インフルエンザ脳症
このページは、移転しました。
自動的にジャンプしない場合、ここをクリックして下さい。
インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルス感染に伴う発熱後、急速に意識障害などの神経症状が進行します。インフルエンザ脳症の致命率は、約30%と言われ、生存しても、25%の症例に、後遺症を残すと言われています。
インフルエンザ脳症は、インフルエンザを発症してから、神経症状が発現するまでの期間は、約1.4日と短いので、対応も、困難な場合が多いです。
インフルエンザ脳症では、血中、及び、髄液中にサイトカインが増加して、血管透過性亢進し、血管内皮細胞障害が認められ、全身の諸臓器で、アポトーシス(apoptosis)が起るとされています。
アポトーシスは、ミトコンドリアのPTPと呼ばれる穴が開口して、惹起されると言われていますが、PTPの開口は、カルシウムイオン(Ca2+)に依存します。非ステロイド性消炎剤(NSAIDs)の一種で、アスピリンの代謝産物である、サリチル酸は、PTPを開口させて、ライ症候群を来たす毒性(ミトコンドリア障害作用)がありますが、カルシウムイオン濃度(Cao)が高いと、サリチル酸の毒性が、増強します。カルシウム拮抗作用のある薬剤(chlorpromazine、nifedipineなど)は、サリチル酸の毒性を、軽減させます(Trost等)。
インフルエンザに伴い、体内では、PGE2が、生成されます。PGE2は、炎症を促進する作用と、炎症を抑制する作用があります。例えば、PGE2は、発熱させたり、血管透過性を亢進させるので、血管内皮細胞障害を、促進させると、考えられます。しかし、他方で、PGE2は、TNF-αの産生を抑制して、好中球のエラスターゼ産生を抑制し、血管内皮細胞障害を抑制すると、考えられます。
本来、非ステロイド性消炎剤(NSAIDs)は、COX-2と言う酵素の活性を阻害して、PGE2の産生を抑制するので、解熱作用があります。しかし、NSAIDsのジクロフェナクナトリウムなどを、解熱剤として使用すると、TNF-αの産生を増加させ、血管内皮細胞障害を増悪させ、インフルエンザ脳症を発症した場合、死亡率を高めてしまうと、思われます。
1.インフルエンザ脳症の発症機序
インフルエンザ脳症の発症機序は、今だ解明されていません。
インフルエンザ脳症が、熱中症と類似していると考える人もいます。
元々、食事や体質の為、血管内皮細胞の機能に失調があり、インフルエンザの発熱を契機に、血管内で、血小板凝集が始まり、血管内皮細胞障害が生じるのかも知れません。
インフルエンザに伴う炎症に際して、体内では、COX-2と言う酵素により、プロスタグランジン(PGE2など)と言う物質が、生成されます。
炎症に際して産生されるPGE2は、炎症を促進する作用と、炎症を抑制する作用があります。
例えば、PGE2は、発熱させたり、疼痛を増強させたり、血管透過性を亢進させて腫脹を来たすので、血管内皮細胞障害を、促進させると、考えられます。しかし、他方で、PGE2は、炎症性サイトカインのTNF-αの産生を抑制するので、好中球のエラスターゼ産生を抑制し、血管内皮細胞障害を抑制すると、考えられます。
本来、非ステロイド性消炎剤(NSAIDs)は、COX-2と言う酵素の活性を阻害して、PGE2の産生を抑制するので、解熱させたり、疼痛を抑制させたり、腫脹を抑える作用(解熱鎮痛消炎作用)があり、血管透過性を抑制して、血管内皮細胞障害をは、抑制するように、思われます。
しかし、実際には、COX-2によって産生されるPGE2は、TNF-αの産生を抑制するので、好中球のエラスターゼ産生を抑制し、血管内皮細胞障害を抑制するようです。
その為、NSAIDsのジクロフェナクナトリウムなどを、解熱剤として使用すると、血管内皮細胞障害を抑制(修復)する酵素(COX-2)の働きを抑制するため、インフルエンザ脳症を発症した場合、死亡率を高めてしまうようです。
a.ウイルスが直接に脳を侵すのではない
インフルエンザウイルスが、インフルエンザに罹った子供さんの髄液から分離されたという報告もあります(日本小児科学会雑誌、1997:101:1063−1066)。
また。インフルエンザ脳症で亡くなられた子供さんの、血管内皮細胞、腎蔵(糸球体内皮細胞)、肝臓(グリソン鞘毛細血管内皮細胞)に、ウイルス様の粒子が見出されたという報告もあります。
神経細胞は、細胞質が膨化し、核は融解します。
しかし、多くのインフルエンザ脳症の症例では、インフルエンザウイルスのウイルス抗原は、脳組織から検出されておらず、ウイルスが直接に脳を侵すのが、この病気の原因ではないようです。
b.サイトカインにより全身の血管内皮細胞が障害される
