命なんてこんなにも容易く消えてしまうのに。
闇に閃く長い銀糸。
鼻腔をくすぐる血の香り、声楽地を這い絶える事なく。
呻き声と倒れる音を音楽として、彗星は今、最後の舞踏を終える。
独りで相手を務めた銀髪の男は一人佇み、輝く事なき漆黒の短剣を一振りして収める。
敵の目を引き付ける、それが彼に与えられた今宵の任務。
取るに足りぬ、しかし歪んだ欲求を満たすもの。
されど破壊衝動を満たしても、胸に残るは虚しさとなお餓える心。
何人男を殺しても、何人女を抱いても、何をしても埋まる事なき心の空洞。
ひしめくように地に伏せる数多の男に目もくれず、合唱を気にも止めず、血の臭いもなきもののように、男は空を仰ぎ見た。
雲が夜空の星を隠し、その切れ間には消えそうなほどに細い月。
その深い蒼の双眸に光も残さず。
男は人形のように佇んで。
「……誰か俺を 」
殺してくれ。
抑揚のないその呟きを聞くものはなく。
楽隊はだんだん少なく。
香は消える事なく。
男は動く事なく。
どうして自分はまだ生きているのだろう。
これはまじめに(突発メールじゃなくて)書き下ろしました。
時期的に敵を討つ少し前ですかね。
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