あるナルシストの華麗なる大抒情詩の始まり

 問い 大切な人に、自分の存在を忘れられたら、それは悲しいことであるか
 -------------YES
 故に、忘却は罪である


 そう言った人がいた。
 けれども、今の僕にとって、そんなことは関係ない。
 たとえそれが罪であっても、僕は今まで会ってきた全ての人達に、その罪を犯してほしかった----------

 そこだけ違う世界が広がっていた。
 森の中の少し開けた所に、その世界はあった。
 薔薇模様の白いテーブルが置かれ、その上にはティーセットにクッキー、バスケットに赤薔薇のさされた花瓶……。
 そして一人の青年が、まさに薔薇の如くそのテーブルに咲いていた。
 どこにでもいそうな、庶民のような服装をしていながら、何故か長いリボンを垂らした、ピンクのシルクハットをかぶっている。
 右手のティーカップには、薔薇の微笑が浮かんでいた。
 「ん〜。いい香りだ。やはりお茶会はいいねぇ。心が和むよ。」
 どこからともなく聞こえてくる、ゆったりとした優雅な音楽。
 天高く差し込む、暖かな木洩れ日。
 全てが薔薇に包まれた世界。
 この午後のひとときを一体なんと呼んだらいいのだろう。
 Beautiful?wonderful?noble?
 いや、やはりこの言葉だろう----fool---………


 ふと、茂みの向こうで人間が騒いでいる声がする。
 青年がゆっくり目を向けると、女性の甲高い叫び声がした。
 「どうしたのかなぁ?もしかして、僕のお茶会に参加したい人がいるのかもしれないねぇ。それは誘ってあげなくちゃいけない!ちょっと、行ってみよう。」
 そう言うと、青年はティーカップを置き、ゆっくりと立ち上がった。

