■ダムと紅葉■■■■■■■■■
ぐるぐると、車は右左に向きを変える。もう、目が回っちゃうよ!ワインディングロードってやつだ。ぐるぐるしながらだんだん高いところに上るのだ。すると山の木のはっぱがだんだんきれいな色になってくる。紅葉ってやつだ。人間たちは紅葉というものがずいぶん気に入っているようだ。わざわざ4時間以上もかけて見に行くというのだから・・・。
とつぜん目の前が明るくなった。大きな池みたいなところに出たのだ。池と言うには大きすぎる。山の赤や黄色の葉っぱと大きな池のとうめいな緑色の水がすごくきれいだ。どうもこの大きな池は「ダム」というらしい。
その「ダム」のしくみをせつめいするために作られた建物。ほそう道路はここで終わりだ。これから山道をまたぐるぐる登るらしい。もういいかげんにしてほしい。そうしないと角が丸くなってしまうじゃないか。でもここは風が気持ちいいし、まわりもひろびろとしていいところだ。もっと山の上にはもっと気持ちいいことが待っているかも知れない。みんなでここでちょっときゅうけいしてから出発することになった。「ここから先はおもしろいよー」なんていう声が聞こえたが、なにがおもしろいんだろう?気になる。
■林道■■■■■■■■■
山道に入った。左は大きな石がごろごろしている川だ。ガードレールもないじゃないか、危なくないのかな?とおもっていたら・・・
あわわわわわわわ・・・・!
なんてゆれだ!車が!車がひっくりかえりそうだぁ!!!頭をぶつけながら外を見ると道はばは車1台分しかない。しかも大きい石がごろごろしていたり、すごい水たまりになっていたり、「こういう所はゆっくり走らないとね。ギアは4Lに入れてと・・・」なんていってるけど、ゆっくりでもすごいゆれにはちがいない。それなのに運転しているヒゲの人間はニヤニヤ笑って楽しそうだ。気持ち悪いやつだ。ほかの人間たちは窓に頭をぶつけたり、天井に頭をぶつけたりしてひめいを上げている。このひどいゆれはそのあと約40分も続いたのだ。
ゆれながらさらにまわりを見ていると、お墓があった。こんな山の中なのにむかしは人間が住んでいたようだ。
やがて平らな広場に出た。むかしの集落らしかった。そのあたりに車を止めるとみんなリュックを背負って歩き出した。
■山登り■■■■■■■■■
 狭くて急な下り坂を降りると大きな石がごろごろしている川に出た。見ると大きなカメラを持ったひとが一人で写真を撮っていた。紅葉は山の下よりももっときれいで川の流れの音も気持ちがいい。空気もすごく澄んでいるみたいだ。カメラを持った人はそんなけしきをとりに来たらしい。
木でできた橋をわたると案内板があった。
「熊に注意!」
!!なんてこと!!!
熊よけの鈴をつけた杖がどれほどの効果があるのだろうか。不安になりつつ落ち葉を踏みしめて山道を進む。途中で道を小川がよこぎっている。ん?小川を道がよこぎっている?どっちだ?どっちでもいいや。すごくきれいな水だ。ぼくはこけの生えた石の上でひとやすみ。これがぼくの写真。どう?かっこいいでしょ?
どうでもいいけど、この人たち歩き始めてからずーっとギャグの連発で笑いっぱなし。笑いすぎて腹をかかえてしゃがみ込んでしまったり・・・。しかもジョークの内容はおにぎりから見ても低レベル。おいおい、このままじゃ夕方になっちゃうよ!
