1.研究内容

1-1.発表者 小山 武夫 会員 

1-2.テーマ 「メイドインジャパンは終わるのか ~「奇跡」と「終焉」の先にあるもの~」

1‐3 内容   

(1)    はじめに

Ø         日本のモノ作りは、80年代の世界No.1から、バブル崩壊以後の「失われt10年」を経て、国際競争力が低下していると見る人が多い。東北大震災を踏まえて、日本のものづくりの競争力を検証しようと試みた。

Ø         参考資料は、「ものづくり白書2011」、経済産業省、20111025日刊、「メイドインジャパンは終わるのか」青島矢一、武石彰、マイケル・A・クスマノ著、東洋経済新報社、2010812日刊、「ゲームが変わった」中村吉明、東洋本経済新報社、2011929日刊などである。

(2)      日本経済とモノづくりの現状

Ø         経済成長率、80年から91年度まで3.9% 、92年~01年度は1.0%に低下、経済成長率2.3%と回復に向かう 、2000年代前半は、民間サービスが3.3%、公共サービス1.7%と成長 製造業は1.6%の減速 200年後半はリーマンショックの影響が大きく1.8%の減速、世界同時不況の影響により2009年第四半期にマイナス4.8%、その後、主として輸出や最終消費支出の伸びにより上昇傾向にあった。2010年秋頃から輸出が弱含んだこと、エコカー補助金が終了したことなどから足踏みの状態となり、2010年第四半期は マイナス成長に転じ、東日本大震災が発生。生産活動の低下や、最終消費支出の減少で、2011年第四半期はマイナスとなった。

Ø         製造工業の生産は、業種によるばらつきはみられたものの、リーマンショックの影響から徐々に持ち直しつつあったところ、東日本大震災が発生。特に輸送機械工業において 記録的な落ち込みとなったが、足下では震災の影響から回復しつつある

Ø         海外展開による利益は、北米・欧州の割合が縮小する一方、アジアなど新興国市場で獲得する傾向が強まっている。

Ø         設備投資の海外比率は上昇傾向で、自動車など海外投資額が国内投資額を上回る業種もあり、新興国需要の高まりを背景に、海外重視姿勢が鮮明化している。

Ø         完全失業率(季節調整値)は、20097月に過去最高の5.5%を記録した後、低下傾向にある。また、有効求人倍率(季節調整値)は、20098月には0.43倍と過去最低を記録した後、20118月には0.66倍に達するなど、緩やかに上昇傾向にあるが、雇用情勢は依然として厳しい状況にある

(3) 日本のものづくり産業が直面する課題と展望

Ø         国際的な構造変化に直面する我が国製造業

円高の進行、経済連携協定の整備の遅れ等、事業環境は厳しい。一方、レアアースの入手困難等、資源環境制約も強まり、

各国の産業振興の下、新興国の生産基盤は高度化しており、日本の国際競争力は低下する傾向。

Ø         東日本大震災後の我が国製造業の動向

東日本大震災は、東北・関東地方の製造業に甚大な被害。また、部素材供給の途絶が、国内外のサプライチェーンに広く

影響。原子力発電所事故によって、「高品質」「安全性」の日本ブランド悪化した。

今後、日本の製造業が世界を牽引していくため、攻めの投資と雇用を通じて、競争力の源泉たる国内ものづくり基盤の

維持・強化が重要。強みを収益につなげる海外投資等によるグローバル市場の獲得が重要。

(4)日本のビジネスシステムの優位性はあるのか(80年代の成長理由のプラス意見と90年代の減速理由のマイナス意見)

