チアゾリジン誘導体

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 経口血糖降下薬のチアゾリジン誘導体は、インスリン抵抗性を改善する。

 1.薬理作用
 チアゾリジン(thiazolidine)誘導体は、脂肪細胞の核内受容体型転写因子PPARγに結合し、試験管内(in vitro)で、脂肪細胞の分化を促進する。
 PPARγは、脂肪細胞に特異的に発現している、分化のマスター転写因子で、aP2遺伝子の上流プロモーター領域に結合する(注1)。

 チアゾリジン誘導体は、インスリン抵抗性のある糖尿病患者に投与すると、高インスリン血症、高中性脂肪血症、低HDL血症、インスリン抵抗性を、改善する。
 
 チアゾリジン誘導体は、肥満・インスリン抵抗性の動物を用いた実験結果では、「小さな脂肪細胞」の新たな分化を促進させ、「小さな脂肪細胞」の数を増加させる。

 チアゾリジン誘導体は、アディポネクチンを増加させ、インスリン感受性を高める。

 チアゾリジン誘導体は、炎症系(CRP)、凝固系(PAI-1)の、改善作用がある。

 2.アディポネクチン
 アディポネクチンは、レプチンと同様に、脂肪細胞から分泌されるホルモン(アディポカイン)で、インスリン抵抗性を改善する。
 肥満や糖尿病で、アディポネクチンの血中濃度が低下すると、インスリン抵抗性が、増悪する。
 アディポネクチンは、肝臓、骨格筋に、作用し、AMPキナーゼを活性化させる。AMPキナーゼが活性化されると、肝臓では、糖新生が抑制され、骨格筋では、糖(グルコース)の取り込みが増加し、血糖が、低下する。
 PPARγ欠損マウスの小型脂肪細胞は、レプチンや、アディポネクチンが、多く発現され、また、分泌もされている。
 アディポネクチンは、PPARα(注2)も、活性化する。AMPキナーゼも、PPARαも、脂肪を燃やす作用があり、β酸化を促進し、筋肉や肝臓に蓄積した脂肪を、燃やし、中性脂肪の蓄積を抑制し、インスリン感受性を、高めるという。
 アディポネクチンは、炎症性の(血管)内膜肥厚を抑制し、動脈硬化を抑制する。
 日本人の約40%は、アディポネクチンを分泌しにくい、遺伝子多型(SNP)を有している。
 食事療法で、体重を2〜3Kg減少させたり、運動療法で、体重を減少させると、血中のアディポネクチンは、上昇する。
 チアゾリジン誘導体は、肥大した大型脂肪細胞を、アディポネクチンを多く分泌する小型脂肪細胞に置換し、アディポネクチンの血中濃度を、2〜3倍程度に、上昇させる。チアゾリジン誘導体は、また、アディポネクチンの遺伝子の転写因子であるPPARγを活性化させ、PPARγは、アディポネクチンの遺伝子に結合し、その転写を促進させ、アディポネクチンの血中濃度を、上昇させる。
 インスリンは、アディポネクチンの分泌を、急性に増加させる。
 肥満のモデル動物では、アディポネクチンの分泌が低下するのみならず、筋肉や脂肪細胞で、アディポネクチン受容体が減少している(ダウンレギュレーション)。
 アディポネクチン受容体は、酵母にも存在する。生命機構の進化の段階で、アディポネクチンは、飢餓の際に、筋肉や肝臓などで、脂肪の燃焼(β酸化)を促進させのに必要なホルモンとして、備えられたホルモンとも、考えられている。

 注1PPARγは、peroxisome proliferator-activated receptor gamma(ペルオキシゾーム増殖促進受容体ガンマ)のこと。
 PPARγ2は、脂肪細胞の分化のマスター遺伝子で、脂肪細胞や、マクロファージに、発現している。
 チアゾリジン誘導体や、プロスタグランジンJ2代謝産物は、PPARγ2のリガンド。
 なお、PPARαは、フィブラート系薬剤の受容体で、PPARδは、大腸癌の発症に関与するという。

 注2PPARαは、アルコール性の肝炎、肝硬変に繋がる線維化や肝肥大を、抑制すると言う。
 その機序として、アルコールは、NFBを活性化させ (NFBは、核内に移行する)、炎症を引き起こすが、PPARαは、NFBと結合するIkBを細胞内に増加させ、炎症を抑制すると考えられている。
 納豆や味噌にも含まれている、フォスファチジルコリン(ホスファチジルコリン:レシチン)は、肝細胞内のIkBを増加させ、アルコールによる炎症を、抑制すると言う。

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