1.研究内容
1-1.発表者 奥島 俊介 氏(元王子製紙㈱専務取締役)
1-2.テーマ 「温暖化と太陽エネルギーの利用」
1-2-1.主な内容
※奥島氏は王子製紙での研究開発を主とする豊富な経験をもとに、温暖化の減少について豊富な資料をもとに現状の問題点を指摘され、地球を持続させるためには、太陽エネルギーの活用が重要なカギになることを分かりやすく説明された。太陽エネルギーの活用はバイオマスであり、その活用には植林が重要であり、「植林は世界を救う」が結論であった。
(1)地球温暖化は何に起因するのか
・炭酸ガスが温暖化のすべてであるような報告が多いが、データを見てみると疑問な点が多い。地球は大気があるので15℃を保 っている。大気がなければ―18℃になり、人類は存在しない。その点から大気中の炭酸ガスは重要である
・1880年から2000年までの炭酸ガスと気温の変化をみると、炭酸ガスは増加し続け、1970年以降の増加率は高くなっている。 一方、気温は1940年から1970年の間が減少しており、炭酸ガスの増加と一致しない時期があった
・炭酸ガス濃度は1991年から19993年は増加しておらず、ピナツボ火山噴火(火山噴火は炭酸ガスの大きな発生源)があり、 硫酸エアロ汁の影響で気温は上昇したことに対して説明がつかない
・過去40年(1965~1990年)の気温の変化は上昇しているが、その前後の10年を加えると横ばいとも取れる
・太陽の活動は10万年単位の周期で変動しており、このサイクルを考えると現状の温度上昇は今までのサイクルである
○温暖化については多くの要因があり、気温をとってみても正確な数字は把握しにくい。学者は自分の説に都合のよいデータを 用いて、議論を展開していることが多い。環境問題は複数の学者の説を客観的に見ないと判断ができ難い
(2)温暖化による影響はどの程度か
・気温を決める因子として放射強制力要素として炭酸ガスは気温を高める因子が最も高いが、水蒸気は気温を下げる効果が炭酸 ガスと同じ大きさの影響がある
・太陽の入射エネルギーは陸地と海洋で60%が吸収し、雲と大気から64%が放射されている。太陽エネルギーは雲が60~90%、 雪60~90%と高いが、森林3~10%、草10~30%、水5~25%の反射で、多くのエネルギーが吸収される
・気象変動、特に雲の影響が大きい。今までのデータをみると気温が上昇した後に炭酸ガスが増加している。また、海面の上昇 の後に炭酸ガスが増加しており、炭酸ガスの増加と温暖化は直接結びつかない
・海面の上昇は2090年時のシュミレーションの結果からも20cm程度であり、現状で陸地が少なくなっている地域は開発による地 盤沈下の影響である場合が多い
○温暖化の原因は炭酸ガスの濃度上昇によるとは断定し難い。人口増加で人から発生するエネルギーで温度上昇すると説く学 者もいる。いずれにしても人為的な炭酸ガス濃度の上昇は抑えなくてはならない。
(3)京都議定書に見る炭酸ガス排出量の規制と今後の課題
・京都議定書の基準の1990年は、ドイツは西と東の統一で排出規制は容易に実行できる環境で、イギリスは石炭から石油にエ ネルギー転換の時期で削減目標達成は容易であった。2000年時点で、イギリスは5%、ドイツは11%も目標以上の削減が達 成されたが、日本は19%削減、米国22%、カナダ25%と大幅な削減が必要となった。京都議定書に米国は批准せず、批准し たカナダは目標達成を放棄している。目標が達成できない日本が目標を守ろうとすることは無理がある
・日本はリサイクルを温暖化と結びつける人が多いが、リサイクルは資源枯渇対策である。金属、非鉄金属は限られた資源で リサイクルする必要があるが、プラスチック、紙のリサイクルはエネルギーをさらに消費するものであり、エネルギー減少 には反している。
○資源問題と環境問題を同時に解決するのは太陽エネルギーの利用、バイオマスの燃料化と資源化である
(4)バイオマスの活用
・バイオマスは植物由来の有機性資源であり、太陽エネルギーの有効活用である。
・地球に降り注ぐ太陽エネルギーは5.4×109PJ、植物の固定量は2.6×106PJで0.05%にすぎない。全世界の消費エネルギー (日本は全体の6%)は植物固定量の13%に相当する。英産城は植物固定量の有効活用で全世界の消費エネルギーは十分賄え ることになる。
・炭素源は、大気中(CO2)に7000Ct 、陸上植物中に6500Ctあり、陸上植物がバイオマスの蓄積量になる。このうち森林が90% を占めており、木質バイオマスの活用が今後の優先課題になる
・バイオマスは石油代替として有効であり、RFP,ガス化、アルコール燃料、KP(クラフトパルプ化)法などの燃料としての利用 と、メタノール、乳酸などの化学原料としての利用がある
(5)日本のバイオマスへの取組み
・日本の一次エネルギーは、2010年にバイオマス関連で2.1%、太陽光・風力・その他で0.9%をまかなう計画である
・KP(クラフトパルプ化)法は優れた省エネルギープロセスである。スタート時のみ、外部からエネルギーを補給する必要があ るが、運転が開始されれば、逆にエネルギーを発生するエネルギー源としてもすぐれたプロセスである。
・木質バイオマスの原料確保のために森林を更新していくことが重要となる。適度に伐採と植林を繰返して、成長期の樹木が 多くないと、吸収CO2は排出CO2より大きくならない。ユーカリは7年、杉は30年程度で伐採するのがCO2削減には最も効率的 である雑木林成長量は3M3/ha/年に対し、ユーカリの成長量は20M3/ha/年と大きい。最近は40M3/ha/年の優良種もあり、遺 伝子組換えで60M3/ha/年の品種もある
・ユーカリは窒素、リン、カリの土壌養分摂取量が大豆、トウモロコシに比べて少なく、コーヒーと同等で、土壌への影響は 少ない。また、生態系への影響も大きくないことがわかってきた
・環境ストレス(干害、塩害、酸性土壌、病害虫、高温、冷害など)耐性ユーカリのバイオ技術による育種が進んでいる 耐乾燥・耐塩性ユーカリは現在降水量800mm以上でしか育成できないが,400mmまでの改良品種ができればオーストラリア だけで世界のバイオマス原料が充足できることになる
(6)今後のバイオマスへの期待
・木質バイオマスはエネルギーとともにエタノールなど化学原料にも有効である。米国は雑草からのエタノール製造を検討し ており、日本も森林からのバイオエタノール製造技術の確立を加速する必要がある。
・木質バイオエタノールは、樹木→木材→セルロース→バイオプラスチックス→バイオ燃料→CO2(大気中)→(光合成)→樹木 のカスケード利用に期待がかかっている
・結論として「植林は世界を救う」ことになる
(7)最後に
・講演はオープンな雰囲気のもと、多くの質問・意見に応えながら行っていただき、皆さんのバイオマスへの理解が高まると
ともにその重要性を再認識した。
・講演では奥島氏が視察した植林などの写真など豊富な資料が示され、非常の興味深い内容であった。
・講演でとくに強調されたことは、「物事の真実を正確に見る目が重要である。環境問題は真のデータがない(わからない) 場合が多く、物事の全体を見て、長期的な視野で判断ができる目が重要になる」ということであった
・今後の地球の将来を考える上で充実した講演であった
報告者:小山 リーダー
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