル。

 ヘルパーT細胞の活性化には、シグナル1シグナル2の2つのシグナルが必要。

 3.2シグナルモデル
 第1に、T細胞は、抗原認識のシグナル1がなく、シグナル2が伝えられても、活性化されない。
 第2に、T細胞は、抗原認識のシグナル1のみが伝わり、シグナル2が伝えられないと、活性化されないだけでなく、その抗原に対して、応答しない、免疫寛容状態になる
 抗インテグリン抗体を、マウスの心臓移植時に投与すると、拒絶反応が抑制される。後に、このマウスに、同じドナーマウスの皮膚を移植すると、抗インテグリン抗体を投与しなくても、拒絶反応なしに、皮膚は生着した。

 4.共刺激分子(インテグリン)と、対応するリガンド
 共刺激分子(副刺激分子)として、CD28や、CD152(CTLA-4)、CD40などと言う、インテグリン(受容体)が、T細胞表面に発現される。
 インテグリンは、対応するリガンドと、共刺激経路(副刺激経路)を構成する。

 インテグリン(受容体)/リガンド組み合せ
 1).CD28/B7共刺激経路
 T細胞表面のCD28が、単球・マクロファージ表面に発現されるB7(インテグリンリガンド:糖蛋白)と結合すると、シグナル2が伝えられて、T細胞が活性化される。
 B7には、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)と言う、2つの分子の遺伝子の存在が、知られている:T細胞(CD4陽性ヘルパーT細胞)のインテグリン/抗原提示細胞のリガンドの相互作用として、CD28/CD80と、CD28/CD86とがある。
 CD28は、CD3陽性T細胞の大半が、発現する。CD4陽性T細胞の方が、CD8陽性T細胞より、高頻度にCD28抗原を発現する。
 CD28は、活性化を誘導する正のシグナルを伝達する。

 2).CD152(CTLA-4)/B7共刺激経路
 T細胞表面のCD152(CTLA-4)が、単球・マクロファージ表面のB7と結合すると、ヘルパーT細胞の免疫反応(IL-2産生など)を抑制すると考えられている。

 3).CD40/CD154(CD40L)共刺激経路
 CD40(インテグリン:受容体)は、B細胞、単球・マクロファージ、樹状細胞、血管内皮細胞に発現している。
 CD40は、腫瘍壊死因子受容体ファミリー(TNF receptor family)に属する膜蛋白。

 CD40リガンド(CD4-ligand)のCD154(CD40Lgp39)は、活性化CD4陽性T細胞表面に発現している。
 CD40が、CD154(CD40L)と結合すると、抗原非特異的なシグナル(シグナル2)が伝達され、B細胞の抗体産生のクラススイッチ(注4)、リンパ濾胞に移動しての胚中心の形成、記憶B細胞の出現が誘導される。
 また、CD40/CD154(CD40L)共刺激経路は、抗原提示細胞(単球・マクロファージ、樹状細胞)を活性化させ、抗原提示細胞表面に細胞接着分子のリガンド(B7-1B7-2ICAM-1など)を発現させたり、抗原提示細胞に炎症性サイトカイン注6)などを分泌させ、T細胞共刺激経路CD28/B7共刺激経路を誘導する。
 このように、CD40/CD154(CD40L)共刺激経路は、B細胞からの抗体産生のみならず、T細胞の活性化にも、重要な経路。
 移殖免疫で、CD154(CD40L)に対する抗体を投与すると、免疫不応答性を長く持続させることが、認められている。

 5.Hygiene hypothesis
 リポ多糖(LPS:lipopolysaccharide、グラム陰性菌)、CpGオリゴヌクレオチド、リポペプチド、ペプチドグリカン(peptideglycan:グラム陽性菌)、リポアラビノマンナン(lipoarabinomannan、結核菌)などの微生物の菌体成分は、樹状細胞のToll-like receptor (TLRs)を介して、樹状細胞を活性化させ、CD40、CD80、CD86などの共刺激分子(副刺激分子)を発現させる(NF-kBが活性化される)。ナイーブT細胞は、樹状細胞から提示される抗原、共刺激分子(副刺激分子)、炎症性サイトカイン(IL-12、TNF-α)により活性化されると、Th1細胞が、優位に分化する。Th1細胞は、IFN-γを産生し、IgE抗体の産生を抑制し、アレルギー反応を抑制すると言われる。

 6.その他の接着分子
 T細胞表面のレセプター
 (インテグリン
 抗原提示細胞表面のリガンド
 (インテグリンリガンド)
 CD11b/CD18(LFA-1  ICAM-1
 VLA-4  VCAM-1
 CD2(LFA-2)  CD58(LFA-3) 
 VLA-4/VCAM-1の相互作用も、ヘルパーT細胞の活性化に重要で、マウスでの心臓移植の実験で、VCAM-1やVLA-4に対する抗体を投与する、移殖した心臓に拒絶反応が起こらないと言う。

