自分が生まれた時のことは覚えていないけど、
自分が死んだらその時のことを覚えていられるれるのだろうか?
僕がそう言ったら、君はこう言ったね。
「私は無理だと思いますよ。
死は自身という存在が消えていくことであり、
記憶は自身という媒体を介して残されるものです。
死によって自身の存在が消えていくのに、
そこにある記憶だけが残るなんて無理ではありませんか?」
なるほど、確かにその通りだ。
でも、こうは考えられないかな。
死んで、自身が消えていく前に、
そこにある記憶をそのままの形で違う物に入れ変えれば、
死んだときのことを覚えていられるんじゃないかな?
僕がそう言ったら、君は複雑な顔をしてこう言ったね。
「あなたは、おもしろいことを考える人ですね。」
…そんな会話をしてから「アイツ」が姿を現すまで
そんなに時間は経っていなかったと思う。
そう、こんなことになってしまった今でも、
僕は覚えているよ。
僕と話していたときの君の不思議な目を…。
中編・第一話