最近は、インフルエンザ脳症の症例で増加している、TNF-α、IL-6などのサイトカインが、発症に関与しているとも推測されています。
インフルエンザ脳症で亡くなられた二人の子供さんの病理所見では、脊髄や延髄に、血管壁の硝子変性、血管内繊維素性血栓、血漿蛋白の血管外への漏出、血管原性浮腫、が見られています。そして、全身の血管内皮細胞が障害されることが、インフルエンザ脳症の発症機転と推定されています(小児科学会雑誌、2002:106:76−80)。
また、インフルエンザ脳症の症状が急激に進行して亡くなられた子供さんでは、脳脊髄液中のTNF-αやIL-6の濃度が、極めて高値だったと、報告されています(日本小児科学会雑誌、1999:103:16−19)。
インフルエンザウイルス(ウイルス血症)に対する炎症反応で、生体がTNF-αなどのサイトカインを産生し、血管内皮細胞が活性化されたり、障害され、血管内に微小血栓が形成されるものと、推測されます。
なお、インフルエンザ脳症では、血小板数の低下や、肝臓や腎臓の機能不全が認められ、播種性血管内凝固症候群(DIC)と同様の病態にあると思われます。
その他、インフルエンザウイルスが、血管内皮細胞にアポトーシスを誘導する物質を産生するおそれもあります。
2.インフルエンザには、解熱剤として、非ステロイド性消炎剤(NSAIDs)を使用しない
厚生省は、インフルエンザによる発熱では、解熱剤として、非ステロイド性消炎剤(NSAIDs)のジクロフェナクナトリウム(医薬品名:ボルタレン)を使用しないように通達しています。
これは、インフルエンザ脳炎・脳症を発症した患者において、ジクロフェナクナトリウムを使用した群は、解熱剤を使用しなかった群と比較して、有意に死亡率が高いという臨床疫学的研究が根拠になっています。
3.非ステロイド性消炎剤(NSAIDs)の危険性に関する推測: NSAIDsは、TNF-α産生を増加させ、血管内皮細胞障害を増悪させる
何故、インフルエンザ脳症の患者さんに、解熱剤としてNSAIDsを使用することが危険なのかは、明らかにされていません。
私のような立場の者には、実証できない問題ですが、以下に推測を述べさせてもらいます。
インフルエンザ感染により、炎症反応として、マクロファージなどからTNF-αが産生されます。
TNF-αにより好中球から産生されるエラスターゼには、血管内皮細胞を障害する作用があります。
他方で、TNF-αは、COX-2を活性化させて、プロスタグランジンE2(PGE2)を産生させます。
PGE2は、生体を発熱させますが、TNF-αの産生を抑制します。
ジクロフェナクナトリウムのようにCOX-2選択性の高いNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、COX-2の活性を阻害し、PGE2の産生を抑制します。
NSAIDsを使用すると、解熱はしますが、PGE2によるTNF-α産生の抑制が低下し、TNF-α産生が増加すると、考えられます。
TNF-α産生の増加により、好中球の活性化が増強され、エラスターゼの作用が強く現われ、よりひどく血管内皮細胞が障害されるおそれが考えられると思います。
なお、PGE2に、血管透過性亢進作用があります。
それから、COX-1により産生されているプロスタグランジンI2(PGI2)は、TNF-α産生を抑制します。
COX-1の活性も阻害するNSAIDsは、PGI2の産生を抑制して、TNF-αの産生を増加させてしまうと、推測されます。(TNF-α産生の抑制が、COX-1により産生されているPGI2やPGE2によることが主だとすると、ジクロフェナクナトリウム以外のNSAIDsも危険だということになります。)
また、PGI2やPGE2が、直接、好中球機能を抑制して、エラスターゼ産生も抑制することも考えられます。
このように、NSAIDsは、プロスタグランジンによるTNF-α産生の抑制を解除して、TNF-α産生を増加させ、好中球活性化を促進させてしまい、血管内皮細胞障害を強く発現させて、インフルエンザ脳症の病状を重症化させてしまうのかも知れません。
また、PG(PGE1)には、細胞膜安定化作用があり、NSAIDsがPG産生を抑制することは、炎症(アポトーシス)で障害された血管内皮細胞の修復を阻害しているおそれがあります。
なお、TNF-α産生は、血管内皮細胞が活性化・障害された結果起こる二次的な反応です。一次的に血管内皮細胞が活性化・障害される機序(ウイルス血症、neuraminidaseなど)が、インフルエンザウイルス感染に存在しているものと思われます。
