サリチル酸
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食べ過ぎや、運動のし過ぎは、活性酸素の発生を増やし、寿命が短くなると考えられています。
1.食べ過ぎは、寿命を縮める
マウス(ハツカネズミ)の実験では、好きなだけエサを食べさせた場合の方が、エサの量を制限して与えた場合より、寿命が、2割程度、短いという結果が報告されています(癌で死亡する)。
たくさん食べれば、それだけ食べた物を代謝するのに、酸素が多く消費され、活性酸素の発生量も増えるためと、考えられています(注1)。
好きなだけエサを食べたマウスでは、DNAの酸化物(OHG)が若いうちから、蓄積すると言われています。
なお、自己免疫疾患発症マウスの実験の結果では、カロリー制限に加え、脂肪摂取を制限した方が、寿命が長いという結果が得られています。
また、離乳マウスの実験結果では、高蛋白食は、成長を速くするが、感染症での死亡率をかえって高めました。
2.運動のし過ぎは、寿命を短くする
体重当りの酸素消費量が多い動物は、寿命が短いとされています。
これは、酸素消費量が多いと、代謝が盛んになって、活性酸素の発生量も増え、細胞が障害されるためと、考えられています。
なお、体重当りの酸素消費量から予測される寿命は、ヒトでは15〜20年となってしまいます。ヒトが例外的に寿命が長いのは、活性酸素のスーパーオキシドを処理する酵素SOD(スーパーオキシドディスムターゼ:superoxide dismutase)の活性が高く、発生する活性酸素を効率良く処理できるためと、考えられています。
運動のし過ぎは、寿命を短くすると考えられています。ただし、適度の運動は、SODの活性を高め、健康に良いと考えられています。
成人の1日の酸素摂取量は、500Lで、その約2%の10Lが活性酸素になると言われます。
3.活性酸素を処理するSOD活性が高い動物ほど、寿命が長い
体重当りのカロリー消費量が多いと、活性酸素の発生が多くなります。
SODの活性を、いろいろな動物の肝臓で調べた結果、体重当りのカロリー消費量に比して、SOD活性の高い動物ほど、寿命が長いと報告されています。
4.その他
・羽がなくて飛べないハエは、羽があり自由に飛び回れるハエよりも、寿命が長いことが判明しています。
・変温動物(ハエ、チョウ、トカゲなど)では、環境の温度が高くなる程、寿命が短くなります。
注1:マウスを使った実験結果では、妊娠中に、母親マウスに、蛋白質を十分に与え(餌の20%)、授乳期に、母親マウスに、蛋白質を控えて与え(餌の8%)、離乳期に、子マウスに、糖分を少なく与えると、子マウスは、最も、長生きをします(最長814±25日)。
反対に、妊娠中に、母親マウスに、低蛋白食を与え、授乳期に、母親マウスに、高蛋白食を与え、離乳期に、子マウスに、糖分を多く与えると、子マウスの寿命が、最も、短くなります(517±35日)。この場合、離乳期に、子マウスに与える糖分を減らすと、寿命は、わずかに延びるが、600日には、及びません。
このように、子マウスが、長寿に生きるためには、妊娠中に、母親マウスに、蛋白質を十分に与え、授乳中には、蛋白質を控えることが、重要だと言われます。
サリチル酸は、COX-2を阻害し、PGE2の産生を抑制し、解熱、鎮痛、腫脹軽減作用を示す。
サリチル酸は、肝細胞のミトコンドリアのPTPを開口させ、膜電位を低下させ、呼吸鎖でのATP生成を低下させて、TCA回路で生成されるNADH2+を、枯渇させてしまうおそれがある。その為、サリチル酸は、糖新生を、減少させる。
PTPの開口(induction)は、Ca2+に依存する。細胞外のCa2+濃度が高いと、サリチル酸の、毒性(ミトコンドリア障害作用)が、増強する(Trost等)。
1.アスピリンは、肝臓で、サリチル酸に変化する
解熱剤のアスピリンは、内服して、腸管から吸収された後、肝臓でエステラーゼにより、急速に加水分解(脱アセチル化)され、サリチル酸(salicylate)になる。
サリチル酸は、COX-1を阻害しないので、アスピリンのような、血小板凝集抑制作用を有しない。
サリチル酸は、COX-2を阻害し、プロスタグランジン合成を阻害し、抗炎症作用、抗細胞増殖作用、抗酸化作用を示す:アスピリン同様に、サリチル酸は、PGE2の産生を抑制し、痛み(疼痛)と腫脹を軽減させ、解熱させる。