 一組の若い男女の前には、凶暴そうなコボルトがニ匹立ちはだかっていた。
 コボルトは今にも襲いかかってきそうである。
 「どうしよう…。ホルム…私…もう…走れないわ。」
 長いこと走ったのか、荒い息を抑えるように少女が言った。
 しかし、ホルムは答えない。
 ただ、少女の前に左手を広げて立ち、荒く肩で息をしていた。
 「………やるしか、ないのか……。」
 ホルムはそう小さく呟くと、右手を腰につけた護身用のダガーに手をかけようとした。
 額から汗が流れ落ちていく。
 その時だった。
 「待ちたまえ!」
 その場にいた全員の視線が、声のする方に注がれる。
 茂みの奥から、先ほどまでお茶会をしていた青年がさっそうと現れた。
 「その者に手を出してはいけないよ!」
 ホルムの緊張が一瞬にして解けた。
 「ああ、よかった!僕たち散歩しているうちに、いつの間にかこの森に入ってしまって…。突然コボルトが襲ってきて、もうどうしようかと思っていたんです。本当にあり……。」
 「さあ、早くダガーから手をどけないか!彼らに手を出したら、ただじゃおかないよ!」
 「え?」
 と、ホルムがコボルトの方を見ると、先程の青年が腰のレイピアに手をかけ、コボルトを守るように立っていた。
 「って、えーーっ!?僕たちを助けに来てくれたんじゃないんですか!?」
 「何を言ってるんだ、君は。君たちがこのかわいいコボルトくんたちに、危害を加えようとしたんだろう???」
 「ち、違います、違います!僕たちは本当に、ただ散歩していただけで、何もして…。」
 「さあ、かわいいコボルト君たち!僕と一緒に……。」
 と、青年がコボルト達に向かって、大きく手を広げると、それをつっこむかのように、コボルトが、手にしていた棍棒を振り上げた。
 「あう!……ぐふっ…。」
 お腹を抑えながら、青年はその場にくずれた。
 「だ、大丈夫ですか!?」
 「なんて激しい愛情表現……。大きすぎて、僕には受けられなかったよ…ふふ。愛って素晴らしいよね…。」
 「そんな事言ってる場合じゃないですよ!そんなことより、はやく…。」
 「ステキ……。」
 「え?」
 ホルムが振り返ると、少女が目を輝かせて倒れた青年を見つめていた。
 「エミア!?ステキって、ええっ!?」
 ホルムには、もう何がなんだかわからなくなっていた。
 しかし、コボルト達の勢いは、先程より増している。
 「くっ…今度こそ、僕がやるしかないのか…?」
 コボルト達は倒れた青年を無視して、ゆっくりとホルムたちのほうへ向かってくる。
 「ああ!待ってくれ、コボルト君たち!一般ピーポーに危害を加えてはいけないよ!」
 しかし、コボルト達はチャンスをうかがいながら、一歩一歩前へと進む。
 「だめだよ!僕の声が聞こえないのかい???☆!*|¥;+♪♪<・>??!!!」
 青年がなにやらよくわからない言葉を発すると、コボルトが彼に振り向いた。
 「$%=―!!!」
 コボルトはそれだけ言うと、またホルムたちに向き直った。
 「え?もしかして、あなたはコボルトと話ができるんですか!?」
 ホルムは向かってくるコボルト達に対し、少し後ずさりしながら青年に聞いた。
 「もちろんだとも!」
 「だったら、最初からそうしてくださいよ!」
 突然、さっきまでチャンスをうかがっていたコボルトが、力強く地面を蹴った。
 「ああ!き、来ちゃったじゃないですか!」
 「しょうがない…。コボルト君といえども、一般ピーポーに危害を与えるのはいけないことだしねぇ…。こうなったら…。二人とも下がってくれたまえ!コボルト君たち!すまないが少し眠ってもらうよ!」
 すると青年は、勢いよく腰のレイピアを抜いた。
 「必殺!」
 突然、あたりに薔薇が舞いはじめた。
 天高く振り上げたレイピアの先が、キラリーンと輝く。
 「バラ・ハ・バラ・バーラ!!!」
 そう声をあげると、青年はコボルト達に向かって走り出した。
 コボルト達は後ろから走ってくる青年に気づくと、棍棒を振り上げて突進してきたが、次の瞬間、森に低い叫び声を響かせると、ばったりと地面に倒れこんだ。
 近くの木から、鳥が大勢飛び立つ音がする。
 青年はレイピアを鞘にしまった。
 「し、死んじゃったんですか…?」
 固まっていたホルムがやっとの事で言った。
 「いや。急所は十分はずしてあるよ。でも、しばらくは起きないはずだよ。まあ、こまったちゃんにはこれぐらいがいいだろうねぇ。」
 その言葉を聞くと、ホルムは大きく息をはいた。
 「なんにせよ、助けていただいて、ありがとうございました。私はホルム。こちらは…。」
 「私はエミアです。私たち町を少し出て散歩をしていたんですけど、気づかないうちにこの森に入ってしまっていて…。この森にはモンスターがよく出るから、近づかないようにしていたんですけど…。あの、お名前聞いてもよろしいですか?」
 「僕かい?僕はそんな、名のるほどの者ではありませんよ。」
 「でも、先ほどの愛についての語り、素晴らしかったです。是非お聞きしたいですわ。」
 「ふふふ。そこまで言ってくださるのなら…。僕の名前はラッセン=ディーア。よろしくたのむよ。」
 そう言ってラッセンはホルムに握手を求めた。
 「よろしく。ところでさっきは大丈夫でしたか?」
 「ああ、大丈夫さ。ただの木の棍棒だったからねぇ。」
 ラッセンがエミアと握手しながら言った。
 「あの…コボルト、お好きなんですか?」
 エミアの問いに、ラッセンの表情が輝きだした。
 「もちろんだとも!あの耳にしっぽに肉球に…すばらしいよ!」
 「さっきお話してたみたいですけど、あれは…?」
 「あれかい???あれはゴブリン語さ。コボルトはゴブリン語をしゃべるんだよ。」
 「すごいですね!コボルトとお話できるなんて!私も習おうかしら?」
 「それはいい!なんだったら僕がとことん教えてあげるよ!」
 「本当ですか!?うれしい!」
 そんなエミアとラッセンの会話に、ホルムは完全に置いてきぼりをくらっていた。
 「それじゃあ、僕はこの辺で失礼させてもらうよ。」
 するとホルムがすかさず声をかけた。
 「あ、待って下さい。折角ですから、町にある僕の家に来ませんか?助けていただいたお礼がしたいんです。」
 「いやいや、僕はそんな…。」
 「せめてお茶だけでも…。」
 「お茶……。」
 エミアの言葉にラッセンはくるりと視線を戻した。
 「ん〜。やっぱりお茶会はいいよねぇ。是非寄らせてもらおう。君たちの家はどっちかな???」
 「こちらです。」
 ホルムがそう答えると、3人はその場を後にした。


