インフルエンザ

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 インフルエンザウイルスは、ノイラミニダーゼ(NA)と赤血球凝集素(HA)を有している。
 インフルエンザウイルスは、飛沫感染して、鼻や喉から、体内に侵入する。体内では、8時間後に、約100ケに増殖する(1日で、100万個に増殖する)。そして、1〜3日間の潜伏期間の後、発熱、独特の咳などの症状で、発症する。
 65歳以上の老人は、インフルエンザの症状を軽くする為には、潜伏期間に(患者に接触した2日以内に)、抗インフルエンザウイルス剤(オセルタミビルのカプセル製剤)を服用するのも、賢明と思われる。
 アスピリンなどのNSAIDsは、ミトコンドリアの機能を低下させるおそれがある。

 黄色ブドウ球菌の産生する蛋白分解酵素は、インフルエンザウイルスの感染性を、高める。抗生物質(抗生剤)は、インフルエンザウイルスに対して、直接効果はないが、黄色ブドウ球菌などの細菌の増殖を抑制して、細菌の産生する蛋白分解酵素による、インフルエンザウイルスの感染力の亢進を、抑制する効果は、期待出来る。また、二次性の細菌性の呼吸器感染症(気管支炎、肺炎)の発症を、予防する効果が、期待出来る。

 わが国では、ライ症候群を予防する為に、アスピリン、アスピリン・アスコルビン酸、アスピリン・ダイアルミネート、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、エテンザミド、ジクロフェナクナトリウムを、15歳未満の小児のインフルエンザや水痘に伴う発熱に対して、解熱などの目的で、原則として、投与しないことになっている。
 インフルエンザ脳症を予防する為に、メフェナム酸を使った解熱剤を、インフルエンザに伴う発熱に対して、原則として、投与しないことになっている。なお、ジクロフェナクナトリウムは、インフルエンザ脳症の死亡率を、上昇させる(悪化させる)。

 1.インフルエンザの症状の特徴
 インフルエンザウイルスは、罹患した人が、咳やくしゃみをすると、飛沫して、空気中に浮遊する。その浮遊しているウイルスを、鼻や口から吸い込んで、飛沫感染する。吸い込まれたウイルスは、約20分程度の時間で、細胞内に取り込まれ、8時間後には、約100倍に増殖する。
 インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染した後、1〜3日間の潜伏期間を経て、突然、38〜40度の高熱が出て、発病する。
 発熱は、初感染では、1週間以上続くこともあり、3日間発熱した後、一旦、1日程度、解熱して、再び、もう3日間程度、発熱が続くことが多い(ニ峰性発熱)。成人など、再感染では、肺炎などの合併症がなければ、2〜3日程度の発熱のことが多い。なお、6カ月未満の乳児は、移行抗体(母親由来のインフルエンザIgG抗体)があれば、微熱程度のことが多い。
 インフルエンザの場合、病初期には、普通の風邪(普通感冒)に比して、鼻水が少ない傾向があるのが、特徴。
 また、インフルエンザの場合、咳(咳嗽)は、独特の、喉にこびりつくような音の咳であることも、特徴。
 喉の痛みはあるが、頚部のリンパ節の腫脹は見られず、咽頭発赤は、あっても、軽微なことが多い。咽喉後壁の顆粒は、アデノウイルス感染症の時のように、腫脹が認められることもある。
 嘔吐、軽度の下痢(血便ではない)など、胃腸炎症状で、始まることもある。
 悪寒、頭痛、背中や四肢の筋肉痛、全身の関節痛、全身倦怠感などの、全身症状も、見られる。

 インフルエンザに罹患すると、下気道の粘膜線毛細胞が脱落(剥離)したり、免疫力が低下して、二次性に、細菌性の気管支炎や肺炎を、合併し易くなる。また、乳幼児では、中耳炎や、熱性痙攣(ひきつけ)を、起こしたりする。その他、稀ではあるが、ウイルス性肺炎(ウイルスそのものによる肺炎)、心筋炎、ライ症候群インフルエンザ脳症などを、併発することもある。