サリチル酸(sodium salicylate)は、NF-kBの発現(注1)を抑制する。
IL−1βは、NF-kBの発現を介して、COX-2と、EP3受容体のmRNAの発現を、増加させる。
サリチル酸は、NF-kBの発現を抑制することで、IL−1βによるCOX-2の発現を抑制する。同時に、サリチル酸は、PGE2の結合するEP3受容体の発現も、抑制する。
サリチル酸は、皮膚の角質を軟化させる作用や、白癬菌(水虫の菌)に対する抗菌作用が、ある。
サリチル酸は、ミトコンドリアを膨化させ、アポトーシスを誘導するという(注2)。
2.植物に含まれるサリチル酸
紀元前より、ヤナギ(柳、楊)の樹皮の抽出エキスは、鎮痛・解熱のために、用いられていた。
日本でも、かつて、「柳箸やヤナギで作った楊枝を使うと歯がうずかない」と言う伝承があったように、ヤナギの樹皮や葉に、抗炎症作用があることが、知られていた。
ヤナギの葉や樹皮には、薬効成分であるサリシンが含まれている。サリシンは、体内で代謝され、サリチル酸(サリシル酸、スピール酸、水楊酸とも呼ばれた)になる。サリチル酸には、解熱鎮痛作用がある。
ヤナギなどの植物は、病原体に犯されると、大量にサリチル酸を作り、揮発性のメチルエステルとして、発散する。合成サリチル酸は、胃腸障害が強く、苦味も強いので、アセチル化したアセチルサリチル酸(アスピリン)が開発された。
サリチル酸は、イチゴ、柑橘類、ブドウなどの果物や、トマト、キュウリなの野菜にも含まれているので、アスピリン喘息を起す人は、これらの果物や野菜を、多量に摂取しないようにする必要がある。冬緑油(ツツジ科のガウルテリア属の植物から採る)は、サリチル酸メチルを主成分として、90%以上も含んでいる。ハーブとして用いられる、セイヨウナツユキソウ(花嫁草、メドスイート)も、サリチル酸が、含有されている。
サリチル酸は、連作障害にも、関与するという。
3.サリチル酸には、抗菌作用がある
サリチル酸(サリチル酸メチル)は、病原菌に感染した植物で、感染した葉から感染した信号として産生され、他の葉に病原菌の存在を知らせ、酸性PR蛋白質(pathogenesis-related
protein)と呼ばれる抗病菌タンパク質を誘導する。
ジャスミンの木などの植物は、葉などが障害されると、MAPキナーゼホモログが、リン酸化により活性化され、ジャスモン酸(ジャスモン酸メチル)が産生され、塩基性PR蛋白質が、誘導され、他の葉に危険を知らせる。ジャスモン酸の構造は、動物の炎症物質である、プロスタグランジン(PG)やロイコトリエン(LT)などの構造と、相似している。
サリチル酸とジャスモン酸は、拮抗的に作用する:サリチル酸やアセチルサリチル酸は、ジャスモン酸のような、シグナル伝達物質の合成を、阻害すると言う。
サリチル酸やジャスモン酸は、植物が侵害を受けた時に、発せられる香りや匂い成分。
サリチル酸は、黄色ブドウ球菌の毒性を弱める:毒素産生の抑制(α溶血素の分泌抑制)や、宿主組織への接着能力を抑制(フィブロネクチン結合を抑制)する(in vitro)。アスピリンは、体内で、サリチル酸に代謝されるので、抗菌効果も期待出来るが、殺菌作用はない。
4.サリチル酸は、インスリン分泌を増加させる
サリチル酸は、ブドウ糖の代謝に、影響する。
それは、以下に述べる様に、アスピリンを服用すると、体内で、サリチル酸に変化するので、インスリンの抑制が、解除され、インスリンの分泌が増加して、場合によっては、低血糖を来たす。
IL-1βや、PGE2は、ブドウ糖によるインスリン分泌を、抑制する。
IL-1βは、NF-kBの発現を介して、COX-2や、EP3受容体のmRNAを発現させる。
COX-2によって産生されたPGE2は、EP3受容体を介して、アデニル酸シクラーゼを抑制し、cAMPを減少させ、ブドウ糖によるインスリン分泌を、抑制すると考えられる。
サリチル酸は、IL-1βによる、NF-kBの発現を抑制し、COX-2や、EP3受容体のmRNAの発現を妨げて、PGE2によるインスリン分泌抑制作用を抑制するので、インスリン分泌が、増加する。
アスピリンは、IL-1βによる、NF-kBの発現を抑制しない。
このように、サリチル酸が、インスリン分泌に抑制的な作用を有するプロスタグランジン(PGE2)の産生を抑制するので、アスピリンを服用すると、インスリンの分泌が亢進し、低血糖などを来たすこともある。
膵臓のβ細胞は、細胞内cAMP濃度が上昇すると、Ca2+が細胞内に流入して、インスリンの分泌が起こる。