山登りはだいたい1時間30分の道のり。その半分ほど来たところで、道ばたの石にこしかけて休んでいるおばあさん3人組を発見。少し立ち話。2人は若めのおばあさんで、もう一人は古めのおばあさんだ。聞くと、古めのおばあさん93歳だという。地元に住んでいながら山の上の温泉には1度も行ったことがなく、ぜひ1度行きたかったのだそうだ。若い者でもふうふう息を切らしてしまうような山道を・・・すごい元気なおばあさんだ。ぼくもあやかりたいところだけど、ぼくの場合しょうみきげんが1日位なので93年なんてどんなに長い時間なのかそうぞうもつかない。
おばあさん達とわかれて、途中で紅葉をバックに記念写真をとったりしながらもうひとふんばり。でも、つかれたのでちょっとないしょで一休みしたりして・・・。そうこうしてるうちにやっと温泉のたてものが見えてきた。とうちゃくだ!見ると湧き水が流れていて、ひしゃくで飲めるようになっている。人間たちはみんなごくごくと飲んでは「うまい!」「おいしい!」を連発している。ぼくだったらもう少し気のきいたことを言えると思うのだけど、まったく貧困なボキャブラリーというやつである。
■温泉到着■■■■■■■■■
 
われわれが泊まる所は「煙草屋旅館」というところだ。げんかんで、旅館のおばちゃんがでむかえてくれる。暗いろうかと、もっと暗くて急な階段をのぼって部屋にとおされた。8人で行ったので8畳の部屋だ。ひとり1畳なんだそうだ。たとえば6人で8畳の部屋だったらあと2人知らない人と”あいべや”なんだそうだ。
ぼくはおもわず畳の上に大の字になった。
ああ!なんて気持ちいいんだ。「やったー!」という感じである。
さっそく持ってきた缶ビールをぷしゅっと開ける。コップがないので湯飲みについでかんぱいだ。「ふうぅ〜、うまい!」ああ・・・これがやりたくて人間たちは苦労して山登りしてきたんだな?きっと。
部屋の中をみまわすと真ん中にあるテーブル(というより”ちゃぶだい”?)はもう100年くらい使っているような感じで黒光りしている。あんまりきれいじゃないけどここまでちゃぶ台1個持ってくる労力をかんがえたらいったいぼくが何個ひつようだろうか?そのほか、へやのなかにあるものといえばなんと1枚の”絵”なのだ。とにかく雨露をしのいで寝られればいいというこんせぷとの宿なのに部屋の中には”ちゃぶだい”と”絵”だ。なんか哲学をかんじる。クールだ。
■源泉■■■■■■■■■
少し休んだら今度はもう少し登って「げんせん」をみにいった。「げんせん」というのは温泉のお湯がふきだしている場所だ。そこから管で旅館までお湯を引いているのだ。とちゅうに小さな神社があった。おさいせんをあげて、なかをのぞいてびっくりした!なんと中には龍がいるのである。でもよくみると木を彫ったものらしいので安心した。なんでも「ひだりじんごろう」という名前の、昔の人が彫ったものらしい。それにしてもすごい彫りものだ。
「げんせん」は地面からすごいいきおいで湯気がふきだしている。あついのであまり近づくと危険である。ちいさなふきだしのところで記念写真を撮って、宿に帰った。
■混浴露天風呂■■■■■■■■■
人間たちはみんなおもいおもいにお風呂に入りに行ったり部屋でビールを飲んだりしている。ろてん風呂はある時間だけ女の人専用でそのほかの時間は混浴だそうだ。混浴だろうがなんだろうがおにぎりには関係ないことだ。だってお風呂に入ったらばらばらになっちゃうから・・・。しかもそのあとふやける。だからぼくは生まれてから一度もお風呂に入ったことがない。
そのうち部屋でビールを飲んでいたヒゲの人間とふとったメガネの人間がペットボトル入りの日本酒をもってろてんぶろに行った。2人はろてんぶろに入りながら500ミリのペットボトルから一口づつかわりばんこにお酒を飲んだそうだ。紅葉の山をながめながら二人で1本からにしてごきげんである。ろてんぶろにはカメラを持って行かなかったので写真はないそうだ。
夕方の4時半になるともうばんごはんである。1階の広間に人間がぎっしりつまっている。めにゅーは、ごはんにみそしる、魚のかんろ煮に厚さ3ミリの焼き肉、それにキャベツが少しそえてありあとはひじきとたくあんだ。こんな質素な食事でも山の上ではすごくありがたい。だってこれを運んでくるには一体ぼくが何個分の労力が必要なのか・・・。もちろんぼくは食べなかったがみんな満足そうである。よかったよかった。
それにしても夜になると暗くなるので、暗くなると電気をつける。あたりまえなのだがこんな山奥には電気が来ていないのだ。でもはつでんきがあるので、夜の9時までは各部屋20ワットの蛍光灯が1本づつついている。
ゆうごはんが終わると部屋に帰っておしゃべりしたりトランプしたり、またお風呂に入ったり、またまたお酒を飲んだりしてすごす。寒いのでもう部屋中布団を敷いてその中にもぐったりしている。まだ6時半だというのにもう真夜中のようである。
消灯の9時近くになってまたろてん風呂に出かけたヒゲとメガネと子供たち、電気が全くついていない真っ暗なろてん風呂であとから人が来て入ったなと思ったら、その2人連れが若い女の人の声だったのでビックリしたようだ。ホントに混浴である。その人達より早くあがったヒゲ達はゆぶねの中を照らさないように注意しながら懐中電灯をそっぽにむけながら帰ってきたそうだ。
■さよならおにぎりくん■■■■■■■■■
部屋に帰るとすでに消灯。寝ながら待っていたぼくは物音に気づいて目を覚ました。ヒゲとメガネの2人はまたビールを飲み始めた。本当にお酒が好きなんだなと思った。話をしながらまたしょうもない冗談を言い合っては声を出さずに爆笑している。やがてビールも飲み終わり、ヒゲが言った。
「はらへったな。半分くうか?」
2人はぼくを半分に分けて食べた。だから、そのあとのことはわからない。でも、しょうみきげん内に食べられてよかった。今度生まれ変わるときにはまたコンビニのおにぎりがいいな。そして、まただれかと旅に行きたい。さよならみんな。またどこかで・・・。
<おしまい> |