 2.ウイルス表面のスパイク
 1).赤血球凝集素(hemagglutinin:HA
 インフルエンザウイルスは、赤血球凝集素(HA:ヘムアグルチニン)を介して、宿主の細胞表面に存在する、シアル酸注1)を含むウイルス受容体(レセプター)と結合する。
 赤血球表面には、シアル酸を含む糖鎖シアロ糖鎖注2)が、存在する。シアロ糖鎖は、赤血球表面のインフルエンザウイルス受容体として、インフルエンザウイルスのHA蛋白の頭部領域のアミノ酸と結合する。
 4度では、インフルエンザウイルスのHAと、赤血球表面のウイルス受容体(シアロ糖鎖)が結合して、赤血球が凝集する。しかし、37度に加温すると、赤血球のウイルス受容体が、ノイラミニダーゼ(NA)で破壊され、インフルエンザウイルスが存在しても、凝集しなくなる。

 2).ノイラミニダーゼ(neuraminidaseNA
 シアル酸注1を加水分解する酵素(シアリダーゼ)。
 インフルエンザウイルスのNAは、細胞内で増殖したインフルエンザウイルスが、細胞膜の外に遊離する際に、インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(HA)と、宿主の細胞表面に存在するンフルエンザウイルス受容体(シアル酸を含むシアロ糖鎖)との結合を外すことによって、ウイルスの凝集を防ぎ、ウイルスの出芽・遊離を促進する。

 HAは、15型、NAは、9型が存在する。
 HAとNAの型から、インフルエンザウイルスは、分類される。例えば、香港型は、H3N2、ソ連型は、H1N1。

 3.抗インフルエンザウイルス剤
 リン酸オセルタミビル(医薬品名:タミフル、Tamiflu)は、インフルエンザウイルス(A型とB型)のノイラミニダーゼ(NA)を阻害し、ウイルスの細胞外への遊離を抑制する。
 このような抗インフルエンザウイルス剤は、ウイルスを殺す作用はないので、インフルエンザの臨床症状が改善(解熱)した後も、インフルエンザウイルスは、しばらく、排泄が続き、感染源となる。
 1ケのインフルエンザウイルスは、細胞に感染して増殖し、8時間後に、約100ケに増殖すると言われる(注3)。インフルエンザの潜伏期間は、1〜3日程度なので、周囲の人が、インフルエンザだと判明したら、早期に、オセルタミビルのような抗インフルエンザウイルス剤を服用すれば、発症を予防したり、症状を軽く済ませる。
 1歳未満の小児への、オセルタミビル(タミフル)使用は、十分な説明があれば、可能(注4)。しかし、塩酸アマンタジン(Symmetrel)は、決して使用しないようにとの勧告がある(注5)。