 「ただいまー!」
 森から十五分ほど歩いた町の店に、ホルムたちは入っていった。
 中は食堂で、冒険者風の身なりの者が多い。
 カウンターには店主らしき中年の男がいた。
 「おお、ホルム。遅かったからどうしたかと思ったよ。どうだい、外の空気はうまかったかい?」
 「うん。心配かけてすまなかったね。」
 「ところでそちらは…?」
 「ああ、こちらはラッセン=ディーアさん。さっき気づかないうちに森に入っちゃってさ。そしたらコボルトに出くわしちゃったんだけど、ラッセンさんが現れて助けてくれたんだ。」
 「そうでしたか!ラッセンさん、どうもありがとうございました。私はこの食堂の店主で、ホルムの父親のホルンです。さ、どうぞおかけになって下さい。」
 「ああ、どうもありがとう。」
 店主に勧められるまま、ラッセンはカウンターに腰掛けた。
 ホルムとエミアはカウンターの中に入り、店主を手伝い始めた。
 「さあ、お茶をどうぞ。」
 エミアがカウンターの内側からお茶を差し出した。
 「これはこれは!どうもありがとう。……ん〜。なかなかおいしいお茶だねぇ。」
 ラッセンは一口飲むと、そう感想を述べた。
 店主が皿を拭きながらラッセンに尋ねた。
 「ラッセンさんは旅の方で?」
 「ん〜。まあそんなところだねぇ。」
 「やっぱり剣士さんなんですか?」
 今度はホルムが尋ねた。
 「まあ、剣は扱うけれど、そっちが本業じゃなくてねぇ。歌を歌って渡り歩いているのさ。」
 「ほほう!ということは、吟遊詩人?」
 「ふふふ。それともちょっと違うのさ。僕は自分の祖先をたたえる為に渡り歩いているのさ。」
 「へえ!そりゃ面白そうだね。ちょっとどんなもんだか、歌ってみてくれよ。」
 今度は隣に座っていた、少し太った男が言った。
 「ふふふふふ。そんなにききたいかい???それじゃあ、僕の歌をきかせてあげよう!」
 するとラッセンは、どこからか竪琴を取り出すと、軽くかき鳴らした。
 その音に呼応するかのように、店の客たちがラッセンの方を向く。
 ラッセンは店の中をざっと見回すと、ゆっくり歌い始めた。

 魔王が降り立つその時に
 世界は闇に包まれた
 魔王がかざしたその手から
 世界を炎の海にした
 民は右へ左へと
 踊らされること果てしない
 そんな地獄絵巻から
 ある日剣士が現れた
 光り輝く聖剣で
 剣士は魔王に立ち向かう
 ああ 勇敢な剣士様!
 ああ 素晴らしき剣士様!
 そう 素晴らしきこの私!
 この目 この髪 この歌声!
 世界で最も薔薇の似合う
 この男こそ素晴らしい!
 全ては二十二年前
 とある町から始まった
 素晴らしき産声を
 あげたは可愛い男の子
 その名もラッセン=ディーアという
 素晴らしき…

