1.研究内容

1-1.テーマ 博多の崩壊事故原因(続)/インフラの老朽化とアセットマネジメント

1-2発表者 殿村 順一 会員

1-3.内 容

(1)    建設業界の最近の事故・不祥事として、「博多駅前2丁目交差点付近の陥没事故」、「新名神高速道路の延伸工事での橋桁落下事故」などについて、事故の状況、事故原因と再発防止策について説明があった。

・博多の陥没事故地質や地下水に関する要因として1.難透水性風化岩の強度:物性のばらつき、弱層部分の存在

2.難透水性風化岩の厚さ:上面位置と厚さ、不陸の存在、3.高い地下水位:難透水性風化岩への水圧、難透水性風化岩の不陸で作用面が変動、局所的荷重、水路の発生で局所的な荷重、4.難透水性風化岩の耐力:帯水砂層からの水圧に対する耐力、地盤改良など地下水対策の必要性、5.導坑施工による影響:先進導坑の施工によるゆるみ、亀裂の発生

設計や施工に関する要因として、6.トンネル断面形状:扁平断面による影響、7.トンネル支保工に対する安定性:吹付コンクリートや鋼製支保工の耐力、支保工脚部の支持力、8.AGFの横断方向の地山改良効果:連続性、地質との適合性、鋼管間隔や施工のずれ、注入圧、注入量の施工管理、9.AGFの縦断方向の地山改良効果:改良体ラップ長、AGFの適合性、鋼管の施工ずれ、鋼管打設による水みちの形成、10.適切な計測管理や必要対策工の実施不足等があげられた。

人的被害や第3者災害もなく、復旧の速さでは世界でも賞賛されているが、設計段階でNATM工法を採用したことは実績があったから採用されたようだが、最も繁華で交通量の多い道路下で、地盤改良をしないで施工するという設計自体がが問題ではなかったかとの意見があった。

博多陥没、損害賠償全額をJVが負担することに決定、福岡市と合意→市は現場の埋め戻し費用や近くの店舗などへの損害賠償の支払いを、施工するJVが全額負担することで合意したと明らかにした。事故現場の埋め戻し費用や店舗などへの営業補償損害賠償の請求があったのは2日時点で345件で、うち合意したのは約8割にあたる275件、計3億7290万円である。

(2)    都市部のインフラの現状と課題:インフラの老朽化が引き金:地盤陥没を引き起こすような地中空洞ができる要因は様々

→都市部の道路陥没では、インフラの老朽化が引き金になることが多い。都市部における人工地下埋設物に起因する陥没は、生活圏においてどこにでも起こりうる。→ インフラの老朽化に伴う道路陥没の対策が喫緊の課題となっている。地表から2メートルより深い空洞に対しては、いまだに効果的な探査方法はなく、技術開発が急がれる。

 

(3)    有馬川橋の事故概要 :門形クレーンの傾きでバランス崩し落橋した。原因はクレーン基礎の不等沈下(3940mm)で(クレーン天端が西側へ18.5㎝)傾いため、ジャッキに水平力が作用し転倒したもの。仮設構造物の基礎の安定と変位に関して地耐力を調査し必要な対策を講じなければならない。また架設作業は進捗で荷重が変わってくるので、計測管理(変位、倒れ、反力、地盤変位等)の管理基準値設定、頻度、記録方法、管理基準値超過時の対策、処置方法の計画が重要であるとの話があった。

 

(4)    インフラの老朽化とアセットマネジメントについて2012122日、笹子トンネル上部の換気設備を構成している天井板が延長110 ~130㍍に亘って崩落し、通行中の車3台がその下敷き、9人死亡、2人が重軽傷という事故か発生した。インフラの点検や更新計画等の必要性が改めて示された事故である。原因は①コンクリートの施工不良もしくは欠陥、②アンカーボルト、つり金具の材料や取り付け不良、③湧水によるコンクリート、つり金具の経年劣化⇒ボルトとコンクリートを接合させる接着剤の機能劣化の可能性、④複数回の大きな地震の影響によるコンクリート、つり金具の劣化、⑤空気圧の変動の影響、特に疲労によるコンクリート、つり金具の劣化設備の老朽化などがか投げられる。なぜ12年間、有効である打音検査をしなかったのかが問題となった事例である。トンネルの竣工は197712月で、35年経過していた。

(5)    荒廃するアメリカ:1980年代にインフラストラクチャー(インフラ)物的アセットの老朽化と荒廃が問題化

連邦政府による調査の結果、緊急対応が必要とされる欠陥橋梁が45%に及ぶことが判明、維持補修のための財源が確保されず、適切な維持補修が先送り、その結果,アメリカ全体にわたりアセツトの老朽化が進行し,危機的状況をもたらした。

 

(6)  橋梁などのアセットは、損傷や劣化が軽微な段階で予防的な維持補修を行うことにより,アセットの長寿命化が可能、→結果としてライフサイクルコストが節約される維持補修を先送りすれば,維持費用が増加、将来世代が膨大な維持補修費用を負担、社会基盤施設を国民のアセットとして位置付け、アセットの維持補修を計画的に,着実に実施するためにアセットマネジメントという考え方が生まれた。

(7)    トランプ大統領は1兆ドル(110兆円)のインフラ投資表明した。アメリカのダム:平均築50年経過:西部(カルフォルニア)の巨大ダムで決壊の危機 高さ(全米最大)235mオロビルダム(2月、下流19万人に避難命令)→全米で老朽化した欠陥ダムは4000ヵ所以上(補修工事は200億ドル以上とされる)

(8)    フリント市の腐敗した水道管の健康被害(水道に鉛)→大都市は24万の水道管が壊れ大半の水道管に寿命(米土木学会)

(9)    ニューヨーク地下鉄:トンネルの腐食で長期補修のため、2019年から1.5年運休する方針(ワシントン地下鉄も検討中)

・米国道路交通建設協会:全米5万か所の橋梁の整備不良で危険と報告

・米国土木学会:2013年~20年までに交通、水道等のインフラ整備に16千億ドルが必要だと試算

(10) 日本のインフラの状況:高度成長期に建設された膨大なインフラの老朽化が着実に進行、耐用年数を迎える→アセットの高齢化が加速度的に進展、維持補修の重要性への認識は高まってきたものの、維持補修を行うための財源確保が困難、少子高齢化社会の到来:税収減少や社会保障費用の増大などの外部環境がある。

(11) 20136月、日本再興戦略(閣議決定)=新しく造ることから賢く使うことへという考え方に転換:交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)20145月策定

(12) ISO55001は、社会インフラ分野で、資金、人材、情報等のマネジメントを含めて、計画的かつ効率的な施設管理を行うことにより所期の機能を継続的に発揮していくために必要な事項をまとめたアセットマネジメントシステムの国際規格で、認証型マネジメントシステム規格である。

規格の詳細は次回、機会があれば説明の予定

                                                           以上

                                                              
  
報告者:殿村会員

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