スーパー抗原
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スーパー抗原は、T細胞(CD4陽性ヘルパーT細胞と、CD8陽性キラーT細胞)表面のTCR Vβ領域(TCR/CD3複合体のβ鎖のVβ領域:TCR βchain variable region)と、抗原提示細胞(単球・マクロファージなど)のα鎖とに、結合する。
その為、スーパー抗原は、抗原非特異的に、また、MHCクラスII分子(HLA)の個体差に無関係に、T細胞を、活性化させ、増殖させてしまう。
スーパー抗原は、抗原ペプチドと異なり、MHCクラスII分子の溝(binding cleft)に結合するのではない。
スーパー抗原は、ある特定のVβ領域を有するT細胞に結合し、活性化させる:TCR Vβ領域は、38種類存在する(注1)が、3種類のVβ領域に結合し得るスーパー抗原は、全T細胞の約10%を活性化し得る。従って、スーパー抗原は、抗原ペプチドにより、抗原特異的にヘルパーT細胞が活性化される際の、10万倍以上の数のT細胞を活性化し得るとされる。
スーパー抗原により活性化されたT細胞からは、IL-2、IFN-γ、TNF-α、TNF-βなどのサイトカインが産生され、異常な免疫反応が惹起される。
スーパー抗原としては、下記のような毒素が知られている(注1)。
1.TSST-1 (toxici shock syndrome toxin-1)
TSST-1は、黄色ブドウ球菌が産生する外毒素(注2)。
1).TSS (toxic shock syndrome)
TSSは、TSST-1が原因で、高熱、表皮剥離を伴う発疹、低血圧などの症状を来たす疾患。
TSST-1が結合する、TCR Vβ領域のレパートリーは、Vβ2ないし、Vβ4。
黄色ブドウ球菌が産生するenterotoxinsによっても、TSST-1と同様にTSSを発症する(注3)。
2).NTED (Neonatal TSS-like exanthematous disease)
NTED(新生児TSS様発疹症)は、発熱(38℃以上)、発疹(全身の2〜3mm程度の丘疹状紅斑で、癒合傾向有り。2〜3日で自然消失する)、血小板減少症(15万/mm3以下)を特徴とする症候群。
NTEDは、新生児(生後1週間以内が90%)に発症する。
NTEDは、スーパー抗原性外毒素のTSST-1により、Vβ2陽性T細胞(TCR Vβ領域のレパートリーがVβ2であるT細胞)が活性化されて、発症する。Vβ2陽性T細胞(正常では、末梢血T細胞の10%程度を占める)は、スーパー抗原性外毒素のTSST-1により活性化され、NTEDE発症後2〜3日間は、増殖し、末梢血T細胞の30%程度を占めるようになるが、1週間後には、正常値(10%)程度に復帰し、さらに、1〜2カ月後には、アポトーシスにより死滅し、正常値の約20%程度にまで、減少する。新生児の末梢血T細胞は、スーパー抗原性外毒素のTSST-1で一次刺激すると、強く応答し、増殖するが、二次刺激には低応答で、増殖しない(anergyの状態になる)。成人の末梢血T細胞は、二次刺激にも強く応答し、増殖する(anergyにならない)。新生児では、TSST-1による二次刺激に低応答なことが、TSSのように重症にならない理由のひとつだとされる。
NTEDは、黄色ブドウ球菌でも、MRSA(コアグラーゼII型、TSST-1/SEC遺伝子保有、注4)を保菌する新生児に発症する。
NTEDを発症するのは、TSST-1産生菌の保菌児の5%程度:NTEDの発症には、抗TSST-1抗体の有無が関係する。日本では、恐らく、正期産児の3〜4割は、母親から抗TSST-1抗体の移行がないので、NTED発症の危険があるという。
2.SpeA (streptococcal pyrogenic exotoxin A)
SpeA(連鎖球菌発熱毒素A)は、A群溶血性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)が産生する毒素。
SpeAは、スーパー抗原活性を持ち、猩紅熱も、スーパー抗原による疾患と考えられている。
3.YPM (Yersinia pseudotuberculosis-derived mitogen)
YPMは、Yersinia pseudotuberculosisが産生する外毒素。YPMは、スーパー抗原性外毒素で、TCR Vβ領域のレパートリー、Vβ3、Vβ9、Vβ13と、結合する。