 4.黄色ブドウ球菌は、インフルエンザウイルスの感染力を高める
 インフルエンザウイルス感染細胞では、インフルエンザウイルスのHA蛋白は、膜癒合活性のない前駆体として合成される。この前駆体のHA蛋白を取り込んだインフルエンザウイルス粒子には、感染性はない。
 黄色ブドウ球菌は、蛋白分解酵素(アルギニン特異的セリンプロテアーゼ注6)により、HA蛋白を、HA1とHA2とに解裂し、活性化する(解裂活性化)。HA1とHA2とに解裂活性化されたHA蛋白は、膜癒合活性があり、インフルエンザウイルスと細胞とを、強く付着させ、インフルエンザウイルスが増殖する。このように、鼻腔などの気道に存在する黄色ブドウ球菌は、蛋白分解酵素(プロテアーゼ)を産生し、インフルエンザウイルスの感染力を高め、病原性を高める。蛋白分解酵素(プロテアーゼ)が存在しないと、感染した仔ウイルスは、活性化されないので、一段増殖のみで終了して、病原性を示さない。
 そして、インフルエンザウイルスが、黄色ブドウ球菌の蛋白分解酵素により活性化され、上気道や下気道で増殖すると、気道粘膜線毛細胞が脱落(剥離)する(マクロファージが遊走して来る)。下気道の粘膜線毛細胞が脱落(剥離)した部位は、バリア機能が低下しているので、黄色ブドウ球菌などの細菌が定着し、増殖し易いので、二次性に、細菌性の気管支炎や肺炎が、発症し易くなる(好中球が遊走して来る)。
 従って、抗生物質(抗生剤)は、インフルエンザウイルスに対して、直接効果はないが、黄色ブドウ球菌などの細菌の増殖を抑制して、細菌の産生する蛋白分解酵素による、インフルエンザウイルスの感染力の亢進を、抑制する効果は、期待出来る。また、二次性の細菌性の呼吸器感染症(気管支炎、肺炎)の発症を、予防する効果が、期待出来る。
 近年は、耐性菌など、抗生物質の弊害の方が、注目されているが、衛生状況が悪い時代や社会では、潜在的に、細菌性の気管支炎に罹患していた人が、インフルエンザに罹患して、細菌性の肺炎を発症して、死亡することも、多かった。

 5.インフルエンザの予防接種
 気道粘膜の液性免疫として、上気道では、主にIgA抗体ば分泌され、IgG抗体は、少量分泌されるに過ぎない。
 しかし、気道の末梢の肺胞近くでは、炎症時に、血中からIgG抗体が、移行すると考えられる。

 インフルエンザワクチンを予防接種しても、血中には、IgG抗体が産生されるが、気道粘膜に分泌されるIgAは、産生されない。
 血中のIgG抗体は、インフルエンザウイルスの上気道の感染は、防御出来ないが、肺での感染や増殖を、防御すると、考えられる。

 6.インフルエンザの出席停止
 インフルエンザは、学校保健法第二種の感染症で、解熱した後2日を経過するまで、幼稚園・保育園や学校では、幼児・児童・生徒・学生は、出席が停止になる。
 一般に、無治療の場合、インフルエンザウイルスの存在量は、極、病初期は、少ない。その為、インフルエンザであっても、インフルエンザ抗原迅速検査が、陽性に出ないこともある。しかし、病初期に隔離することは、集団感染の予防に、重要とされる。

 抗インフルエンザウイルス剤(タミフル)は、ウイルスの細胞外への遊離を抑制する作用があるが、ウイルスを殺す作用はないので、臨床症状が改善(解熱)しても、しばらくは高いレベルでウイルス排泄が続くという。
 その為、幼児(1才〜6才)は、解熱後4日間、年長児は、解熱後2日間は、休養や隔離が必要とされる。

 廣津医院(神奈川県)の廣津伸夫院長が行った調査結果では、抗インフルエンザウイルス剤投与した場合、解熱した3日後でも、その12〜15%の症例に、ウイルスが残存していることが判明したという。従って、学校保健法で定められた出席停止期間は、解熱後2日間だが、病欠期間が4日間未満の症例から、インフルエンザウイルスが、他の人に、感染するおそれがあることが示唆された。

 7.インフルエンザとライ症候群
 ライ症候群は、インフルエンザ様疾患や水痘に罹った小児が、アスピリンを含有している薬物を摂取すると、発症する危険性が高くなる。
 アスピリン投与と、ライ症候群の発症とには、密接な関連があることが、多くの疫学的研究が、示唆しているが、サリチル酸が、ライ症候群発症の、重要な因子であると、考えられている。
 アスピリンが、体内で代謝されて生成されるサリチル酸が、ミトコンドリアの機能を抑制し、ライ症候群を発症させるものと考えられる。
 サリチル酸は、ミトコンドリアで、PTP(permeability transition pore)という穴構造を開いて、膜電位を低下させてしまい、その結果、ミトコンドリアでのTCA回路での代謝などが、障害されて、ミトコンドリア内のNADH2+が、減少すると考えられる。