 「ラ、ラッセンさん!も、もういいです!十分です!十分過ぎます!」
 これからラッセンが人生を一から歌い上げようとした所で、ホルムが止めに入った。
 「そうかい?じゃあこの辺にしておくよ。とりあえず、ショートバージョンを歌ってみたんだけど、どうかな???」
 ラッセンが手を止めて、辺りを見回すと、店の中はしんと静まり返り、全ての唖然とした表情がラッセンに向けられていた。
 「とてもすばらしかったですわ!ラッセンさんの美しい歌声に、私ついうっとりしてしまいましたもの!」
 エミアが一人、目を輝かせて言った。
 「本当かい!それはうれしいよ!ありがとう、エミア!」
 「…でも魔王はどうなったんだろう…。」
 「何か言ったかい、ホルム???」
 「あ、いや、いい歌だったな〜と思って、はは。」
 「そう言ってくれると、とてもうれしいよ!」
 「はは、は…は……。」
 周囲の視線をよそに、ラッセンは上機嫌でお茶を飲んだ。
 「と、ところでよう。」
 妙な雰囲気の中で、ラッセンの隣に座っていた男が切り出した。
 「明日はいよいよ、ホルムとエミアちゃんの結婚式だな!俺はもう待ち遠しくてしようがねえんだ!!なあ、ホルン?」
 「ああ!特にエミアちゃんの花嫁姿が早く見たいってもんよ!きっと町一番の可愛い花嫁さんになるね!」
 「お義父様ったら!そんな、恥ずかしいですわ!」
 「でも、いい嫁さんになるとおもうよ、俺は!」
 酒をぐいっと飲みほすと、隣の男は続けた。
 「だってよ、ラッセンさんとやら。彼女はお母さんが病気でね、苦しい家計をたすけるために、ここで働き始めたんだけど、よく働く子でね!今じゃここの看板娘だよ!そんな彼女に、ホルムのやつが惚れ込んだってわけ!もうベタ惚れさ!それにしても、こんないい子を嫁さんにするたぁ、まったく、うらやましい奴だよ、ひよっ子のくせにね!はははっ!」
 「ちょっと、ボンフルさん!変なこと言わないで下さいよお!」
 顔を赤くしたホルムが慌てて言った。
 「なるほど、そういうことだったんだねぇ、ホルム。ふふふ。」
 「違いますよ、ラッセンさん!僕は別に…。」
 「惚れ込んだのは、本当だろう??」
 ボンフルがにやり笑って言った。
 ホルムの頬がみるみる赤くなっていく。
 「はーっはっはっは!だからひよっ子だって言ってんだよ!」
 あたりの者は皆、大きな声で笑い出した。
 「そうだわ!ラッセンさん!あなたも明日の式にいらしてくださいな。」
 笑っていたエミアが突然ラッセンに向き直って言った。
 「僕がかい???」
 「エミア、いい考えだね。ラッセンさん、是非来てください。なんてったって、命の恩人ですからね。」
 ホルムの言葉に、ラッセンはまた一口お茶を飲んだ。
 「ん〜。それはいいねぇ。僕たちはもう、心の友だし…うん、行かせてもらうよ!」
 「本当ですか!よかったあ!ああ、明日がとっても楽しみだわ!」
 「そうだね、エミア。それじゃあ、ラッセンさん、今夜はうちにお泊まりください。あとで部屋にご案内しますね。」
 そうして夜は更けていった。

