1.研究内容

1-1.発表者 殿村 順一会員 

1-2.テーマ ISO審査員として10年を振り返って」

1‐3 内容   

(1)ISOの現状と課題テーマ選定の背景

1)審査機関と審査員

9001の審査機関は、2005年の68機関から2012年の63機関に減少した。14001の審査機関は58機関から61機関に微増している。

認証件数が伸びている審査機関もあるが、認証のための価格値下げを行っている機関である。このため、御多分にもれず審査機関間の価格競争になっている、

9001の審査員の現在の人数は公開されていない。14001の審査員は現状6864人で、ピークの6割位まで減少している。

これらの傾向は、認証件数の減少と同様な傾向になっている。

商品のライフサイクルでいう成熟期から衰退期に移る時の売上高と利益の関係は、ISO認証機関の売上高と利益の関係と一致している。よって、新規に認証を求める企業も採用遅滞者の属性にあるところしかなく、ほとんどが更新審査を受ける企業である。これらのことから、ISO はまさに、成熟期から衰退期に移行したといえる。

 

2)認証を受けている企業

ISO9001

9001で登録件数が増えている業界としては、基礎金属、造船業、再生業がある。減少の高いところは、建設業である。

なぜ9001が減少しているのかの一般論として、ISOを取得しても本当に品質が良くなるのかという懐疑的風潮と公共工事の入札評価に採用されなくなってきている点が挙げられる。

ISO14001

14001は、認証件数 26,106件から26,157件で横ばいである。9001では減少している建設業でも若干の微増にある。減少しているところとして公共行政が挙げられる。この要因としては、行政機関の予算との関係があると思われる。

中小企業が取り組むには、エコアクション21がよいと考えられている。今後ともエコアクション21は伸びると予想される。

 ③OHSMSの認証

労働安全衛生に関する認証機関は、現在20機関ある。しかし、ISO化されていないため、様々な方式がある。例えば、建災防のCOHSMS、中災防のJISHA方式適格のOSHMSがある。

OHSMSの認証件数は、地域によって増加に差がある。この理由は、県によっては、労働安全に関する認証を発注条件に加えているためと想定される。

 

3)最近の審査内容の現状

①ISO がうまく活用できていない事項

ISO がうまく活用できていない面として文書・記録があるという。その理由は、文書を作成し記録保管するための手間がかかるためになっている。しかし、記録とは企業を守るための貴重な資産であるとしている会社は、うまく改善されている。よって、文書・記録とはISOだけのためではなく、何のために実施しているのかをしっかりさせることが必要であるといえる。

②最近の審査傾向

最近の審査の傾向として、出来ていないことを指摘するとか、不適合を探す審査ではなく、適合性を探す審査になっている。よって、その企業にとっての重要な点を見出す専門性が、審査員に要求されている。

例えば、品質不良が発生した場合、記録の内容で確認し、その内容が適合しているものであればそれを評価し、そして更に真因の追及や確実な再発防止への取り組み強化に気づいてもらうような点である。

③審査員への不満

審査員への不満として、上から目線で、重箱の隅をつつき、同じことを繰り返し、講釈が長いという点が挙げられている。更には、審査時間を守らないという審査員もいるという。

④良くなった点

効果として、報告する癖がつき、風通しがよくなり、コミュニケーションが良くなったという評価があげられるが、これは、実態としては社長の資質による面もある。

 

4)JABと認証機関の関係

JABは認証機関を審査している。特に、社会問題化した事故・リコールなどが生じた時、認証機関に対して、問題を発生させて企業のシステムに改善がなされているかの報告を求めてきている。その背景として、ISO等の審査に対する信頼を高めるための所作であるという。

 

5)顧客の審査に対するニーズ

①経営に役立つ審査 業務の効率化や実際の活動と一体化が図れる

②組織活動の規格要求事項を適切に活かせる

③組織の活性化

ISOの審査だけでできるとはいわないが、受注・利益の向上につながらないと、審査の価値がないと考えるべきである。

 

6)ISOの課題、限界

審査員は「マネジメントシステムのコンサルティングをしてはならない。」というものがある。この考え方は、製品を製造する過程の現状を審査するのであって、将来の成長や製品自体の品質を認証するものではないということから生じている。