 PTPが開くと、PTPの穴を、プロトン(水素イオン)が通過して、ミトコンドリア膜の膜電位(the mitochondrial transmembrane potential:Delta Psi )が、低下し、酸化還元電位が変化して、アポトーシスが誘導される(pro-apoptogenic)と、考えられる。
 アポトーシスを惹起するPTPの開口(induction)は、Ca2+に依存する。その理由は、Bernardiの実験結果から、PTPの開口は、膜電位(the proton electrochemical gradient:刄ハH+)により制御されていて、Ca2+Camの増加)が、ミトコンドリア内で、膜電位(刄ハH+)を変化させて、PTPの開口(induction)を引き起こすためと、考えられる。
 Trost等の実験結果では、細胞外Ca2+濃度(Cao)が高いと、サリチル酸の毒性(ミトコンドリア障害作用)が、増強した。細胞外(extracellular)のカルシウムイオン濃度(Ca2+濃度)が高いと、サリチル酸の、毒性(ミトコンドリア障害作用)が、増強したカルシウム拮抗作用のある薬剤(verapamil、diltiazem、chlorpromazine、nifedipine、nisoldipine)は、サリチル酸の毒性(ミトコンドリア障害作用)を、阻害ないし軽減させた
 ライ症候群は、米国では、1974年以降、4〜12歳(おおよそ、6歳)の小児に多く発症したが、1988年までには、ライ症候群の発症例は、激減している。これは、アスピリン使用が減少したためか、ライ症候群に類似した症状を来たす先天性代謝異常症である、MCADD(中鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症)として診断されるようになったためなのか、定かでないと言う。

 ライ症候群を予防するために、15歳未満の小児がインフルエンザや水痘に罹った時は、解熱などの目的でアスピリン、サリチルアミド(PL顆粒に含まれる)、エテンザミドを使用してはならない(原則禁忌)。
 また、一般用医薬品では、アスピリン類(バッファリンA、エキセドリン、ケロリン)は、15歳未満の小児には、使用してはいけないことになっている。なお、小児用バッファリンは、成分はアスピリンでなく、アセトアミノフェンが配合されている。アセトアミノフェンは、抗炎症作用は弱く、アスピリンのような血小板凝集阻害作用はない。しかし、アセトアミノフェンは、肝細胞壊死を来すおそれや、水痘の病期を延長させてしまうおそれがある。

 NSAIDsは、アスピリンやサリチル酸と同様に、ミトコンドリアの脱共役作用(uncoupling effec)があるので、ミトコンドリアの機能を低下させるおそれがある。

 わが国では、ライ症候群を予防する為に、アスピリン、アスピリン・アスコルビン酸、アスピリン・ダイアルミネート、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、エテンザミド、ジクロフェナクナトリウムを、15歳未満の小児のインフルエンザや水痘に伴う発熱に対して、解熱などの目的で、原則として、投与しないことになっている。
 インフルエンザ脳症を予防する為に、メフェナム酸を使った解熱剤を、インフルエンザに伴う発熱に対して、原則として、投与しないことになっている。なお、ジクロフェナクナトリウムは、インフルエンザ脳症の死亡率を、上昇させる(悪化させる)。
 日本小児科学会は、平成12年11月に、インフルエンザに伴う発熱に対して(解熱剤を)使用するのであれば、アセトアミノフェンが適切であり、非ステロイド系消炎剤(NSAIDs)の使用は慎重にすべき旨の見解を、公表している。

 8.インフルエンザと仮性クループ
 インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルスなどは、仮性クループ(急性喉頭気管炎)を起こすことがある。

