|
昔むかし、あるところに、小さくてかわいいお姫様がいました。 「ちょっと!いきなり人を小さいって言わないでくれる!?」 どのくらい小さいかというと、常人の親指ほどの小型設計です。 「だから小さい言うなって言ってんの!」 そのスモールサイズのお姫様は、マリーという名前でした。 「英語にすればいいってもんじゃないでしょっ!」 そしてチビのマリーは、綺麗な一輪の花の真ん中にちんまり座って、ゆっくりと小川を渡っているところでした。 「いい加減にしなさいっ!もう知らないわよっ!」 この後、マリーは色々とするはずだったのですが、何だか冒頭部分で拗ねてしまって、お話通りに進む気はないようなので、おやゆび姫の話はごっそりカットです。 「何言ってんのよ!ただ単に作者がおやゆび姫のストーリーをはっきり覚えてないだけでしょっ!」 そんなことはありませんよ。おやゆび姫ってのはミニマムプリンセスがネズミに拉致られてこき使われた後に、瀕死のツバメに道連れにされてお祖父ちゃんが手を振っているお花畑に連れて行かれるお話でしょう?そのくらいは知ってますよ。 「あんた相当間違ってるわよ、それ」 兎に角、話を進めます。強制的に。 どんぶらこ、どんぶらこ、と、マリーの乗った花(船代わり)が、ちょっと間違った効果音と共に川を下っていきます。あ、小川は他の小川と合流して、それなりに大きな川になっていたということでお願いします。 すると、その川の少し前方に、黒い漆塗りのお椀が浮かんでいました。どうやら、中に何かいるようです。 それが気になった小さなマリーは、花船のエンジンをフル稼働させて追いかけました。 「小さい小さいって、あんたもしつこいわねっ!それよりいつからこの花にエンジンなんか付いていたのよっ」 エンジンが付いていたのはご都合主義だからです。そして小さなマリーは、そのお椀に追い付きました。というかフル稼働エンジンで突っ込みました。 「うわぁっ!何だ!?」 不意に不幸な事故に見舞われたお椀の主、一寸法師ハスティは、 「明らかに今のはあんたの故意だと思うわ」 一寸法師ハスティは、慌てて後ろを振り向きます。 「あたしのこと無視したわねっ」 「はぁ?ぶつかってきておいて、いきなりなんだよ」 小さなマリーは、もう会話相手がいることをすっかり忘れていたようです。これでは一寸法師ハスティから見ればアブナイ小さい人ですね。 「小さい人って、相手も小さいんだから、向こうから見たら小さくないわよっ!…………あ」 突っ込みに必死で反応が遅かったようですが、小さなマリーは自分と同じサイズの人が目の前にいることに気が付きました。 そして耳としっぽが気になりました。この辺はお約束です。 「まったく、何なんだよ…」 と、眉をひそめている一寸法師ハスティに、 「それ、触っていい?」 小さなマリーはしっぽを指さしながらいきなり言って、 「え?うん、まあ、いいけど…」 突然の申し出に戸惑いながら一寸法師ハスティは了承しました。 それでも、嬉しそうにしっぽに触っている小さなマリーの様子に警戒心は解けたようで、 「おいら、一寸法師ハスティっていうんだ。おまえは?」 と名前を訊いてきます。 名前を訊かれたとあっては、小さなマリーはこう答えます。 「マリー様とお呼びっ!」 条件反射というか、お約束です。 「……………」 そんな事とは知らない一寸法師ハスティは、あっけにとられてしまいました。 「マリーよ、マリー」 そのままでは話が進まないため、マリーが改めて名乗り、 「言っとくけど、ただのマリーよ!頭に変な前置きしないでよっ?」 と付け加えました。 「えーーーっと、ああ、分かった」 一寸法師ハスティは、言われたことの意味が理解できませんでしたが、一応了解しておきました。 そろそろ『一寸法師ハスティ』と打ち込むのが煩わしくなってきたので、普通にハスティと呼ぶ事にします。 「じゃああたしもっ」 小さなマリーはハスティに、ここにいる理由を尋ねました。 「だから何で無視すんのよっ!」 「え、いや無視はしてないけど…」 ハスティが混乱しているので、都合よく話を進めてしまいましょう。 ハスティは何となく、小さなマリーは自分がここにいる理由を訊きたいんだなと思いました。 「おいらはこの町の靴屋で、主人が寝ている間に靴を作る小人達のところでバイトをしようと思ってんだ」 どうやらハスティは素敵なバイトを見つけていたようです。自分のサイズをしっかり認識した上で、それを存分に活かそうという、素晴らしい発想です。 