「私・・・もう学校辞めたい。こんな水泳部になんかいたくない!」
1年生の水泳部員東郷美月は麗佳の前でとうとう泣き出した。昼休みに設けた生徒カウン
セリングの時間に美月は飛び込んできた。
「落ち着いて、東郷さん。あなたをそんなに追いつめている原因を冷静に考えてみましょ
う。なにがあなたの心を不安にさせているのか・・・話してくれなきゃ私もアドバイスし
ようがないもの・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
美月は目に涙を一杯ためたまま唇を噛み締めてうつむき押し黙ったままだった。
一方通行の同じような会話をこの15分間だけでも何回繰り返したことか・・・。
(聞かなくてもわかってる、このコ去年の優紀のときと全く同じだわ・・・)
「智徳院みずは・・・」
麗佳の言葉にはっとして美月は目を丸くして顔を上げた。
「そうなのね。あなたをそれほどまでに追いつめているのは彼女の存在なのでしょう?」
美月は小刻みに肩を震わせた後、最後は麗佳にしがみついて、わぁっと泣きだした。
(かなり情緒不安定よね・・・慰めてあげようか?)
不敵に微笑み、心の中で美月に囁く。麗佳は美月の両肩をとってうつむいた顔を上向かせ
た。涙目の目尻を親指で拭い取ると、潤んだ美月の瞳に自分の瞳を重ねるように映した。
「さあ、私の目をじっと見つめてごらんなさい。あなたを苦しみから解放してあげる。
さあ力を抜いて気持ちを落ち着けるのよ、楽しかった子どもの頃を思い浮かべて・・・」
昼休みの高等部のプールには新人戦を間近にひかえた1年生を中心に水泳部員が練習に励
んでいた。蓮見の与えた新人戦向の課題をこなすことが1年生に課せられていたのだった。
「ほら、小谷!もっとブレスのタイミングをしっかり決めて!」
制服姿でプールサイドに立って後輩を叱咤する2、3年生、その中に智徳院みずははいた。
一人だけプールサイドにおいたパイプ椅子にだらしなく寄りかかり、目を閉じてMDウォ
ークマンを聞きリズムをとっている、非常にご機嫌だった。ほかの部員達はプールサイド
を行き来しながら必死に泳ぐ後輩部員に声をかけている。
「ちょっと、みずは、練習なんだからあなたも1年生をコーチしなさいよ」
「・・・・・・・」
「ちょっと聞いてんの?みずは!」
3年生でキャプテンの竹島弘子が近づいてみずはのヘッドフォンを外そうと手をかけた
瞬間、みずはの右手がそれを一瞬にして掴み取って後ろ手にひねりあげ拒絶する。
「い、痛い・・・・放して・・・・あぅ・・」弘子の顔が苦痛に歪む。
「『・・・コーチしなさいよ』?そんな言い方がある?私に向かって・・・」
みずはは目を開いて、ヘッドフォンを外して立ち上がりざま、掴んだままの弘子の腕を背
中へとねじ上げた。弘子は我慢できずにみずはの足元にひれ伏すように崩れ落ちる。
「痛い、お願い、謝るから・・・放して、折れちゃう、腕が折れちゃうじゃない・・・」
「先輩、あなたが私にそんな態度とれるワケ、教えてくれますぅ?」
「ワケって・・・なによ、それ!痛い・・・・、早く放して!」
「あなたも謝るって言ったばかりじゃないですか・・・悪いと思ったからでしょ、先輩!」
「それは・・・・・・・・・・・・・」
「それは・・・なに?まさか言葉のアヤなんてつまんない回答しないで下さいね」
「・・ごめんなさい、許して、お願いだから手を放して・・・・・・」
「はい。時・間・切・れ・・・」
みずはは不敵に微笑んだまま、表情一つかえずに弘子の腕をいきおいよくねじりあげた。
鈍い音が鳴った。止めようとして止め切れずに2人周りを取り巻いていた3年生たちにそ
の音は聞こえた。激痛に声も出せず倒れ込んだまま体を丸めて弘子はもがいていた。
「今まで何度も注意をしたのに、私を馴れ馴れしく『みずは』なんて呼び捨てにしたこと。
私の体に汚い手をかけようとしたこと、私の楽しみの時間に勝手にもズケズケと足を踏み
入れてきたこと。それ以上に、竹島先輩、あなたが冒した最大の過ちは、何一つ私に優る
ものがないくせに私に指図しようとしたことですよ、お馬鹿さん・・・・・・・・・・・
ちょっとぉ、竹島、聞いてんのぉ!せっかく私が説明してあげてるんだから、痛がってな
いで聞きなさいよ!」
みずははシューズで弘子の腕を思いっきり踏みつけた、弘子が絶叫する。
「私が水泳で学院特待生として入部している以上、3年生の先輩方、学年が上ってだけで
先輩面するなんてやめてもらえますぅ?私のプライドがそういうコト許さないってこと、
今一度よ〜く頭の中に叩き込んでおいて下さい・・・先輩方は『ただのヒト』なんですか
ら。それとも早めに引退されたらどうですか?あの桐生とかいった馬鹿女のように・・・
そうすれば諍いもなくなるし私が水泳部をより強くしてみせますよ」
3年生はなにも言えずに立ち尽くした。2年生はみずはの後に立って3年生を睨んでいる。
みずはは2年生を完全に掌握していた。同・下級生はみずはの威圧感に逆らえずにいた。
「人の上に立ち、人を組み敷き屈服させ、導くリーダーの素質っていうのは、誰からも秀
でた資質と必ず勝てるという実力に裏付けられた自信、そしてその人間がかもしだす威圧
感よ。私はそのすべてを持っている。誰にも逆らわせない、私自身が水泳部の規範よ。非
凡な人間のもつ威圧感には平凡な人間はただ素直に付き従ってることだけが許されるの。
誰にも指図は受けないわ。私があなたたちを導くことはあってもね」
腕を組んで3年生を鋭く睨み言い放つ、振りかえって1・2年生にも眼光鋭く視線を向け
る。誰もがみずはに逆らえないと思った・・・逆らえばプールサイドに横たわり苦しみも
がく竹島弘子のようになると。彼女の並外れた水泳特待生の実力も、智徳院家という日本
財界のトップブランドの名の前にも、誰もが彼女に異を唱えることに二の足を踏ませた。
「だめよ、みんな、黙っていてはダメ。水泳部はみずはのものじゃない・・・・」
「そこまでされても、まだわかってないようね・・・馬鹿な子・・」
プールサイドの床に倒れながらも片腕をかばい上半身を起こしながら弘子が叫ぶ。背後で
かけられた弘子の言葉に憎悪の表情を顕わにしてみずはが振り返る。振りかえったみずは