このため、9001の審査だけでは限界がある。しかし、今後の動向で説明するが2015年以降大きく変わる可能性がある。

 

(2)経営に役立つ審査をするため審査員は、いかに考えているか

経営者の心をひらくにはどのようないしたらよいのか、そのためのマニュアル的なものを審査員の仲間と作成してみた。そのマニュアルの概要は以下のとおりである。中小企業診断士として企業を支援する際にも活用できるものであると思った。

①経営に役立つ審査とは、

ISO規格を使いこなして成果に結び付けられるように、規格の趣旨の理解を深めると共に社員が目標の達成に向けてどのように貢献できるか認識させ、経営の仕組みの継続的な改善につながる審査である。」とした。

②良い点、適合している点を見出し評価することも大事である。

悪さを見つけ指摘のみをするのではなく、指摘してもらってよかったという声が、経営者からでてくるような指摘でなければならない、

③どの組織にも独自の文化をもっている。

組織は独自のマネジメントを持っているものである。よって、一方的に話すのではなく、傾聴するから始めることが重要である。特に、経営者には自社の自慢する所から話してもらう様にする。

④指摘したことにより、無駄なことをさせることにならないか、良く考えて指摘することが大切である。

 

(3)認証組織の現状と問題点(事例)

①建設業の事例1 

ISOの要求事項を事業承継に活用しようとしている良い事例である。

失注分析をし、かつ失注した現場を見学にいっている

②建設業の事例2 

社内のコミュニケーションが悪く、業績悪化を外部環境のせいにしている事例で、ISOは役に立たないと思っている。ただ、公共工事のためのみに登録している、

クレームや修繕情報が社内にあるのに、その情報を活用し改善しようとする是正事例がまったくない。

③印刷業の事例

  顧客ニーズを捉えていないと企業の存亡にかかわるという考えをもっている事例である。

④塗装業の事例 

職人気質の社員の意識変革に取り組んでいる事例である。トップダウン的な面はある。

⑤酒造メーカーの事例 

クレームの処理体制の仕組み構築がうまく浸透してきている。 

 

(4)今後の動向

①複合審査への対応によりマネジメントの原点に戻れる。

②付加価値審査=有効性審査への期待がある。

ISO9004(組織の持続的成功のための運営管理)を今後活用すべきである。主な内容としては、長寿企業とその成熟度をもとにして制定された継続企業に求められるモデルが規定されている。

③各種システムの統合

ISO90011987年に発行されて依頼、2012年までの25年間に10を超えるマネジメントシステムが誕生した。OHSAS18001は準ISOとして扱われている。

上記の状況から、品質からエネルギーまでの様々なインプットと製品から廃棄物までのいろいろなアウトプットの間のビジネスプロセスは、共通化するべきであるという解釈から、2015年頃に多様なマネジメントシステムが統合されると決定されている。

その共通文書の構成は以下のとおりである。

1.適用範囲

2.引用規格

3.用語及び定義

4.組織の状況

4.1 組織及びその状況の理解

4.2 利害関係者のニーズ及び理解

4.3 XXXマネジメントシステムの適用範囲の決定

4.4 XXXマネジメントシステム

5.リーダーシップ

  5.1 リーダーシップ及びコミットメント

  5.2 方針

  5.3 組織の役割、責任及び権限

6.計画

  6.1 リスク及び機会への取組み

  6.2 XXX目的及びそれを達成するための計画策定

7.支援

  7.1 資源

  7.2 力量

  7.3 認識

  7.4 コミュニケーション

  7.5 文書化された情報

      7.5.1 一般

      7.5.2 作成及び更新

      7.5.3 文書化された情報の管理

8.運用

  8.1 運用の計画及び管理      (分野ごとに必要となる規定はこの中に規定される)

9.パフォーマンス評価

  9.1 監視、測定、分析及び評価

  9.2 内部監査

  9.3 マネジメントレビュー

10.改善

  10.1 不適合及び是正処置

     10.2 継続的改善     



以上
報告者:小山L

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