 仮性クループ(急性喉頭炎)は、犬の遠吠えのような咳(犬吠様咳:けんばいようせき)がして、声がかすれる(嗄声:させい:声がしゃがれる)が、夜間などに見らられ、吸気性呼吸困難になるのが特徴。
 <仮性クループに特有な咳発作の録音テープを聞くには、ここをクリック>

 仮性クループ(急性喉頭炎)は、喉部の気道が、炎症性腫脹により、狭くなる。

 真性クループは、ジフテリア菌が原因で、起こる(喉頭ジフテリア)。

 仮性クループの際に見られる、犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴などの症状は、他の喉頭疾患でも見られることから、クループ症候群と呼ぶこともある。
 犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴などの呼吸困難症状は、3〜4日間程度、続くことが多い。

 クループ症候群は、喉頭気管炎(喉頭気管気管支炎:狭義のクループ)、急性喉頭蓋炎、細菌性気管炎など、感染症が原因で起こることが多い(感染性クループ)。また、クループ症候群は、声門下狭窄、喉頭異物、喉頭腫瘍(血管腫)、血管神経性浮腫、痙性クループ(アレルギー素因が関与する)など、非感染性の原因で起こることもある。

 クループは、7カ月〜3歳の小児が、発症することが多い。
 クループは、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、麻疹ウイルスなどのウイルスが、原因となることが多い。

 クループ症候群の急性喉頭蓋炎は、b型インフルエンザ菌(Hib)が原因で起こることが多い。
 急性喉頭蓋炎は、上気道炎症状(鼻水など)がなく、突然、高熱、咽頭痛で、発症することが多い。
 急性喉頭蓋炎は、2〜4歳の小児に多く見られる。急性喉頭蓋炎は、ウイルスが原因の仮性クループ(急性喉頭気管炎:7カ月〜3歳の小児に多く見られる)より、高年齢の小児が、罹患する傾向がある。
 急性喉頭蓋炎の小児は、泣かせたりなどすると、呼吸困難が増悪するので、徒に、刺激を与えないように、注意する(咽頭培養や、注射・点滴路確保などの処置に際しては、注意が必要)。
 気道確保の為には、挿管する気管チューブは、年齢相当より、細い径の気管チューブを選択する(緊急を要する場合には、喉の気管部位に、太い注射針を、刺して、気道を確保する)。

 治療としては、吸入(L-エピネフリン0.2〜0.3ml+生理食塩水1〜2ml)や、ステロイド剤投与(デキサメサゾンを初回0.5mg/kg筋肉注射)が、有効な場合が多い。

 注1シアル酸(sialic acid)は、唾液(sialo)ムチンから酸水解によって得られる、酸性のアミノ糖として発見された。

 注2: シアロ糖鎖シアリル糖鎖)は、シアル酸NeuAc)とガラクトースGal)とN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)が結合した糖鎖。シアロ糖鎖は、インフルエンザウイルスのHAと結合する。
 赤血球表面のインフルエンザウイルス受容体になるシアロ糖鎖は、Neu5Acα2-6Galβ1-4(3)GlcNAcβ1-構造、又は、Neu5Acα2-3Galβ1-4(3)GlcNAcβ1-構造をしている:シアル酸(NeuAc)は、ガラクトース(Gal)とN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)からなる基幹領域タイプ1、又は、タイプ2)に、α2→6結合か、α2→3結合をしている。
 Neu5Acα2-3Galとは、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)が、ガラクトース(Gal)とα2-3結合した構造。ヒトパラインフルエンザウイルス1型( hPIV-1)と、3型(hPIV-3)は、Neu5Acα2-3Galを有する糖鎖と結合すると言う。 

