1.研究内容

1-1.発表者 小山 武夫 会員       テーマ 「ものづくり現場力の考察」    

1-2.内容

(1)モノづくり衰退論は真実か

①モノづくり衰退論は、現場を見ていない人の議論である 

・産業の微細な動向は、経済学だけではわからない 。経済不安・円高・天災で滅入った気分にあり、気分で産業を論じている。

国民の生活水準低下は人災で、責任は、経営者・為政者や、それを煽るマスコミ・言論界にある。

・海外生産比率は増加しているが、拡大する海外需要 への対応の範囲で、海外への生産シフトは、①内外の事業コスト格差、

②為替、③海外市場への対応 である。海外生産シフトの国内生産への影響は、▲24兆円、GDP5%程度に止まる

・ものづくり現場は、設計情報(付加価値)が流れる場所 で、現場力は、物的生産性、生産期間、良品率、稼働率、正味作業

時間比率などで評価される

・企業が資本市場で選ばれる利益上乗せ率は、国や産業で変動するが、自動車など擦り合せ型は、裏の競争力でハンデを克服

できる、一方デジタル製品等モジュラー型は、ハンディを跳ね返せず衰退する傾向にある。

(2)アンケート調査に見る中小企業の競争力の源泉

①日本の現場力の強さは、大企業と中小企業の水平ネットワークである

・グローバルなボリュームゾーンで勝負できる日本ブランドは、現地ニーズのくみ上げと徹底したコストダウンで、現地で、

設計から販売まで行う方式になっている

・サプライヤへの危機管理は、カスタム品と汎用品で異なり、カスタム品ではサプライヤとの事前対策協議を十分に行う。

・グローバルに活躍する日本人に必要な資質は、チャレンジ精神・コミュニケーション能力、などである。

・国内拠点での強い現場力は、問題発見力・課題発掘力、課題解決方法を見つける力、部門を越えた連携・協力などである。

・現場力が発揮される工程は、製造・量産、品質管理、生産管理である。

・現場力の発揮に影響の大きいものは、5Sの実践、情報伝達・共有化、生産方式である。

・日本人従業員の10年前と比べた能力で、良くなっているものは、技術力、理解力であり、悪くなっているものは、忍耐力、

 向上心、リーダーシップである。

②各国での従業員気質を十分に把握し、対応していくことが、海外進出には重要である。

・中国製造業の賃金上昇による衰退が懸念されている。

・調査によれば、37%が、「中国から引き揚げる、それを前向きに検討」と回答した。 要因は57%の企業が「労働コスト」。

2015年前後、北米市場で販売される商品のアメリカでの生産コストと中国での生産コストには優劣が なくなる」の声もある。

・中国の工場従業員の中核は1980年以降に一人っ子政策の下で生まれた若者で、経済成長下で育ったため、繁栄しか知らず、

差別や格差に敏感である。 196070年代生まれの農民工の1社での平均勤続期間は4.2年間、80年代生まれは1.5年間、

90年代生まれは0.9年間。勤務期間の短縮化が 顕著で、蓄えができれば辞め、無くなれば働く。

・韓国の中小企業の課題は、1つ目は利益構造の悪化等で、次世代主力製品が創出出来ないこと。中小企業は、「技術(情報)の

限界」があり、「投資負担」に 耐えられる構造ではないことと、「新しい技術に対するリスク負担」に対応できない事

2つ目は、画期的な研究開発パラダイムが設定出来ていないこと。「優秀な人材確保が困難」「技術(情報)入手の制約」で

全社戦略と整合した研究開発が困難なことである。

・インドの労働争議は、正規社員と非正規社員との待遇差に労働者が怒ったのが原因であり、色濃く残る身分制度が、その鬱積

 別の形で発散させた要素もある。

・タイは、教育がそれほど進んでおらず、高学歴者は、17%、約半分が初等科 以下の教育である。

学歴、経験の少ない層の賃上げが激しく、失業者も増加している。

・タイ洪水の対応では、各社の危機管理能力が問われた。バンコック市は、当初の進出で業績の悪いこの地区の外資系企業は

既に閉鎖、撤退しており、他工業地区では産業が高度に集積しており、震災での他の国への移行はない。

(3)良い現場を中心とした21世紀日本の姿 を考える

・「良き現場」が製造業・非製造業を問わず、日本にしっかり残り、日本住民の生活とプライドを支えていく。

・経営者は長期最適経営で国内現場の重要性を理解し、「良い現場」を国内に存続させる。

・本社は、現場の能力構築の結果発生する余剰人員を、内外の営業開拓、新規事業創造、M&A,などに有効活用を図り、

 グローバル長期全体最適の経営を目指す。

・非正規社員の比率が増加しすぎたことを認識し、「良い現場」の能力構築、新興国の賃金上昇などの状況変化に応じ、

自然の形の正規社員比率の再上昇を目指す。

・地域の自治体や産業団体は、「良い現場」に「良い設計の流れ」を引きこむ。「ものづくり知識」を地域全体に広める。

・非製造業の農業、サービス業や官業も「保護から競争へ」の流れが不可避と認識し、「良い設計」「良い流れ」を取り入れ、

 「良い現場」を増やす努力を続ける。

・政府は、マクロ的経済・金融政策の企画実行能力を高め、将来の財政破綻・福祉崩壊・国債暴落・円暴落を何とか回避する。

・不幸にも財政破綻・円暴落・物価暴徒が起こった時は、「良き現場」が一斉に実力に応じ輸出拠点として復活し、日本経済を

当面は輸出が支える。輸出拡大を円滑にするため、自由貿易 協定は、積極的に進めておく。

・次世代に出来る限り「良い現場」と「良い生活水準」を残しておく。国内に得意な産業が残り、海外でも日本企業が活躍し、

もって世界経済での存在感を十分に残し、世界の経済発展や環境保全や災害復旧に貢献する。

                                     

以上
報告者:小山L

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