インスリンは、脂肪組織、肝臓で、PDE(ホスホジエステラーゼ)を活性化させ、cAMPを5'AMPに異化させ、cAMP濃度を減少させ、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)の活性を抑制し、中性脂肪の分解を抑制する。
従って、アスピリンを常用すると、サリチル酸により、インスリン分泌が亢進させられ、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)による脂肪の分解が抑制され、肥満を来たすおそれも、考えられる(注3)。
5.サリチル酸とライ症候群
アスピリン投与と、ライ症候群の発症とには、密接な関連があることが、多くの疫学的研究が、示唆しているが、アスピリンより、アスピリンの代謝産物であるサリチル酸が、ライ症候群発症の、重要な因子であると、考えられている。
アスピリンは、ミトコンドリアの形態に、変化を引き起こす。
サリチル酸や、NSAIDsのインドメサタシン(indomethacin)は、ミトコンドリアの電子伝達系を、阻害する。
サリチル酸は、肝細胞のミトコンドリアの膨化(注2)を引き起こし、酸化的リン酸化を脱共役する。また、サリチル酸は、脂肪酸のβ酸化、尿素回路(尿素サイクル)、糖新生などの代謝を、阻害する。
ラット灌流肝を用いた実験では、サリチル酸(3mM)は、肝臓で、乳酸、ピルビン酸、プロピオン酸、果糖からの糖新生を、減少させた(注4)。しかし、サリチル酸は、肝臓のATP濃度を、変化させなかった(注5)。
これは、サリチル酸が、ミトコンドリア内外のNADH/NAD+比(注6)を低下させ、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)によるオキサロ酢酸からリンゴ酸への変換に、影響を与え、糖新生を、減少させると、考えられている。
この糖新生の減少は、ライ症候群で見られる低血糖の原因かも知れない。
ラットの腎臓を摘出して、0.4mMのサリチル酸を投与する(灌流させる)と、ミトコンドリアが膨化(swelling)した。同濃度のアスピリンは、ミトコンドリアを軽度しか、膨化させなかった。
アポトーシスを惹起するPTPの開口(induction)は、Ca2+に依存する。その理由は、Bernardiの実験結果から、PTPの開口は、膜電位(the proton electrochemical gradient:刄ハH+)により制御されていて、Ca2+(Camの増加)が、ミトコンドリア内で、膜電位(刄ハH+)を変化させて、PTPの開口(induction)を引き起こすためと、考えられる。
Trost等の、ラットの培養肝細胞を用いた実験結果では、0.3〜5mMのサリチル酸が、濃度に比例して(concentration-dependent)、細胞を死滅させた。3mMの濃度のサリチル酸を使用して、半数の細胞が死滅する(half-maximal
cell killing)は、150分だった。細胞外(extracellular)のカルシウムイオン濃度(Ca2+濃度)が高いと、サリチル酸の、毒性(ミトコンドリア障害作用)が、増強した。カルシウム拮抗作用のある薬剤(verapamil、diltiazem、chlorpromazine、nifedipine、nisoldipine)は、サリチル酸の毒性(ミトコンドリア障害作用)を、阻害ないし軽減させた。Ca2+濃度の高い緩衝液(buffer)中でも(培養しても)、カルシウム拮抗作用のある薬剤は、ミトコンドリア内の遊離カルシウムイオン(mitochondrial
free Ca2+)の上昇を、阻害した。
なお、nifedipine(ニフェジピン)には、活性酸素の産生を抑制する作用もある。
サリチル酸は、乳酸の産生量を、約2倍、増加させる。これは、サリチル酸が、ミトコンドリアのをNADH2+減少させ(注2)、解糖が促進されるためと考えられる。
6.サラゾピリンは、分解され、サリチル酸が生じる
潰瘍性大腸炎の治療に用いられる、サラゾピリン(サラゾスルファピリジン:SASP)や、ペンタサ(メソラジン)は、COXやリポキシゲナーゼの活性を抑制する。
経口投与されたサラゾスルファピリジンは、大腸で、腸内細菌によって還元され、スルファピリジン(SP)と5-アミノサリチル酸(5-amino-salicylic acid:5-ASA)に分解される。
