「……おや?」
宿の部屋の中、フェルが何度目か本から顔を上げた時だった。
「時計が止まってますねぇ」
「え?」
その言葉に部屋にいたラッセン、ナナオ、ハスティ、ルグイの視線が一斉に掛時計に集まる。振り子は揺れているが……。
「壊れてんのか?」
「そうだね〜。宿の主人に言っておかないと……」
「ぼくが直そうか」
と、ナナオが名乗りを上げた。
「……そうですね、ナナオ君にお願いしてもいいですか?」
「もちろん!」
「え゛っ、ちょっと……」
「何?」
顔を引きつらせたハスティを振り向いたナナオの目は、やりたいと言わんばかりに純粋にキラキラ輝いていた。
ハスティは言葉に詰まる。
「どうせなら美しく作り直して欲しいね〜」
ラッセン、フェル、ナナオはノリノリである。
ハスティは助けを求めるようにルグイを見たが、ルグイは顔も上げず何かを書き続けながら「30%」とだけ答える。
「あ?」
「30%の確率だ。100%(クリティカル有)お菓子より遥かにましだろう」
「……まぁな」
数時間後。
アイルとリディ、ボク、マリーが部屋に戻ってきた。
「わぁっ、ナナちゃんそれ何?」
「鳩時計だよ。宿の時計が壊れたから直したんだ」
顔をしかめた他の3人に気づかずナナオが手にしたものをにこにこと掲げる。
振り子時計だったそれはサイズが2回りも大きくなり、時計盤の上に増設された部分に扉があり薔薇を模した鉄の固まりが左右に付いていた。
明らかに無骨になっている。
「薔薇は僕の案さっ」
言わなくても分かる。
「あっそろそろ時間だよ」
「鳩さんが出てくるんだよね?」
「うん!」
ボクの言葉に頷く。
皆が鳩時計に注目した。
チッチッチッカチッ。
扉が勢い良く開き スポーン!
「っ!?」
キィンッ!
自由を手にした鳩は勢い良く飛び立ち、対角線上のアイルはとっさにダガーを抜いてこれを弾き落とした。
「………(汗)」
弾いた体勢のままアイルが息を整える。
「あっちゃんかっこい〜っ」
「おお、お見事ですアイル君」
「あれー?おかしいなぁ?」
ナナオが扉を覗き込む。
それにマリーが近付き、
「面白そう!ちょーだいっ!」
とせがみだした。
「……新型武器か……?」
「新型武器だな」
「面白い見世物だった」
アイル、ハスティ、ルグイが言う。
「……弁償しなきゃ……」
ボクは陰で財布の中身を確認し、がっくりと肩を落とした。
ナナオは刹那の中でマッドクリエイターとなりました(笑)
ナナオが鳩時計をいっぱい作っているという設定を知らずに書き上げたといういわく付きの一品です。
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