セレクチン
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1.白血球とセレクチン
組織が、感染などで損傷を受けると、局所で、インターロイキン-1(IL-1)やTNF-αが放出され、血管内皮細胞は、細胞接着分子のセレクチン(受容体:E-セレクチン、注1)を血管内に向かって、差し出す(この反応は、数十秒から数分で起こる)。
白血球(単球、好中球)は、表面に、セレクチン(穴)と結合するセレクチンリガンド(鍵)として、糖鎖(シアリルLex抗原など)を有している。白血球は、この糖鎖により、セレクチン(穴)を発現した血管内皮細胞と接触し、血管の表面を転がるようになる(ローリング:rolling)。
そうすると、白血球表面の接着分子インテグリン(受容体=穴:LFA-1やVLA4)が活性化され、血管内皮細胞表面に、まず、ICAM-1、遅れてVCAM-1というインテグリンリガンド(鍵)が現れる。
血管内皮細胞表面のICAM-1(intercellular adhesion molecule-1)は、LFA-1という白血球のインテグリンと結合する(LFA-1/ICAM-1)。
なお、ICAM-1は、ライノウイルス受容体(注2)。ライノウイルスは、小児気管支喘息の発作の約8割に関与している。
また、VCAM-1は、VLA4というインテグリンと、結合する。
そして、白血球は、平らに変形して、血管内皮細胞と強く接着(sticking:注3)する。
接着した白血球は、血管外の組織に遊走(transmigration)し、損傷した組織を破壊したり、異物を貪食する。
なお、マクロファージがT細胞に抗原を提示する際に、マクロファージのMHC(主要組織適合抗原)クラスII分子が、抗原をTCR(T細胞受容体)に認識させる(シグナル1)ことに加え、マクロファージのインテグリン・リガンドとT細胞のインテグリンが結合する(シグナル2)ことで、T細胞は初めて、活性化される。シグナル1だけだと、免疫寛容が成立する。
2.癌細胞とセレクチン
セレクチンは、レクチン様ドメインを持っている。セレクチンは、セレクチンリガンドと、結合する。セレクチンリガンドには、シアリルLex糖鎖抗原(シアリルルイスX)、シアリルLea糖鎖抗原(シアリルルイスA)などの糖鎖(これらは、シアル酸とフコースを含むオリゴ糖)が存在する。
血管内皮細胞に発現されるE-セレクチンは、細胞表面に発現する、シアリルLea抗原やシアリルLex抗原と結合する。
E-セレクチンは、シアリルLea抗原やシアリルLex抗原(注4)を発現した癌細胞(大腸癌や胃癌)が、血管内皮細胞へ接着し転移する際、重要な役割を果たしていて、癌の血行転移と関係する。
3.腫瘍マーカーとしてのセレレチンリガンド(糖鎖)
癌によっては、体内に存在する癌細胞から、物質(糖鎖性の物質が多い)が放出され、血液中に増加する。これらの物質は、腫瘍マーカーとして、癌の診断や、再発のスクリーニングに用いられている(注5)。
注1:E-セレクチンは、血管内皮細胞に、P-セレクチンは、血管内皮細胞と血小板に、L-セレクチンは、白血球に、それぞれ、発現される。
注2:ライノウイルスは、感冒の主因だが、COPD(chronic obstructive pulmonary
disease)患者が、ライノウイルスに感染すると、症状が急性増悪する。
マクロライド系の抗生物質である、エリスロマイシンは、抗菌作用以外に、炎症性サイトカインや、ライノウイルス受容体であるICAM-1の合成を低下させる作用が、知られている。培養ヒト気管上皮細胞に、ライノウイルスを感染させた実験では、エリスロマイシンは、(ライノウイルス受容体であるICAM-1の合成を低下させることにより、)培養液中に放出される、ライノウイルス量、細胞内ライノウイルスRNA量、及び、炎症性サイトカイン量を、減少させたという。
注3:単球が、血管内皮細胞へ接着するには、IL-1、TNF-α、IL-6などのサイトカイン刺激で、血管内皮細胞に、E-セレクチンが発現することが必要。
MCP-1(monocyte chemoattractant protein-1)、IL-8も、血管内皮細胞へ接着する単球数を、増加させる。MCP-1は、マクロファージから産生され、体循環から、NK細胞やNKT細胞を感染局所に集積させる。
注4:腫瘍マーカーの糖鎖抗原は、シアル酸(NeuAc)、ガラクトース(Gal)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)から構成された糖鎖が、蛋白質に結合している。
シアリルLea糖鎖抗原であるCA19-9は、構造は、SAα2,3Galβ1,3GlcNAc-Rであり、血液型抗原のLewis A抗原(Lea)にシアル酸(SA)が結合している。CA19-9は、ST酵素(シアル酸転移酵素:シアル酸を結合)と、Le酵素(ルイス酵素:フコースを結合)で合成される。ここで、SAはシアル酸(NeuAc)、Galはガラクトース、GlcNAcはN-アセチルグルコサミンを意味する。
ルイス式血液型のLewis B抗原(Leb)は、Fucα1,2Galβ1,3GlcNAc-Rであり、Se酵素(FUT2酵素)とLe酵素で、フコースが2ケ結合されて、合成される。Lewis A抗原(Lea)は、フコースが1ケ結合している(Fuc:フコース:6-deoxy-L-galactose)。
ST酵素とSe酵素は、共存していると、競合するので、Se酵素を持っていないLe(a+b-)の人は、正常人でも、CA19-9値が高くなる。
また、Le酵素が欠損しているLe(a-b-)の人(日本人では、10人に1人存在する)は、癌があっても、CA19-9値は、ゼロになる。
シアリルLex糖鎖抗原のSLXは、構造は、SAα2,3Galβ1,4GlcNAc-Rであり、ST酵素と、Le酵素またはFUT6酵素で合成される。そのため、Le酵素が欠損しているLe(a-b-)の人でも、癌があると、SLX値は高くなり、しかも、肺癌の予後は悪いと言う。
なお、人間のABO式血液型で、A型ではGalNAcが、B型ではGal(ガラクトース)が、結合している。
GalNAcは、Galの2位の-OHが、-NH-CO-CH3に置換されている。
Glc(グルコース)では、4位の-OHの向きは、下向きなのに対して、Galでは、上向きになっている。
注5:腫瘍マーカーとしては、糖鎖抗原(CA19-9、SLXなど)、糖鎖以外のもの(CEA、AFPなど)、癌関連遺伝子(K-ras、p53など)がある。
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