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「あ!いましたよ!」 山の中腹にある洞窟の中、長身のハーフエルフ、フェルナンディの声と共に、パーティー9人全員が臨戦体勢に入る。 赤々と燃える松明の火の揺らめきに映った影は5つ。 「巨大な鼠3匹とトロール2体だな」 金髪のエルフ、ルグイが呟く。 「あんたたち!川から離れないと食べちゃうわよ!」 言葉が通じないのに威勢良く宣言し、グラスランナーのマリーが先制してダーツを投げる。 「あー、僕も食べたい!」 「オイラはやだなぁ…」 大きな斧を持ったドワーフのナナオと、人間だが獣の耳と尻尾を持つハスティが言いながら、敵に向かって駆け出した。 「鼠はバイ菌いっぱい持ってるんだけどなぁ」 「……ケダモノ」 呆れたように呟くハーフエルフのボクとルグイ。 「はっはっは。皆さん育ち盛りですからねぇ」 フェルナンディはにこやかに言い、自らも剣を抜いて敵に向かっていった。 「とりあえず倒せばそれでいいだろう」 「あっちゃんの言う通りだよ。それに、後で私がみんなにたっくさんお菓子作ってあげればいいし♪」 ピンクのワンピースを着たエルフの少女リディの発言に、銀髪のエルフ、アイルザッハとルグイが表情を硬くした。フェルナンディだけがにこにこしながら、 「ああ、それはいいですねぇ。きっと皆さん喜びますよ」 「うんっ」 その会話にアイルザッハは軽い頭痛を覚えたが、気を取り直し、かけていたサングラスを外して投げ捨てると、その柔らかい眼つきを吊り上げて呪文詠唱に取りかかる。 リディは彼の投げ捨てたサングラスをフリスビー犬よろしくキャッチして、大切そうにしまってから同じく呪文を唱え始めた。 続いてルグイも呪文を唱え、ボクは「そうだ、動物達を呼ぼう!」と楽しげに笛を吹き、呪歌『サモン・スモール・アニマル』で無意味に動物を呼び出す。 そして最後の一人、茶髪のナルシー、ラッセンはと言うと。 「ん〜、今日も紅茶が美味しいねぇ」 後ろの方でどこからか出したテーブルに着き、お茶会を始めていた。 しかし一同は慣れたもので、特に気にせず アイルザッハの精霊魔法『ファイア・ボルト』でダメージを受け動きが鈍ったトロールに、フェルナンディが斬りかかる。 「争いは嫌いなんですけどねっ!」 ザシュッ 肩から胸にかけて斬りつけられたトロールは、吼え声を上げて反撃をする。が、フェルナンディは横に避けてその拳をかわした。 ナナオは別のトロールに攻撃されたがそれを防ぎ、 「全然効かないよ」 そう告げると自分より大きい斧を振り下ろす。 その斧自体の破壊力と、ナナオ自身の驚異的な筋力とが相まって生まれる攻撃力に、トロールはかなりのダメージを受けたようだった。 さらにそこにルグイの古代魔法『エネルギーボルト』が叩き込まれ、トロールは倒れた。 ハスティはリディが魔法で攻撃した鼠に狙いを定める。 その鼠の鋭い牙の攻撃をなんとか避けたが、もう一匹の鼠に囲まれてしまい、体当たりを食らってしまった。 「くっそぉ!」 ハスティは体勢を立て直し、最初の鼠を斬りつけた。 さらに、その鼠にどこからか飛んできたダーツが突き刺さり、鼠一匹が地に伏して動かなくなった。 「サンキュー、マリー」 ハスティはもう一匹の鼠から目を離さないまま感謝したが、 「その鼠はあたしが食べるんだから!あげないわよ!」 「…………」 どうやらご飯を横取りされると思っただけのようだった。 魔法が当たったことを確認したアイルザッハは短剣を抜き、さらに呪文を唱えるリディの横をすり抜け、自らも戦火の中へと入って行く。 一気に三匹目の鼠との距離を詰めると、目を狙って短剣を突き出した。 しかしうまくかわされ、側面が浅く斬れただけであった。 小さく舌打ちする彼の目の前で、鼠が火に包まれた。リディの『ファイア・ボルト』である。 「アッちゃんがんばってー」 手をぶんぶんと振って声援を送る彼女に一瞬だけ視線を送ると、アイルザッハはすぐに目の前の敵に集中した。 「『エネルギーボルト』!」 ルグイの魔法がフェルナンディの前のトロールに放たれ、さらにフェルナンディの攻撃によって、2体目のトロールは気絶した。 「すみませんが、こっちも生活がかかってるんですよ」 倒されたトロールに、困ったようにフェルナンディが語りかける。 「さて、あと2匹ですね」 彼はアイルザッハの方に駆け出した。 鼠の攻撃を防いだハスティはすぐに反撃をする。 「やぁっ!」 声と共に繰り出した剣に手応えを感じる。 そこへ、目の前に巨大な斧が振ってきて、鼠を押しつぶした。 「ぅわっ!?」 驚いて飛び退くと、横からナナオの声が聞こえた。 「ハスティ、大丈夫?」 ナナオが斧を持ち上げながら尋ねてくる。 「ま、まーな…」 まだドキドキする心臓を抑えながら、オイラを狙ったわけじゃないよな、とナナオを見てみる。