Y. pseudotuberculosisは、猩紅熱や川崎病(注5)に類似した急性全身性感染症を起す。
注1:TCR Vβ領域には、レパートリーがある。病原体が産生するスーパー抗原と、そのスーパー抗原に結合するTCR
Vβレパートリーとの関係を、下記の表に示す(参考文献の表1を改編した)。
| 病原体 |
スーパー抗原 |
TCR Vβレパートリー |
| 黄色ブドウ球菌 |
TSST-1 |
2,4 |
| SEA |
1,5,6,7,9,18 |
| SEB |
3,12,13,14,15,17,20 |
| SEC1 |
3,6,12,15 |
| SEC2 |
12,13,14,15,17,20 |
| SEC3 |
3,5,12,13 |
| SED |
5,12 |
| SEE |
5,6,8,18 |
| 溶血性連鎖球菌 |
SpeA |
2,12,13.1,14,15 |
| SpeC(注6) |
1,2,5,6.5,10 |
| SpeF |
2,4,15,18 |
| SMEZ |
8 |
| SSA |
1,3,15 |
| エルシニア菌 |
YPM |
3,9,13 |
| マイコプラズマ |
MAM |
17 |
TSST-1:toxic shock syndrome toxin-1
SEA(SEB):staphylococcal enterotoxin A(B)
SpeA(C,F):streptococcal pyrogenic exotoxin A(C,F)
SMEZ:streptococcal mitogenic exotoxin Z
SSA:streptococcal superantigen
YPM:Yersinia pseudotuberculosis-derived mitogen
MAM:Mycoplasma arthritidis-derived mitogen
注2:黄色ブドウ球菌は、他にも、コアグラーゼ(血液凝固作用のある酵素)、α溶血毒(赤血球を破壊する)、ロイコシジン(白血球を破壊する)、エンテロトキシン(食中毒を起こす)、など種々の毒素を産生する。
注3:溶連菌の菌体表面に存在するM蛋白も、血液凝固を促進され、Toxic Shock Syndromeを引き起こしているという。
注4: MRSAは、Methicillin-Resistant Staphylococus aureusの略で、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のこと。
MRSAは、敗血症の原因ともなる。
皮膚を、エタノールなどで消毒しても、毛嚢内の細菌は、消毒されないので、点滴のルート確保や、採血などを目的に、皮膚を、注射針で穿刺すると、皮膚片と共に、毛嚢内の細菌を、血管内に押し込むおそれがある。実際、私は、血液培養の際に、皮膚の表面を消毒後、血管を穿刺して、採血をして、血液培養をしたところ、敗血症でないのに、血液培養で、MRSAが検出された経験がある。
免疫力が低下していない患者さんでは、注射針の穿刺に供ない、血管内に、極少量の細菌が、押し込まれても、体内(血中)で、殺菌されるので、敗血症を発症しない。
しかし、手術後など(全身麻酔をすると、免疫力が低下する)免疫力が低下した状態では、注射針の穿刺に供ない、血管内に、押し込まれた、極少量の細菌(MRSAなど)が、体内(血中)で、増殖し、敗血症を発症する危険性が、考えられる。従って、敗血症の予防のためには、手術前に、点滴や採血のルートを確保しておく事は、手洗いや、リネン類(ベッドマット、毛布、シーツなど)の消毒などより、有効と思わる。
注5:川崎病血管炎では、血管透過性が亢進して、血漿成分が血管外に漏出する。
注6:川崎病の急性期には、TCR Vβ領域のレパートリーが、Vβ2やVβ6.5であるT細胞が増加する。A群溶血生連鎖球菌が産生する、発熱性外毒素SpeC(SPE-C)が、スーパー抗原として、川崎病の発病に重要な役割を果していると言う。
参考文献
・高橋尚人.Superantigenと小児科.日本小児科学会雑誌 2003;107:1597-1607.
・小池通夫、川崎病の原因になるもの、日本小児科学会雑誌 2000;104:113-(1).
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