 注3:インフルエンザウイルスは、罹患した人が、咳をすると、飛沫して、空気中に浮遊する。1回のクシャミで、10万個のウイルスが、飛沫して、空気中に浮遊すると言う。その浮遊しているウイルスを、鼻や口から吸い込んで、飛沫感染する。また、目や鼻の粘膜からも、直接侵入する。インフルエンザウイルスを直接口に入れても、それほど、脅威にならないと言う。
 感染したウイルスは、細胞内で増殖し、8時間後に、約100ケに増殖する(1日で、100万個に増殖する)。ウイルスが増殖した細胞は、死滅し、炎症が起こり、発熱、咽頭痛、咳などの症状が現れる。
 インフルエンザの感染予防には、マスク、手洗い(石けんは、ウイルス膜を破壊する効果がある)、嗽(うがい)、保温(体を温かくする)ことなどが、大切。御茶(緑茶)や、梅干も、効果があると言う。

 注4:「タミフルドライシロップ3%の乳児への投与の安全性に関する検討(中間報告)」(日本小児科学会雑誌 108巻11号 1438頁:2004年)によると、2004年1月に、タミフルドライシロップ(以後、タミフルDSと記す)の、乳児への投与を控えることの要請があった。
 その後、タミフルDSを投与された乳児737例(A型、又は、B型インフルエンザウイルス感染症患者)に関して、副作用・有害事象の発現状況を、調査し検討した。その結果、タミフルDSとの因果関係が疑われる副作用として、下痢(13例)、嘔吐(5例)、軟便(3例)、低体温(2例)などの症状が見られた。発疹は、737例中4例に認められ、その内、1例は、タミフルDSとの因果関係が否定出来ないと判断された。なお、インフルエンザ感染の経過中に、タミフルDSを投与後、痙攣が見られた(1日後に2例、2日後に1例)が、痙攣は、タミフルドライシロップの副作用とは、見なされていない。
 いずれにせよ、重篤な副作用の報告はない。中間報告には、「インフルエンザ患児乳児に対して、指示された用法・用量によるタミフルドライシロップ3%の投与に関する危険性は高くないと推測されるが、本報告はあくまでも中間報告であり後方視的な調査のデータである。」と、記されている。
 なお、添付文書に、「治療に用いる場合には、抗ウイルス薬の投与がA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の全ての患者に対しては必須ではないことを踏まえ、患者の状態を十分観察した上で、本剤の使用の必要性を慎重に検討すること。 」と書かれてあるように、抗インフルエンザウイルス剤は、全ての患者に投与する必要はない。

 リン酸オセルタミビル(Oseltamivir Phosphate)は、プロドラッグであり、代謝により活性体に変換され、活性体となる。リン酸オセルタミビルの活性体は、ヒトA型、及び、B型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)を、選択的に阻害し、新しく形成されたインフルエンザウイルスが感染細胞から遊離することを阻害し、ウイルスの増殖を抑制する。
 タミフル(リン酸オセルタミビル)は、インフルエンザ様症状が発現してから、2日以内に、投与を開始する。症状が発現してから48時間以後に投与を開始した場合は、有効性が確認されていない。
 インフルエンザウイルスは、飛沫感染して、体内では、8時間後に、約100ケに増殖する。そして、1〜3日間の潜伏期間の後、発熱、独特の咳などの症状で、発症する。DS製剤は、保険では、予防投与が認められていないが、Cap製剤(カプセル製剤)は、下記のような場合には、保険で、予防投与が認められている。インフルエンザの症状を軽くする為には、潜伏期間に、オセルタミビルのカプセル製剤を、予防的に服用するのも、賢明と思われる。
 インフルエンザ感染症を発症している患者の、家族や共同生活者(施設などの同居者)が、下記のような場合には、タミフルのCap製剤(カプセル製剤)を、1日1回、予防投与することが、保険で認められている(7〜10日間)。
 1).高齢者(65歳以上)
 2).慢性呼吸器疾患患者、又は、慢性心疾患患者

 3).代謝性疾患患者(糖尿病など)、
 4).腎機能障害患者、
    治療   予防 
 対象   成人及び体重37.5kg以上の小児   成人及び13歳以上の小児 
 投与法   1回75mg 1日2回   1回75mg 1日1回 
 投与期間   5日間経口投与   7〜10日間経口投与 

