1.研究内容
1-1.発表者 竹村 一太 会員
1-2.テーマ 「知的資産経営を活用したものづくり中小企業の販路開拓」
1‐3. 内容
(1)
知的資産経営とは
知的資産経営とは、競争力の源泉や強み(知的資産)を把握し、それを活用することで業績の向上に結びつける経営手法をいう。
知的資産とは、企業等の競争力の源泉としての、人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、顧客とのネットワークなど、財務諸表には現れてこない資産の総称である。
業績向上に結び付けるためには、知的資産を保有するだけではなく、ステークホルダーに効果的に魅せ、有効活用し、価値を実現することが重要になる。
例えば、知的資産を顧客や取引先に伝えて販売促進や販路開拓に結び付けたりすることができる。
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富士通総研の調査によると、販路開拓と情報交換を両立することが有効である。販売先数が増加し情報のやりとりを減少させた中小企業に対し、販売先数の増加と情報のやりとりを共に増加させた中小企業のほうが、売上高が増加した企業の割合が高い(30%に対し80%)。また、品質などへの訴求力が向上し、低価格競争に巻き込まれるリスクも低減するようである。
では、取引先が求める情報には以下のどのようなものが挙げられるだろうか?
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中小企業金融公庫の調査によると、中小企業の取引先が求める情報(上位4項目)には、①信用情報の評点、②経営者個人の資質、③口コミでの評判、④業界内での企業・商品ブランドの認知度、などがある。これらのうち、②~④は、知的資産の範疇に入るであろう。
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知的資産の中でもブランドは重要なもののひとつである。経済産業研究所の調査によると、企業・商品ブランドの効能(上位4項目)としては、①品質を保証し安心を与える、②他社の商品とわかりやすく選別させる、③企業または商品の知名度を上げる、④企業または商品のイメージを上げる、などである。
金融機関が貸出に際して重視する情報にはどのようなものがあるだろうか?
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中小企業総合研究所の調査によると、貸出に際して、金融機関が、重要度が増したと回答している情報(上位6項目)には、①債務償還能力、②計算書類等の信憑性、③業界での評判、④金融機関の収益性、⑤技術力、⑥代表者の資質、などがある。これらのうち、③、⑤、⑥が知的資産の範疇にはいるであろう。
以上のように、ステークホルダー(顧客・取引先、投資家・金融機関、就活者、社員など)に効果的に自社の知的資産を伝えることにより、販路開拓や資金調達、人材採用や社内マネジメントなどを効果的に進めることができそうである。
(2)
知的資産経営の動機
中小企業基盤整備機構は、2009年度より3年計画で、中小企業1000社の知的資産経営報告書(魅力発信レポート)を作成し、特設Webサイト(魅力発信レポートWeb)に掲載するという中小企業魅力発信レポート作成支援事業を進めている。
この事業に応募して魅力発信レポートを作成した中小製造業3社の応募の動機を見てみよう。
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A社の応募の動機は、販路開拓であった。創業以来、代理店経由で受注し、産業用装置の製作や組立を行ってきた。最近、初めて自社ブランドの汎用機器の開発に成功し、販路開拓が経営課題になった。ところが、初めての自社ブランド品のため、A社のことを知っているエンドユーザーはほとんどいない。そこで、レポート作成支援を受けて、経営戦略を再構築するとともに、自社ブランド品の特徴だけでなく、A社の技術力や開発力(人や組織の力)をアピールすることにした。
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B社の応募の動機は、新卒採用であった。 B社は、複数の事業分野をコアとする中堅企業である。数年前、社長交代を契機に経営の質を向上するめの取り組みを始め、業績も向上した。こうした取り組みや業績が認められ、地域で表彰を受けた。次なる課題は、人材確保であった。数年前より、新卒採用を開始した。ところが、一般消費者には馴染みの薄い製品が多く、新卒採用では苦労している。そこで、レポート作成支援を受けて、自社の魅力をわかりやすく学生に伝え、採用活動を進めることにした
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C社の応募の動機は、販路開拓、資金調達、人材採用であった。C社は、新製品を核とした新規事業の立ち上げが経営課題であった。公的な助成を受けて新製品開発に成功し、新規事業戦略を策定して経営革新計画の認証を取得した。次なる課題は、戦略の実行である。具体的には、エンドユーザーへの販売促進、ベンチャーファンドなどからの資金調達、人材採用などが課題となった。そこで、レポート作成支援を受けて、経営戦略を再確認するとともに、取引先、金融機関、就職希望者などに情報発信を行うことにした。
このように、応募の動機は、販路開拓、資金調達、人材採用が多いようである。
(3)
支援の実際
経営者のリーダーシップは重要である。比較的規模の大きい中小企業では、従業員が担当を任されている場合がある。このような場合、経営者に直接インタビューできなかったりすると、理念やビジョンが確認できず、レポート作成に支障がでる。
従業員を巻き込むことが望ましい。比較的規模の小さい中小企業では、代表者だけが対応することがあるが、従業員の参画を依頼したい。『社員の声』や業界動向調査などに従業員の参画を得ると、従業員がレポート完成後に積極的に活用してくれるようになる。
当たり前だが、現場の訪問工場など『現場』を訪問し、目で見て、耳で聞き、よく確認することが肝心である。
バランス・スコア・カードによる「見える化」が有効である。企業は、ベネフィットが高く、競争力のある製品・サービスを提供し、顧客を創造し、利益を得て事業を継続している。知的資産経営とは、このような競争力の源泉を明らかにして活用するものである。従って、バランス・スコア・カード(BSC)によって、「見えやすい」財務の視点や顧客の視点だけでなく、「見えにくい」業務プロセスの視点や学習と成長の視点に掘り下げて、知的資産を『見える化』することが有効である。
報告者:竹村会員
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