彼がそんな事を考えない事はわかっているのだが、如何せんその手に持つ斧の迫力は恐ろしい物がある。 と、先程押しつぶされた鼠が、死力を尽くして大きな鳴き声を上げながら起き上がった。 「げぇ、まだ生きてたのかよ!」 「えー?」 ハスティとナナオが慌てて構え直す。そこに、またもやマリーのダーツが飛んできて、鼠に突き刺さった。 「あんたら油断しすぎ!」 「うん、ごめんよ」 素直に謝るナナオの声は、どこからか聞こえてきたラッセンの『自分を称える歌』(もはやある意味呪歌だろう)に掻き消された。 「何考えてんだぁ〜?…まあ、あと1匹だな」 その歌に呆れながら、ハスティはアイルザッハの方を振り向いた。その時、彼は、ほんの一瞬だけだが、アイルザッハが笑ったように見えた。 「え ゾクッと背に悪寒が走る。 しかし、ちゃんと彼の方を見た時には無表情であった。 (…気のせいかぁ?) そんな事を思っているうちに、視界の中でアイルザッハの得意技、『クリティカル・ラッシュ』(クリティカルを2回以上連続で出す事。テーブルトークにこんな名前の技はない)が決まり、彼の短剣が深々と鼠の心臓を貫いた。 短剣を抜くと、勢いよく血がしぶき、アイルザッハにそれがかかる。そこでアイルザッハははっと我に返り、 「しまった…やり過ぎた」 反省するように小さく呟いた。 「アッちゃーん!」 戦闘終了と共に、リディが彼の下へ駆け寄ってくる。 「!リディ待て…!」 慌てて叫ぶが、遅かった。 「アッちゃ……っ!?」 近くまで来たリディは、アイルザッハを濡らすものに気がつき、表情が一瞬で凍りついた。 そして次の瞬間、顔を青くした彼女は、 「いやぁーっ!アッちゃんアッちゃん!ヤダヤダヤダっ!!」 ハンカチを取り出し泣きながら彼に付いた血を拭き始めた。 「アイルくーん、大丈夫ですか?」 一番近くにいたフェルナンディが声をかけてくる。 「ああ、俺は平気なんだが…」 アイルザッハは困ったようにひたすら血を拭き続けるリディを見た。 他の皆もこちらにやって来る。 「全く……」 ルグイはそう呟くと、精霊魔法『ピュリフィケーション』でアイルザッハを始め皆の浴びた血を浄化し水に変えた。 「リディ、もう血はないよ」 ボクが声をかけるが、リディは聞こえていないのか、まだ血(すでに水に変わっているのだが)を拭き続ける。 「あっちゃ〜〜〜ん」 「リディ、もう大丈夫だから」 アイルザッハが言っても、リディはパニックしているのか止めようとしない。 アイルザッハはため息を吐くと、リディの肩をがしっと掴み、 「リディ、俺を見ろ!」 滅多にしない強い口調に、リディはビクッとして反射的にアイルザッハを見上げた。 「…ほら、もうなくなったから。ありがとう、もういいよ」 優しく微笑みかける彼の顔にも、服にももう紅いものはない。 その事にようやく気がつくと、リディは泣き止んでアイルザッハに抱きついた。 「あっちゃ〜〜〜〜〜ん」 アイルザッハはその彼女の頭を撫でてやる。 フェルナンディはその様子を微笑ましく見届けると、一同の方を振り返った。 「…さて、じゃあ一段落したところで村に帰りましょうか」 「あたしまだ鼠食べてないわよ?」 「…あのね、マリー、村に帰って皆で食事しようよ」 「持って帰るのも大変だし、第一汚らわしいしね〜」 「ヤダ。ここで食べればいいでしょ?」 皆が説得を試みるが、マリーは止めようとしない。 「…ハスティ」 「あ?」 ルグイに声をかけられ、ハスティは彼女を見上げる。 「お前が行け」 「え、って…ぅわっ!」 有無を言わせずマリーの前に突き出され、ハスティはため息を吐くと、自分のふさふさとしたシッポを持ち上げた。 「…オイラのシッポ触りたくないか?」 「触る!!」 マリーが目を輝かせた。 「じゃあ、鼠なんか放っといて村に帰ろーな?」 「えー…?」 「ほ〜ら、シッポだぞ〜」 「行く!」 「報酬がこれだけっていうのは、ちょっと少ないんじゃありませんかぁ〜?」 「考えてみてくださいよ。こんな小さな村、滅多に冒険者なんて来ませんよ?私達が偶然ここにいなかったら、今頃この村がどういうことになっていたか…ねぇ?」 めでたしめでたし。 あとがき はい、『彼らの日常』ということで。 普段の彼らの様子が端的にわかるように書いてみました。 っていうか、皆で集まった時に戦闘シーンがないなぁっていう話が出まして。 アイルザッハが戦闘前にサングラスを投げ捨て、リディがキャッチするという設定が出せなかったから今回入れてみただけです(笑) 一応まんべんなくキャラを書いたつもりですけど、どうなんでしょうか。 戦闘シーンって難しいですね。しかもキャラが多いから余計に。 一応行動の順番と行動パターンは実際のプレイに準じております! ちょっとリプレイっぽいですね。戦闘中、セリフをつけたらこんな感じかな〜。 |