1.研究内容
1-1.テーマ 「石油化学工業とプラスチックの基礎知識
1-2.発表者 小田原 清 会員
1-2-1.内容
第1部 石油化学工業の基礎知識
1.日本の石油化学コンビナート
2.石油精製と石油製品需要に占めるナフサ(粗製ガソリン)
3.石油化学工業の特徴
4.石油化学工業の成り立ち(勃興期)
5.石油化学基礎製品の誘導品
6.石油化学業界を巡る状況
第2部プラスチックの基礎知識
1.石油化学工業から生み出される合成樹脂
2.ポリオレフィン触媒開発秘話
3.プラスチックの合成
4.合成ゴム
5.プラスチックの代表的な成形法
6.プラスチック添加剤(代表例)
第1部 石油化学工業の基礎知識
1.日本の石油化学コンビナート :
日本には、9ヵ所に15の石油化学コンビナートがあります。我が国は石油のほとんどを海外
から輸入しているため、石油化学コンビナートは、石油を運ぶタンカーが利用しやすい太平洋岸や瀬戸内海沿岸の埋め立て地に
たくさんあります。
(1)石油化学コンビナートの風景
(2)千葉県臨海工業地帯の石油化学コンビナート
(3)三井化学(株)コンビナート(市原)
2.石油精製と石油製品需要に占めるナフサ(粗製ガソリン)
輸入された原油の約3割がガソリン、4分の1が石油化学原料となるナフサ、以下軽油、重油、灯油と続くがいずれも近
年需要は航空機燃料用を除き低下している。平成26年(2014年)実績見込み合計量:182,776[千KL]
前年から5.6%減
「石油サプライチェーンの構造」
「石油化学製品のできるまで」
3.石油化学工業の特徴
(1)典型的な装置産業であり、関連の複数企業でコンビナートを形成する。
(2)立地として、大型タンカーなどが接岸できる港湾を持つ広大な敷地が必要である。
(3)設備投資に莫大な費用が掛るため大資本でなければ参入できない。
(4)製造装置は「プラント」と呼ばれ、日常三交代勤務で運転管理されている。
(5)高圧・高温の可燃性ガス、可燃性液体を大量に取り扱う他、禁水性、発火性などの化学薬品や毒性ガスなどを取り扱うため、そ
の安全管理はことさら重要である。
(6)産業のすそ野には、プラスチック・ゴム成形メーカー、副製品処理の中小化学会社、倉庫・物流会社、充填・包装作業員や定修
時の専門技能者・作業員の派遣請負業者、物流・包装資材メーカー、フレコン洗浄会社、廃棄物処理・プラスチックリサイクル
業者など。多くの中小企業も関与して成り立っている。
4.石油化学工業の成り立ち(勃興期)
石油化学工業は、1920年(大正9年)、米国のスタンダード・オイル社(Standard
Oil Co. of New Jersey)が、第一次世界大戦(1914
~1919年)中からの研究にもとづいて、プロピレンからイソプロパノールの製造を開始したのが始まりとされる。
わが国の石油化学工業成立の経緯は、化学工業が主体となったもの、石油精製業が主体となったもの、あるいは石油化学工業の
ために設立されたものがあるが、いずれも原料供給として石油精製会社が必要であり、ここに石油化学コンビナート成立の基礎条件があった。
昭和30年三井系企業の総力を結集して創設された三井石油化学(現、三井化学)が、昭和33年山口県岩国市の陸軍燃料廠跡地に
わが国初のエチレンプラント(2万トン/年)を始動させた。同年、住友化学が愛媛県新居浜でエチレンプラントを完成させ、両社
がわが国石油化学工業の草分けとなった。
5.石油化学基礎製品の誘導品
(1)エチレン系誘導品
エチレンを酸化して得られる酸化エチレンの製法(SD社法)を説明。シリカ・アルミナ坦体の銀(15%)触媒。25k、250℃
反応機を出た酸化エチレン(EO)はスクラバーで水に吸収して未反応ガスを分離後、EOリッチ水からEOを回収して、EO中
のアルデヒド等不純物(副生成物)は精製塔でピアなEO(トップ留分)と不純物の多いEO(ボトム留分)に分け、不純物の多いE
Oはチレングリコール(EG)プラント原料とする。
エチレンを重合するためには、エチレンは高純度でなければならないが、EO用エチレンはサイドカット品で良く、純度の
悪いエチレンを使い不純物の多いEOから恐らく世界一純度の良い(厳しいUV規格をクリア)EGを生産していた。
(2)プロピレン誘導品
(3)C4、C5系誘導品
(4)芳香族系誘導品
6.石油化学業界を巡る状況
(1)化学工業に占める石油化学工業の比率(2010年):化学工業出荷総額の55%
(2)3年前の新聞記事から
原料コストから、石油化学各社はエチレン生産から撤退または縮小の傾向にある。
住友化学:千葉エチレンプラント停止、サウジなど拡大、高機能品に特化。三井化学:京葉エチレン共同出資を解消
石油元売り大手も能力削減の動き:人口減少、エコカーの普及
(3)ポリオレフィン(PE.PP)業界の再編状況
1994年4月 PE、PP各14社が、2013年7月ではそれぞれ8社と4社に減少
