トップ書類ダウンロード診断書の手引き連絡先・送付先診療支援呼吸器科


サルコイドーシスの新診断基準(2006.11) pdf

Ⅰ 診断基準

サルコイドーシスの診断は組織診断群と臨床診断群に分け下記の基準に従って診断する.
1.組織診断群
一臓器に組織学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め,かつ,下記1)~3) のいずれかの所見がみられる場合を組織診断群とする.

1) 他の臓器に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認める.
2) 他の臓器でサルコイドーシス病変を強く示唆する臨床所見」(診断の手引き参照)がある.
3) 表1に示す検査所見6項目中2項目以上を認める.

表1 全身反応を示す検査所見

  • 1) 両側肺門リンパ節腫脹
    2) 血清ACE 活性高値
    3) ツベルクリン反応陰性
    4) Gallium-67 citrateシンチグラムにおける著明な集積所見
    5) 気管支肺胞洗浄検査でリンパ球増加またはCD 4/CD 8比高値
    6) 血清あるいは尿中カルシウム高値
2.臨床診断群
組織学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫は証明されていないが,2つ以上の臓器においてサルコイドーシス病変を強く示唆する臨床所見」(診断の手引き参照)に相当する所見があり,かつ,前記の表1に示した全身反応を示す検査所見6項目中2項目以上を認めた場合を臨床診断群とする.

Ⅱ. 診断の手引き

各臓器病変におけるサルコイドーシス病変を強く示唆する臨床所見」を以下に示す.

1.呼吸器系病変を強く示唆する臨床所見

  • 1) 両側肺門リンパ節腫脹(BHL)を認める場合.
    2) 両側肺門リンパ節腫脹(BHL)は認めないが,表2のいずれかの所見を認める場合.

    表2 胸部画像・気管支鏡所見


    • 1.胸部X 線所見
      1. 上肺野優位でびまん性の分布をとる肺野陰影.粒状影,斑状影が主体.
      2. 気管支血管束周囲不規則陰影と肥厚.
      3. 進行すると上肺野を中心に肺野の収縮を伴う線維化病変を来す.

      2.CT/HRCT 所見
      1. 肺野陰影は小粒状影,気管支血管周囲間質の肥厚像が多くみられ,局所的な収縮も伴う粒状影はリンパ路に沿って分布することを反映し,小葉中心部にも小葉辺縁部(胸膜,小葉間隔壁,気管支肺動脈に接して)にもみられる.
      2. 結節影,塊状影,均等影も頻度は少ないがみられる.胸水はまれである.進行し線維化した病変が定型的な蜂窩肺を示すことは少なく,牽引性気管支拡張を伴う収縮した均等影となることが多い.

      3.気管支鏡所見
      1. 網目状毛細血管怒張(network formation)
      2. 小結節
      3. 気管支狭窄

  • ■除外診断

  • 慢性ベリリウム肺,じん肺,結核および感染性肉芽腫症,悪性リンパ腫,他のリンパ増殖性疾患,過敏性肺炎,Wegener肉芽腫症,転移性肺腫瘍,アミロイドーシスなどを除外する.
2.眼病変を強く示唆する臨床所見
  • 下記の表3に示す眼所見の6項目中2項目以上有する場合に眼病変を疑い,診断基準に準じて診断する.
  •  
  • 表3 眼所見

    • 1) 肉芽腫性前部ぶどう膜炎(豚脂様角膜後面沈着物,虹彩結節)
      2) 隅角結節またはテント状周辺虹彩前癒着
      3) 塊状硝子体混濁(雪玉状,数珠状)
      4) 網膜血管周囲炎(主に静脈)および血管周囲結節
      5) 多発する様網脈絡膜滲出斑または光凝固斑様の網脈絡膜萎縮病巣
      6) 視神経乳頭肉芽腫または脈絡膜肉芽腫
      • その他の参考となる眼病変:角結膜乾燥症,上強膜炎・強膜炎,涙腺腫脹,眼瞼腫脹,顔面神経麻痺

  • ■除外診断

  • 結核,ヘルペス性ぶどう膜炎,HTLV-1関連ぶどう膜炎,Posner-Schlossman症候群,Behçet 病,眼内悪性リンパ腫などを除外する.
3.心臓病変を強く示唆する臨床所見
  • 下記の表4に示すように心臓所見を主徴候と副徴候に分け,以下1),2) のいずれかを満たした場合をいう.
  •  
  • 表4 心臓所見

    • 1. 主徴候
      1. 高度房室ブロック.
      2. 心室中隔基部の菲薄化.
      3. Gallium-67 citrateシンチグラムでの心臓への異常集積.
      4. 左室収縮不全(左室駆出率50%未満)

