1.研究内容

1-1.テーマ 「モノのインターネット IoT(Internet of Things)

1-2.発表者 新井 一成 会員 

-3.内容

(1)IoTの正体?

IoTの構成要素は、「コネクテッド・デバイス」「ネットワーク」「クラウド/ビッグデータ分析」の3つからなる。その他に、人工知能(AI)や3Dプリンタなどが、含まれる場合もある。

IoTはガートナーのハイプ曲線上では、「過度な期待」のピーク期に分類されている。しかし、IoTを構成する各種の技術は、ピークを過ぎて、確立されつつある技術である。

IoTとよく似た概念にM2M(Machine to Machine)があるが、M2MIoTの違いは、M2Mが主にモノとモノの直接通信を前提としているのに対して、IoTはクラウドが途中に介在し、データ処理が行われる点である。

【コネクテッド・デバイスの視点】

様々なセンサー等によって、大量のモノがネットワークに接続されることがポイント。2020年には、全世界で500億のモノが接続されるとの予測もある。

【ネットワークの視点】

IoTシステムに求められるネットワークの要件は「超大容量(1000)」「超高速(100)」「超低遅延(10分の1)」「超低消費電力(3)」である。実際には「速度は遅いが超低消費電力」というような組み合わせもあり、多様性が求められる。これらの要件を満たすために様々な技術が利用される。携帯電話のネットワークは5G(第5世代)技術でIoTをターゲットとして、国際的な規格作りが始まろうとしている。

【クラウド/ビッグデータの視点】

大量のデバイスで収集されるデータはクラウド上でビッグデータ分析される。IoTにおけるビッグデータ分析の要件は、「大量のデータ」「非定型のデータ(多様なデータ)」「リアルタイム(高発生頻度)のデータ」である。実際のIoTシステムでは、最初から大量のデータが利用されることは少なく、データが徐々に蓄積されてビッグデータ分析が有効となる。

(2)インダストリー4.0

インダストリー4.0IoTと同じ文脈で語られることが多いが、
  IoT: 「モノのインターネット化」
  インダストリー4.0: 「ものづくりのインターネット化」
である。インダストリー4.0にはIoTの要素が取り込まれているが、上流や下流のサプライチェーンまで含めてインターネット化することが特徴である。

(3)政府産業界の動き

IoTに関連して、政府や産業界が動き出している。

経産省は、ロボット革命イニシアティブ協議会の中に「IoTによる製造ビジネス変革WG」を立ち上げ、さらに「IoT推進ラボ(仮称)」を立ち上げようとしている。総務省も、産学官によるIoT推進体制を立ち上げようとしている。

民間の動きでは、IVI (Industrial Valuechain Initiative) が活動を始めている。

(4)ビジネスモデル

IoTを活用するビジネスモデルのポイントは、以下である。

 ①大量のモノからの「データ収集」

 ②(収集した)データから「知恵」への変換

 ③(知恵による)「使用価値」や「文脈価値」の向上

 ④どこで儲けるか

事例1: 小松製作所 KOMTRAX

      建設機械に取り付けたセンサーの情報を収集し、効率的運用をアドバイス。

事例2: 獺祭用の酒造米 山田錦の栽培

      田圃に設置したセンサーデータで、米の育成のアドバイス。

      情報サービス料で回収するモデルなので、付加価値の高い作物でないと利用しにくい。

事例3: GE 航空機エンジン

      航空機エンジンのセンサー情報および運用情報から効率的運用をアドバイス。

      ファイナンスまで含めたビジネスモデル全体のイノベーション。

事例4: GE 医療機器

      医療機器のデータと電子カルテ等のデータから、医師に対して、診断支援情報を提供。

      (昨年の発表で)使用価値や文脈価値を高めた事例としても紹介したもの。

事例5: 東レ、NTT Tシャツで心拍数収集

       機能性繊維で作ったTシャツで心拍数等を収集し、作業員の健康管理。

事例6: ダイキン エアネットⅡ

       エアコンのセンサー情報から、省エネ運用方法をアドバイス。

事例7: UBI Progressive自動車保険

       自動車の走行データから運転者のリスクを分析して保険料に反映。

 

中小企業ではまだIoTの事例は少ないが、IoTに近いところまでできている事例を紹介。

事例8: 日本情報クリエイト

       不動産販売管理ソフトのデータをサーバで収集。ポータルへの掲載サービスを行っている。

事例9: アトムエンジニアリング

       製造・物流管理ソフト。工場内のセンサーにより、モノの動きをリアルタイム収集し、費用発生をデータ化。

事例10: 八幡ねじ

       全国のホームセンターからの受注情報をピッキング用の台車のPDA端末に送信して出荷作業に直結。

(5)まとめ

IoTの課題は、「相互運用性(標準化)」と「情報セキュリティ」である。

IoTは最近始まったわけではなく、技術的進歩は、持続的イノベーションの範囲内である。

IoTビジネスのポイントは、大量のデータをどのように集め/知恵に変換し/価値提供するか、のビジネスモデルイノベーションである。

 

質疑応答:

・経産省と総務省の棲み分けは?一般的に経産省は短期的な成果を目指し、総務省は長期的な研究を目指すという棲み分け。

・「IoTへの理解が深まった」という感想が多くあった。

                             以上
報告者:小山L

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