(4)石油化学基礎製品の生産能力、需要量の実績と見通し(世界)
わが国や西欧の停滞、中国、インド、アセアン諸国の進展
シェールガスに沸く米国では、安価な天然ガスを利用して大規模エチレンプラントの建設計画が目白押し
(5)日・米・欧エチレン原料構成比(2011年)
日・欧はナフサ、米国は天然ガス
からのエタンを主原料としている
(6)世界の天然ガスの組成例(Vol%)
わが国の天然ガスはC2以上の成分がほとんどないため石油化学原料には向かない
(7)クラッキング原料による分解生成物の比率
天然ガス原料、すなわちエタンクラッキングではC3以上の基礎原料の収率が極端に低い。
例えば、車のタイヤに使用される合成ゴム(SBR)にはスチレンモノマーやブタジエン(C4)が必要であり、エタン・クラッキングだけでは石油化学製品の需要を満たすことはできない。
(8)原料関連用語の解説
LNG、NGL、LPG、シェールガスについて
(9)日本の石油化学製品生産能力(2012年末)
ナフサを出発原料
とする石油化学工業では、天然ガス原料に比べ、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレンなどベンゼン環を持った化合物(芳香族)の生産には有利である。
(10)世界の10大エチレンメーカーとその生産能力(2013年1月現在)
ダウ、サビック、エクソン・モービル、シノペック、シェルなど
(11)
石油化学工業を巡る国別・地域別状況
第2部プラスチックの基礎知識
1.石油化学工業から生み出される合成樹脂(人為的に製造された、高分子化合物からなる物質)
(1)合成樹脂(広義)の分類
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プラスチック(狭義の合成樹脂)
熱可塑性プラスチック (チョコレートタイプと言われる)
熱硬化性プラスチック
(クッキータイプと言われる)
合成繊維
合成ゴム
(2)熱硬化性プラスチック
一般によく目にするポリエチレンに代表されるプラスチック(合成樹脂)は熱可塑性といって、成形後も熱を与えると柔らか
くなり、再成型が可能である。
一方、熱硬化性樹脂
は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる樹脂のこと。
本格的な合成樹脂第一号は、1909年にアメリカのレオ・ベークランドが工業化に成功したベークライト(商品名)といわれている熱硬化性樹脂。フェノールとホルムアルデヒドを原料としたもので、一般にはフェノール樹脂と呼ばれている。
熱硬化性樹脂にも、フェノール樹脂の他、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドなど多くの有益なプラスチックが多い。
(3)エンジニアリングプラスチック
エンジニアリングプラスチック(エンプラ)は、耐熱性、機械的強度、耐摩耗性に優れ、機械部分、自動車用部品、電子・電気機器部品など、高性能と耐久性、安全性が求められる基幹部品においても軽量化、低コスト化を実現して、金属材料を代
替する。
(4)プラスチック(合成樹脂)の特徴
プラスチックは一般的に
○成形が比較的簡単で能率的に製品を造ることができる!
○安い!
○耐水、耐蝕性が優れている!
○軽くて丈夫である!
○電気を通しにくい(絶縁性に優れる)などの特徴を持つ
また
☆異種のプラスチックを成型時に混合することで、新たな性状を持ったプラスチックが得られる。
(改質効果、アロイ、ブレンド効果)
☆プラスチックの成型時に顔料を練り込んで着色したり、その他の素材(ガラス、木くず、難燃剤など)を練り込むことで、
容易に新たな風合いを出したり、新たな性状を持った素材に転換することができる (コンパウンド効果)
(5)わが国のプラスチックの生産推移
2000年までは拡大、その後頭打ちで、2009年以降低迷
(1000万トン程度)
(6)プラスチック加工製品の分野別生産比率(2012年)
フィルム用途が37%でトップ、以下容器15%、機会器具・部品12%、パイプ継手8%、日用雑貨と発砲製品各5%と続
く。
2.ポリオレフィン触媒開発秘話
(1)ポリエチレンの話し
ポリエチレンが発見されたのは1933年のこと。英国の化学メーカーICI社の研究員が、ベンズアルデヒドとエチレンを1400
気圧という高圧下で反応させる実験を行っていた際、容器に白いワックス状の固体がこびりついていたのを発見した。分析の結
果、このワックス状の固体はエチレンがたくさんつながって(重合)できていることはわかったが、当初実験による再現ができな
かった。
実は、エチレンガスをつぎ足す際に偶然入り込んだわずかな量の酸素が、ポリエチレン合成の鍵であったのである。高圧法に
よるポリエチレンの生成は、酸素から発生する「ラジカル」によってもたらされたものであった。