 予防投与する場合には、インフルエンザ感染症患者に接触した後、2日以内(48時間以内)に、投与を開始する
 インフルエンザウイルス感染症に対する予防効果は、本剤を、連続して服用している期間のみ持続する。


 治療目的の投与量は、成人には、オセルタミビルとして、1回75mg(1カプセル)を、1日2回、5日間、経口投与する。幼小児には、オセルタミビルとして、1回2mg/kg(ドライシロップ剤として66.7mg/kg)を1日2回、5日間、経口投与する。

 オセルタミビルは、腎臓から排泄される。
 オセルタミビルは、乳汁中に移行するので、授乳婦に投与する場合には、授乳を避けさせる。
 主な副作用は、腹痛21件(6.8%)、下痢17件(5.5%)、嘔気12件(3.9%)が、知られている。
 オセルタミビルは、1回200mg以上を投与すると、嘔気、嘔吐、めまい(浮動性眩暈)が現れる。
 
 オセルタミビル投与後の耐性ウイルスに関しては、耐性ウイルスの出現率は、1.4%とされる(成人及び青年では0.34%、小児では4.5%)。耐性ウイルスは、全てA型インフルエンザウイルスに由来し、B型では出現が認められていない。耐性を獲得したインフルエンザウイルスは、著しく感染性が低下し、感染部位での増殖、伝播力は、極めて低いと考えられている(マウス、及び、フェレットでのデータ)。耐性を獲得したウイルスでは、ノイラミニダーゼ(NA)のアミノ酸変異が認められている。

 注5塩酸アマンタジン(医薬品名:シンメトレルなど)は、A型インフルエンザウイルスにのみ、効果を示す。
 アマンタジン使用例では、耐性ウイルスの出現が多く、その耐性ウイルスは、人から人への感染があるとされる。アマンタジンの添付文書の「小児等への投与」の項には、「低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない。」と記されている。
 塩酸アマンタジンは、催奇性が疑われる為、妊婦、又は、妊娠している可能性のある女性への投与は、禁忌となっている。

 注6:細菌の混合感染が、インフルエンザウイルスを活性化させる機序としては、下記のような機序が考えられている。
 ・上気道の正常菌叢でもある、黄色ブドウ球菌から産生されるアルギニン特異的セリンプロテアーゼにより、HAが解裂活性化される。
 ・ブドウ球菌や連鎖球菌により、プラスミノーゲン活性化物質が産生され、血清や組織のプラスミノーゲンがプラスミンに変換され、プラスミン感受性のHAを持つウイルス株が活性化される。
 ・宿主の気道で、細菌の内毒素や、様々な生理活性物質により、ウイルスを活性化させる作用のあるプロテアーゼ(トリプターゼ・クララ、カリクレイン、トロンビンなど)の分泌が、促進する。逆に、プロテアーゼを阻害する物質(サーファクタント)の分泌が低下する。このようにして、インフルエンザウイルスの活性化が、促進される。

 参考文献
 ・藤澤和郎、眞弓光文:抗インフルエンザ薬によるA型インフルエンザ治療後のウイルス抗原検出率 日本小児科学会雑誌 108巻3号、428-431:2004年.
 ・川崎一輝:呼吸器・胸部疾患 クループ、実践小児診療、日本医師会雑誌 特別号、Vol.129 No.12、S142-S144、平成15年(2003年).
 ・Bernardi P (1992) Modulation of the mitochondrial cyclosporin A-sensitive permeability transition pore by the proton electrochemical gradient. Evidence that the pore can be opened by membrane depolarization. J Biol Chem  267: 8834-8839.
 ・Trost LC, Lemasters JJ.: Role of the mitochondrial permeability transition in salicylate toxicity to cultured rat hepatocytes: implications for the pathogenesis of Reye's syndrome. Toxicol Appl Pharmacol. 1997 Dec;147(2):431-41.

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