1.研究内容
1-1.テーマ 「組織風土の改革とモラールサーベイの一事例」
1-2.発表者 殿村 順一 会員
1-2-1.内容
(1)テーマ選定の理由:
33年在籍した建設会社が経営不振(債務免除、リストラ、その後、更生法適用)に陥ったこと、「環境管理部門」という
スタッフ部門に在籍したこと、当時の日本の状況は、長銀、日産、山一などの経営不振や建設業の倒産が続いたことなどを
背景に、会社の「企業文化」を変革しなくては生き残れないという切羽詰まった状況のなかで、柴田昌治の「なぜ会社は
変われないのか」やカルロスゴーンの「再生への挑戦 ルネッサンス」などを読み、クロスファンショナル組織や非公式
組織(オフサイトミーティング:気楽にまじめな話をする会の重要性)などを研究して、組織文化の変革に挑戦したこと。
また建設会社の更生法適用のあと、M社に入社して、企画部で経営理念、中期経営計画、給与体系見直しなどに取り組む
ため、「モラールサーベイ」を利用、実施したことなど、経験をベースにした発表である。
(2)M社は約100人(約70人が男性、女性が約20人、派遣を入れて約100名)の企業であり、経営理念や中期計画、
年度計画もなく、給与体系もない典型的な中小企業で、男性や女性からは一体感のない会社だという不満が鬱積していた。
(3)まずモラールサーベイを実施し、その成果を分析、まとめ意見を集約していった。
(4)モラールサーベイは、文献がほとんどなく、村杉 健の「作業組織管理論」をベースにアンケートを実施した。
(5)本の内容は、経営管理理論を引用しているが、その説明はないので経営管理論から入っていった。
(6)ドラッガーの「マネジメント」、コッターの「改革を成功に導く8つの段階」、福島の「改革を阻む5つの壁」、田畑の
「ダイエーの崩壊 9つの罪悪」なども実行にあたって参考にした書籍である。
(7)改革プロセスは「業務改善アンケート」の分析、実行、ビジョンプロジェクトの立ち上げ、中期経営計画と年次計画の
作成とヒアリングなどのプロセスだった。
(8)モチベーション理論の流れは古典的理論である「科学的管理法」や「管理過程論」からホーソン実験での「人間関係論」
を経て「行動科学論」から「未成熟・成熟理論」「状況適応理論」「期待理論」まで時代とともに変遷していった。それぞれ
の時代には、時代背景があり、それぞれが時代に合った理論を構築していると思われる。
(9)動機づけ理論はマズローの理論である欲求5段階説、D・マグレガーのX理論・Y理論、F・ハーズバーグの動機付け
・衛生理論、アルダファ-のERG理論、L.W.ポーターとE.E.ローラーの期待理論があり、それぞれの理論から村杉氏は
「モラールサーベイ」の質問事項を提案している。
(10)リーダーシップ理論も設問の大事な背景になっている。リッカートのシステム4理論、ブレーク&ムートンの
マネジアル・グリット理論、三隅二不二のPM理論、C.アージリスの未成熟・成熟理論、F.フィドラーの状況適応的
リーダーシップ論、P.ハーシィ&K.ブランチャードのSL理論などの状況適応的リーダーシップ論がある。
(11)近代的理論にはバーナード、サイモンの理論がある。ハーズバーグ、バーナードの理論は「モラールサーベイ」で
多く取り上げられている。
(12)モラールサーベイとは、企業の組織・職場管理に対して、従業員がどういう点にどの程度満足し、またどんな問題
意識をもっているのかを科学的に調査分析する手法で、「士気調査」あるいは「従業員意識調査」「社員満足度調査、
従業員満足度分析」という。従業員の業務に対するやる気や貢献意欲と深く結びついており、製品・サービスの品質、
生産性に大きな影響を与え、ひいては顧客満足と企業の競争力にも大きな影響を与える。アンケートなどで定量的に把握し、
継続的に改善をはかっていくことが重要である。
社員のやる気や生産性に大きく影響を与える満足・不満足要因を分析。不満である項目全てに対策をとることは不可能だが、
各質問の満足度の回答内容を元に分析し、重要度に応じて、できるものから対応する。
(13)モラールサーベイは、経営課題がより明確になり、業績向上の一助になる、経営者の思いがどれだけ伝わっているか
を数値化、ES(従業員満足)からCS(顧客満足)向上を図る、定点観測で、モラールの変化をいち早く知る事ができる、
従業員のやる気に影響を及ぼす要因を知る事ができる、従業員の生の声を把握することで、優秀な人材の流出防止を図る、
組織・チームの強み・弱みを把握出来る、マネジメントや現場で起こっている問題を把握できる、現場が知っている改善策
を引き出すことができる・・・など多くの目的がある。
(14)著者の村松氏は「マルチ・モチベーション(MM)理論」意味探求人モデルを提唱している。MOW
(Mean of work):
働く意味が大事になり、従来理論だけでQWL問題に対処は困難でMOW
を視点にQWLを考える必要があり、新理論構築し
MM理論として複合して起こる動機づけを考慮する必要があるとしている。
(15)MM理論の二様二重体系とは、内発的動機づけ:仕事に関心、仕事が目的で仕事内容で動機づく、外発的動機づけ:仕事
に関心が低く、仕事は他の目的のための手段である。また個人的動機づけと集団的動機づけがあり、二様二重体系であると
している。
モラールは態度であり、行動の心理的準備状態で行動に直結する概念で、モチベーション(動機づけ)は欲求と行動を結ぶ
中間概念で、モラールに比べて欲求に直結している。欲求が原因で、結果が行動とすれば、モチベーション(原因側)➾
モラール(結果側)であるとしている。
(15)村杉氏が提唱するMM理論は「意味探求人モデル」で自己実現人モデル(仕事中心型)ではない。「意味探求人モデル」
:仕事と余暇(スポーツ、文化活動、ボランティア、コミュニティ活動等)の両立を志向している。
よって、労働時間短縮が重要である。自己実現が最終目的ではなく、人は意味を探求する存在であると考えている。
(16)経営管理論の説明の後、実際の「モラールサーベイ」の質問事項と回答について説明があった。
(17)モラールサーベイ実施後の感想として
1.改革は企業文化によって、プロセスは異なり最適解はない。
2.改善提案の募集やモラールサーベイはフィードバックが大切である。
Þ 3.出来ること、出来ないことを、必ず説明する。