1.研究内容
1-1.テーマ
1-2.発表者 井村 章夫 会員、
1-3.内容
本邦は、戦前は、世界有数の航空機分野の先進国であったが、敗戦後、航空機の開発、生産が禁止され、技術面・マーケッティング面で大きな遅れをとった。しかし、昨今は、本邦の航空機産業も飛躍する兆しがあります。この状況を、世界の航空機産業での本邦の市場面での位置づけ、さらに中小企業の航空機産業へのかかわり方、そして、本邦の航空機の技術的発展として報告します。
1.
本邦の昨今の航空機産業の趨勢
2010年と2015年を比較して、本邦の航空機関連の売上は1.5倍以上となり2015年には約1.7兆円に達した。特に、ボーイング787の機体は部品の約35%が本邦の三菱、川重、富士重、新明和等が分担し、ボーイングから見て1/3の部品・構成要素が日本製(made
with Japan)である。ただし、旅客機市場15兆円の大半は欧米企業等(ボーイング7兆円、エアバス4兆円、ボンバルディア2兆円、エンブライエル0.5兆円)が占有している。また、旅客機ジェットエンジン市場は約5兆円であるが、このうちの大半はGEのシェア2兆円が大きく、本邦のIHIの売上は約2800億円程度である。本邦の航空機産業は更なる発展が期待される。尚、世界の自動車会社の売上約
170兆円に対し、旅客機産業の売上は約15兆円であり、航空機産業の市場規模は、現在は相対的にかなり小さい。
しかし、部品点数の多さとその技術水準の高さから、産業連関図からみた経済波及効果はかなり大きい。
2.
航空機産業と中小企業のかかわり
航空機は部品点数約200万点で、自動車の約2万点に比べて大きく、多品種少量生産の製品の代表である。このような商品特性は中小企業が活躍できる分野ではあるが、一方、厳格なJISQ9100適合などの品質保証体制を求められる。このような状況下で、各中小企業が航空機産業に参入できるためには、個々の企業がその得意分野で高度な技術を構築するとともに、それらの企業の堅固なネットワーク化が必要になる。例えば、ジェット機の脚部部品は住友精密㈱が音頭をとり、本邦の全国の中小企業の技術を“集成”し、製品化された。
3.
水上飛行機と中小企業のかかわり
世界には、依然として軽便な航空機のニーズがあり、その代表として、小型水上飛行機の製造販売の中小企業を例に取り上げた。
中小企業と国立大学が共同研究したフロートを装着した水上飛行機を紹介した。アフリカのセネガルなどの途上国向け、繊維強化プラスチック製水上飛行機のプロジェクトについて呈示した。
4.
国産ジェットについて:ホンダジェット
ホンダジェットの、機体、エンジンの特徴を呈示した。
・機体の特徴:繊維強化プラスチックを活用したハニカム構造の強度がある超軽量の機体(胴体、翼)
・翼形状:飛翔抵抗を極力減らした翼上面と翼下面の、運航速度域での乱流遷移状況の最適設計。
・エンジン位置:翼の1m上方に位置した低抵抗レイアウトの採用。
・エンジンHF120:GEとの共同開発による軽量、大出力、低燃費、低騒音ジェットエンジン。
尚、戦中のネ20エンジン搭載機橘花(戦闘機)以後の、本邦の航空機とジェットエンジンの開発経緯を示し、 ジェットエンジンの進化(ターボファン、ギヤードターボファン)を図解して説明した。ジェットエンジンでは前方の空気を取り込むファンの回転速度は、ジェットエンジンのガスタービンの回転速度より小さいと、エネルギー効率が高い。このため、巨大な遊星歯車をファンに装着し、ファン回転速度を最適化して、更なる燃費向上を図る方法が考案された。この方法はギヤードターボファンエンジンPW1200Gと称し、三菱航空機MRJに搭載された。
5.
航空機に関するビデオ解説
ターボファンエンジンやB787の構造部材製造の実際事例を紹介した。
Q&A、コメント
1Q.ボーイング社は世界No1の売上の航空機メーカーであるが、その売り上げの一部は本邦メーカーが担ったか?
A.
本邦のメーカーは部材メーカーとして生産に寄与しているので、ボーイング社の売上の一部は本邦メーカーの売上とみなせます。