の表情をプールの中で見た1年生達はあまりの険しい表情に凍りつき、すくみあがった。
みずはは弘子のもとに歩み寄ると傷めた右腕を掴みあげて引きずり出す。同時に弘子の苦
痛の悲鳴がプールに響き渡る。みずはのどこにそんな力があるのかと思うほどいともたや
すく弘子を引っ張り回した挙げ句、プールの中に放り投げた。水しぶきが立つ。
「みんな、いいわね、これは事故よ。竹島先輩はプールサイドで滑って肩を強く打った後
プールに落ちたのよ。そうよね!」
睨まれ圧倒された部員達はただ呆然と立ち尽くす、誰もがみずはの行動に恐怖した。
「それから、誰かサボった美月に次の休み時間、私のところへ来るように伝えて。昼休み
の練習はこれで終り。1年生はそのプールに浮いてる『ゴミ』を片づけてから上がりなさ
い。3年生の先輩方、プールサイドの水切りやって下さいね、丁寧に。放課後の練習の前
にチェックして、きちんとやってなかったら今度は道具使わず舌で舐めとってもらいまし
ょうか、アハハハハ」
すっかりコーチ気取りのみずはは勝手に練習を打ち切ってプールサイドを後にする。2年
生が金魚の糞のようにそれに続く。1年生は彼女達の姿が見えなくなると、『ゴミ』扱い
された弘子を慌ててプールサイドに救い上げた。傷めた腕をかばいながら制服姿のままず
ぶ濡れの弘子は唇をきゅっと噛み締めて何も言わなかった。目尻からしたたる水滴がプー
ルにほうり込まれてズブ濡れになったからではないことは言わずともみんなわかっていた。
噛み締めた弘子の口元から水に滲んだ血が浮き出す。
「わかったわ、No.2のコね、調整するわ。今、手が離せないから30分後にまた・・・」
(あのコなら今朝見かけたっけ・・・芯の強いコなんだけどペットに変心させた途端に子
どものように甘えんぼで、それでいて淫乱で大胆になるのよね。美月もそういうふうにな
るのかな・・・)
保健室の奥、休息室のベットに腰掛けて麗佳は携帯を切る。メデューサからの依頼だった。
「ねぇ、ねぇ、おねぇたぁ〜ん、もっとアソンデ・・・み〜たんとあそんでよぉ」
霞がかり酔ったような虚ろな目のまま、上半身半裸の美月が麗佳の背中に豊満な胸を押し
当ててしなだれかかった。ベットに乗った美月の周りに無造作にワイシャツとブラジャー
が放り出されている。
「『さっきの』して・・『さっきの』、おね〜たんの指でみ〜たんのおマタ、くりくりしてぇよぉ〜。み〜たん、アレ、とってもダイスキ・・・えへへ。ねぇクリクリぃ」
「フフフ、みーたんは、おマタくりくりが気持ちいいのかなぁ〜?」
「うん!とっても、とっても、とっても、気持ちいいの!」
「みーたん、いままで知らなかったのかな?おマタ触ると気持ちいいの」
「うん、知らなかったぁー!」
「みーたん、おねえさんがみーたんだけに内緒で教えてあげたんだからね。これからはお
ねーさん言うことよくきいてね。そうしたらご褒美にもっともっと気持ちいいこと教えてあげる。おマタくりくりよりもっとももっと気持ちいいよ」
「あ〜ん、おしえて・・おねえたんおしえてよぉ・・・・すぐ。ねえ、すぐぅ〜!」
「だめだめ、みーたんがいい子にしておねえさんのいうこときかなきゃダメ」
「うん。みーたんいい子にするよ。おねえたんのゆーこときくもん。だからぁ〜」
無邪気に笑うと美月は麗佳の右手をチェック柄のスカートの奥へ招き入れる。パンティー
は美月の右足首にだらしなく引っかかっているだけで、麗佳の指は直接美月の敏感な部分
へ導かれた。そこからつたう愛液が美月の内腿を濡らしている。
「ふふふ、いやらしいのね。腰がひとりでに動いてるじゃない・・本能?・・・・・」
表情も仕種も高校生とは思えないほど、あどけなくぎこちなかった。麗佳の退行催眠によ
って『赤ちゃん返り』させられ、しかも肉欲を覚えさせられた美月の姿だった。羞恥心な
ど取り払われてしまい、自分の思うまま貪欲に「悦び」を得ることに執着していた。
「あん・・あぁん・・・きもちいい・・・・み〜たん、おねぇたんのことしゅき(好き)
もっとして・・・み〜たんにもっとしてぇ〜・・・もっと・・もっと。うれしい・・み〜たん、うれしい〜」
赤ん坊が寝る仕種のように、こぶしを作った両手を胸に当て膝を曲げて大股を開き、まる
でオムツ替えのときのポーズで麗佳の指戯を受け入れる美月には先ほどまでの思いつめた
多感な少女の表情は全く消え失せていた。
「ふふふ、東郷さん。無垢な子供に戻った気分はどう?体は大人のまま心はコドモ。それ
って素晴らしいことじゃない?あなたは自分でも知らないうちに体の悦びを覚えていくの。
もうつまらない人間関係なんか忘れて自分の性感を心ゆくまで味わってみなさいな」
「あん!・・・あぁん・・・あ〜ん・・・ふ〜ん・・くふぅぅぅん」
目を閉じて快感を味わうように美月は腰を中心に体をくねらしている。喘ぎ声は更に悩ましく部屋に響く。
「でもこれじゃなんの解決にもならないのよね。はぁ〜どうしたものか・・・・・・・。
とりあえず今日は躁状態に気持ちを切り替えさせて教室戻しとこっか、午後の授業も始ま
るしね。明日から時間をとってゆっくりと私があなたをつくりかえてあ・げ・る!」
独り言をいいながら自分で納得していた麗佳の耳に勢いよく保健室の扉を開ける音が響いた。開いた主は何事か大声で叫んでいる。防音性に優れた休息室では聞き取れなかった。
「お眠りなさい」
美月の目を手のひらで撫でた瞬間、美月はばったりとベットに倒れ込んですやすやと眠っ
てしまった。麗佳が布団をかけて裸であることを隠した後、保健室への扉を開いた。駆け
寄ってきたのは優紀だった。
「先生!弘子は、弘子は大丈夫ですか?」
「へっ?」
「いるんでしょう!そっちの部屋?」
「まっ、待ってよ。ここにいるのは1年生の東郷さんだけよ。具合が悪くて寝てるわ」
「うそ、怪我したくせに弘子ここに来てないの?」
「弘子って誰?なにヒロコちゃん?」
「竹島弘子よ。昼休みにプールで腕を怪我してるはずなのに・・・・・」
「あぁ、水泳部の竹島さんね。私も用があって彼女に会いたいと思っていたところよ」
(今日の大事な仕事をしてもらうペットNo.2だもんね・・・・えっケガ!?)