メソラジンの成分は、5-アミノサリチル酸。スルファピリジンは、抗菌薬(サルファ剤)として作用し、5-アミノサリチル酸は、大腸から吸収されないで、主に腸管細胞に直接、抗炎症作用を示すと考えられる。
7.サリチル酸血中濃度
アスピリンは、体内では、肝臓で、サリチル酸になる。
アスピリンの投与量が適切であるか、サリチル酸の血中濃度で、判断する。治療に有効な血中濃度の範囲は、解熱鎮痛が目的の場合は、10mg/dl、慢性関節リウマチなどの治療には、15〜30mg/dl、リウマチ熱では、25〜40mg/dlとされる。定常状態に到達するには、5〜7日間、要する。血中濃度が15〜30mg/dl(150〜300μg/ml)で、耳鳴り、難聴、頭痛、眩暈(めまい)が見られ、血中濃度が25〜40mg/dlで、中枢性過呼吸、嘔気、嘔吐などが見られるが、投薬中止する程、重篤な副作用ではない。血中濃度50mg/dl以上は、中毒域であり、呼吸性アルカローシスやテタニーを呈し、60mg/dlでは代謝性アシドーシスを来たし、70mg/dlでは体温上昇や昏睡を来たし、80mg/dlでは心血管虚脱を来たし、90m/dlでは腎・呼吸機能不全を来たす。
炎症時の治療で、最大投与量(massive doses)のアスピリンを使用すると、血中濃度の最高値は2mMに達するが、組織中濃度は、12mMまで達する。
注1:NF-kBは、NF-kB/IkB complexesから、分離して、発現される。
注2:サリチル酸は、ミトコンドリアで、PTP(permeability transition pore)という穴構造を開いてしまうので、その結果、プロトンを含めた低分子量の物質が、ミトコンドリア外(細胞質ゾル)から、ミトコンドリア内(マトリックス)に流入して、その為、ミトコンドリアは、膨化(膨張化)してしまい、TCA回路が作動しなくなり、NADH2+の生成が減少し、電子伝達と酸化的リン酸化によるATP生成が障害され、また、肝臓では、脂肪酸のβ酸化が進行せず、中性脂肪が、蓄積すると、考えられる。
ミトコンドリアには、PTP(permeability transition pore)と呼ばれる穴構造が、内膜と外膜との接触部位(the
contact sites)に、存在する。PTPは、複合体Iに関連しているようだ。
PTPが開いた状態では、低分子量の物質(分子量1500まで)が、ミトコンドリア内(マトリックス)と、細胞質ゾルの間を、自由に通過する。
PTPが開くと、ミトコンドリア膜の電位(the mitochondrial membrane potential)が、放電(discharge)され、酸化還元電位が変化して、アポトーシスを誘導する(pro-apoptogenic)と、考えられる。しかし、完全にエネルギーが放電されると(a complete deenergization)、細胞は、アポトーシスでなく、壊死(necrosis)に陥る。従って、ミトコンドリアで、プロトンを脱共役する物質(mitochondrial protonophoric uncouplers)は、アポトーシスを誘導しない。しかし、PTPが開くと、PTPの穴を、プロトン(水素イオン)が通過して、膜電位(the mitochondrial transmembrane potential:
)が、低下する。
NSAIDsの脱共役作用(uncoupling effec)の、少なくとも一部は、PTPの誘導(induction)の為と、考えられ得る。サリチル酸(salicylic
acid)や、アスピリンは、ミトコンドリアに副作用がある。Mg2+や、シクロスポリンA(Cyclosporin A:CysA)は、PTPの阻害剤(inhibitor)であり、ミトコンドリアを、防御する。
PTPは、porin(voltage-dependent
anion channel :VDAC)、adenine nucleotide translocase(adenine nucleotide
translocator:ANT)、cyclophilin Dで構成される複合体。cyclophilin D(CpD)は、PTPの、ミトコンドリア内膜側の部分に、存在する。シクロスポリンAは、このcyclophilin
Dに結合し、cyclophilin Dを、内膜から除去し、PTPの開口(opening)を阻害することが、示唆されている。
