1.研究内容
1-1.テーマ
1-2.発表者 殿村 順一 会員、
※標題に入る前に最近の建設業関連の事故、問題点の説明があった。
(博多の道路陥没問題、空港のグラウト偽装問題、橋梁の落下事故等)
・11/8日、博多駅前で道路が陥没、約10,000㎥の土砂がトンネル内に流れ込んだ。幸い第3者災害がなかったのは奇跡的だが、予兆はあったと思われる。危険を察知して通行止めにするなど、機転が利いた対応だった点は評価できる。
ただし、都市部のど真ん中でNATM工法を採用したのは疑問であり、監視や測定がどこまで実行されていたのか?疑問。
・空港の地盤改良の偽装は支店ぐるみの偽装であり論外である。委員会報告など再発防止策はできたが、企業風土の問題であり解決には時間がかかるだろう。
・橋梁の落下は、門型クレーンが頂部で18㎝も傾いていたことを知りながら施工した点に大きな問題がある。
共通する問題として、失敗をした経験者の多くが定年退職しリスクの予想ができていないのではないかと心配している。
(1)横浜マンションの施工から国土交通省の立入検査、売買から下請け業者などの経過説明があった。
①建設業は重層構造で今回は2次下請けまであるが、責任を押し付けあっている状況は企業倫理の観点から好ましいものではない。発注者、ゼネコン、設計者、設計監理、1次下請け、そして2次下請けそれぞれ責任がある。設計者と元請けの責任も大きい。
②改ざんはその後、6社が実施したことが新聞記事で明らかになって来た。建設業界はこの10数年、不況業種だったので、技術者不足で下請けの管理が十分ではなくなった。
③建築業界は業種が多く、管理しきれているとはいい難い。下請け任せになっているようだ。土木工事でも発見されているが数は少ない。10数年前までは、土木に限っては、すべての杭の打設に立ち会うことが義務付けられていた。当然責任をもって施工してきた。
④建築業界は、地盤に対する関心が少ないことも影響している。デザイン、意匠、構造が主体で地盤に対する意識が薄いのかもしれない。
⑤今回のくい打ち工法の説明があった。先行掘削してセメントミルクを注入し、根固め部を形成、その後、既成コンクリート杭を埋め込む工法である。横浜の地盤のように起伏が激しい地盤では、杭長が異なるのが当たり前であり、コンクリート杭を選択したことも誤りであろう。コンクリート杭は、注文してから工場でコンクリートを打ち込み、強度が出るまで養生して出荷されるが、納期に時間がかかる。最低2か月位は見なければならない。杭の選択が間違っていたのではないかと思う。そうすると発注者やゼネコンの責任もあるだろう。
(2)地盤調査と基礎杭の種類について説明があった。
①地盤調査の目的:地盤が構造物を安全に支持できるかどうか、また、安全に支持するための方法を技術的に調べること。土の性質は、建築材料である鉄鋼・コンクリート・石材・木材などと異なる。土は含まれる水分の量によって、土の性質が変化する。土は場所によって堆積過程が異なる。土粒子の混合具合、締まり具合などにより、他の建築材料のように均一な性質はなく、地域、場所、深さ等で性情が違う。構造物施工や宅地造成などを行う場合、その場所毎に地盤の性質を調査・確認する必要がある。
②標準貫入試験、スウェーデン式サウンディング試験、ポータブルコーン貫入試験、ハンドオーガーボーリングなど、目的に応じた地盤調査についての説明があった。
③基礎杭の種類には、支持機構からは「支持杭」「摩擦杭」がある。材料などの違いで、鋼杭、合成杭鋼管杭、既製杭、場所打ち杭、鋼管ソイルセメント杭、PHC杭、コンクリート杭、H形鋼杭、SC杭などがある。
④また打設方法でいくつかの種類がある。場所打ち杭工法、打込み杭工法、埋込み杭工法、回転杭工法、打撃工法、バイブロハンマ工法、中掘り工法、プレボーリング工法などがある。場所打ち杭工法には、さらにオールケーシング工法、リバース工法、アースドリル工法、深礎工法がある。それぞれの工法について図で説明があった。今回のような起伏が大きい地盤変化のある地盤には場所打ち杭が選ばれることが多い。
(3)
工法選定のポイント
①上部構造の種類による選定として、橋台・橋脚のように水平力が大、鉛直力も大きい場合、剛性が高く、大きな支持力が期待できる杭種で、鋼管杭、鋼管ソイルセメント杭、場所打ち杭などが選ばれる。擁壁は水平力が卓越し、鉛直力は小さいので剛性が高い杭種である鋼管杭、場所打ち杭が選ばれることが多い。建築物は短期(地震)以外に大きな水平力が働かないので、RC杭,PC杭,PHC杭場所打ち杭が選ばれることが多い。
③土質条件による選定では、支持層深度が深い場合は、適用可能な工法が限定される。鋼管杭、鋼管ソイルセメント杭、プレボーリング工法等。 支持層に傾斜や凹凸が予想される場合には、杭の高止まりや杭長不足の可能性があり、杭長変化を考慮するとRC杭、PHC杭(SC杭)の適用は避けた方がいい。
④中間層に関して、圧密層がある場合、ネガティブフリクション(負の周面摩擦力)による支持力不足の懸念もある。
⑤施工条件による選定では、騒音、振動規制区域内での施工では、低騒音・低振動工法の採用で、打込み杭工法はほぼ適用不可である。施工機材、杭材料の搬入方法も大事な要件で、施工地点までの資機材搬入ルートの確認が必要。既製杭工法は特に注意する必要がある。施工ヤードの制約も検討項目で施工機械の配置、材料ヤードの確保をチェックしなければならない。
⑤杭基礎の種類を決める場合、各工法の特徴を知り、各工法で、得意分野、不得意分野があるので、地盤条件・施工条件等より、施工可能な杭工法を、経済性、施工性、安全性、支持力、周辺への環境影響などを考慮して選定しなければならない。
まとめ:住宅販売会社、ゼネコン、一次下請けが今回あまり表に出てきていないが、静かにしていた方が得だと判断したのだとしたら、企業の社会的責任を果たしていない。一般的には今まで、くい打ち業者が表に出ることはなかった。
沈下の原因について、連関図を使用して説明された。記録の改ざん(作成)は罪悪であり最悪であるが、連関図で改ざん=建物沈下という直接の因果関係はないとの説明があった。(支持層に届かないから、改ざんしたということなら因果関係は存在する)以上