「ちょ、ちょっと・・・竹島さんケガしたの?」
「だから探しに来たんじゃない!またあのジコチュー女の横暴が今度は弘子を・・・」
その時机の電話が鳴った。受話器を取る麗佳の顔色が見る間に青ざめた。
「・・・・・・・わかりました、すぐに行きます。桐生さん、私と一緒に来なさい・・」
「なんでよ、わたしは弘子の方が心配なの!先生に付き合ってるヒマはないわ」
「その竹島さんが屋上から飛び降りたのよ・・・・・・」
優紀は言葉を失った。
人だかりをかき分けて麗佳がその輪の中へ入って行く。救急車のサイレンが近づいていた。
間もなく救急車も学内に来るにちがいない。うつ伏せに倒れている弘子の周りを教師達が
取り囲み必死に生徒達を教室に戻るように怒鳴りたてている。血に染まる弘子の傍らに白
衣姿の男がしゃがみこんでいた。
「助川先輩・・・・」
「よぉ・・・たまたま近くにいたんだ・・・やたらに動かさない方がいい・・・でも見る
かぎりじゃ彼女、もう難しいかもしれないぜ」
「先輩は黙ってて!竹島さん!気持ちをしっかりと持って!私の声が聞こえる?」
「いやぁ〜弘子!ひろこぉ〜!!どうして・・・・どうしてあなたが・・・・・」
すがりつこうとする優紀を教師達が取り押さえてる。すぐに救急隊員が駆けつけてきた。
「さあ下がろう、もう俺達の出番はないよ。後は任せるんだ・・・・むにゅ、むにゅ」
助川が麗佳を下がらせながら、麗佳の胸を揉んだ。
「どさくさに紛れてこの男はまたっ!何するつもりっ!この変態!」
正拳で助川の鼻っ面を殴り飛ばした。周囲があっけにとられている。
「あつつつつ、それだけ元気なら大ジョブだぁ。落ち込むな、俺の大事な後輩!」
鼻血を垂れ流しながら助川はふらふらと去っていった。
応急処置をする間もなく麗佳は弘子から離され、隊員が彼女を運んでいくのを見守るだけ
だった。弘子は学院の付属病院へ搬送されたと学院に連絡が来たのは1時間後、いまだ予
断を許さない状態だった。
保健室−麗佳は記録用の東郷美月のカルテを前に鉛筆を持ったまま動かなかった。表情は
硬く厳しい。カルテは白紙のまま筆は進まなかった。携帯が鳴る、麗佳は耳にあてた。
「もしもし・・・」
「メデューサよ」
「・・・こちらアルテミス」
「フフフ、やけに神妙じゃない。よかったわね、スケジュール調整前の事故で。調整後だ
ったら重大な契約違反だったわ」
「なぜ事故の事を知ってるの?」
「答える必要ないわ。でもあなたには自分のペットの管理もできないことがよくわかった」
「そんな・・・私は・・」
「あははは、いつもの人をくったようなふてぶてしいセリフも今日は出ないのね。気味が
いいわ、私には。・・・いつもこうだとやりやすくていいのにね」
「今日だけよ。私はそれほどヤワじゃない」
「どうだか・・・でも今日の依頼は白紙よ。時間も空いたことだし、あなたも少しは原因
でも調べてみたらどう?手持ちのカードがあなたになくなった時点で我々はあなたを排除
するわ、これも契約。承知してるわよね・・・」
「わかってる、ペットはまだ4人いるのを知ってるでしょう。それにタマゴが数人・・・」
「あらそう・・・意外に少ないのね。もっと飼ってるかと思ったわ」
「原因だって、あなたに言われなくてもわかっているの。私だってタダでは終らせないわ」
「へぇ、なにか考えているようだけど、その前に残ったペットに自殺なんて考えないよう
な暗示でもかけといたらどう?有能なアルテミス・・・あははははは・・あはははははは」
「イヤなやつ・・・・」
麗佳はメデューサの高らかな笑いを自ら遮断した。携帯を机に放り投げる。怒りがメデューサの言葉に触発されて込み上げてくる。
「智徳院みずは・・・・私のペットを追いつめた罪、重いわよ・・・」
握った鉛筆を力任せに麗佳は真っ二つに折った。
「優紀、あなたにも手伝ってもらうわ」
「はい・・・お姉様・・・」
傍らに立つ優紀は直立のまま無表情に返事をした。智徳院みずはを殴りに行くんだといっ
て半狂乱で騒ぎ立ててきかない優紀をたまりかね、麗佳はキーワードを囁いてペットに戻
しておとなしくさせていた。
「行きなさい、わたしの指示したとおりに・・・」
その言葉と同時に麗佳は指をパチンと鳴らす。弾かれたように優紀が部屋を出て行く。それを追うように麗佳の脇に座っていた美月も立ち上がった。
「みーたん、うまくできたらお姉ちゃんがまたおマタくりくりしてあげる」
美月はあどけない笑顔をつくって麗佳の前からゆっくりと去っていった。
「ふふふ、美月、憎しみはあなたの強い味方よ・・・・・。さて『贖罪の山羊』の調達、
助川をあてるかなあ。『スケベ講師の御乱心、女子生徒にいたづら』・・いいかもね」
「だから私が何したって言うんですか?そんなに疑うのなら他の部員に聞けばいいでしょ。
それとも、もう私が犯人だと決めつけてこんな尋問してるんですね」
2−Sの教室に学年主任と担任とが、みずはの机を挟むように立ってたじろいでいた。
「い、いや・・なにもそうムキにならないで。我々はただ事情が聞きたいだけで・・・」
「だったら今お話したとおりです。他に何を話せって言うんです?昼練はいつもどおり蓮
見先生のメニューをこなして、ただ竹島先輩はプールサイドで足を滑らせて腕を痛めたっ
て言いましたけど」
言葉に怒りが滲み出ている。とてもみずはから事情を聞ける状態ではなかった。とりつく
しまもない・・・2人の教師は弱っていた。他の部員達は口を硬く閉ざして、ある者は
『知らない』を言い張り、またはみずはの言ったことをオームのように繰り返すだけだっ
た。なにかある・・・・そう思いながらも教師達は事態の解明を進めることができないで
いた。事件のおかげで平常授業は滞っていた。どの教室もこの話題で持ちきりだった。
「それほどまでに先生方が私を疑いになるのでしたら、私も家族と連絡をとってそれ相応の対処を取り計らってもらうようにするまでだわ!」みずはは語気を荒げた。
「いや、やや、わかったから・・・事情はわかりましたから、もう結構です」
50を超えようかという風貌の学年主任はうろたえながらみずはに敬語で答えた。
智徳院家に話が及べば、事態はさらに大きくなる。学院長や部顧問だけではなく、今まさ
にみずはに事情説明を求めたこの学年主任たちも、みずはに対する態度が懐疑的であった
と彼女に訴えられれば教職の地位さえ脅かされる。ましてやこのS(Special)ク
ラスは、成績は勿論のこと、この国を動かす中枢にいる者たちの子女が集まったクラスと
いってよかった。このクラスすべてがみずはの味方、うろたえる二人の教師を敵視し、見
下していた。
「・・・先輩・・・みずは先輩・・・・」
蚊のなくような声に振り向くと教室の出入り口の扉に東郷美月が寄りかかっていた。
「先輩とお話したいの・・・・・」
「いいわよ、入っていらっしゃい」
「でも美月・・・・先輩だけとお話したいの・・・」
「そう・・・・私も今日あなたがなぜ昼の練習に来なかったか知りたいと思ってたところ
なの・・・・。石渡先生、今日の授業はこのあとどうなるの?」
「・・・・・あっ、恐らく今日は授業も部活も中止して帰寮するようにと学院長からお話がありまして・・その・・自室学習の放送が間もなく・・あるんじゃない・・かと」
「そう・・・それじゃあ美月さん、部室でお話しましょうか。先に行って待っていてもらえるかしら?」
「はぁ〜い・・・・・・」
怒りの気持ちがおさまりきらないみずはは美月の妙に幼げな態度まで気がつかなかった。
美月の背中を見送ってみずはは刃物のような鋭い視線を石渡という学年主任に向けた。
「ひっ・・・」石渡はわずか16歳の女子高生の視線に威圧されて凍りついた。
「さあ、先生、聞きたいことがまだあるんだったら今のうちに聞いておいた方がいいんじ
ゃない?あなたの教師生活を賭けてまで竹島先輩の事故の原因を解き明かしたいと思うの
ならね・・・・」
石渡は首を左右に振るのが精一杯だった。担任は声すら出せずにいた。
渡り廊下を歩いてみずはは一人部室へと向かう。
(まったく、いい迷惑だわ。勝手に盛り上がって勝手に死んで・・・その責任を私への
面当てにしてくるなんていい度胸じゃない、まぁ『凡人』にとっちゃ命賭けるくらい勇気
が要ったのかもしれないけれど、私はこんなことではびくともしない。ふふふ・・・竹島
先輩・・無駄死にですよ、無駄死に。それでも満足かしら・・・自己満足?)
