ビタミン  

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 糖質代謝:ビタミンB1脂質代謝:ビタミンB2、蛋白質代謝:ビタミンB6

 1.ビタミンA
 別名、レチノール(retinol)。淡黄色、脂溶性ビタミンで、酸化されやすい。
 11-シス-レチナールは、視細胞で、オプシンと結合して、ロドプシンを構成する。光のエネルギーを吸収すると、11-シス-レチナールは、トランス-レチナールに変化する。そうすると、視細胞の膜透過性が変化し、電気インパルスが生じる。
 ビタミンAが欠乏すると、暗順応(暗調応)が低下し、夜盲症になる。また、皮膚や粘膜の角質化や、易感染性が生じる。

 2.ビタミンB1
 別名、チアミン(thiamin:サイアミン)。水溶性ビタミン。
 抗神経炎の意味で、アノイリン(aneurin)とも呼ばれる。
 ビタミンB1は、体内でリン酸化され、チアミンニリン酸(TDP、又は、TPPと略記)になる。
ビタミンB1は、糖質代謝に重要:ビタミンB1は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼの補酵素になる。
 ビタミンB1が欠乏すると、
疲れ易くなったり、脚気、Wernike脳症(ウェルニッケ脳症)を起こす。Wernike脳症では、眼球運動麻痺、歩行運動失調、意識障害を伴い、アルコール依存症で、ビタミンB1不足だと発症するが、高カロリー輸液投与時に、ビタミンB1を添加しないで発症したWernike脳症では、後遺症として、記憶障害が問題になっている。
 ビタミンB1は、米ぬか、乾燥酵母(ビール酵母など)、豚肉、大豆(枝豆、納豆など)、ゴマ、のり、ウナギなどに、多く含まれいる。鶏卵では、卵黄に含まれるが、卵白には含まれない(注1)。精米した白米の食事だと、ビタミンB1が不足しやすいので、強化米、玄米の方が良い。
 ビタミンB1
は、アリシン(ニラ、ネギ、ゴマ、玉ネギなどに含まれる)と結合すると、アリチアミンになり、小腸から高率に吸収されるようになる。ビタミンB1は、アノイリナーゼ菌により分解されてしまうが、アリチアミンは、アノイリナーゼ菌により、分解されないという。

 3.ビタミンB2
 別名、リボフラビン(riboflavin)。黄色の結晶。
 ビタミンB2は、体内で、フラビンヌクレオチドである、FMN(flavin mononucleotide)と、FAD(flavin adenine dinucleotide)の一部となり、酸化還元反応で、水素(還元電子)の運搬体になる。
 
ビタミンB2は、脂質代謝に関与する
 甘い物(糖分)を食べ過ぎると、糖分の分解の為、ビタミンB2が消費され、皮脂の分泌量が増加するという。また、ビタミンB2の欠乏は、過酸化脂質の増加を来たすという。
 ビタミンB2が欠乏すると、口唇糜爛(びらん)、口角炎、口内炎などの症状が現れる。
 ビタミンB2は、八目ウナギ、強化米、乾燥酵母、レバー、糸引納豆、鶏卵、のりなどに、多く含まれている。

 3.ニコチン酸(ビタミンB3
 別名、ナイアシン(niacin)。抗ペラグラ因子として、発見された。
 ニコチン酸(注2)のアミド(ニコチンアミド)は、NAD+(nicotinamide adenine dinucleotide:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、NADP+(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)の一部となり、酸化還元反応で、補酵素として、水素(還元電子)を運搬する。
 ニコチン酸は、生体内では、必須アミノ酸である、トリプトファン(Trp)から合成され、腸内では、腸内細菌から合成されるので、通常、ニコチン酸の欠乏を来たさない。
 ニコチン酸が欠乏すると、ペラグラ(pellagra)を呈する。ペラグラは、皮膚炎、下痢、痴呆を3徴候とする。トウモロコシを主食としていると、トリプトファンが不足し、ペラグラになりやすい。ミトコンドリアで、ピルビン酸を代謝するピルビン酸デヒドロゲナーゼ(ビタミンB1が補酵素)は、NAD+を必要とするので、ニコチン酸が欠乏すると、ブドウ糖の代謝に障害が生じ、乳酸が蓄積して、疲労しやすくなるという説もある。
 ニコチン酸は、米ぬか、乾燥酵母、魚(ブリ、サバ、アジなど)、タラコ(明太子は、水溶性であるニコチン酸の含量は、減少する)、レバーなどに多く含まれている。


