1.研究内容
1-1.発表者 吉澤 有介 会員
1-2.テーマ A区における中小企業の実態(マッチング事業の現場からの報告)
1-2-1.主な内容
はじめに
A区におけるマッチング事業で多くの企業を訪問した。08年の経済変動の激しい時代の中で、中小企業は厳しい対応を求められている。この経済変動による影響は、企業によりさまざまである。元気な中小企業はいくつも存在している。
中小企業の現場を歩いて、一般報道では分からない良い面と厳しい面を確認できたのは得難い経験である。
1)マッチングジ事業の概要
・マッチング事業は、中小企業に対して「受発注紹介」「セミナー・講習会」「創業・経営支援」「融資相談」「経営相談」
「販路開拓相談」を通じて、中小企業と区・企業・公的研究機関とのマッチングを図るもので、従来からの工業会や異業種交流会に参加していない多くの企業の発掘も意図している。
・対象企業の業種は問わずに、区の半数近い企業にアプローチする予定である。
2)08年の経済変動の影響
・原材料の値上げはすさまじく、鉄鋼は3倍に跳ね上がった。
・08年8月からの金融パニックで影響が大きくなり、9月から影響があった企業、11月から発注が止まった企業、09年1月から大きな影響が出てきた企業と影響時期はさまざまである。9月に影響があった企業では、1月現在少し回復の兆しがある企業も出てきており、 業種・業態により大きな差が出てきている。
・製造業は、一般に、企業用途の受注は激減したが、民生用途はほとんど影響していない。
3)企業訪問の現場で見た中小企業の実態
経済変動の影響から中小企業を下記の7つのタイプに分類してみた。
①
独自技術で快走する中小企業
・理容業向けハサミ用のねじで国内8割、海外6割のシェアを占める従業員15名の中小企業がある。ねじに創意工夫があり、この社のねじサイズがスタンダードになっている。アモルファススリッターに特化して国内シェア6割の企業がある。自動車整備工場で、全車種対応の電装検査機器を開発、口コミで顧客拡大した企業がある。これら企業は独自の技術を開発し、その技術が口
コミで広まり、販路を拡大した例である。インターネットの口コミはグローバルである。
②
販売戦略で急成長した例
・インターネット直販で急成長した鞄屋は、ホームページと製作現場を見学できるショールームで「職人の技の見える化」を行って顧客の信頼を得ている。
・花卉材料のニッチ市場を通販ベンチャーで販売し、成功している。
③ OEMで好調
・化粧品分野で、開発から製品化までOEMの製品を供給している企業がある。多品種小ロットでは設備の問題点があり、OEMに頼る企業が多い。家庭用洗剤でも同様な方式で、OEM製品を供給し、成功している企業がある。
④ 新市場の拡大
・テレビ放送などのセット向け構築物で成功している企業がある。アルミの溶接技術を活用し、従来の鉄鋼に代わる軽いアルミを用い、イベント行う場所で容易に構築できる点が評価されている。
・特殊市場として、海外旅行用変圧器付電源で100%に近い高シェアを持っている企業がある。
・焼肉用金網の洗浄を引き受ける企業があり、ニッチ市場で成功している。
⑤ 独自技術を持ちながら市場縮小して低迷している企業
・生産拠点の海外移転、特殊用途で需要が急減などの要因で低迷している企業に、油圧技術、多軸タップ加工、漁船用照明反射鏡メーカーなどがある。
⑥ 受注減少にそのままじっと耐える冬眠型企業
・製造ラインメーカー、金型メーカーなどで、じっと耐えて冬眠状態の企業がある。これらの企業は、冬眠できる最低限のベース・ロードと今までの蓄積を持っている。
⑦ 受注がありながら運転資金が不足している企業
・省エネLED照明技術を開発した企業、ふかひれ加工で国内ナンバーワンの企業、FRP加工の企業などは、過去の事業の失敗が尾を引き、金融機関からの信頼が得られていない。
4)これからのマッチングの方向
①新減益による技術支援
・2007年問題に代表される大企業から放出される大量の定年退職者を有効活用する必要がある。
②参加しやすい異業種交流会の開催
・異業種交流会は義務のある会が多い。参加者の負担が大きいと長続きしない。義務付けのないフリーな会が数多く必要である。
③前向きな金融支援への具体策の提案
・事業評価で事業として利益が上がっていれば、積極的に金融支援することを診断士の立場で提言していく。
④燕三条の近況
・燕三条では、工場団地に職人を集め、受け皿を大きくすることで、従来にない受注を獲得している。
5)最後に
・この厳しい経済環境でも、対応の仕方はさまざまであり、この苦境を糧として強く生き伸びていける企業も多い。診断士として広い視野を持ち、積極的に提言していける場に参加していくことが重要である。
報告者:小山リーダー
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