すでに帰寮の放送がされ生徒達は帰路についているところだった。
(これで竹島が死んで・・・いいえ、とりあえず部からいなくなれば、辞めさせた桐生と
もども、もう私にとやかくいう上級生はゼロね。あの2人は泳ぎでも私に並びかけてたし、
正直言って、いてもらっては困るの・・・・。特待生制度が前の年から始まってたらあの
2人もそうなってたかもしれない・・・・)
すでに学年棟を過ぎて部室棟への渡り廊下を歩くみずはの周りには人影はまったくなく、
静まり返っていた。
「あとは・・・・私の存在を脅かす美月を駆逐すれば、水泳部は私の自由。美月・・・・
あなが悪いのよ。私を目標に頑張るなんてカワイイこと言ってたくせに、目標を超えられ
たら私の立場がないじゃない。私は常に1番でありたいのよ。だからあなたの芽は今のう
ちに摘ましてもらう。練習という清らかな名のもとあなたを潰すわ!新人戦前にあなたは
壊れるのよ」
誰もいない部室棟でみずはの独り言は声になっていた。部室棟はひっそりと静まり返り、廊下の奥、水泳部の部室の前に美月が立っているのが、みずはの視界に映る。
「あら部室に入って待ってればよかったのに」
「先輩・・・・みずは先輩・・・」
美月はみずはの両手を抱えるように、みずはの腰にまで手を回して抱きついてきた。
みずはは両手が塞がれて使えない。
「ちょ、ちょっと待って。何なのよ一体・・・放して・・抱きつかないでョ!」
「み〜たんね・・・み〜たん、前から先輩の事・・・ずっと・・」
「やめてよ、わたしそんな趣味もってないんだから・・・」
「先輩の事・・・・ずっと・・・ずっと・・大大大大、大嫌いー」
「えっ・・・」
「憎い・・・先輩が憎いの!・・とっ・て・も」
その時美月に気をとられていていたみずはに背後から迫った影がみずはの水泳で鍛えられ
た肩口から首に腕をかけたかと思うと柔道の締め技のように一瞬にしてみずはを締め上げ
た。大声も上げられず息も絶え絶えになってみずはははじめて恐怖した。耳元に人の息が
あたる。そいつの手が確実に締まり、みずはを殺そうとしていると思えた。
「死ぬほど苦しめてあげる」
(その声・・・聞いたことがある・・そうだ・この声・・・・桐生・・・優・・き・・)
美月に力任せに抱き着かれたみずはは両手で払いのけることもできずに、やがてかすかな
な悲鳴とともにやがて気を失って廊下に崩れ落ちた。
「わたし・・・・コイツ嫌い・・・・」
みずはを見下ろして優紀が言った。
「まったくこういう時に助川のヤツ午後から学会研修なんて・・なんてラッキーなヤツ!
しょうがない。予定変更しますか、校長を使って・・・」
高等部に戻ってきた麗佳の前に教頭が事件のせいか右往左往しながらもたついていた。廊
下を歩いている教師達になんやかやと指示をだしては急き立てている。
「教頭先生・・・校長はどこにいらっしゃいます?」
「おお・・西ノ宮先生ちょうどいいところに、さっきの事件は全容がわかるまでは一切他
言無用に・・それから・・それから・・・・」
「教頭先生・・お忙しいのはわかりました。教えて下さい校長先生はどこなんです」
「いいいいいい・・・今はそんなことに構ってられない。さささささ、あなたもご自分の
持ち場に戻って。今回の件は関係者だけで当面の対策を−」
「答えろよ、『痩せヒキガエル』、私だって関係者なんだぞ!飼い主なんだから・・」
麗佳の凄んだ声よりも『痩せヒキガエル』の言葉を聞いた瞬間教頭は両手両足をピシっと
そろえて直立不動になってとまった。
「さあ私の質問に答えるの。校長はどこ?」
「校長は・・・今日の件で顧問の蓮見先生と2人、進路相談室で話をしています。終るま
で誰も入ってくるなと・・・誰にも居場所を教えるなと言っていました」
「そう、それでいいのよ。それで・・」
ポンっと肩を叩くと麗佳は進路指導室へと向かう。しばらくして手を上に伸ばすと、高ら
かにパチンと指を鳴らした。教頭は何事もなかったかのようにまた右往左往し始めた。麗
佳のことなどすっかり忘れていた。
「えへっ、こういうときのために『パシリ』は飼っておかなきゃね」
得意げに麗佳は独り言を言った。教頭は以前から麗佳のキーワード一つで簡単に動く『使
いっ走り』にされていた。
教頭の言った通り、進路指導室の中から校長と蓮見の声が聞こえていた。誰もいないのを幸いに麗佳はドア越しに耳をあてた。
「・・ならば、あくまで事故。竹島弘子一人の思い余った末の行動ということですか。そ
れは智徳院みずはの関与を隠すことになるんですよ。生徒から匿名の話も出てるのに」
「隠すなんて人聞きの悪いこと言わないで下さい。彼女はもともと何の関係もないんです
から・・・。「いじめ」なんて騒ぎ立てられて父母会やマスコミにかき回されるのは真っ
平でしょ、校長先生。智徳院みずはさんは水泳の特待生でもありますし、彼女の家は名の
知らぬものもいない智徳ネットワークの本家ともいうべき地位にあります。「長いものに
は巻かれろ」です。もっと利口になって下さい、校長先生。私も、もともと彼女のコーチ
として彼女の家に雇われていたのを彼女の入学を機に学院に引き抜かれた・・・いえ遣わ
されたんですよ。体育会系熱血教師を表の顔にね。彼女のためなら黒いものでも白と言う
つもりです。今までも多かれ少なかれ彼女のために何人かの生徒を裏切ってきました。今
回も事がちょっと大きいだけで同じです。もし竹島弘子が助かったとしても彼女と他の部
員は私が抑えますわ。いえ、智徳院の力が抑えます」
蓮見は半ば校長を脅すかのように凄んだ、しかも高圧的な態度でありながら笑っている。
自分が智徳院の名を出して相手を脅し、威圧することをまさに楽しんでいるかのようだっ
た。智徳院の名はこんな大学出たての水泳がうまいだけの娘をも増長させるものかと恐ろ
しくなった。体育大出の教師で大学水泳界では高い実力もつ蓮見さやか・・・特待生制度の導入に際して水泳部の特待生を迎え入れるためには相応の指導者が必要と学院会からの推薦でもあり受け入れたその彼女は、はなっから智徳院家の息のかかった人間だったのだ。体育会系の厳しさとすがすがしさの仮面をかぶり生徒達に人気のあるこの駆け出しの教師も裏を返せばみずはのボディーガードのような存在だった。もしかしたら、他の部に所属する特待生と顧問ももしかしたら・・・と校長は疑わずにはいられない心境だった。