また、平成11年度厚生科学研究「インフルエンザ脳症・脳炎の臨床疫学的研究斑」の報告では、解熱剤を使用していない症例でも25.4%が死亡しています。NSAIDsのような解熱剤は、インフルエンザ脳症の原因ではあり得ません。
4.その他
・インフルエンザ脳症患児の血清中には、ミトコンドリア内膜の膜間スペース側に存在するシトクロムc(cytochrome c)が増加している。シトクロムcは、ミトコンドリア内に存在し、アポトーシス(apoptosis:注1)の際に細胞質内に放出されることから、インフルエンザ脳症では、サイトカインにより、アポトーシスが誘導されていると推測されています。
プロスタグランジンは、アポトーシスを抑制し、細胞を保護すると考えられます。
インフルエンザ脳症の患児に、肝生検を行って調べた結果では、肝細胞のミトコンドリアが広汎に変化していました。
ミトコンドリアから放出されるHtrA2は、カスパーゼを活性化させてアポトーシスを起こす他に、セリンプロテアーゼ(注2)作用で細胞死を引き起こします。
・シクロスポリンA療法
ミトコンドリアには、PTP(permeability transition pore)と呼ばれる穴構造が、内膜と外膜との接触部位(the contact sites)に、存在します。
PTPが開くと、PTPの穴を、プロトン(水素イオン)が通過(流入)して、膜電位(the mitochondrial transmembrane potential:
)が、低下してしまいます。また、ミトコンドリアが、膨化します。
NSAIDsの脱共役作用(uncoupling effect)の、少なくとも一部は、PTPの誘導(induction:PTPの開口)の為と、考えられます。サリチル酸(salicylic acid)や、アスピリンは、ミトコンドリアを膨化させるなどの副作用を示します。Mg2+や、シクロスポリンA(Cyclosporin A:CysA)は、PTPの阻害剤(inhibitor)であり、PTPを経るプロトン(水素イオン)の通過(流入)を抑制して、ミトコンドリアの機能障害を、防御します。
サリチル酸(salicylates)が、PTPを開口させ、ミトコンドリアの膜電位を喪失させるのには、カルシウムイオン(Ca2+ )が、必要のようです(注3)が、他方で、サリチル酸は、蓄積されたCa2+を、放出させます。これらのサリチル酸の効果は、シクロスポリンAで、阻害されます。PTP(の穴)を誘導(開口)する作用は、サリチル酸の方が、アスピリン(acetylsalicylic
acid)より、強いと言われます。
近年、シクロスポリンAは、そのPTP阻害により、ミトコンドリア膜電位の低下を防止することによって、アポトーシスや壊死を阻害することを期待して、インフルエンザ脳症の治療に、試されているといるそうです。シクロスポリンAは、1〜2
mg/kg/日を、24時間連続して、点滴静注するか、数時間での投与を、1日2回7日間行います。
なお、サリチル酸や、インドメサタシン(indomethacin)は、ミトコンドリアの電子伝達系を、阻害します。
・急性脳炎・脳症と鑑別を要する、熱性痙攣の患児では、髄液中のTNF-α、IL-1β、IL-6は、上昇しなかったそうです。
他方、急性脳炎・脳症の患児では、髄液中のTNF-α、IL-1β、IL-6のいずれかが上昇していたそうです。
・細胞膜表面のTNF receptorの細胞外部分が切断されてできる、可溶性のsTNFR1(soluble
TNF receptor)は、予後不良な急性脳炎・脳症の患児例で、髄液中の値が上昇していたそうです。
・インフルエンザ脳炎・脳症の患児では、髄液中のTNF-α、sTNFR1上昇例は、予後が不良だったそうです(インフルエンザ脳炎・脳症でも、TNF-αや、TNFR1や、IL-6が、血清中や髄液中で、上昇していない症例もあったそうです)。
・髄液中のTNF-αの半減期は、30分です。
・IL-6は、リンパ球、単球、マクロファージ、脳内の星細胞、ミクログリア、などで産生されます。
・インフルエンザ脳症の患児では、末梢白血球中のIL-6、IL-10のmRNAの発現が増加が認められます。
血漿中のIL-6は、高値の傾向にあります。
咽頭のウイルス量と、サイトカインmRNA発現量、血漿中のサイトカイン値には、相関関係は認められないそうです。
・NSAIDsの中でも、古くから解熱や鎮痛を目的に使用されたアスピリンは、ライ症候群の発症に関連するとされます。
・HSES(hemorrhagic shock and encephalopathy syndrome)では、発熱、ショック、脳症(意識障害、痙攣)、出血傾向、水様性下痢などの症状が現われます。
hemorrhagicと言うのは、「出血性」と言う意味で、HSESでは、播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併します。
