日本国際政治学会・東京地区院生研究会
2004年度研究会−国際関係論における市民社会と知識人−
日時・場所 2004年12月11日(土) 早稲田大学1号館302教室 地図 研究会要旨 懇親会情報
報告(「名前」をクリックすると報告要旨に、「レジュメ」をクリックするとレジュメに飛びます)
大賀哲(エセックス大学大学院)「明治イデオロギーと知識人」 レジュメ
茂野玲(エセックス大学大学院)「ユーゴ共産主義と左派知識人」 レジュメ
渡部淳(北海道大学助手) 「グローバル情報経済における新しい知識人」 レジュメ
司会 野崎孝弘(中部大学専任講師)
討論 野崎孝弘(中部大学専任講師) 南山淳(筑波大学専任講師)
−プログラム−
13:30 開会挨拶(野崎)
13:45 報告(大賀・茂野・渡辺)
15:15 休憩
15:45 討論(野崎・南山)
16:15 質疑応答
17:00 インフォメーション(大賀)
17:20 責任者交代の儀式(野崎)
17:30 閉会
*懇親会情報*
当日は18:30より「甘太郎」にて例年通り懇親会を予定しております。会費は3000円程度を予定しております。そこで事前に人数を把握しておく必要がございますので、出欠席を取らせていただければと思います。大変お手数ではございますが、
●名前●
●研究会のみ参加 or 研究会&懇親会に参加●
を下記メールまでご連絡いただけますでしょうか。
大賀哲(おおが・とおる)toruoga@m5.dion.ne.jp
研究会趣旨
本研究会の趣旨は国際関係論における市民社会と知識人の役割を再検証することにある。従来、特定の知識人の思想や言説に着目した研究は多いが、それら知識人の思想が言説として市民社会の形成にどのような影響を与えているのかについては、個別の事例研究はあまりなされていない。また近年、市民社会についての研究は着実に増加しているが、それがどのような思想的・言説的なバックグラウンドを媒介として形成されているのかについての研究は未だに発展途上の段階にある。本研究会は、「市民社会」と「知識人」という二つのテーマにおけるこうした研究上の溝を埋めることを目的としている。
各報告は、それぞれ日本、ヨーロッパ、グローバルな国際政治経済における知識人の役割を論じた内容となっている。まず大賀報告では、明治後期の知識人の役割に着目し、明治イデオロギー及び当時の市民社会の形成を、東と西との間で揺れ動くアイデンティティ政治の視点から検証する。続いて茂野報告では、プラクシス派マルクス主義の哲学から、ナショナリズム言説、ユーゴ共産主義、党及び労働者の関係を考察し、ユーゴ思想史に迫っていく。最後に渡部報告では、グローバル情報経済における企業・組織・投資家等のプライベート・ネットワークに着目し、私的空間において新たに台頭しつつある経済的知識人の役割、及び資本と知識の結びつきを批判的に考察する。いずれの報告も市民社会と知識人の思想的系譜に着目しながら、知識人の思想・言説が市民社会形成にどのように関わっているのかを正面から考察するものである。
明治イデオロギーと知識人−<東>と<西>をめぐる境界の政治学 (大賀哲)
本報告は「明治イデオロギー」の形成における知識人の役割を考察する。明治イデオロギーとは西洋の脅威に対して国家意識を形成するナショナル・アイデンティティの課題であり、欧米に対する排除と受容の二面性を持った境界の政治学である。明治イデオロギーは、<日本>あるいは<アジア>を強調して欧米の精神文明を「排除」する一方で、その脅威から積極的に欧米の物質文明を「受容」してきた。すなわち明治イデオロギーにとって<欧米>とは「外部」であり、かつ「代補」として機能している。本報告では4人の知識人(陸羯南・永井荷風・内村鑑三・夏目漱石)の言説を事例として用い、明治イデオロギーが市民社会の中でどのように形成されたのかに迫っていく。いずれの知識人においても東西の<境界性>が思想的に重要な役割を果たした。本報告の趣旨は、これらの知識人の役割を考察しながら、明治イデオロギーが市民社会の中でどのように構築されてきたのかを検証することにある。
ユーゴ共産主義と左派知識人−プラクシス派哲学における普遍主義の限界 (茂野玲)
旧ユーゴスラヴィアの思想史は、プラクシス派マルクス主義者の理論と実践における活動によって代表される。本論は、脱構築および精神分析に依拠することにより、プラクシス派哲学および倫理学が追求した普遍主義を批判的に分析するものである。特に中心となるのは、プラクシス派の哲学、政治そしてナショナリズムに関する言説とユーゴ共産主義および党との関係、そして労働者という主体のはらむ普遍性と特殊性との緊張関係である。
グローバル情報経済における新しい知識人―私的な権威の台頭と新経済秩序による統治 (渡部淳)
本報告は世界政治を、現在戦後の物質的大量生産型経済に取って代わりつつある、情報と知識の生産・配分・消費からなる新興の複合体として捉えながら、そこに出現しつつある新しい民間の勢力と、それを取り巻く秩序を考察する。グローバリゼーションの中で特に著しい、情報技術の発達と市場の影響力拡大がもたらした、不安定でわかりにくい世界の中で、高度に専門化された知識の占有を基盤に、国家や社会に対して私的な権威を振るい始めている、企業・組織・投資家とそのネットワークの、新しい状況の中の知識人としての機能を明らかにしていく。本報告では、この新しい経済的知識人たちの権能がどのように高められてきたを、不安定な市場を媒介とした、知識と資本の結びつきから論じる。まず、背景として(金融)市場の拡大、国家の側の合理化を理由にした公的権限の私的領域への積極的譲渡、またそうせざるを得ない世界の不安定性と不透明性の増大を考える。次に、民営化や民活化が礼賛される中で、グローバルなアリーナで巨大な権能を持つ、私的団体とそのネットワークの非民主制と閉鎖性から、世界の市場化に重要な役割を果たす、新自由主義的な知識の生産と普及に対して検討を加える。最後に、この私的な知識・資本・技術の結びつきからなる諸権威の実例を列挙しながら、私的なグローバル・ガバナンスとでも表現すべき、民主的及び公的制御の及ばない勢力が作り出そうとしている、新しい経済を中心とした秩序の記述を、世界の私的な統治の試みとして批判的に論証するのが本報告の趣旨である。