 空がよく晴れた日だった。
 式を執り行うのは、あの至高神ファリスの神官や聖女たちだった。
 きっとこの辺りでは、ファリスの信者が多いのだろう。
 広場の小高い石の上に、神官が一人立ってなにやら唱えている。
 そしてそのもとに、純白の衣装に身を包んだ二人の姿があった。
 エミアが穏やかな笑みを浮かべる一方、ホルムはがちがちに緊張していた。
 「それでは誓いの口づけを…。」
 神官がそう言うと、二人はゆっくり向かい合った。
 ホルムは口を真一文字にしたまま、腕をがちがち震わせながら、エミアのベールを上げた。
 すると、
 「兄ちゃん、いっちゃえーー!」
 どこからか、子供の声がした。
 途端に、ホルムの顔が真っ赤になり、会場がどっとわいた。
 ホルムはしばらく固まっていたが気を取り直すと、そっとエミアに口づけをした。
 「二人に幸せがあらんことを!」
 神官の声に会場は先ほどにも増してわきあがった。
 二人は観客の方に向かってゆっくりと歩いていった。
 誰もが皆、笑顔を浮かべ、おめでとうと言う声、祝福の拍手、紙ふぶきに花吹雪……すべてが鳴り止まなかった。
 ラッセンは遠くから彼らを見守っていた。
 それに気づいた二人が、人々の間からやってくる。
 「ラッセンさん、昨日、そして今日と本当にありがとう。私、あなたのこと忘れないわ。」
 エミアが昨日とはまた違った、清らかな笑顔で言った。
 「ありがとう、エミア。とても綺麗だよ。」
 「本当にありがとうございました。僕もきっと、あなたのこと忘れません。」
 「ありがとう、ホルム。二人とも、幸せになっておくれ。」
 ラッセンが答えると、二人はまた人々に包まれていった。
 だんだんその渦がラッセンから遠のいていく。
 ラッセンはずっとそれを見つめていた。
 きっと、ここにいる全ての人々にとって、今日の日のことは忘れられない事になるのだろう。
 とても素晴らしい日として、人々の記憶に残るのだろう。
 微笑んでいたラッセンの顔が、だんだん枯れていった。
 「幸せに…。」
 ラッセンは枯れた笑顔で小さく呟くと、その場を後にした。

 「二階の奥だよ。」
 宿屋の店主にそう言われると、ラッセンは部屋へと向かった。
 部屋の中は薄暗く、ドアを静かに閉めると吊るされたランプに手を伸ばした。
 しかし、ふと、窓から月明かりがさしていることに気づくと、ラッセンは手を戻した。
 それから荷物を下ろすと、ゆっくりと窓辺に向かって行った。
 「今夜は何を聞かせてあげようか…。」
 窓辺に手をかけて見上げた先には、半分ほどに太った月があった。
 ラッセンは窓辺に座ると、どこからともなく竪琴を取り出した。
 小さく一かき鳴らしすると、ラッセンは夜空を見上げながら竪琴を弾き始めた。
 こぼれ落ちる音。
 しかしそれは跳ね返らない。
 ラッセンの思いは、いつの間にか遠い所にあった。

 一人の女性が見える。
 あまりはっきりとは見えないが、嬉しそうにどこかに走っていく。
 その先にあるものはよくわからなかった。
 人のようであるが、男なのか女なのかもよくわからない。
 そこだけ妙に白くぼやけているのだ。
 ただわかることは、楽しそうに喋っているということ。

 また先ほどの女性がどこかへと走っていく。
 けれども、嬉しさはみえない。
 ただ、苦しそうに、必死でどこかへと走っていく。
 その先には、やはり先ほどの白くぼやけた人のようなものが歩いていた。
 それは走ってくる女性に気づくと、しばらく足を止めたが、またゆっくりと歩き出していった。
 それを止める者はいない。
 だんだん小さくなっていく白。
 だんだん
 だんだん
 ……

 ラッセンはふと、かき鳴らす手を止めた。
 
 いつまで僕は、忘却だとか記憶だとかに固執しているんだろうか……
 いや、僕はそうする事でしか生きていけないんだ
 忘却の罪を他人にきせ、記憶されていく事に不思議を感じる
 いつからかこんな風になった自分
 忘れよう
 全てを忘れよう
 僕もまた、罪人になるのか…
 ……皮肉な事だ

 突然、ドアが激しく叩かれた。
 「おいおい、あんちゃん!夜なんだから、静かにしておくれ!眠れないよ!」
 「お〜っと、すまない!もうやめるよ。本当にすまなかったよ!」
 そういうとラッセンはベッドへ向かい、眠りについていった。
 部屋は相変わらず、月明かりが差し込んでいた。

 忘却は時に有益である
 故に罪ではない

 終曲

 

戻るカ〜イ???