小話−マルシルートカ

町の中心から家へ戻る。

目当ての路線を見つけマルシルートカ(ミニバス)に乗り込む。
混んでいて、立つしかない。ドアのそば、乗り込み口の辺りに立つ。
“混んでる=しつこい客引きをしない”なので割とスムーズに進む。
疲れて早く帰りたかった私には嬉しい。

運転手の隣に立っていたお姉さん、しばらくするとドア付近に移動。
もうそろそろ降りるのかな? 
窓を開けて涼んでる。客の乗降がなければなかなか快適そうな位置だ。

・・・と、そのお姉さん、口に手を当てたかと思うと吐いた!
窓へ顔をだして。。。でも若干間に合わず、車の内側にもかかる。

つーか、そのお姉さんの真後ろにいた私は、一部始終を目撃。
ブツが流れてこなかったこと、私の隣の窓があいてなかったことに安堵。

が、かっこよかったのは運ちゃんである。
ダッシュボードから自分用と思われる水のペットボトルを
彼女に黙って差し出したのである! 
その後も、非難めいたことは一言も言わず。
かっこいい〜。しびれるね。

彼女は御礼を言ってその水で手を洗ったりうがいをしたり(窓の外へ)。
それから雑巾を借りて自分でドアの内側を拭いていた。

淡々とすすみ、また乗客を乗せたり、降ろしたり。
私的には、あのドアにはあまり触りたくないと思いつつ。

すると市場で止まった。ここは終点ではないのに。
なぜか「みんな降りてくれ、今日はやめだ。乗り換えてくれ」

・・・掃除したいのかな?
でもお金は全額戻してくれた。一人一人に5ソムを渡す。
で、またバスを待つ。結構待って、違う番号のバスに乗った。

こんなことがあったからだろうか、ただでさえ不安だったのに、
どこで降りればいいのか全く検討がつかない。
しかもバスは混んでいて運転手にたずねようにもタイミングが・・・

そうこうしてるうちに、あからさまに見慣れない風景になった。
ちょっとスペースがあいたときに運ちゃんに聞いてみる。
「○○はもう過ぎちゃった?」
「何? ○○はとっくの昔に過ぎたよ。乗り越したのかい?」
「えぇ・・・えっとこのバスはまた同じ道引き返す?」
「あぁ」

道幅が狭くなった住宅街を走っているバスに、対向車はない。
ここでバスを待つより、折り返してもらおう。バス代も浮くかも。
だって一通だったら、帰りのバスは拾えない!

人はどんどん降りていき、なぜか砂利道に突入。
わりと荒涼とした風景に住宅が並ぶ。ほこりっぽい。
砂利道を進む・・・ってゆーか這う。時速10kmか20kmといったところ?
だいぶ向こうに行き止まりっぽいところがあるが、あれが終点か?

対向ミニバスが来ると、運転手同士窓から長めの挨拶を交わす。
この隙に向こうに乗り換えようかと思うがタイミングはかれず。
とうとう最後の客も降りた(しかもこの客は「なんだよ、お前、
あの子をどうかしようってんじゃないだろうな」と運転手に
冗談っぽく言ってるように思えた・・・(会話はキルギス語))。

ただでさえ砂利道低速で、地の果てのようなここの雰囲気と、
予定ではとっくに家についてたことを思うと、気が滅入る・・・

案の定、行き止まりが終点。やっとバスは止まる。
見るともう一台が控えている。
「あっちのバスのほうが早く出発する?」
「うん、あっちに乗りな。それで乗り越しちゃったって。
 今度は運転手にどこで降りたいのか必ず先に言うんだよ」
「うん、ありがと」といって乗り換える。

言われたとおり「乗り越しちゃって○○で降りたい」と伝える。
するとさっきの運転手が近づいてきて、乗り換えたほうの運転手に
事情を説明してくれてるご様子(これもキルギス語なので想像)。
5ソムは払わなくてもいいみたいだ。ありがたい。

「乗り過ごしちゃったのか。どっから来たの?旅行?」
運転手はすぐに走り出す(といっても例の低速)と聞いてきた。
「日本からです、旅行で。今回初めて来たんです」
「へー日本!? どうだい、キルギスは気に入った?」
「はい、とっても。湖も行きましたよ」
「だろ? 自然がとってもきれいだし、いいところだよ」

自分のいるところが好きって素敵だよね。
その後も会話は続き・・・
「で、誰と来たの?え、一人?それはよくない。だから乗り越すんだ」
「結婚してるの?キルギス人と結婚してこっちに住んじゃえば(^^)」
「オシュに行った? 行く予定はある?」
などなど。

そんな会話をしてるうちに、乗り越して滅入ってた気分も盛り返す。
「○○についたら車止めるから、そこまで行ったらちゃんと自分で
 道わかる?帰れるかい?」なんて言ってくれて。。。(涙)
「はい、大丈夫です」と言って心の中で“思う”をつけたす。

実際○○についたらバスを静かに止めて、「ここだよ」と教えてくれた。
・・・ずいぶん乗り越したもんだ。
「ありがとう!」と笑顔でバスを降り手を振る。
おじさんもゆっくり強く頷いて車を出した。

キョロキョロ見回し、頼りないガソリンスタンドの看板を見つける。
もうちょっと目印になるものがあればいいのに・・・
どうにか家にたどり着く。門は開いていた。

夜、友達に乗り越しちゃった話をした。
心配されないよう「でも面白かったんだよ」と私が強調する前に、
「でも旅行だと、それも面白いよね」と向こうから言われた。
う〜む、分かってるヤツと嬉しくなった。
2004年10月
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