ポリエチレンは非常に電気絶縁性に優れた新材料として、レーダーの絶縁材に使用され、第二次世界大戦の連合国の勝利に貢
献する。わが国でその存在を知ったのは、戦時中に敵国から手に入れた、まさにレーダーからだったという。
現在、汎用樹脂と言われるプラスチックの中でも最も需要が多いのが、このポリエチレンで、わが国でも合成樹脂生産の25%
を占めている。
その構造は、シンプルであるが、これを合成するためには当初上述の通り1000気圧以上の圧力を要した。(高圧法ポリエチレン
=低密度ポリエチレン):比重 0.91 – 0.92、分岐が多いため、フィルムは低圧法に比べ透明性が良く、成形性も良い。
これを常圧でも可能にしたのが1953年チーグラー博士が発見したチーグラー触媒によるポリエチレンである。(低圧法ポリエチレン=高密度ポリエチレン):比重
0.92 - 0.96
(2)三井石油化学(現、三井化学)による低圧法ポリエチレン製造法の確立と世界一の高性能チーグラー触媒開発
三塩化Tiと結晶構造の似ているMgCl2を担体として使用。Ti坦持量の多い、スラリー重合にあっても生成パウダーの嵩比
重が十分で高活性(脱灰工程をなくすことのできる)触媒を開発。世界をリードした。
(3)ポリプロピレン用高性能触媒の開発
ポリエチレンと違いポリプロピレンでは、活性と共に立体規則性の向上が課題であった。MgCl2上にTiと共に芳香族エス
テル(電子供与体)を坦持することで、高活性(無脱灰)で立体規則性の高い(脱アタクチックポリマー工程をなくすことのできる)
触媒を開発した。
(4)ポストZiegler-Natta触媒:メタロセン触媒、三井化学FI触媒。コンピュータを使いDFT計算の精度を上げ、触媒探索の効
率化に成功。チーグラー触媒と異なりシングルサイト触媒(活性点が均一)で、ポリマー制御が可能
で新たな高性能ポリマーの生産可能、桁違いの重合活性。
3.プラスチックの合成
プラスチック(合成樹脂)はモノマー(化学物質単体)を重合して得られる。
単独で重合に用いられるモノマーは、1個以上のニ重結合を持つ必要があるが、開環重合や2種類のモノマーを使って重合する
場合は必要がない。 (1)1個のニ重結合を持ったモノマーの基本形
エチレンの片方の炭素に結合している水素部分(X)が、種々の置換基に置き変わることで、様々なポリマーが得られる。例え
ばX=Clであれば、ポリ塩化ビニル。X=ベンゼン環ならポリスチレン。
(2)開環重合や2種類のモノマーを使って重合する(代表例)
a.カプロラクタムの開環重合→6-ナイロン
b.ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸を縮合重合→6.6ナイロン
c.エチレングリコールとテレフタル酸を縮合重合→PET樹脂、ポリエステル繊維
d.ビスフェノールAとホスゲンを縮合重合→ポリカーボネート
4.合成ゴム
(1)合成ゴムについて
第一次世界大戦当時、天然ゴムが入手できなくなったドイツで初めての合成ゴムが開発された。1914年ジメチルブタジエンを
原料にしてメチルゴムの製造を初めて行った。これが世界初の工業化された合成ゴムである。
合成ゴムの代表は、自動車のタイヤに使用されるSBR(スチレン-ブタジエンゴム)で、ブタジエンの部分にニ重結合が残り加硫が容易となる。
(2)その他の主な合成ゴム
ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなど
(3)各種合成ゴムの構造例;省略
5.プラスチックの代表的な成形法
(1)インジェクション成形(射出成形)
(2)中空成形(ブロー成形)
(3)押出成形
(4)カレンダー成形
(5)インフレーション成形
(6)その他の成形法
a.圧縮成形
b.トランスファ成形
c.注型
d.真空成形・圧空成形
6.プラスチック添加剤(代表例)
プラスチックは、無垢のまま成形されることは少なく、一般的には耐熱・耐候安定剤、酸化防止剤等製品の劣化を遅らせるため
の添加剤や成形をスムーズにさせるため、樹脂の改質の為などに種々の薬剤を添加している。
ただ、プラスチックに添加された薬剤は表面にブリードアウト(表面に析出してくる)されるため、医薬品はじめ食品または特殊な用途に供する原材料の容器や包装に使用されるプラスチックには、添加剤の使用を極力低減するか、使用しない配慮が必要となる。
(1)酸化防止剤(耐熱、耐候安定剤) (2)紫外線吸収剤 (3)滑剤、離型剤 (4)帯電防止剤 (5)可塑剤 (6)難燃剤
(7)充填剤 (8)着色剤
(9)発砲剤
などなど
☆石油化学工業については
弊所(泉台経営コンサルタント事務所)H.P.ブログの2013年2月~3月に19回に亘り掲載しています。
ご訪問いただければ光栄です。URL:http://blog.goo.ne.jp/izumidai-consultant