 4.パントテン酸(ビタミンB5
 パントテン酸は、CoA(コエンザイムA:補酵素A)の構成成分で、脂質、糖質、アミノ酸代謝に重要。
 パントテン酸が欠乏すると、エネルギー生成不全により、成長が停止したり、皮膚や毛髪が障害される。
 パントテン酸は、広く多くの食品に含まれている。また、パントテン酸は、腸内細菌によっても、合成されるという。
 機序は不明だが、パントテン酸(pantothenic acid)を投与して、細胞内のCoA量を増加させると、活性酸素の障害から生体を守る、グルタチオンの濃度が高まる。
 

 5.ビタミンB6

 別名、ピリドキシン(pyridoxine)。ピリドキサール(pyridoxal)、ピリドキサミンpyridoxamine)も、ビタミンB6活性を有する。
 ピリドキサールリン酸として、AST(GOT)などの補酵素として、働き、アミノ酸代謝や、各種物質代謝に関与する:ビタミンB6は、蛋白質代謝に関与する
 ビタミンB6が欠乏すると、ペラグラ様皮膚炎(ペラグラは、ニコチン酸欠乏症候群)、痙攣、貧血、高コレステロール血症などがあるが、普通の食生活では、ビタミンB6欠乏になりにくい。
 抗結核薬のINH(イソニコチン酸ヒドラジド)は、ビタミンB6の代謝に拮抗するので、大量投与すると、ビタミンB6欠乏症状を呈する。抗生剤(抗生物質)、抗うつ剤(抗鬱剤)、経口避妊薬によるビタミンB6欠乏もある。
 ビタミンB6は、魚(ヒラメ、イワシ、サケなど)、肉、クルミ、鶏卵、レバーなどに、多く含まれている。

 6.ビタミンB12
 別名、コバラミン(coblamin)。コバルト(Co)を含み、赤色を呈する。シアンと結合していて、シアノコバラミンとも呼ばれる。
 ビタミンB12は、胃粘膜から分泌される内因子(intrinsic factor)と呼ばれる、糖蛋白と、複合体を形成し、回腸から吸収され、血中を、トランスコバラミンと呼ばれる蛋白と結合して輸送される。
  ビタミンB12は、生体内では、補酵素として、メチルコバラミンと、アデノシルコバラミンの、2つの型で存在する:メチルコバラミンは、C1代謝に関与し、アデノシルコバラミンは、還元、転移、異性化などの反応に関与する。
 ビタミンB12が欠乏すると、悪性貧血(pernicious amenia:巨赤芽球性、大赤血球性の貧血に、知覚異常、しびれ感などの神経症状を伴う)を呈する。ビタミンB12欠乏は、内因子欠損が原因の場合が多い。
 ビタミンB12は、肉、レバー、鶏卵、魚、貝など、動物性食品に多く含まれている。しかし、ビタミンB12は、植物性食品には、含まれていない。

 7.ビタミンC
 別名、アスコルビン酸(ascorbic acid)。水溶性ビタミン。
 ビタミンCは、強い還元力を有する:酸化されると、デヒドロアスコルビン酸になる。
 ビタミンCは、コラーゲン(注3)合成の際に、プロリンやリシン残基の水酸化に必要。
 ビタミンCが欠乏すると、壊血病、皮下出血、易感染などを呈する。
 ビタミンCは、,新鮮な野菜、果物、レバー、緑茶などに含まれている(紅茶には、含まれていない)。

 8.ビタミンD

 別名、カルシフェロール(calciferol)。
 ビタミンDは、肝臓で、C-25位が水酸化され、腎臓(近位尿細管細胞のミトコンドリア)で、C-1α位が水酸化され、活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンD、1,25-(OH)2となる。
 1,25-(OH)2ビタミンDは、小腸上皮細胞に作用して、カルシウムやリンの吸収を促進させ、骨組織に作用して、カルシウムの動員を促進させ、腎臓に作用して、カルシウムの再吸収を促進させる。

 9.ビタミンE
 別名、トコフェノール(tocophenol)。
 α型、β型、γ型、δ型があるが、α-トコフェノールが、最も、活性が高い。
 ビタミンEは、抗酸化作用を持つ。
 ビタミンEが欠乏すると、動物実験では、不妊、筋萎縮(注4)などを呈する。
 ビタミンEは、菜種油(なたね油)、アーモンドなどに多く含まれている。

 10.ビタミンH
 別名:ビオチン(biotin)。
 ビオチンは、ピルビン酸カルボキシラーゼアセチル-CoAカルボキシラーゼなど、炭酸固定反応の補酵素として働く。
 ビオチンの欠乏は、湿疹、皮膚の落屑、舌乳頭萎縮などを呈する。
 ビオチンは、腸内細菌により合成され、また、多くの食品に含まれるので、成人では、アビジンの欠乏は、起こらない。鶏卵の卵白を生食すると、卵白に含まれるアビジン(avidin)とビオチンが結合して、生物利用性が低下し、アビジンの欠乏が、起こる。