HSESでは、腎機能障害、肝機能障害も合併します。
アルファ1-アンチトリプシン(α1-AT)欠損が病因と提唱されましたが、確定されていません。
補体・キニン・血液凝固系の活性化、蛋白分解酵素の活性亢進が、示唆されています。
・急性壊死性脳症では、頭部CT、MRIで、両側視床を含む、左右対称性の多発性病変が認められます。
ライ症候群では、脳全体の浮腫が認められるのと、相違しています。
発熱に伴って放出されたサイトカインなどにより、脳の血管内皮細胞が障害され、脳血管関門が破壊され、脳実質の浮腫や出血が生じると、推測されています(ライ症候群では、脳実質の神経細胞のミトコンドリアが障害され、脳浮腫が生じます)。
肝機能障害(血中アンモニアは上昇しません)、腎機能障害、血液凝固異常(血小板減少など)が認められます。
急性壊死性脳症は、1歳前後の乳幼児に多い疾患で、日本、台湾など、東南アジアに多く発症しています。
先行感染は、インフルエンザが多いが、突発性発疹の際にも見られます。
・レジオネラ肺炎マウスの実験では、高酸素状態は、肺組織のアポトーシスを亢進させます。酸素マスク、人工呼吸管理などは、インフルエンザ脳症の予後を悪くする側面もあるかも知れません。
5.解熱剤に関して
インフルエンザに罹患した後、インフルエンザ脳症、ライ症候群などの、脳症を来たすおそれがあります。
ライ症候群は、アスピリンの代謝産物である、サリチル酸が、ミトコンドリアを障害するのが、原因と推測されます。
わが国では、ライ症候群を予防する為に、アスピリン、アスピリン・アスコルビン酸、アスピリン・ダイアルミネート、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、エテンザミド、ジクロフェナクナトリウムを、15歳未満の小児のインフルエンザや水痘に伴う発熱に対して、解熱などの目的で、原則として、投与しないことになっています。
インフルエンザ脳症を予防する為に、メフェナム酸を使った解熱剤を、インフルエンザに伴う発熱に対して、原則として、投与しないことになっています。なお、ジクロフェナクナトリウムは、インフルエンザ脳症の死亡率を、上昇させます(悪化させます)。
日本小児科学会は、平成12年11月に、インフルエンザに伴う発熱に対して(解熱剤を)使用するのであれば、アセトアミノフェンが適切であり、非ステロイド系消炎剤(NSAIDs)の使用は慎重にすべき旨の見解を、公表しています。
小児が発熱した際に、原因が、インフルエンザや水痘であるか、家族が、見分けることは、困難だと思われます。従って、15歳未満の小児が発熱した際には、アスピリンなどを含まない解熱剤を使用する方が、安全です。
市販薬の小児用バッファリンは、成分はアスピリンでなく、アセトアミノフェンが配合されています。しかし、市販薬でも、成人用に販売されている、バッファリンA、エキセドリンA、ケロリンなどには、アスピリン(アセチルサリチル酸)が、含まれていますので、15歳未満の小児に、服用させないことが、大切です。
6.異常行動(熱性譫妄)
小児は、高熱を出した際に、熱性譫妄(せんもう)と言って、幻視、幻覚を見て、異常行動をする子供さんがいます。例えば、壁に、実際は存在しない、アニメのキャラクターが見えると言って、笑ったり、意味不明の言葉を喋ったり、理由もなく怯えたりすることがあります。
このような異常行動は、痙攣、意識障害と同様に、インフルエンザ脳症の初期症状のこともありますので、注意が、必要です。
注1:アポトーシス(apoptosis)を起こす経路には、ミトコンドリアを介する経路(シトクロムcが放出される)と、ミトコンドリアを介さず、細胞表面の受容体(死の受容体:death receptors)を介する経路(Fas抗原を介する経路など)とが、存在する。
いずれの経路も、プロカスパーゼをカスパーゼ(蛋白分解酵素群)に活性化させ、アポトーシスが誘導される。
ミトコンドリアを介する経路では、PTPの開口などにより、ミトコンドリア内膜の透過性が亢進し、膜間スペースに存在する、シトクロムcが放出される。放出されたシトクロムcは、細胞質ゾルに遊離し、Apaf-1と結合し、この複合体が、カスパーゼ9を活性化させ、アポトーシスが引き起こされる。アポトーシスを抑制するBcl-2、Bcl-xLなどの蛋白は、PTP(の開口)を抑制する。アポトーシスを促進するBaxやBakは、PTP(の開口)を促進し、シトクロムcの放出を促進する。