「あんたそれ、明らかにあたしへの当てつけでしょう」 そのハスティの考え方に感激した小さなマリーは、ハスティにお願いして、一緒に連れて行ってもらうことにしました。 「ちょっとっ、まがりなりにもあたしは『お姫様』なのよっ!?何で働かなくちゃいけないのよっ!」 小さなマリーが何か言ってますが、おやゆび姫を放棄したのは彼女自身なので、気にしないでおきましょう。 さて、普通サイズの人々に踏み潰されないように気をつけながら、小さなマリーとハスティはようやくその靴屋に辿り着きました。 するとそこでは、ナイスなタイミングで看板娘のリディが鬼に襲われていました。 これは大変!と、ハスティが挿していた剣を抜いて鬼に斬りかかっていきます。 が、如何せん小さすぎます。ハスティはひょいと摘み上げられ、 「うわああああああっ!」 可哀想な事に飲み込まれてしまいました。 「ちょっと!あいつ一体何なのよっ!」 小さなマリーが、リディの肩までどうにかよじ登って尋ねます。ここでちゃんとリディが小さなマリーの声に気が付いたあたりや、小さなマリーの存在を認識しているあたりなんか、ご都合主義万歳。 そしてリディは、 「きっと私があっちゃんのために作ったクッキーを狙ってるんだよっ」 と答えて、大事そうに抱えていた綺麗にラッピングされた袋の入った籠を、さらにぎゅっと抱きしめました。 「そんなのまた作ればいいでしょ!?あんたが死んだら誰がそのクッキーを渡しに行くのよっ!」 おお、小さなマリーがなんか立派なことを言っています。 「そこっ!ちゃかしてないで何とかしなさい!」 地の文に対して命令してくるとはなかなかいい度胸ですが、まあ良しとしましょう。 小さなマリーは籠の中に飛び降りると、袋のリボンを解いて中のクッキーを取り出します。 瞬間、 「そうだよねっ!クッキーはもう一回焼けばいいもんね!」 一瞬遅れて納得したリディが、籠ごとクッキーを鬼に投げつけました。 「ちょっとーーーーーっ!何すんのよーーーーーーっ!」 小さなマリーは、見事にクッキーを抱えたまま鬼の口めがけて飛んでいきます。 「もーーーーーっ!どうしてくれんのよーーーーーーーっ!」 小さなマリーが叫んだそのとき、…あれ?鬼の様子が何か変です。 リディの特製クッキーが本領を発揮し、突然鬼が目を回して倒れました。その際、なんとまあ都合よく、小さなマリーと、胃の中をつんつん剣で突きまわっていたハスティが口から飛び出しました。 鬼は慌てて山へ逃げていきます。この鬼は山にお住まいだったのですね。 鬼が去った後には、何故かうちでの小槌が残っていました。 「わあ、綺麗な小槌!」 それを見つけたリディは、早速拾い上げて、しゃがんだまま楽しそうにぶんぶん振り回します。 それが、 ブンブンブン…ボカンッ! 「痛ぇーーーーーっ!」 リディの足元にいたハスティの頭にクリーンヒットしました。 その弾みで、ハスティと合体していた銀狼のらっしーが、ハスティから転げ出ます。 すると途端に、ムクムクムクっとハスティが普通の人間サイズに大きくなってしまいました。 その様子に小さなマリーはびっくり。 「何!?それ使えば大きくなれるの!?私にもやって!」 とリディに頼みますが、リディに頭をポンと叩いてもらっても小さなマリーは大きくなれません。 「ちょっとハスティっ!?どうしてあんたは大きくなれたのよっ!」 小さなマリーはそう言ってハスティを責めますが、 「そう言われても、元々こういう体質だし…。なあ、らっしー」 「ま」 「だから、らっしーと一緒でも働ける所を探してたんだよ」 「まぁ〜」 「マリーもここで働くんだろ?一緒に頑張ろうな」 「…………………」 こうして小さなマリーは、靴屋の小人として働きながら、大きくなる方法を探すことになったのでした。めでたしめでたし(仮)。 後書き 最近、昔話欠落症です。いや勝手に病名付けただけで、ぶっちゃけ昔話の細かい展開がよく思い出せないのです。例えば、さるかに合戦でカニに加勢したメンバーを思い出せなかったり、金太郎が熊と相撲とった以外に何したか全く分からなかったり。おやゆび姫もまたしかりで、ざっくりした大筋以外は全然思い出せなかったんですが、小さいと言われて怒りまくるマリーを書きたい勢いだけで強引に押し切りました(汗)。 でも実のところ、おやゆび姫と一寸法師という組み合わせは、ある映画から引っ張ってきたネタです。何だか分かりますか?(笑) 戻る |