Ø         雇用制度 は、

 +終身雇用と社内人材の活用が、社内トレーニングなどの 高水準企業内投資を促し、生産性向上や品質改善を達成

 -生産性は、スキルや知識で決まる終身雇用制度を廃止すべき

Ø         報酬システム

 +批判があったが、企業の連帯感を高めるものと評価

 -個人の成果を企業の収益性に連動させていない 。収益性だけが、戦略に健全性をはかる唯一の指標。

Ø         事業戦略

 +ゲームのルールを塗り替える立役者で、オペレーションの優秀さが競争力の真髄

 -景気低迷で、コストダウンできない日本企業、海外での拡大、技術力拡張手段がM&Aの積極的活用 が不足。

Ø         ガバナンス制度

 +株主の利益より社員の利益を優先する日本のあり方は、経済的価値を生み出すうえで、株主モデルと同様に期待できる

 -ハイリスクな財務戦略や生産設備の過剰な投資があり、内部登用の取締会では強いコントロールがない

 -資金供給を銀行に依存、株主の企業統治の影響が軽微 。垂直的系列の企業間ネットワーク、国内価格競争がない 。

Ø         縦系列構造(垂直的系列)

 +親会社は付加価値の高い活動に専念 、関連会社などは付加価値の低い活動 は、米国ではできない共同開発プロジェクト

 -米国は進化した供給会社とのネットワークで拡張型企業を構築、日本版縦系列より柔軟性に優れる 。

 -縦系列は硬直的で、コストが安く能力もある企業への切り替えが難しく、日本参入を妨げる非関税障壁。

Ø         政府の企業への関与

 +大企業と中央政府の官僚機構を結び付ける様々なネットワークが幾重にも存在する 。

 -経済発展志向型の政策緩和をすべきなのに、国内産業の保護の強化を採り、敗者を保護する方向になり、効率的な部分が

徐々に失われていった

 -日本の再生と日本経済の回復が遅れた自動車、家電、ロボットなど競争力の強い産業は政府がほとんど関与していない

Ø         「日本の奇跡」と「日本の終焉」は誤解を招いている

  「80年代と90年での日本を理解するには、教育水準が高く、素晴らしい技術力を持ち、社内の団結力も高いといった多く

  の強みを持つ国が、歴史上で巨大な資産ブームを経験した80年代後半を中心に,基本的な規律とやる気を失った点に着目

すれば理解できる。成功とあたかもただのような資本で、企業は向こう見ずな拡張と多角化に走ったとの見方である。

Ø         日本経済の調子の良い時は、強い産業を分析して褒め称え、調子が悪くなると弱い産業の弱点をあげつらう 。

経済が好調な時と不調な時に取上げる分野が異なることが、日本の競争力評価にふれ幅を大きくした

(5)日本再生の処方箋

Ø         強い産業こそが日本経済の今後の発展のけん引力になる。製造業は、輸入品に価値を加えて海外に供給しており、

  今後もけん引力としての重要性は変わらず、推進のエンジンは技術集約的産業である。

Ø         企業活動を革新する

東北大震災は企業活動を革新する大チャンスであり、特色をもつ商品を売る大企業が顧客の別の需要に目を向け、

その商品より劣るが、新たな特色を商品を売り出す新興企業の動きに対応していく。

また、日本は過去の成功体験から抜け出し、中国や韓国との競争に打ち勝っていく。

Ø         新しい市場を開拓する

内需で活動してきた企業も海外展開を考え、先進国だけでなく新興国も含め、製品輸出と共にインフラ輸出を含める。

Ø         優れた技術だけで売れる時代は終わった

高性能だけが売りの製品のニーズは高くない、環境性能など機器性能と違った要素が消費者の購買に必要、

消費者ニーズを踏まえた製品の開発・製造・販売の戦略、市場が欲するものを十分考慮した研究開発が必要

Ø         弱体化した内部能力を回復する

内部能力と外部能力との適合を図る。適切な外部環境を選択する 。外部環境に働きかける 。

外部環境に合わせて能力を変革する

(6)報告内容についての議論

Ø         日本の国際競争力について考えなければいけないと思うが、内容に明確な結論がないため、全体にわかり難い。

Ø         現状で生き残れる企業は進化しており、90年代に対するマイナス意見の内容はすでに改善されている。


報告者:小山L

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