ミトコンドリアを介する経路は、活性酸素(ROS)、DNA損傷(DNA damage)などの、死のシグナル(death signals)により、活性化され(triggered)、細胞質ゾルに存在する、アポトーシス誘導蛋白(proapoptotic protein)のBaxが、ミトコンドリア外膜(PTPが存在する、ミトコンドリア外膜と、ミトコンドリア内膜の接合部位:contact
sites)に、結合し、PTPが開口する。なお、抗癌剤のadriamycin(doxorubicin)は、活性酸素(ROS)を発生させ、Baxを誘導する。アポトーシスの際には(、アポトーシスの結果、ミトコンドリアのCa2+輸送系が障害され)、細胞質ゾルのCa2+濃度が、上昇する。
ミトコンドリアは、ATPを合成して細胞の生を維持するだけでなく、アポトーシスに中心的な役割を果たして、細胞の死をも制御している。
アポトーシスによって、核が凝縮して死んだ細胞は、細胞の中身を外に出ず、マクロファージによって除去されると言う。
アポトーシスは、生体全体に取って、不要になった細胞や、危険な細胞を、死滅させて排除(elimination)する。
アポトーシスは、変異(transformations)した細胞を死滅させ、癌細胞として、増殖するのを抑制する。
インフルエンザウイルスにより、細胞は、アポトーシスによって、細胞死すると言う。
プロスタグランジンは、アポトーシスを抑制する:解熱目的で、NSAIDsを使用して、PGE2産生を抑制すると、アポトーシスが進み易くなると考えられる。
注2:セリンプロテアーゼは、タンパク分解酵素で、原核生物、真核生物の消化酵素だけなく、発生、血液凝固、炎症などに関わる酵素を含んでいる。
セリンプロテアーゼには、キモトリプシン、トリプシン、トロンビン、エラスターゼなどがある。キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼは、アミノ酸配列が類似していて、これらの酵素は、先祖の遺伝子が重複を起こし、出来た酵素が、分散新化したと、考えられている。
注3:細胞外のカルシウムイオン濃度(Ca2+濃度)が高いと、サリチル酸の、毒性(ミトコンドリア障害作用)が、増強する。
アポトーシスを惹起するPTPの開口(induction)は、Ca2+に依存する。その理由は、Bernardiの実験結果から、PTPの開口は、膜電位(the proton electrochemical gradient:刄ハH+)により制御されていて、Ca2+(Camの増加)が、ミトコンドリア内で、膜電位(刄ハH+)を変化させて、PTPの開口(induction)を引き起こすためと、考えられる。
Trost等の実験結果では、細胞外Ca2+濃度(Cao)が高いと、サリチル酸の毒性(ミトコンドリア障害作用)が、増強した。細胞外(extracellular)のカルシウムイオン濃度(Ca2+濃度)が高いと、サリチル酸の、毒性(ミトコンドリア障害作用)が、増強した。カルシウム拮抗作用のある薬剤(verapamil、diltiazem、chlorpromazine、nifedipine、nisoldipine)は、サリチル酸の毒性(ミトコンドリア障害作用)を、阻害ないし軽減させた。
ニフェジピン(nifedipine)などのカルシウム拮抗剤(降圧剤)や、クロルプロマジン(chlorpromazine)のような精神安定剤は、サリチル酸の毒性(PTP開口作用)を弱め、ミトコンドリア障害を軽減するので、ライ症候群やインフルエンザ脳症の治療(アポトーシス抑制)に、有用かも知れない。
なお、ニフェジピンには、活性酸素の産生を抑制する作用もあると言われる。
参考文献
・Bernardi P (1992) Modulation of the mitochondrial cyclosporin A-sensitive permeability transition pore by the proton electrochemical gradient. Evidence that the pore can be opened by membrane depolarization. J Biol Chem 267: 8834-8839.
・Trost LC, Lemasters JJ.: Role of the mitochondrial permeability transition in salicylate toxicity to cultured rat hepatocytes: implications for the pathogenesis of Reye's syndrome. Toxicol Appl Pharmacol. 1997 Dec;147(2):431-41.
|トップページ|脂質と血栓の関係|ミニ医学知識|医学の話題|小児科疾患|生命の不思議|リンク集|