1.研究内容
1-1.テーマ 「自動車開発プロセスについて」
2-2. 内容
本邦の主要な産業である自動車産業に関して、自動車開発のプロセスについて、概説を試みました。先ず、自動車産業の市場環境についてその全体像を金額、台数ベースで説明し、その上で、自動車の構成要素の区分、自動車開発のステップ、開発課題、部品開発の事例、自動車生産の世界展開、開発の法規制、昨今の開発トピックについて検討しました。なお、自動車産業と建設産業を対比して、これらの産業の重要性を確認しました。
(1)
はじめに~自動車産業の市場について
自動車産業は本邦の重要な産業であることを定量的に示しました。世界の完成車市場は約240兆円で、本邦の
自動車メーカーは約65兆円を販売しています。トヨタはこの中で昨今は約28兆円の売上です。これらは、海外工場で約2000万台(約45兆円)を生産します。国内工場で約1000万台(20兆円)を生産し、このうち約半分(約11兆円)を輸出し、約半分(500万台、9兆円)を国内販売しています。これらから、国内の車の平均単価は約180万円/台となります。輸出では部品を輸出しその売上は約4兆円で、自動車関連輸出は約15兆円となり、本邦の輸出総額約70兆円の21%を占めます。このうち、売り上げベースでの部品の総額はパワープラント部品が約40%を占めます。自動車関連産業は完成車20兆円(内輸出11兆円)、部品30兆円(内輸出4兆円)で売上総額約50兆円産業です。これは、建設産業の売上総額50兆円に匹敵する巨大産業です。これは本邦の製造業売上高約300兆円の17%に相当します。私たち診断士はこれらの自動車産業に寄与できれば本邦の産業振興に寄与することになります。
(2)
現状の自動車開発フロー
自動車の構成要素は、大別して、パワープラント部品(エンジン、変速機)、シャシー(操舵、ブレーキ)、ボディ(ドア、車体、車体構造部品、ガラス等)、電装(ナビ、小型モーター類、電磁石など)です。自動車開発はFMC(フルモデルチェンジ)が約5年を要します。エンジンの開発は長い時間を要し、先行開発検討を含めて6年程度かかりますので、エンジンは早めに開発検討に着手します。金型が必要な部品は早めに仕様をFIXします。一方、金型が不要のハーネス類などの仕様FIXは開発終期になります。また、ハードウェアを制御するソフトウェアは、ハードウェアの仕様FIXの後で仕様がFIXされるので、開発終期に仕様がFIXとなり、開発終期に開発業務が集中する傾向になります。昨今は仕様FIXの早期化のため、シミュレーション技術を援用して仕様を早めに設定し、開発終期での業務の集中を回避する工夫をしております。
(3)部品開発の仕組み
自動車は組み立て産業です。製造原価の70%程度は部品購買に充当します。このため、広い裾野産業が育まれることになります。自動車会社に直接納入する企業を第一次サプライヤー(Tier1)
と称し、第一次サプライヤーに部品を納める企業を第二次サプライヤー(Tier2)と称します。Tier1
はデンソー、パナソニックなどの大企業が大半ですが、中には中小企業でありながらTier1の企業があります。例えば村上開明堂(従業員71名、資本金3500万円、@2016)というドアミラーメーカーがあります。この特徴は、技術の蓄積により特定の分野にてシェアNO1で、完成部品として直接に自動車会社に納入し、電子制御技術などの新技術に積極的に取り組むことです。中小企業のあるべき姿の一つです。
(4)量産段階での自動車部品の流通
昨今は、東南アジア(アセアン)、とりわけ、タイとインドネシアの技術力の進展に素晴らしいものがあり、完全に現地開発が出来るようになりつつあります。東南アジアの各国の得意技術を活かし、部品を開発生産します。
東南アジア各国間で部品を流通させ、タイで完成車を生産するなどの仕組みが出来つつあり、トヨタはこれをIMV(Innovative
International Multi-purpose)プロジェクトと称し、新興国専用の世界戦略車を実現させています。
(5)今後の自動車、自動車部品開発の流れ
今後は、自動車の全体仕様、構成部品の仕様、設計を早期にFIXするために、シミュレーション技術を援用して、市場のニーズへの迅速な対応、開発の加速化のみならず、開発費用の削減、開発作業の工数の平準化(働き方改革)を目指しています。仕様FIXの遅延で開発終期に作業が集中しないような開発フローの実用化が望まれます。
(6)自動車、部品の性能規制について
自動車は、市場となる各国で規制が異なります。このため、同一の車種でも、仕向け地ごとに仕様に違いが生じます。
このように、仕向けにより仕様が多岐に亘ります。そうすると、開発メニューが増え、これが開発の工数を増加させます。
安全性能も例えば米国は48km/hrのフルラップ(前面衝突)試験、欧州は56km/hrのオフセット(部分衝突)試験での衝突
性能評価となり、異なる性能が求められます。また、燃費特性、排ガス特性も規制値が異なります。これらの規制値を達成して、その国での市場投入が可能になります。
(7)自動車開発でのトピック
・昨今は、電気自動車の開発が急ピッチで進められています。エンジン自動車が、多くの制御用装置を必要とする制御性の悪いエンジンで駆動するのに対し、電気自動車は制御マイクロコンピュータとドライバー、インバータ、大電流制御半導体という少ない部品で、制御性の容易なブラシレスモータを用いて駆動します。このため、簡素な機構で自動車が走ります。このため、今後、部品メーカーは売上の低下が推測されます。ただし、Li-ion 電池や、インバーターの放熱機構、インバータのノイズ抑制部品などの需要は増加すると考えられます。
・自動運転では、技術の進化は当然必要ですが、それと並行し倫理検討、法制の充実が必須です。例えば、トロッコ問題という
事故を想定し、事故による損失を適切に判断し、いくつかの運転モードの中で1つのモードを選択する判断基準の設定などは技術のみならず、倫理的な要素を含みます。一般市民に対しても納得性のある判断基準の設定が大切です。
(8)その他
自動車部品工業会作成の自動車の構造、動作に関するビデオを鑑賞し、自動車への理解を深めました。