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特発性間質性肺炎(IIP)の診断基準

【主要項目】

(1) 原因の明らかな疾患の鑑別

膠原病や薬剤誘起性など原因の明らかな間質性肺炎や,他のびまん性肺陰影を呈する疾患を除外する(表1)

(2) 主要症状、理学所見及び検査所見

1.主要症状および理学所見として,以下の1を含む2項目以上を満たす場合に陽性とする。
    (1) 捻髪音 (fine crackles)
    (2) 乾性咳嗽
    (3) 労作時呼吸困難
(4) ばち指
2.血清学的検査としては,1−4の1項目以上を満たす場合に陽性とする。
    (1) KL-6上昇
    (2) SP-D上昇
    (3) SP-A上昇
(4) LDH 上昇
3.呼吸機能1−3の2項目以上を満たす場合に陽性とする。
    (1) 拘束性障害(%VC<80%)
    (2) 拡散障害(%DLco<80%)
    (3) 低酸素血症(以下のうち1項目以上)
・安静時PaO2   : 80Torr未満
・安静時AaDO2   : 20Torr以上
・6分間歩行時SpO2 : 90%以下
4.胸部X線画像所見としては,1を含む2項目以上を満たす場合に陽性とする。
    (1) 両側びまん性陰影
    (2) 中下肺野,外側優位
    (3) 肺野の縮小
5.病理診断を伴わないIPFの場合は,下記の胸部HRCT画像所見のうち(1)および(2)を必須要件とする。特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎に関しては,その病型により様々な画像所見を呈する。
    (1) 胸膜直下の陰影分布
    (2) 蜂巣肺
    (3) 牽引性気管支炎・細気管支拡張
(4) すりガラス陰影
(5) 浸潤影(コンソリデーション)

(3) 以下の1−4の各項は診断上の参考項目,あるいは重要性を示す。

    (1) 気 管支肺胞洗浄(BAL)の所見は各疾患毎に異なるので鑑別に有用であり,参考所見として考慮する。特発性肺線維症では正常肺のBAL細胞分画にほぼ等しい ことが多く,肺胞マクロファージが主体であるが,好中球,好酸球の増加している症例では予後不良である。リンパ球が20%以上増多している場合は,特発性 肺線維症以外の間質性肺炎,または他疾患の可能性を示唆し,治療反応性が期待される。
    (2) 経気管支肺生検(TBLB)は特発性間質性肺炎を病理組織学的に確定診断する手段ではなく,参考所見ないし鑑別診断(癌,肉芽腫など)において重要な意義がある。
    (3) 外科的肺生検(胸腔鏡下肺生検,開胸肺生検)
本検査は特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎の診断にとって必須であり臨床像,画像所見と総合的に判断することが必要である。
(4) これらの診断基準を満たす場合でも,例えば膠原病等,後になって原因が明らかになる場合がある。これらはその時点で特発性肺線維症から除外する。

(4) 特発性肺線維症(IPF)

(2)の1−5に関して,下記の条件をみたす確実,およびほぼ確実な症例をIPFと診断する。

    (1) 確実 : (2)の1−5の全項目をみたすもの。あるいは外科的肺生検病理組織診断がUIPであるもの。
    (2) ほぼ確実 : (2)の1−5のうち5を含む3項目以上を満たすもの。
    (3) 疑い : (2)の5を含む2項目しか満たさないもの。
(4) 特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎,または他疾患 : (2)の5を満たさないもの。

(5) 特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎

外科的肺生検(胸腔鏡下肺生検または開胸肺生検)により病理組織学的に診断され,臨床所見,画像所見,BAL所見等と矛盾しない症例。

特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎としては下記の疾患が含まれる。
NSIP(非特異性間質性肺炎),AIP(急性間質性肺炎),COP(特発性器質化肺炎),DIP(剥離性間質性肺炎),RB-ILD(呼吸細気管支炎関連間質性肺炎),リンパ球性間質性肺炎(LIP)

(6) 重症度判定

特 発性肺線維症の場合は下記の重症度分類判定表(表2)に従い判定する。安静時動脈血ガスが80Torr以上をT度,70Torr以上80Torr未満をU 度,60Torr以上70Torr未満をV度,60Torr未満をIV度とする。重症度U度以上で6分間歩行時SpO2が90%未満となる場合は,重症度 を1段階高くする。ただし,安静時動脈血ガスが70Torr未満の時には,6分間歩行時SpO2は必ずしも測定する必要はない。

【参考事項】

(1) 特発性間質性肺炎(IIPs)は,びまん性肺疾患のうち特発性肺線維症(IPF)をはじめとする原因不明の間質性肺炎の総称であり,本来その分類ならびに 診断は病理組織診断に基づいている。しかし,臨床現場においては診断に十分な情報を与える外科的肺生検の施行はしばしば困難である。そのため,高齢者(お もに50歳以上)に多い特発性肺線維症に対しては,高分解能CT(HRCT)による明らかな蜂巣肺が確認できる場合,病理組織学的検索なしに診断してよ い。それ以外の特発性間質性肺炎が疑われる場合には,外科的肺生検に基づく病理組織学的診断を必要とする。


表1.鑑別の必要な疾患

鑑別除外診断
(1)心不全
(2)肺炎(特に異型肺炎)
(3)既知の原因による急性肺傷害(ALI)
(4)膠原病
(5)血管炎
(6)サルコイドーシス
(7)過敏性肺炎
(8)じん肺
(9)放射線肺炎
(10)薬剤性肺炎
(11)好酸球性肺炎
(12)びまん性汎細気管支炎
(13)癌性リンパ管症
(14)肺胞上皮癌
(15)肺リンパ脈管筋腫症(LAM)
(16)肺胞蛋白症
(17)ランゲルハンス細胞肉芽腫症

表2:重症度分類判定表

新重症度分類 安静時動脈血ガス 6分間歩行時SpO2
I 80Torr以上  
II 70Torr以上80Torr未満 90%未満の場合はVにする
III 60Torr以上70Torr未満 90%未満の場合はWにする
(危険な場合は測定不要)
IV 60Torr未満 測定不要