 7.自己抗体産生のepitope spreading仮説
 自己免疫疾患では、自己抗体と反応する、自己抗体が産生されている。
 多くの自己抗原のアミノ酸配列は、ウイルスや細菌蛋白の一部と、分子レベルで相同していることが、確認された。
 例えば、U1RNP-70K蛋白と言う自己抗原は、B型インフルエンザウイルスのウイルス抗原と、相同性がある。

 epitope spreading仮説によると、まず、ウイルス感染で産生された、自己抗原に類似したウイルス抗原に対する抗体は、交差反応で、自己抗原(Aエピトープ)とも反応する。
 この、自己抗原に類似したウイルス抗原に対する抗体をリセプターに結合したB細胞は、自己抗原をT細胞に抗原提示する。
 そうすると、自己抗原(Aエピトープ)近傍の、新たな自己抗原(Bエピトープ)に対応するB細胞クローンも活性化され、真の自己抗体が産生されると考えられる。

 epitope spreading仮説は、マウスの抗U1RNP抗体産生系で確認されたという。
 このように、自己抗原と相同性を持つ病原微生物の感染を契機に、自己抗体が産生されるとも考えられる。

 注1MHCとは、major histocompatibility complexの略で、主要組織適合抗原複合体のこと。
 人間では、HLA(human leukocyte antigen)が、MHC。
 移殖した組織に、拒絶反応が起こる時、MHCは、「非自己」として認識されている。
 MHC(HLA)の型により、特定の抗原に対する、免疫応答の強度が異なる。これは、同じ抗原ペプチドであっても、MHC(HLA)の型により、MHC(HLA)の溝へ結合し易かったり、結合しにくいためとされる。例えば、ヒトのHLAのDR51-B5は、インフルエンザウイルスのHAと、強く結合する。ヒトのHLAのDQ6-B5は、溶血性連鎖球菌(溶連菌)のM蛋白と、強く結合する。従って、HLAのDR51-B5を有するヒトは、インフルエンザウイルスに対して、また、HLAのDQ6-B5を有するヒトは、溶連菌に対して、強い免疫応答を示す。このように、MHC(HLA)の型により、特定(問題)の抗原と結合のし易さに差がある。MHC(HLA)の型により、特定の抗原に対して、免疫応答するか、免疫非応答なのか、決まる。免疫応答が強すぎる(高すぎる)ことは、花粉症など、アレルギー疾患などを来たし、生体に不利な場合もある。
 免疫系でも、T細胞は、自己のMHC(HLA)が変化(変性)していないか、認識する。T細胞は、TCR(T細胞受容体)により、抗原提示細胞表面の、型の異なるMHC(HLA)や、変性したMHC(HLA)を、「非自己」として認識すると考えられる。
 TCR(T細胞受容体)は、MHC(HLA)と抗原ペプチドの複合体(MHCと、そのに結合した抗原ペプチド)を認識する。
 MHCは、2種類存在する:
 ・MHCクラスI分子:α鎖と、β2ミクログロブリンのβ鎖で構成される。ヒトでは、HLA-A、B、C抗原が存在する。T細胞、B細胞の他、ほとんど全ての細胞表面や、血小板表面に、発現している。細胞に感染したウイルスは、細胞質内でウイルス蛋白質を合成する。ウイルス蛋白質は、プロテアソームで、抗原ペプチド(アミノ酸の数が7〜9ケ)に分解され、粗面小胞体(ER)に運ばれて、合成途上のMHCクラスI分子と結合して、細胞表面に発現される。このようにして、MHCクラスI分子は、細胞内で合成された抗原ペプチドを、CD8陽性キラーT細胞に提示する。
 ・MHCクラスII分子:α鎖(α1、α2)と、β鎖(β1、β2)で構成される。ヒトでは、HLA-D、DR、DP、DQ抗原が存在する。クラスII抗原分子は、限られた細胞表面に発現する:樹状細胞(皮膚ランゲルハンス細胞など)、単球・マクロファージ、B細胞、活性化T細胞(静止期のT細胞は、発現していない)、胸腺上皮細胞、精子など。クラスII抗原の先端部分には、抗原ペプチドと結合するための、(antigen binding groove:抗原結合窩、binding cleft)が存在する。 細菌は、エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれて、リソソーム抗原ペプチドに分解され、MHCクラスII分子の溝に結合して、細胞表面に発現される。このようにして、MHCクラスII分子は、外来性蛋白の抗原ペプチド(精製ツベルクリンなど)を、polyproline type IIという引き延ばされた形で、MHCクラスII分子の溝に結合させ、CD4陽性ヘルパーT細胞に提示する。MHCクラスII分子を構成するアミノ酸残基が、MHC(HLA)の型によって、遺伝的に異なるため、MHC(HLA)の型によって、MHCクラスII分子の溝は、異なる。そのため、同じ抗原ペプチドであっても、MHCクラスII分子の溝への結合し易さは、MHC(HLA)の型によって、異なる。そのため、MHC(HLA)の型によって、抗原ペプチドに対する免疫応答の強度が、異なる。