 11.ビタミンK
 別名、ビタミンK1は、フィロキシン、ビタミンK2は、メナキシン、ビタミンK3は、メナジオン。
 ビタミンKは、肝臓での血液凝固因子(プロトロンビンなど)の生成に必要。
 ビタミンKは、腸内細菌により、合成される。
 ビタミンKの欠乏は、腸内細菌叢が定着していない新生児や、抗生物質を連用している患者で起こりやすい。また、ビタミンKは、吸収に胆汁を要するので、胆道閉鎖、肝不全などでも、欠乏する。
 ビタミンKが欠乏すると、出血傾向が現れ、新生児では、新生児メレナ(下血)、頭蓋内出血など、重症な疾患を引き起こす。人工栄養のミルクには、ビタミンKが添加されている。しかし、母乳は、ビタミンK含有量が少ない。新生児には、ケイツーシロップを予防投与する(ビタミンK2シロップ 2 mg/1ml を、10倍に希釈して 、出生24時間以内、6日目、1ヶ月後に内服させる)。
 ビタミンKは、緑黄色野菜、納豆(ビタミンK2)、鶏卵、肉類、魚介類、海藻類(あまのり、ひじき、わかめなど)などに、多く含まれている。
 
 12.葉酸

 英語では、folic acid。構造上、プテロイルグルタミン酸とも呼ばれる。
 葉酸は、抗貧血作用があり、ほうれん草から抽出された。
 葉酸は、体内で代謝され、還元型の5,6,7,8-テトラヒドロ葉酸(FH4)になり、核酸のプリン合成、ピリミジン塩基合成、アミノ酸代謝などに作用する。
 葉酸が欠乏すると、巨赤芽球性貧血(megaloblastic anemia)、舌炎、うつ病などを呈する(注5)。
 妊娠前から葉酸を投与すると、二分脊椎などの神経管異常の発生が抑制される。
 葉酸は、ほうれん草、ブロッコリーなどの新鮮な野菜、レバー、落花生などに、多く含まれている。

 その他、リポ酸(注6)、イノシトール(脂肪肝を防ぐ作用がある)、カルニチンユビキノン、ビオプテリン、フラボノイド類は、体内で、補酵素的作用を呈する、ビタミン様物質。

 ビフィズス菌などの腸内細菌は、ビタミンB群(B1、B2、B6、B12)、ビオチン、ビタミンK、葉酸ニコチン酸、パントテン酸、イノシトールを合成する。他方、腸内細菌には、ビタミンB1やビタミンCを分解してしまう菌も存在する。

 脂肪酸が、アセチル-CoAとなって、ミトコンドリアTCA回路で、代謝されるには、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3(ナイアシン、ニコチン酸)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンH(ビオチン)、葉酸の、8種のビタミンが、全て、所要量、存在することが、大切。もし、どれか、1つのビタミンが欠乏すると、代謝が、円滑に進まない(注7)。

 参考文献:シンプル生化学(改訂4版、南江堂、2003年)

 注1:鶏卵1ケには、コレステロールが、250mg含まれている。

 注2:ニコチン酸は、1867年に、Huberが、タバコに含まれる有毒成分の一つであるニコチンを、硝酸で酸化して得たのが、最初とされる。

 注3:コラーゲンは、筋肉では、筋繊維を束ねている筋周膜
や、皮(皮膚)の部分などに存在する。
 コラーゲンは、65度以上の熱で収縮する。
 コラーゲンは、動物の体を支持する役割があり、含まれるコラーゲン量は、動物の大きさに、ほぼ、比例するという:100g中の肉に、鶏肉は0.6g、豚肉は0.95g、牛肉は1.05gのコラーゲンを含有する。

 注4:廃用による筋萎縮では、筋繊維の数が減少するのでなく、筋繊維の太さが減少する。廃用による筋萎縮の程度は、遅筋(タイプI繊維)の方が、速筋(タイプII繊維)より、著明。また、速筋(タイプII繊維)では、タイプIIのサブタイプが、タイプIIbから、タイプIIaへと、変化する。

 注5:葉酸の不足は、血中ホモシステイン値の上昇を来たし、アルツハイマー病(認知症)の発症に、関連している可能性がある。

 注6:リポ酸は、チオクト酸、アルファリポイック酸とも呼ばれ、肝臓や、発酵食品にも、含まれている。リポ酸は、腸内細菌によっても、生成されるので、欠乏症は、通常、生じない。リポ酸は、肝臓における脂肪酸のβ酸化を抑制し、血中の遊離脂肪酸や、中性脂肪が、上昇するという。

 注7:8種のビタミンの内、ビタミンB1が、特に、欠乏しやすい。
 豚肉に含まれるビタミンB1は、調理すると、肉汁中に溶けて、喪失しやすい。

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