「ふぅ〜ん、こんなトコロに智徳院の手下がいたんだ・・・まさか顧問が智徳院のパシリ
なんて、これじゃ弘子も優紀も美月もみんな報われるはずないわよね」
静かにドアを開けて蓮見の背中越しに麗佳が言った。
「だ、だれ!・・・・・・・・・・・西ノ宮せんせぇ・・・でしたっけ?保健医の・・」
「西ノ宮君、帰りなさい。今聞いたことは他言してはいかん!」
「ふふ、そうよ。あなたもこの学院で・・いいえ、何処に行こうとも今の仕事を続けたいと思うのならば、余計なことには干渉しないことが賢明よ、ウフっ」
「厭な言い方ね、それ。私を脅してるの、蓮見先生」
「ご想像にお任せします。でも聡明な西ノ宮先生ならご理解いただけると思います。今の
私の言葉は私自身の言葉ではなく、智徳院グループの本家であり将来そのグループの一翼
を担うみずはさんを庇護する智徳院グループ総意の『声』と思って聞いていただきたいわ」
「大きくでたわね。でもあなたも所詮雇われの身、虎の威を借る女狐ってとこね」
「西ノ宮君、気を静めなさい。智徳院家はこの学院に寄付などで深く関わっている。入学
している生徒だって本家のみずは君一人だけじゃない、傍系にあたる生徒達もいるのだよ。
君は知らんだろうが、教職員には智徳院家の関係から様々な威圧とも思える請願が寄せら
れるんだよ。だから今日のような事件の事実の歪曲化も学院を預かる私には初めてではな
いんだ。残念だが、正しいことを正しいと言えないこともあるんだよ。君も蓮見先生に楯
突かない方がいい。事実、前顧問の石田先生は間違いなく智徳院みずはの入学に際して、
他の部員との扱いに格差を設けて特別に取り計らうように迫られたのを断ったからこの学
院に残れなくなったに違いないんだ・・・・」
「ピンポン、正解。校長先生頭いい!。だから私が採用されたってワケよね。というより私を潜り込ませるために異動があったと言ったがいいかしら・・・」
「桐生優希があなたを頼りながらも、智徳院みずはとの確執を解消できずに水泳部を退部
したのも、東郷美月が特待生クラスの実力をもちながら精神的に追いつめられてみずはに
いいように振り回され続けているのも、今回の竹島弘子の件も、みんなあなたがそれを知
りながらみずはにとってだけ有利な展開になるよう仕向けたものなのね!」
「えらい言われようね。でも当たらずとも遠からずかもね。さて、じゃあ私は帰ろうかな。
校長先生あとのご配慮はよろしく、出しゃばりな一介の保険医さんの口止めもね」
両手を高々と上げて伸びをして退屈だったとでも言わんばかりにふてぶてしい態度をとっ
た蓮見さやかは立ち上がった。ぴったりとしたジャージにねじった体のボディラインがく
っきりと浮く。鍛えているだけあってさやかの体は見事に均整のとれたものだった。
「待ちなさいよ」
麗佳は冷めた表情でさやかの肩を突いてバランスを崩させた。さやかはふらふらっとソファに尻餅をつくように座り込んだ。
「どういうつもり?私の機嫌・・損ねない方が賢明よ」
「あなたには人に対して従順になることを覚えさせなきゃならないわね」
「言うじゃない。私は十分従順よ、智徳院家やみずはさんに対してはね」
彼女はバツが悪そうにだが嘲笑うように麗佳を見上げた。麗佳は腕組みをして冷たい視線
でさやかを見下していた。二人の視線が重なる。その瞳の妖しい奥深さにさやかは吸い込
まれそうな違和感を覚えた。麗佳の瞳だけが妙に鮮明にしかも大きく自分に迫ってきたよ
うな、今までにない感覚だったがそれも一瞬だった。
「西ノ宮先生、やめなさい。あなたなんかが敵う相手じゃ・・・・」
険悪な雰囲気に校長は慌てて麗佳を制する。
「黙りなさい!『泣き虫こぶた』。ふふ、助川より面白い相手が見つかったわ・・」
その途端、校長は電気にでも触れたかのように一瞬にしてソファから立ち上がり『気をつ
け』の姿勢のまま動かなくなった。校長もまた麗佳の支配を受けていた。
「校長先生どうしたんですか・・・・校長先生!」
「これから、あなたを私のものにしてあげる。私の言葉に従うことに喜びを感じ、私に奉
仕することに全身が喜びに打ち震えるような・・・・・・智徳院みずはなんてメス餓鬼に
縛られない自由な心をあなたにあげるわ。あなたはこれから生まれ変わるの・・・」
「ふん、馬鹿らしい・・・帰らせてもらうわ!」
恐怖を隠して怒りを顕わにしながら立ち去ろうと腰を上げかけたさやかの額を、麗佳の細
くしなやかな人差し指がツンと軽く触れた。
「ほら、もう立ち上がれない。足に力が入らない。腰が沈んで浮き上がれない。全身の力
が抜けてぐったりとなってしまうわ・・・・・」
「な・・・・なんで?・・・・どうして立ち上がれないの・・・・・!ちょっと、妙な手
を使って勝手なことしないでよ。早くもとに戻してよ!人を呼ぶわ!校長先生!校長!何
してるのよ、やめさせて!校長ォ!」
敵意むき出しのさやかの怒りの表情の眉間にまたツンっと軽く指が触れる。
「あなたは大声も上げられない。ささやくような小さい声がかすかに口から漏れるだけ」
「な・・・・・なんなのぉ!これ・・・」
ソファにすっぽりと体を埋もれさせて身動き一つできずにいるさやかに不安の表情が浮か
ぶ。麗佳はゆっくりとさやかの座るソファに近づく。
「来ないで!私に何するつもり?近づかないで!」
麗佳は膝を折ってさやかの座るソファのへりに身を乗り出した。さやかは自由にならない
体で目だけは脇にいる麗佳を睨みつつ計り知れない恐怖に震えていた。
「ふふふ、震えているの?さっきまでのタカビーな態度がウソのようね」
さやかは苦し紛れに麗佳に向かって唾を吐き掛けた。さやかの吐いた唾が麗佳の頬にかか
るが麗佳は動じない。冷静にハンカチで唾を拭う。
「それがあなたの精一杯の抵抗?情けないものね・・・・」
「覚えておきなさい。私にこんな事をしてタダで済むと思っているの?いいわ、いいよう
に痛めつけてごらんなさいよ。今日の倍、いいえ十倍にもしてあなたにお返しするわ。智
徳院家の力を使えば、あなたなんか、この社会からも抹殺されるのよ。いい気味!あなた