 注2CDとは、cluster of differentiationの略。T細胞などの免疫機構を形成する細胞の表面に存在する、機能的に重要な分子を分類するのに用いられる。CD抗原分子は、モノクローナル抗体で検査される。

 注3TCRとは、T cell receptorの略で、T細胞受容体のこと。大多数のT細胞のTCRは、α鎖(Vα、Jα)とβ鎖(Jβ、Dβ、)で構成される(TCR2)。
 α鎖もβ鎖も、抗原と結合する免疫グロブリンと同様に、可変領域(V領域)とコンスタント領域(C領域)から構成されている。TCRをコードする遺伝子は、免疫グロブリンの遺伝子と同様に、再構成(gene rearrangement)され、多様な抗原に特異的に反応する。 
 胸腺では、自己反応性T細胞を、除去する:胸腺にやって来た、未分化なT細胞は、選択を受け、胸腺の抗原提示細胞(HLA+自己抗原)と、適切な親和性を有する細胞(クローン)は、分化・成熟する。胸腺の抗原提示細胞(HLA+自己抗原)と強く反応する細胞(親和性が高いクローン:自己反応性が強いクローン)や、反応が弱い細胞(親和性が低いクローン)は、死滅させられる。未分化なT細胞の内、未分化なT細胞の98%以上は、死滅(アポトーシス)させられる。
 胸腺で、α鎖とβ鎖を構成したT細胞は、末梢血、リンパ節、脾臓などに分布する。
 γ鎖とδ鎖で構成されるTCR(TCR1)を有するT細胞も、存在する。このTγδ細胞(γδT細胞)は、末梢血やリンパ節では、リンパ球の1〜5%しか存在しないが、皮膚や小腸の上皮や粘膜では、T細胞の50%以上を占める。Tγδ細胞もCD16を発現するものも多く、MHC拘束性も見られず、NK細胞様、ADCC様の細胞機能を持ち得る。Tγδ細胞は、Th1細胞への分化を抑制すると考えられている。

 注4:表面にIgM、IgD、CD40陽性のB細胞は、CD4、CD154陽性のTh1細胞と反応する(抗原を、B細胞から、ヘルパーT細胞のTCR/CD3複合体に、提示される)。
 ヘルパーT細胞から、IL-4が産生されると、B細胞は、IgG1やIgEを産生するようになる。ヘルパーT細胞から、IFN-γが産生されると、IgG2aやIgG3が産生されるようになる。ヘルパーT細胞から、TGF-βが産生されると、IgG2aやIgAが産生されるようになる。

 注5:リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞など)、単球は、末梢血の塗沫標本では、丸い形をしているが、実際には、リンパ球や単球には、頭部と下部(尾部)が存在し、プレート内で培養すると、図のように、突起を出したりして、極在した姿を示す。

 注6炎症性サイトカインとしては、TNF-α、IL-1β、IL-6、IFNγ、IL-8が存在する。炎症性サイトカインは、活性化マクロファージや活性化血管内皮細胞から、産生される。
 抗炎症性サイトカイン抑制性サイトカイン)としては、IL-4、IL-10、TGF-βが存在し、活性化マクロファージなどから、産生される。なお、活性化マクロファージは、抗炎症作用のあるプロスタグランジンのPGE2をも、産生する。
 T細胞サイトカインとしては、Th1細胞(TH1)から、感染症の際に、IL-2、IFNγが、産生され、Th2細胞(TH2)から、アレルギーの際に、IL-4、IL-5が、産生される。  

 参考文献
 ・谷口克、他:標準免疫学(第2版、医学書院、2004年).
 ・森本幾夫:Tリンパ球の免疫における役割 日本医師会雑誌 第123巻・第11号、1733-1739, 2000年.
 ・岸本忠三、他:岩波講座 免疫科学3 免疫担当細胞(岩波書店、1986年).
 ・金田一孝、垣生園子、他:新免疫学叢書10 キラー細胞(医学書院、1983年).
 ・山村雄一、他:免疫学4 細胞性免疫 アレルギー(中山書店、1982年).

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