1.研究内容

1-1.発表者 林 譲 会員

1-2.テーマ 化学物質規制の動向から(化審法改正の動きとREACH規制の概要)

1-2-1.主な内容                    

1)化学物質規制の動き

EUの化学物質管理のREACH規制が20076月に発効され、20086月から対象物質の登録が開始されている。このREACH規制の背景と内容について、日本の化審法を対比して詳細な説明があった。

・世界の環境政策は1972年のストックホルムの国連人間環境会議で始まり、1973年に国連環境計画が発足した。

・日本の化審法は国連環境計画を背景にし、カネミ油症事件のPCB規制が急がれたため、1973年に制定された。

19992年の国連環境開発会議(リオサッミト)のリオ宣言で、「環境の破壊を保護する予防的アプローチの展開」と「汚染者

負担の」の原則など、27項目の減速が示された。

2002WSSD(持続可能な開発に関する地球サミット)で「地球物質に関する世界共通の中長期目標の2020年までに達成する合意」がなされ、2006年の国際化学物質会議で「国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ」が採択され、「化学物質の分類と表示に関する世界調和システム(GHS)」を2008年までに実施することが提唱された。

2)化審法について

1973年に制定された日本の化審法は、「環境中の動植物に影響に着目した審査・規制制度の導入」「難分解性・高蓄積性既存物質の規制の導入」「環境中に放出可能性に着目した審査制度の導入」「事業者が入手した有害性情報の報告の義務付け」が

ポイントになっている。

・化審法の監視化学物質は第1種(難分解性、高蓄積性、人及び高次捕食動物への長期毒性あり)、第2種(高蓄積性なし、難分解性で長期毒性の疑いあり)、第3種(難分解性あり、動植物一般への毒性)であり、第1種は年間1トン以上の製造・輸入者には、届け出の義務化がなされている。

・ヨーロッパは予防的原則で人に蓄積するものは全面禁止であるが、日本と米国は予防的アプローチを採用し、メリットとデメリットで使用の制限を判断する方向である

・化審法は2020年世界共通の目標に向けた新体系に向けて、「WSSD目標を踏まえた化学物質管理の基本的考え方であること」

 「化学物質の上市後の状況を踏まえたリスク評価体系を構築すること」「リスクの観点を踏まえた新規化学物質事前審査制度の高度化」「厳格なリスク管理措置等の対象になる物質の扱いを明確化」のそれぞれについて詳細を検討している

・化審法は化管法・PRTR法と関連が深い。

・化管法・PRTR法では第1種指定化学物質(354物質、PRTR制度・MSDS制度適用)、第1種指定化学物質(81物質、MSDS制度適用)から、354物質を463物質に、81物質を100物質に増加する対象物質の見直しを行っている。

 ヨーロッパでは対象物質は3,400物質の多くに亘っている

3)REACH規制の要約

EUに販売する物質、調剤、化学物質を使った成型品の抗生物質は登録されていなければ販売できない

 ―条件は、1物質1企業1年間の取扱量が1トン以上、登録料は仕様量と企業規模で異なり、30万から300万円程度である

・対象物質は、新規化学物質及び既存化学物質

―軍事用、医薬品用などは除外

・登録時期

―新規物質 200861日、

―既存物質 200861日 予備登録すれば最大11年以内に正式登録すればよい、

・登録は技術文書1式を共同登録できる

・特定物質は認可対象、上市制限対象とされる

・情報提供

 -販売する物質、調剤の物質情報はSDS(MSDS)で顧客に伝達する。SDSには、使用方法(暴露シナリオ)によるリスクを伝達する

 -成型品中に0.1wt%以上の高懸念物質が含有する場合は、顧客消費者に安全取扱情報を提供しなければならない

4)PEACHの運用

①評価

・管轄の化学品庁は、規制の運用を確実にするために、登録文書の評価と登録物質の評価を行う

・登録から評価までは約2年近くの期間が必要となる

②認可

・人や環境に深刻な影響を与える高懸念物質は、製造・使用に際してリスクを評価し、EU全域で規制される認可のシステムが導入される。高懸念物質は、発がん性物質、変異原性物質、生殖毒性物質、PBT物質、vPvB等の物質である

③制限対象物質はREACHの付属書類に200961日までに公表されることになっている。

この書類のインベントリーに記載された物質、調剤、成形品は、その条件に該当するときは製造、上市、使用ができない

5)情報の伝達

REACH規制では「化学物質を安全に使用する」という最終的な目的達成のために、サプライチェーン上で物質情報の伝達が

不可欠であるとし、高懸念物質(SVHC)を含有する成形品の情報提供を義務付けている

6)安全性データシート(SDS

SDSは、物質の性状とそれらを使用する際の安全な手法についての情報で、サプライチェーンの風下に向けて伝達される

REACH規制では、旧来の内容は引き継ぎ、化学物質安全性報告書を作成する義務のある事業者には、暴露シナリオをSDS

 付属書として添付することが要求されている

・暴露シナリオは、化学物質の製造や使用、その化学物質が使われた製品が廃棄された際に、化学物質の放出や排出、漏えいの量

 を人の健康や環境に悪影響を及ぼさないレベルに管理する措置方法の提案である。

7)最後に

REACH規制は、開始されたばかりでこれから問題点の整理・規制の改定が行われていく段階で実務上明確でない部分も多い。

 ただ、環境の破壊を保護しなければならないのは、一刻の猶予もないのが事実である。

REACH規制に迅速に対応していくのが化学物質を大量に扱う企業の生き残る道であろう



報告者:小山リーダー

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