      2.副徴候
      1. 心電図異常:心室不整脈(心室頻拍,多源性あるいは頻発する心室期外収縮),右脚ブロック,軸偏位,異常Q波のいずれかの所見
      2. 心エコー図:局所的な左室壁運動異常あるいは形態異常(心室瘤,心室壁肥厚)
      3. 核医学検査:心筋血流シンチグラム(thallium-201chlorideあるいはtechnetium-99m methoxyisobutylisonitrile,technetium-99m tetrofosmin)での灌流異常
      4. Gadolinium 造影MRI における心筋の遅延造影所見
      5. 心内膜心筋生検:中等度以上の心筋間質の線維化や単核細胞浸潤

        1) 主徴候4項目中2項目以上が陽性の場合.
        2) 主徴候4項目中1項目が陽性で,副徴候5項目中2項目以上が陽性の場合.

        付記:
        1) 虚血性心疾患と鑑別が必要な場合は,冠動脈造影を施行する.
        2) 心臓以外の臓器でサルコイドーシスと診断後,数年を経て心病変が明らかになる場合がある.そのため定期的に心電図,心エコー検査を行い経過を観察する必要がある.
        3) Fluorine-18 fluorodeoxyglucose PET における心臓への異常集積は,診断上有用な所見である.
        4) 完全房室ブロックのみで副徴候が認められない症例が存在する.
        5) 心膜炎(心電図におけるST 上昇や心囊液貯留)で発症する症例が存在する.
        6) 乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が,心筋生検で観察される症例は必ずしも多くない.


    • ■除外診断

    • 巨細胞性心筋炎を除外する.
4.皮膚病変を強く示唆する臨床所見
  • サルコイドーシスの皮膚病変の診断には組織所見が必要である.表5に皮膚病変の臨床所見を示す.
  •  
  • 表5 皮膚病変の臨床所見

    • 1.皮膚サルコイド:特異的病変
      1. 結節型:隆起性病変で浸潤のある紅色の丘疹,結節である.
      2. 局面型:環状あるいは斑状の非隆起性病変である.環状皮疹は遠心性に拡大する病変で,中央部は正常皮膚色でやや萎縮性を呈し,辺縁は紅色でわずかに堤防状に隆起する.斑状病変は類円形あるいは不整形の紅斑である.
      3. びまん浸潤型:しもやけに類似した皮疹で,暗紅色の色調で,びまん性に腫脹する.しもやけの好発部位である指趾,頬部,耳垂に好発する.
      4. 皮下型:種々の大きさの弾性硬の皮下結節で多発することが多い.通常被覆皮膚は正常である.
      5. その他
        • ⅰ) 苔癬様型:粟粒大の扁平小丘疹が集簇性に多発し,時に全身に播種状に出現する.時に毛孔一致性に生じる.
          ⅱ) 結節性紅斑様:結節性紅斑に類似した臨床像であるが,組織学的に類上皮細胞肉芽腫を認める病変である.
          ⅲ) 魚鱗癬型:魚のうろこ状の皮疹で,下腿に好発する.
        • ⅳ) その他のまれな症状:乾癬様病変,疣贅様病変,白斑.

      2.瘢痕浸潤:異物を伴う肉芽腫病変
      1. 外傷など外的刺激を受けた部位に生じ,瘢痕に応じて種々の臨床像を示す.膝蓋,肘頭,顔面に好発する.

      3.結節性紅斑:非特異的病変淡紅色の有痛性皮下結節で下腿に好発する.
  • ■除外診断

  • 1) 他の皮膚肉芽腫を除外する:環状肉芽腫,Annularelastolytic giant cell granuloma,リポイド類壊死,Melkerson-Rosenthal症候群,顔面播種状粟粒性狼瘡,酒さ,皮膚結核など.
    2) 異物,癌などによるサルコイド反応を除外する.
5.神経・筋病変を強く示唆する臨床所見
  • 表6に示す神経・筋病変を強く示唆する臨床所見を有する場合をいう.画像を含めた検査のみにおいてサルコイドーシスの神経・筋病変が示される無症候性のものと,症候性のものがある.診断に際しては以下の条項を使用してもよい.

  •  1) Definite群:神経・筋に組織所見が得られ,全身反応を示す検査所見6項目中2項目を満たすもの.
     2) Probable群:神経・筋以外の他臓器に組織所見を認め,全身反応を示す検査所見6項目中2項目を満たすもの.
     3) Possible群:全身反応を示す検査所見6項目中2項目を満たすが,いずれの臓器にも組織所見を確認できていないもの.