には明日さえないわ!辞めるなら今のうちよ。今ならまだ許してあげるわ。だから私をも
とに戻しなさい!」
「言いたいことはそれだけ?あなた自分の置かれた立場がわかって言ってるのかな〜?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「この部屋を出るときに、まだ同じセリフをあなたが言えたら、どんな仕返しでも受けて
あげるわよ。あなたが今と変わらない『あなた』だったらネ」
「どういうこと?」
「ねえ、蓮見先生・・・・いえ、「さやか」と呼ぼうか。さやかさん、あなたみずはさん
のことスキ?」
「何でそんなこと聞くの?なんで私があなたに答える必要があるワケ?」
「だめよ、聞くのは私、あなたは答えるだけ、質問は受け付けない。じゃあ質問を変えて
みようかな。ウフフ、さやかさんはバージン?」
「・・・・・・・・・・・」
「あはは、恐い顔して睨まないの!ちょっと失礼な質問かな。でも私があなたの体を触る
とあなたはとても素直に私の質問に答える、隠せやしない。さあ、教えてさやか・・・」
いたづらっぽい目つきで麗佳はソファに座るさやかの太腿をポンっと触った。
「わたしはバージンではありません。・・・・・・・・・えっ・・・・どうして・・」
さやかの顔に戸惑いの色が浮かぶ。なぜ自分がそんな質問に答えたかわからなかった。
「そうよね。そんなかわいいあなたが23にもなってバージンであるわけないか。じゃあ初体験はいつ?相手はだあれ?どこでロストバージンしたのかなぁ?」
「高1のとき・・・・学校に臨時コーチで来ていた付属大学の先輩に居残りで練習させら
れた後に・・・・プールサイドの休憩室で抱かれました。・・・・・・・・・・・・
・・・いやぁ!やめてよ!何なの?私どうしちゃったのぉーっ!」
「へぇ〜結構ドラマっチックな経験してるんだぁ、ひと夏の経験・・てヤツ?フフフ」
「もう許さないわよ。あとで私以上に辱めて弄んでやる!」
「はいはい、さやかさん。でも今はそんなこと言える立場じゃないんだから、もうちょっと泣いて許しを乞うとか、取り乱して全身を震わせるとかしたらどう?どうも、あなたは
まだ人を見下したような態度がぬけないのよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あなたは今まで何人の男と寝たのかしら?今付き合ってる彼氏とかいる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あら、やっぱりダンマリなのね。じゃあ、その大きい胸にチョン!っと」
「4人です。・・まだ大学に通ってる後輩のカレがいます・・・あと、ベイサイドフィットネスクラブでインストラクターをしているカレが・・・・・・・・チクショウ!」
「いけないわ、そんな汚い言葉使っちゃ・・・。しかも2人も彼氏がいるなんて。そういうのってフタマタって言わない?いけないコ、でもそういうのもアリなのかな。ベイサイ
ドフィットネスクラブって俳優やら一流スポーツ選手が多く会員になってる高いジムよね。羨ましいわ、私にその彼氏紹介してよ。年下の彼氏もいるんだからいいわよね。でもどん
なスタイルのセックスが好き?いつも彼とはどんなカッコでしてるのかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もう降参して自分から答えたら?ストレスたまるよ、我慢ばかりしてると!ウフフ」
麗佳は面白くって仕方がないようで笑いをかみ殺しながらさやかの肩をポンっと叩いた。
「私は・・普通の方がいいんだけどユウジはいつも私を上にして私が動くように言います。
ケンタロウは必ず私を四つんばいに立たせて後ろから立ったまま何度も貫くんです」
「まあ、過激、立ったままやるの!是非今度保健体育の授業でさやか先生に指導していた
だきたいわ。私の性教育と避妊の講義と併せて大講堂でやりましょう!さやか先生の実演
付きで!」
麗佳がその言葉を言った途端にさやかから再び唾を吐きかけられた。麗佳は気にせず拭う。
「あら、血が混じってる。悔しさのあまり噛み締めた歯グキから血が滲んだの?・・・。
いいわぁ、さやかのその悔しさが私の怒りを静める・・・・いいえ、踏みにじられた優紀や弘子の悔しさに比べたらまだまだ。でもあんまりいじめてばかりいても何だしね・・・」
「もう十分いじめたでしょう。私を自由にしてよ・・・」
「いいえ、まだよ。さやか、いつもどうやってあなたは彼を悦ばしてあげるのかなぁ?」
「そんなことばっかり聞いて、欲求不満なんじゃないのババア。少しはあんたも努力した
らよ、どうせ男なんていないんでしょ、アハハ」
「失礼ね、私まだ20代よ。悪態つく余裕があるなら抵抗してみなさいな。はい答えて」
さやかの鼻の頭をちょんと小突いた。苦悶の表情を浮べるさやかだが、抵抗はできない。
「私・・・あまり好きじゃないけど・・・・彼のモノに頬ずりしてあげて、なめてあげる
んです・・・・最初は舌先で・・・それから口で・・・・・ゆっくりと・・だんだん早く」
「それだけ?」
「大きく硬くなってきたら私のバストのあいだに挟んで・・・。初めてしてあげたときユ
ウジなんかとってもよろこんで、それだけでイっちゃいました。私、それも舐めてあげた
の・・・・・・・うぅぅ〜お願い・・もう許して・・・仕返しなんてしないから・・・・」
さやかの目に涙が浮かび始めた。自分の意志に反して自分と彼しか知らない事をすらすら
と喋らされてさやかの心が大きく動揺していた。
「ダメ・ダメ!今帰したら、あなたきっと私に復讐するわ。さて大事なコト聞かなきゃね。
さやかさん、あなたが智徳院みずはをかばうのはなぜ?」
麗佳はさやかの頬をチョンと触った。
「うっ・・・・あぅ・・・あ・・・・・」
「あら、抵抗するの?SEXの体位まで暴露したあなたが!」
声を詰まらせたさやかに麗佳はジャージの上から股間を愛撫した。さやかの声が漏れる。
「あぁ〜ん・・・・私はみずはお嬢様の家の関係者から話を持ちかけられて・・・・彼女
のガードとして雇われました。私はみずはお嬢様が不自由なく思いのまま生活ができるよ
