こんな出会い

(何で、親父に付いて来ちゃったのかなぁ)
 マリーは何度目かになるか分からない溜息を吐きました。
(まぁ、分かってはいるんだけどね。)
 弟も母親も父親を見捨ててしまったので、せめて自分だけはついていってあげないと可哀想かな――と一時の気の迷いでマリーは思ってしまったわけです。
「はぁ〜」
 それがやっぱりまずかったんだ。
 マリーはそう結論を出してもう一回溜息を吐きました。
「ん? どうした?」
 ばきっ!
 能天気な顔を目の前に突き出されたので、思わず殴ってしまいました。
 殴った後でマリーは後悔しました。
 もっと拳に体重をかければ良かった。あと、ひねりも。
「何するんだ!?」
 ぎゃあぎゃあ騒ぐ親父を無視しマリーは――本日何度目でしょう――深〜く溜息を吐きました。
「お腹減った。」
 どうにかしろ、誰のせいだと思ってるんだ。
 等等、非難のこもった視線を向けられて、父親――ジョン――は明後日の方向へ視線を逸らしました。
 ついうっかり数日前によった街でこの地方の物ではない地図を買ってしまい、しかもそれに気付かずに進んでしまったのは、他でもない、地図購入をし、マッパーをしていた彼のせいでした。
「その辺でモンスターでも・・・」
「さっきから一匹も出てこないよね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ――その時、窮地に陥った彼の目に一人のエルフの姿が飛び込んできました。
「あ、俺、あの人から食い物盗ってくるわ」
 娘からの痛〜い視線から逃れるために、張り切ってジョン・ケーンは飛び出していきました。


「食い物よこせー!!」
 食材を洗っていたルグイは、その声にふっと顔を上げました。
 見慣れないグラスランナーがこっちに向かって飛び込んできます。
 まぁ、昔知っていたグラスランナーの顔も忘却の彼方へ飛んでいってしまっているので、知らないも何も無いような気もしますが。
 とりあえず、ダガー片手にまるで追い剥ぎのごとく飛び込んで来たグラスランナーを避け、彼の足を払ってみます。
「うわっ!」
 ばっしゃーんっ!!!
 呆れるぐらいに勢い良く彼は吹っ飛びました。
 そして川に落ちました。
(あ)
 まずかったかな? とルグイはちょっと考えました。
 が
(不可抗力、正当防衛)
 別に良いか、とすぐに考えを変えました。


 一方、川に落とされたジョンは――
(お、これ結構楽しいかも)
 川に浮いてぷかーと流されていきます。
(このまま伝説の海を見に行くなんて良いな)
 そう思った彼の目に、愛娘のマリーが映りました。
「おーい、マリー。ちょっと世界一周してくるからー」

 何時の間にか『海を見に行く』が、が『世界一周』に変わってます。
 勿論、父親思いのマリーは温かくジョンを送り出してあげました。
「二度と帰ってくんなー!」


 それから、マリーが視線を感じて振り返ると、一匹のエルフと目が合いました。
「ご飯ちょーだいっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





後書き
 とりあえず、マリーさんとルグイさんの出会い。
 この後ルグイさんはいつもの気まぐれでマリーさんにご飯をあげます。
 そして次ぎ会う時にはルグイさんはマリーさんのことなんてすっかり忘れています。


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