フェイスを駆けろ : サイドラン              2000年7月30日


夏はあつい。それは常識。サーフィンポイントは海水浴客に占領、道路も渋滞・・・・仕方ないから、また頭の体操を。

 左背後に迫る波。徐々に壁が立ちあがるのがカヤックのボトムからひっくり返そうとする力でわかる。右わき腹を絞めながら下半身を波側に倒し、カヤックのサイドを波に食込ませる。ギリギリの姿勢でこらえていると、頭上に波頭が迫って明るい空を遮った瞬間、カヤックを波のトンネルが包み、その先に光の出口が開けている。「チューブだ!」と思った瞬間  ・・・・「ガガガッ!!」「ザザザッ!!」  ボトムに衝撃。 こらえていた姿勢が一気に開放され右方向に側転、右頭部に「バコッ!」「ザザザッ!!」 ・・・・・なんでここに砂があんの・・・・・、・・・・・・、・・・・・・・、・・・・・・なんと、知らぬ間に波打ち際までサーフして、そのままダンパーに巻き込まれていたのです。ああ、首が折れなくて良かった。皆さん、周りには注意しましょう。これぞ、天国と地獄めぐり。

 いくら波があっても波を如何に楽しむか?これによって満足度も違ってきます。まあ、たいそうな事は言えませんが、大きな波が立ち上がった瞬間から、消えるまでその短い寿命を最大限に生かすことが出来た時、サーファーがいう「波をメイクする」という言葉の意味を実感することが出来ます。
 そのためには、「永く」乗ることが最も重要なキーワードでしょう。幅広の波、速度が速い波、さらにさまざまな立ち上がり方・崩れ方、カヤックを押す力の強弱・・・・千差万別の波に合わせて、速度を調節しながら、そして方向を調整しながら波をメイクしてみましょう。

縦と横

今回は、前回のお約束どおり、「サイドラン」を考えてみましょう。で、何がサイド(横)で何がストレイト(縦)かって? 先ずは次の図をご覧下さいな。

 波は、立ち上がりから岸に近づくにつれて幅が広がっていくのが普通です。立ち上がりは小さな小山だったものが、岸に近づくにつれ幅が広がり壁のように成長します。同時に、最初に立ち上がった部分は白く崩れスープ(アワアワ)になっていくものです。この時、サーファーは、立ち上がり始めた波のトップに立ち、滑り始めるのですが、波のフェイスに対し直角、真下に向かって走れば、すぐに背後の水はスープと化し、カヤックは浮力・コントロール性を失ってしまいます。俗に、「直滑降」と呼ぶスキー技です。大きく立ち上がった波のフェイスを直滑降で突っ込むのは、なかなか勇気がいるものですが下手をすればバウが刺さって前転するかもしれません・・・。一瞬でサーフィンが終わってしまうのも残念です。
 一方、波は進行に合わせて横方向へ幅を広げていきます。この時、波が立ち上がってスープになるまでの部分が、グリーンウエイブで、カヤックを押してくれるパワーもあるし、水面がしっかりしているので、カヤックを”コントロール”することも容易となります。ここの部分を如何にキープしてサーフィンするか・・・・・それがサイドランの目的です。当然、このエリアの移動にあわせてカヤックを移動させていくので、その分、サーフィンしている時間も長くなり、波を最初から最後まで味わうことが出来るのです。
 すなわち、縦とか横とかは、波のフェイス、もしくは進行方向に対する向きであり、横へ向かうということは、波のフェイスを下るのではなく、波のエネルギーを横方向への動きに換えて、波のフェイスを斜滑降していくことなのです。

テイクオフ(復習)〜方向転換〜サイドラン

 テイクオフは、波の進行に合わせてダッシュすることから始まります。パドルをいれて早いフォワード、パドルは「深くしっかり」より「浅く軽く」のほうがいいが、その分「早くまわす」ようにします。波が追いつきスターンが持ち上がるか、バウが下を向いた瞬間、上体をスターン側に倒します。これが波に乗る瞬間のキーポイントのような気がするのです。多くの本には早く漕ぐのに前傾姿勢をうたっていますが、テイクオフの瞬間は後傾のほうがいいと思うのです。この傾ける角度は重力方向、すなわち水平に対する鉛直を維持するのです。カヤックは波のフェイスで前傾していくので、結果的に後傾することになるのです。言い換えると、カヤックをフェイスの傾斜と合わせるために上体を後傾させる・・・・と言うことかもしれません。もちろん、以前書いたようにニーブレイスをしっかりしないとバウチンしますし、足を突っ張ることで、パドルの力を効率的にカヤックに伝えることも重要です。
 波の立ち方が急であるほど(テイクオフのポイントが遅い場合など)上体は後傾させなければなりません。・・・・しかし、このままではボトムに突き刺さってしまいます。そこで、サイドランに移るのです。
 ストレートテイクオフの瞬間、バウの正面、カヤックの中心線の延長線上には波のボトムがあるはずです。そして、上体の背中側の横には波のフェイス面=水面が迫っています。左右どちらかのパドル(ここでは右側としましょう)は、少し突き出せばすぐ水面に入るはずです。そこで、腰の少しうしろあたりに軽く右パドルを、水面に入れる感じを維持しながら(腕はあえて動かさずに)左ひざでニーブレイスを持ち上げ(反対に右ひざは押し下げて)、同時に腰を右にねじり、カヤックを右方向へ向けます。右方向を向く時、カヤックの右側のエッジをフェイスの水面に合わせることで、カヤックはボトムの中心線を使ったストレイトテイクオフの動きから、エッジを使ったサイドランに移るのです。 アングルドテイクオフもこの最初の部分を省略したものと考えればいいんです。波のパワーが弱かったりした時は、やっぱりストレイトでテイクオフして、加速したところで方向を変えるって方法が妥当です。
 ただしこの動作では、カヤックを傾け、サイドのエッジを水面(多分、水面は体の横に傾いた壁となって迫っているはず)に噛ませず、カヤックのハルの接水面が水面と平行な状態のまま方向転換をおこなうと、方向転換ではなく、フラットスピン(180)になって、バックサーフィンが始まることもあります。