うに、ふりかかる全ての不利不都合なことを排除していくことを使命づけられました。そ
のために私はあらゆる智徳院家の力を使うことを許されました。すべてにおいてみずはお
嬢様には絶対服従とし、直面した解決不可能な問題は智徳院家にすぐ連絡するんです。私のみずはお嬢さまへの庇護行動は教師という対面の立場上、生徒の前ではひた隠しにしておくことを命ぜられています。他の生徒達を警戒させないためです」
「ふぅ〜ん、それであなたには何かメリットがあるの」
「・・報酬が月50万、みずはお嬢様が高等部を卒業と同時に私は智徳ネットワークの希
望商社内の智徳院家出身重役の秘書ポストがあてがわれます。希望期間までの就労が約束
されて、退職時には通常の退職金に智徳院家への功労金が2000万加算支給されます」
「まぁ、4大出女子の就職難のこのご時世にすごいご褒美だこと。あなたは弘子や優紀の
心を金のために何のためらいもなく踏みにじったんだわ。それが大学出たての一介の新米
教師のやること?腐ってるわね」
「・・・ちくしょう!殺してやる、私がお前を殺すわ!忘れるもんか!」
「ほぉ〜ら、やっぱりウソ泣き!でも、あなた忘れるわ。あと1時間もしないうちにね」
「・・・・・・絶対忘れるもんか!」
「さて、じゃあ最初の質問に戻ろうかしら。さやかさん、あなたみずはさんのことスキ?」
麗佳は憎らしいほどの余裕の笑みを浮べてさやかのジャージの中へ手を滑り込ませる。ジャージの股間のあたりが麗佳の手の大きさに膨らんでは妖しく動き始めた。
「やめて!もういやぁっ!ああぁぁぁぁぁ〜あうん、あふぅ〜ん」
「はい、答えて、さやかちゃん。あなたの大事なみずはお嬢様、あなたはスキなのかな?」
「・・・・嫌いです・・・あん・・・大嫌い。生意気でヒトをアゴでつかって。自分の思
い通りにならないとすぐヒトのせいにしてブリブリ怒ります・・あぁん。やめてよぉ・・・
・・触んなぁ!」
「あなたもしぶといわねぇ・・・で、みずはっていつもそんなタカビーなの?」
「・・・・私にはまるで小間使いか奴隷にでも指図するように冷たく言い放ちます。高慢
で・・・末恐ろしいわ。でも水泳を教えていた中学の時はもっと素直だったのに・・・・
この学院に来た時から自分勝手さが極端にひどくなりました。うぅぅぅもうやめてぇ〜」
「まっ、聞きたいことは素直になったあなたが後でもっと詳しく教えてくれるでしょ。は
い『あそび』は、いよいよクライマックスですよ〜!」
麗佳はソファの後にしゃがみこんで、さやかと頭を並べると、さやかの顎をとって真正面
に直立で立ったままの校長へ視線を向けさせた。
「さやか、ほらご覧なさい。ここはユウジとセックスを楽しむいつもの場所よ。ほら、ユ
ウジはあなたの前に立って微笑んでる。ここは2人だけの世界。あなたたちだけの時間を
楽しむのよ。でもユウジは今日疲れていて元気がないようね。さあ、あなたがユウジを元
気にしてあげなきゃ。あなたもユウジに思いっきり貫かれたい気持ちでいっぱい。ほらこ
こも感じる。こっちはもうぐちゅぐちゅに濡れてきちゃった。早く入れて欲しいヨネぇ〜
さやか!さあ体は自由に動くわ。ユウジもあなたを待ってる。ユウジが言ってるわ『さや
かぁ、いつものしてくれよぉ』って、さあ行きなさい、さやか。思った通りに動きなさい」
ポンっとさやかの肩を叩くとみるみるうちにさやかの表情は濡れそぼったメスの表情に変
わっていった。ゆっくりと腰をあげるとソファの前で四つんばいになって猫のようにゆっ
くりと校長の足元へにじり寄った。
「ユウジィ〜どぉしたのォ?元気だしてよぉ、いつものしてあげるからぁ〜。ねっ、その
かわり私にもちゃんとシテよね、気持ちよくシテ・・・」
ひざまずいて校長のベルトを外し、ズボンとパンツを下ろす。麗佳がさやかに白状させた
通り、頬ずりをしてさやかは舌で上唇を舐めた後、ゆっくりと舌をちろちろと校長のもの
に這わせはじめた。やがて、さやかの顔が校長の股間に埋まる。
「校長、聞こえるわね。私が誰だかわかる?」
「私の大切な姫様・・・麗佳さまです」
「はい、そのとおり、座りなさい。今あなたに私からのご褒美をあげたのよ。よくご覧なさい。あなたの下半身を・・・」
「おおおおおお、おおおおおおおおお」
「気持ちいいわね、あなたは十分気に入ってるわ」
「はい・・はい・・・はいぃぃぃ〜」
「私に忠実であれば、これからももっともっと気持ちいいご褒美あげるわ」
「はい、逆らいません」
「『泣き虫こぶた』・・・この言葉を聞くとあなたは私の言うことを叶えずにはいられな
い。私の命令が出るまで直立不動をもって待機する。いいわね?」
「はい・・はい・・・・・」
「いいのよ、我慢しなくて。イキたければイキなさい」
「さやか、よく聞きなさい。今から私が手を叩くとあなたは意識だけが自分に戻る。でも
体はそのまま男への奉仕を続けるの。あなたは誰のモノをしゃぶっているか、すぐに分か
る。でも体はそのまま勝手に動いてるわ。私がいいというまでね」
パンっと小気味良い手の鳴る音が聞こえた。
(あれ?わたし・・・・何してるんだっけ?)
目の前に男のモノを見てさやかは事態が飲み込めずにいた。男の股間に近すぎて視界からは相手が誰であるか検討がつかない。部屋もやけに明るすぎた。
(ユウジ?ケンタロウ?・・・ここどこだっけ?あれ?あれあれ?)
「おおおおおおおおっ」
頭の上で男の喜悦の声が聞こえる、その声を出させているのは紛れもなくさやか自身の舌
戯だった。なおも激しく口を動かしていく。男の上体がソファでゆっくりと横たわってく
る。さやかの視界に入ってきたのはユウジでもなくケンタロウでもなく、さっきまで竹島
弘子の一件で智徳院家の威光を盾にさやかが圧力をかけていた校長のヨガリ顔だった。
「んーっ!んーっ!」
自由にならない口から悲鳴にも似たうめき声をあげる。
「気がついた?さやか。生徒達への性教育講義の前に校長先生を実験台に蓮見先生に予行
演習をしていただいてま〜す・・・なんてね」
校長の横たわるソファの縁に頬杖をついて麗佳の憎々しい微笑みが見えた。さやかの体は依然として校長への奉仕を続けている。麗佳の顔を見て全てを理解した。
(許さない、絶対許さない!)