サリチル酸(salicylates)が、PTPを開口させ、ミトコンドリアの膜電位を喪失させるのには、Ca2+ が、必要のようだ。しかし、他方で、サリチル酸は、(ミトコンドリア内に)蓄積されたCa2+を、(PTPの開口により)放出させる。これらのサリチル酸の効果は、シクロスポリンAで、阻害される。PTP(の穴)を誘導する作用は、サリチル酸の方が、アスピリン(acetylsalicylic acid)より、強い。
ミトコンドリアが障害され、膨化すると、TCA回路が作動しなくなり、脂肪酸のβ酸化も、障害されると考えられる。脂肪酸のβ酸化が減少すると、脂肪組織から放出されている遊離脂肪酸が処理されず、肝臓に、中性脂肪が蓄積する。
ただし、サリチル酸やアセチルサリチル酸(アスピリン)が、ミトコンドリアの呼吸鎖に脱共役作用を示すのは、submillimolar and low millimolar rangeの濃度で、見られる。
注3:アセトアミノフェン(タイレノール)も、低血糖を来たす。
これは、アセトアミノフェンの肝毒性(hepatotoxic effect)という説もあるが、サリチル酸(salicylates)同様に、
プロスタグランジン(PGE2)の産生を抑制し、インスリンの分泌を、亢進させるためとも、考えられる。
従って、解熱鎮痛剤(痛み止め)として用いられている、アセトアミノフェン(タイレノール)も、常用すると、肥満を来たすおそれが、考えられる。
注4:サリチル酸(3mM)により、グリセロール(グリセリン)からの糖新生は、減少しない。なお、サリチル酸が、解熱鎮痛が目的の場合に、有効な血中濃度は、10mg/dlとされるので、3mMと言うサリチル酸濃度は、実際の臨床治療の血中濃度より、やや高めの濃度と思われる。しかし、炎症時の治療で、最大投与量(massive
doses)のアスピリンを使用すると、アスピリンの血中濃度の最高値は2mMに達するが、アスピリン組織中濃度は、12mMまで達するとされる。その際(最大投与量のアスピリンを使用した場合)、サリチル酸の血中濃度の最高値は2mMに達し、サリチル酸の組織中濃度は、4mM以上に達すると言う。従って、アスピリンを使用した際には、組織中のサリチル酸濃度は、3mMより、むしろ高くなることも有り得ると考えられる。
グリセロールからの糖新生では、ミトコンドリア外で、グリセロールから合成される(ATPが必要)Glycerol-3-Pが、Dihydroxyacetone-Pとなる段階で、NAD+は、NADH2+となる。このことは、グリセロールからの糖新生は、サリチル酸による、ミトコンドリア内のNADH2+減少の影響を受けないことを、説明し得ると考えられる。
なお、果糖(Fructose)からの、糖新生には、ATPが必要だが、NADH+、NAD+は、必要でない。
注5:実験では、3mMのサリチル酸を、30分間投与したが、サリチル酸投与後15分間は、肝ATP濃度は、減少しなかった。しかし、サリチル酸投与15分以降は、肝ATP濃度が、減少していた。従って、サリチル酸は、3mMの低濃度でも、作用時間が長いと、脱共役剤として作用するおそれがある。また、10mMのサリチル酸は、肝ATP濃度を、直ちに、約80%減少させた。
注6:NADH/NAD+比は、NADH2+とNAD+の比。
TCA回路の代謝を調節する重要な因子は、TCA回路の基質のアセチル-CoAとオキサロ酢酸、それと、生成されたNADH2+。
オキサロ酢酸は、リンゴ酸とは、次式の平衡関係にある。
K=[オキサロ酢酸][NADH]/[リンゴ酸][NAD+]
筋肉の運動時などは、ATP生成に伴い、ミトコンドリア内のNADH2+が消費されて減少し(NAD+が増加する)、その結果、オキサロ酢酸が増加して(リンゴ酸が、MDHにより、オキサロ酢酸に変換される)、クエン酸シンターゼが促進され、クエン酸の生成速度が高まり、TCA回路の代謝が促進される。
サリチル酸により、ミトコンドリア内膜での酸化的リン酸化が、脱共役されると、ミトコンドリア内のNADH2+が減少して、糖新生に必要な細胞質ゾルのNADH2+も減少してしまうものと、考えられる。
参考文献
・須藤茂行.ライ症候群の病態解明に関する研究 −第1編 ラット灌流肝のエネルギー代謝に対するサリチル酸の影響.日児誌 1998;
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