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<以下一月記> 雪降りしきる千鳥足で初詣へと 新たなる年に決意新たにする うれしげに少し眠たげに通う子らよ始業式 <以下十二月記> 小春日のあたゝかさ しみじみと 冬寒の空見上げ ただただ青く高く 一面の落ち葉の野にねそべりつつ 蜜柑たわわに子どもにちぎられた みかん大きくほおばった 芋をもぐらせ落ち葉に日を点ける夕べ 白紙の行に向かい座る夜半なり 浮かんでは消えて 言の葉の徒然 <以下十一月記> 月がまあるく 西の空に 働いて一杯呑んで さぁ一句 道でばったり 稚児微笑みをり イチョウ散る金の野を行く 小春晴れて 鳥飛んで こともなく 寒々と朝日のぼりをり <以下十月記> すゞ虫にさそわれ秋風の中行く 秋桜の花ゆれる道 窓開けつれて 風よりもなおセミの声 グラス傾け 何をのみ干そうとするものぞ 見知らぬ花よ 今日もおはようございます 道いっぱいに すすき わっと誇れり 森中一人 誰にはばかることも無く 名月を頼りに歩く夜しんしんと深うなる 歩けばセミのしぐれている 呼ばれてふり返り ただ山は青く なんとみごとに青一色の夏空である 木もれ日きらきらと降りしきる 野には野の愉しさがあり ぬけがら落ちている 夏も終わり <以下九月記> 木陰に寄りそい歩く 秋はまだ遠く 日暮れさゞめきたり かなかなかな とんぼ赤く空をうめつくしたり 立ち止まればつくつくぼうし ぽつんと道ばたに栗が二つ三つ おぼれているか いつもの酒に 酔いざめの月 ただ明るく ふと気づく風の涼しさ突然に 我の行く道 彼の行く道 お囃子のながるる道を 夕立に 猫と一緒に屋根の下へ 雷にあわてて雀飛び立つか 仰向けに雲流るるままに見をり夏空 すばらしきかな ただ満月と酒で <以下八月記> さざめく青田の風 目に見えるよう 上手くなったもんだつくつくほうし かなかなと聞こえ目が覚む8月15日 降るなと祈りつつ やわら雲ふゆる 雨に降られ またいつもどおりか 夕立に向かって伸びる草つつましう 夏 真っ盛りを歩きをり 湯船 手足を伸ばしつ 見上げて花火 玄関に椅子もて見あげる夜空に花咲く 娘よ 貴方の花火も負けじと綺麗だ 足を止め 氷でも食べようか この道の木陰ばかりのありがたきや ワシワシとセミも己を語りたがるか ドンッという音には音なりの趣が 湯船 手足を伸ばしつ 見上げて花火 道すすみて蝉ますます誇る 子どもころんで泣かずに立ち上がった 雲の如く浮かぶ夢一輪 かすかにどこから風鈴の音 しぐるるや しぐるるままに セミよ ますます声高らかに <以下七月記> それでも進みをり夏の道 花火の香りにほろよいの月 台風きをり じっとテレビ見つつ もう鳴き出したか つくつくぼうし ふりあおいだ網の中からジィジィと声 小年よ 手の中には くまぜみか 呼ばれてふりむけば青空 荷物に背負われ 子どもふらふら坂を降りくる 欠けた月と ふと目が合った わだちの脇にも一輪の蒲公英 小鳥にまじってせみの声ちらほら しみじみ手足を伸ばす湯の中である サウナばかりの湯ではある <以下六月記> 夏至とは名ばかりの雨空である うまいものは うまい今日の酒 今年初の蝉の声が聞こえる緑 陽が明るい 風呂を後にする 雲のそびえる夏の青空 ふりかえり やまのあおさに はっとなる すっかり夏の言葉ばかりなる 雨の露天を独り占めする 夕立にぬれ 心もぬれるか 雨に濡れ 帰る子ら 傘も無く 6月の風 露天の空 宵の明星 傘差して 君と歩きし 道なれど 夕立の猫があわてて隠るるを ふと目があった笑顔が はずかしくもあり 貴方に会えそうな気がする風が背を押す 儚げな月と目が合った 夕日を見る背が少し小さくみえる <以下五月記> 土の 草の にほいの 鮮やかなこと この山で てふを せみを おいかけた 何にも染まらぬ 山のあおさが ここにある 陽炎の中を歩く人影がゆらゆら 夢に見た夢は夢のまた夢 一人たたずむ この道の上 グラスの向こうに見える笑顔がゆらゆら あの鳥の如く空を飛べたなら 二人見合わせる思いはいずこ 今日の風に吹かれる背中がここちよい たはむれる 水よ小鳥よ <以下四月記> 空から落ちてきた月がゆらゆら 気楽なもんだ一人っきり ふらりふらりと帰る酔い足 青空に恥じぬ道を歩く ただそれだけの優しさがうれしい心遣い 流れ行く時の残り香の美しきかな 心変わりが目に見える今日の道 思い出になりし日の夕暮れ この道を通る風が心地よい 窓を開ける 桜のピンクが迫ってくる 一人ギターを弾いてゐる今日の青空 雨の音が気持ちよい今日は一人 あたたかい 陽に包まれし れんげ草 何処へ行くのか雲が流れていく 鳴らない携帯をじっと見てゐる 小鳥の声のなんと明るいことか 思い出になりし日の夕暮れ どこから聞こえる犬の声が遠い 泣いたり笑ったり なんと忙しいことか 行き行きて 高く桜の 散るばかり |