 この図はフェイスでの方向転換、サイドランに移るイメージです。正面から見ていたら、きっとこうなっているはずです。最初はデッキばかりが見えて、カヤックはハルで滑りはじめます。方向転換に入ると、カヤックの接水面は波側に移動し、最後、方向が決まったら、サイドのエッジがフェイスをつかんでいるはずです。あまり早くこの動作をするとスピンしてしまうかもしれません。瞬間ですが、慣れるまではスターンに後傾した上体の体重をカヤックのハルにジワ〜ッとかけるつもりで、接水面の変化を意識して行ないましょう。(もし、フィンがついているカヤックならきっとこの動作は楽でしょうね。) 正面から見ていると、カヤックのハルが徐々に見えるようになるはずです。方向転換中の上体の動きのイメージは、上体とその先のパドル(右側)を波側に傾けることで、パドルブレードを中心にカヤックがコンパス運動をしている・・・・と言ったらいいでしょうか。パドルはフロントフェイスを使って水面を引っかく感じです。あまり深く入れません。まあ、難しいこと言わなくても、これらは平水面でリーニングターンをしているだけなんですが、水面が立体的になり、波の推力が加わることで複雑そうに思うだけなんです。
 複雑と言えば・・・上体の後傾ですが、この動きの中で、序々に後傾は緩めていくことになるはずです。なぜなら、方向転換の終了時点では、カヤックは鉛直方向に立っていないからです。・・・・・そう、サイドランはバウチンを防ぐ、すなわち、カヤックを立たせない方法でもあるのです。逆に、後傾を遅くまで続けているとカヤックはフェイスを登り始め、この時点で失速するか、波のトップをこえて元の黙阿弥になってしまいます。方向が定まった時には、自然な姿勢に戻して、谷側のひざを使ってカヤックの傾け方を調整し、波側のエッジをフェイスに喰い込ませたり緩めたりして位置を調整しましょう。さらに腰も使ってエッジ側に重心を寄せましょう。

 そして、もう一つ、方向転換後の安定したサイドランに重要なのはパドルです。ターンの内側にあったパドルを反対側(谷側)のスターンよりにセットし、カヤックの方向を調整するのです。同時にこの姿勢をとることで上体が谷側を向き、反対に腰がエッジに寄って重心がエッジ側にかかることになります。方向転換の最終状態、サイドランの方向が定まった時点では、カヤックはエッジを使って波を登ろう(リーニングターンですから)としています。カヤックの傾け方でエッジの方向を調整すると同時に、それをパドルで補完しながら方向を調整するのです。パドルは、谷側のスターン寄りにブレードが縦になるように入れて、スターンラダーの要領で方向を調整します。(方向転換でカヤック自体の方向性を生かす場合は、ブレードは水平にして軽く抵抗を得るように使います。)
 スターンラダーといっても、パドルは直進性を維持するフィンと同じで、車でいうなら向きのかわらない後輪です。カヤック自体の直進性やエッジが前輪のように方向舵となって進行方向を決めるのですが・・・・。


 波のパワーポケットの移動に合わせてフェイスをサーフィンする・・・・、波の速度や傾き、パワーに合わせてカヤックを操るロングライディングは爽快そのものです。直下降でボトムに滑り降りて終わり・・・なんて、余りにモッタイナイじゃないですか。それにサーファーの進行方向とクロスすることでも危険です。エッジを生かしてフェイスを突っ走ってターン、・・・・専用艇でなくたって、ある程度のカヤックだったら、ちょっと慣れればサーファーと同じようにサーフィンできるんです。

 それにしても・・・・・・フェイスでのカヤックの扱いって、急斜面でのスキーの扱いにほんと、似ていますよね。エッジを入れたり、はずしたり、上体の移動やターン中の動作も、共通点がいっぱいありますね。書ききれなかった・・・と言うよりも、筆才がないのですが・・・方向転換では、バウの接水圧を維持しながらスターンを滑らして、エッジを切り替える〜〜とか、パドルの入れるポイントとストックワーク〜〜とか、いろいろと共通点があるように思えてなりません。サイドランの姿勢(進行方向に対し上体を谷側に向ける)は斜滑降そのものですよ。
 でも、スキーは夏には出来ませんね。

 以上.

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