1.研究内容
1-1.発表者 殿村 順一 会員
1-2.テーマ 「ISOと内部統制 ~失敗事例と是正・予防処置―その2~」
1-2-1.ISOの現状
1.登録件数はGMSで減少し、EMSでは微増している。
・GMSの2009年2月末の登録件数は、41,229件で2006年12月のピークに比し3.5%減少している。
基礎金属・加工金属製品3.3%増、ゴム製品・プラスチック製品と食料品・飲料たばこが各2.6%増など増加している業種があるが、建設業9.5%減、エンジニアリング・研究開発9.3減など減少した分野が増加している。
・EMSの登録件数は、2008年12月末で20,777件で2007年から微増の状況が続いている。増加したのは基礎金属・加工金属製品7.7%増、機械・装置7.7%増、ゴム製品・プラスチック製品6.5%増であり、公共行政14.9%減などが減少している。
・ISO取得企業の中には、「ISOが重荷になっている」「形骸化している」「コストに見合う効果がない」などで、「役に立たない
経費や手間」「料金・審査への不満」から「ISO認証は経営の役に立たない」が登録を中止する主たる理由である。
・ISO取得企業の不祥事(三菱ふそうタイヤ脱落事故、三菱自動車のリコール隠し、関西電力自主データ捏造、JFEスチールや
昭和軽金属の水質データの改竄、製糸会社の古紙配合率偽装など)もISOの信頼性を低くしている。
・経済産業省は、ISO取得企業の不祥事を問題視し、平成20年7月29日に「マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン」を公表した。
・ガイドラインは、「狭義の説明を行った企業は一定期間認証を行わない」「重大な法令違反がある組織は認証を保留する」「重要な組織活動は認証範囲に含め、社会に誤解を与えない」「審査員の質の向上と均質化への取り組み推進」「機密情報の考え方を明確化」などで認証にかかわる規律を確保するとしている。
・MS信頼性ガイドライン委員会(認定機関、認証機関、学識経験者から構成)は2009年7月アクションプランを報告した。
・アクションプランの概要は、「認証機関の規律の確保(虚偽説明企業は認証取り消し、その後1年認証受付しない)」「審査員の質向上と均質化」「認定、認証に関する情報公開の充実」「有効性審査の徹底」「認証制度の積極的広報」「ガイドラインの国際整合化及び遵守の徹底」となっている。
・審査は、マニュアルの均質化による型どおりのものではなく、個々の企業に対応した改善の方向が分かるような審査に改善していく必要がある。
1-2-2.ISOと内部統制
・内部統制の必要性は、米国でエンロンとワールドコムの粉飾決算に端を発し、2002年サーベンス・オックスリー法(企業改革法)の設定で「内部統制の充実・強化」「経営者の責任の強化」が義務付けられた。
・日本でも、2003年の雪印偽装、2004年西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載、2005年カネボウの巨額粉飾決算、2006年のライブドアの証券取引法違反などで、日本版SOX法が2005年7月26日に公布され、2006年5月1日に施行された。
・平成19年2月15日に企業会計審議会の意見書、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について」が運用基準になっている。
・財務報告での内部統制の目的と定義は、「業務の有効性及び効率性」「財務報告の信頼性」「事業活動における法令等の遵守」」「資産の保全」の4つの目的が達成されている合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべてのものによって遂行されるプロセスを言う。
・内部統制の構成要素は、「統制環境」「統制活動」「リスク評価と対応」「情報と伝達」「モニタリング」「ITへの対応」の6つである。
・内部統制とISO9001は、「手順を文書化した業務の見えるか」「有効性と効率の向上が目的」などで共通性が高い。
・内部監査は、内部統制の目的が達成されているかを監査するもので、PDCAサイクルを回す仕組みの構築とモニタリングを必要としている。
・内部監査は、「業務の流れが見える」「不正が生まれにくい」「部署間の牽制機能が働く」「人材の育成に似結びつく」などの効果があり、重要である
・企業の不祥事は、内部告発により顕在化するケースが多い。公益通報者保護法(2006.4.1)の影響もあるが、雇用形態の変化により、雇用者の意識の変化が大きい。また、創業社長一族の倫理観の欠如、正義漢・倫理感の強い社員の告発などが内部告発増加の原因になっている。
1-2-3.内部統制とリスク
・組織に関するリスクは、「価値観不良」「戦略・企画不良」「情報伝達」「環境変化」「組織構成不良」「組織運営不良」「生産性低下」「組織不活性」「モチベーション低下」などである
・リスク対策に向けて、リスク分析からリスク評価が必要である。優良中小企業は社長がリスクへの「気づき」があり、総務部門がリスク対策を考えている。
・失敗の原因分析が出来ていない企業が多い。
・企業の失敗原因は、「人・組織(マン)」「材料・部品(マテリアル)」「手順・手段(メソッド)」「機械・設備(マシーン)」「情報(コミュニケーション)」の各視点から分析する。「人・組織」の原因は、「心」「技」「体」の3点で調べる。
・「設計ミス」の原因は、「技術不足」「注意不足」「照査不足」「その他(調査不足、決定根拠、協議不足、時間不足、使用不明確など)」網羅的に調べる。
・失敗事例とした、「放水路カルバートトンネルの設計ミス」「擁壁の沈下」の報告があった。
・四日市の化学メーカーの焦れを取り上げ、全員で議論した。廃棄物が多いプロセスで廃棄物処理に巨額な投資が必要なため、有害物質を廃棄物中に混ぜて廃棄していた。この企業の製品は、独占的要素があるが、製品価格が安く、廃棄物処理に対応できないのが実情である。抜本的に企業体質を改善しなければ、改善しない典型的事例である。
報告者:小山リーダー
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