    6 神経・筋所見


    • 1) 肝病変:肝表面の結節,肝多発性低吸収域
      2) 脾病変:脾腫,脾機能亢進症,脾表面の結節,脾多発性低吸収域
      3) 腎病変:高カルシウム血症,腎尿路結石,腎腫瘤
      4) 消化管病変:潰瘍,粘膜肥厚,隆起などの透視,内視鏡所見
      5) リンパ節病変:表在性リンパ節腫大,腹腔内リンパ節腫大,縦隔リンパ節腫大
      6) 甲状腺病変:甲状腺腫
      7) 耳下腺病変:耳下腺腫大
      8) 上気道病変:上気道腫瘤
      9) 骨病変:骨梁減少,のう胞状骨透亮像
      10) 関節病変:急性関節炎症状,慢性関節炎症状
      11) 生殖器病変:生殖器腫瘤
      12) その他病変:骨髄病変,膵病変,胆道・胆囊病変など
  • ■除外診断
    1) 原因既知あるいは別の病態,例えば結核,悪性リンパ腫,その他のリンパ増殖性疾患,原発性,転移性悪性腫瘍などを除外する.
    2) 異物,癌などによるサルコイド反応を除外する.

Ⅲ.サルコイドーシスの診断手順

図1に従って診断する.


参考

サルコイドーシスの診断基準 (1989)

1 主要事項
 (1)臨床症状
   呼吸器症状(咳・息切れ),眼症状(霧視),皮膚症状(丘疹)など。

 (2)臨床所見・検査所見
   ①胸郭内病変    

    (a) 胸部X線・CT所見(両側肺門リンパ節腫脹BHL,びまん性陰影,血管・胸膜の 変化など)
    (b) 肺機能所見(%VC・DLco・PaO2の低下)
    (c) 気管支鏡所見(粘膜下血管のnetwork formation、結節など)
    (d) 気管支肺胞洗浄液所見 ※1(総細胞数・リンパ球の増加、CD4/8上昇)
    (e) 胸腔鏡所見(結節、肥厚、胸水など)


   ②胸郭外病変

    (a) 眼病変 ※2(前部ぶどう膜炎、隈角結節、網膜血管周囲炎など)
    (b) 皮膚病変(結節、局面、びまん性浸潤、皮下結節、瘢痕浸潤)
    (c) 表在リンパ節病変(無痛性腫脹)
    (d) 心病変 ※3(伝導障害、期外収縮、心筋障害など)
    (e) 唾液腺病変(耳下腺腫脹、角結膜乾燥、涙腺病変など)
    (f) 神経系病変(脳神経、中枢神経障害など)
    (g) 肝病変(黄疸、肝機能上昇、結節など)
    (h) 骨病変(手足短骨の骨梁脱落など)
    (i) 脾病変(腫脹など)
    (j) 筋病変(腫瘤、筋肉低下、萎縮など)
    (k) 腎病変(持続性蛋白尿、高カルシウム血症、結石など)
    (l) 胃病変(胃壁肥厚、ポリープなど)


   ③検査所見

    (a) ツベルクリン反応 陰性
    (b) γ-グロプリン 上昇
    (c) 血清 ACE 上昇
    (d) 血清リゾチーム 上昇
    (e) 67Ga集積像 陽性(リンパ節、肺など)
  (f) 気管支肺胞洗浄液の総細胞数・リンパ球増加、CD4/8
※1   気管支肺胞洗浄所見については喫煙歴を考慮する。
※2・3 眼・心サルコイドーシスについては別に診断の手引きを参考とする。
    

(3)病理組織学的所見

類上皮細胞からなる乾酪性壊死を伴わない肉芽腫病変
生検部位(リンパ節、経気管支肺生検TBLB、気管支壁、皮膚、肝、筋肉、心 筋、結膜など)。クベイム反応も参考になる。

2 参考事項

    無自覚で集団検診により胸部X線所見から発見されることが多い。
  ② 霧視などの眼症状で発見されることが多い。
   ③ ときに家族発生がみられる。  
心病変にて突然死することがある。
ステロイド治療の適応には慎重を要する。
結核菌培養も同時に行うことが肝要である。

3 診断の基準      

①組織診断群   (確実)  : 1-(2)のいずれかの臨床・検査所見があり、1-(3) が陽性。
   ②臨床診断群 (ほぼ確実): 1-(2)①、②のいずれかの臨床所見があり、1- (2)③の(a)(ツベルクリン反応)又は(c) (血清ACE) を含む3項目以上陽性。

4 除外規定

    原因既知あるいは別の病態の疾患、例えば悪性リンパ腫、結核、肺癌、(癌性リン パ管症)、ペリリウム肺、じん肺、過敏症肺炎、など。
  ② 異物、癌などによるサルコイドの局所反応。