睨みつけるような視線がさやかの目に浮かんだのを麗佳は見て取った。
「まだまだあなたから憎しみの強い意志を感じるわ。でもそれももう終る」
「あああおおおおお・・・・」
校長の雄たけびが響く。
「飲み干しなさい、さやか」
絶頂に達した校長を見て麗佳は再びさやかをソファに戻して体の自由を奪った。校長は服装を整えさせたあとソファに寝かせた。麗佳の指示一つですべてを忘れて部屋を出ていくようにしてある。
「言いたいことがあるなら聞いてあげるわ、さやか。言ってごらんなさい」
「私はあなたを許さない。必ずあなたを破滅させてやるっ」
「ふ〜っ、やっぱりあなた強い意志の持ち主だわ。精神的な苦痛にはかなりのレベルに堪えられるのね。でもそれだけに魅力的、その意志と体、これからは私のために役立ててね」
「なにふざけたことぬかしてんのよ!誰があんたの役になんか立つもんか!」
そう言うか言わないうちに麗佳の口がさやかの口を塞いだ。突然のキスにさやかは猛獣のように憎しみで麗佳の唇に噛みつこうと力を込めたが麗佳は気づいて唇を離した。
「なんのつもりっ!」
怒鳴りつけるさやかに見下したような冷たい微笑をして麗佳が更にささやく。
「さ・て・と、これからさやかさんにスペシャルな変心をとげてもらいましょう」
「変身?」
「さあ、さやか。これからあなたは生まれ変わるの。私があなたを新世界へ導いてあげる」
麗佳の顔がさやかの鼻先まで近づいた。
「私のキスを受けるとあなたは急に私への憎しみが消えていく。そしてだんだん私のキスが今までに経験したこともないような甘美な経験に変わってゆく。そしてあなたは私をだんだん愛するようになるわ・・・・心から・・・ね」
体の自由がきかないさやかの頬を両手でおさえて再びさやかの唇を奪う。
(絶対許さない・・・西ノ宮を絶対許さない・・・・許さない・・・ゆ・る・さ・・・)
気がつくと体がポカポカとあたたかく、体がまるで風船のように軽く思えた。やさしく抱きかかえられているような感覚がさやかを襲う。全身がとろけ出てしまうように思えた。
(なに?なんなの、この切ない気持ち・・・・・どうしちゃったの?わたし・・・どうしちゃったの私?・・・あぁん、なんなのこの感覚・・・感じちゃ〜うぅ・・)
「キスをされるたびに私の事が気になる、気になってたまらない。いとしく思う。とてもいとおしく思えてくる。私を愛しなさい、みずは以上に・・・ユウジ以上に・・・ケンタロウ以上に・・そして自分自身以上に・・・。私のキスは今までの誰とのセックスよりあなたの体を感じさせていく・・・・」
(ああああああああああ、やめて!やめてよぉ!・・・なんで私こんなに感じてるんだろ
う。このヒトのキス・・・とてもステキ・・・・・あぁん感じる・・感じちゃう・・・なんでぇ・・気持ちいい・・・欲しい・・・・もっと欲しい・・・もっともっと・・)
麗佳の口にさやかの舌が入ってきた。優しくやさしくさやかの唇が麗佳の唇を覆う。
「私はあなたにとって大切なかけがえのない存在、あなたは私を受け入れる。私のキスに
もう酔っている。もう私への憎しみなんて考えられない。あなたの全てが私のものよ。あ
なたはこれから私のためだけに尽くすの。そう心に決めたら全身に力が戻ってきた。私の
事を抱きしめたくて抱きしめたくて仕方がない。あなたの気持ちをすべて込めて私への思
いを態度で示すのよ」
そう言うと麗佳はまたさやかに唇を重ねる。ゆっくりと動き始めたさやかの両腕が麗佳の
背中へ回り抱きしめていく。さっきまでの自由にならない苦悶の声はいつのまにか甘い喘
ぎ声に変わっていった。表情は官能の悦びを表わしていく。
(ああああああ、私、この人から離れられない。離れたくない、一緒にいたい私の大切な
ヒト・・・・・・・。私の全てがこのヒトのもの・・スキ・・・・スキスキスキ・・・・。
あぁ〜ん、もう我慢できない・・・イカせて・・・・私をイカせてぇ〜)
麗佳の唇がさやかの唇を離れる。さやかは麗佳の背中に腕を廻して麗佳を放そうとしない。
「もっとぉ・・・・ねぇ・・・もっとぉ!やめちゃイヤ〜!くぅ〜ん」
さやかの視線が憎しみから思慕にも近い酔ったようなうっとりとした視線を麗佳に向け始
めた。表情は口元に笑みを浮べてあやされる赤ん坊のように歯をみせて微笑んでいる。彼
女が麗佳に堕とされて変心するまでさして時間もかからなかった、さやかの腕をほどく。
「さやか・・・・もうあなたは私のものよ」
「はい・・・・わたしはあなたのものです」
「うれしい?」
「はい・・・・・・とっても」
「私の言うことには素直に従う?」
「はい、勿論。従順に・・・。あなたのために尽くします」
「あなたは私の命令に従えばいいのよ」
「はい、命令には必ず従います」
「余計なことは考えない」
「考えません」
「常に私のことだけを考えなさい。私に尽くすことがあなたの悦びよ」
「はい、あなたに尽くすことが私の悦びです」
「智徳院家の事は忘れなさい。使命を放棄し私に全てを報告しなさい」
「智徳院家のことは忘れます」
「智徳院みずははあなたとは何の関係もない」
「智徳院みずはは私と何の関係もありません」
「あなたはみずはが大嫌い。みずはを憎みなさい」
「みずはが嫌い・・みずはが憎い」
「あなたは体育教師、蓮見さやか、西ノ宮麗佳の忠実なしもべ」
「わたしは体育教師、蓮見さやか、西ノ宮麗佳の忠実なしもべ」
「さやか・・・わたしがあなたをさやかと呼ぶとき、あなたはわたしのことを麗佳さまと
呼びなさい。あなたは私の忠実なしもべ、わかった?さやか」
「はい・・・麗佳さま・・・・」
「私があなたを蓮見先生と呼ぶときは、あなたは私のことを西ノ宮先生と呼ぶの。わかり
ました?蓮見先生?」
「はい、西ノ宮先生・・・・・・」
「上出来!これは音楽室の中の第1スタジオの鍵よ。さやかは今からそこへ行って部屋の
鍵を開けなさい。開くのを待っている生徒達がいるから中に導き入れてあげなさい」
「はい・・・麗佳さまの指示に従います」
(あぁ、嬉しい・・・麗佳さまが私に命令してくれるぅ〜)
「うれしいの?さやか・・」
「はい、麗佳さま。とっても・・・」
「じゃあ部屋を出ましょう」
「はい・・」
「校長、数を数えなさい、ゆっくりと。100まで数えたときあなたは自然と目が覚めて校長室へと戻っていく。ここでのことは何も覚えていない」
麗佳はさやかを伴って、廊下への扉を開ける。
「さぁてと・・・さやか、今からあなたは自分が思ったり考えたりしたこともすべて声に
出してしまう。でもあなたは自分が思っていることを口に出して言っている自覚はない。
いい?『心の扉を閉じなさい』、私がこの言葉を口にするまであなたはあなたの心の中を
すべて口に出して言う。でもわたしがこの扉を閉めた途端に今言ったことは忘れてしまう。
うふふ、さあ元のあなたなら私を殺したいほど憎んでいているはずよ。聞いてあげるわ、
あなたの心にね・・まだ私に抗う気持ちがあるかな〜?・・・結果は分かりきっているけ
どね・・・ウフフ。さっきの悪態ついたあなたとのギャップが見ものだわ!」
二人は廊下へと出た。麗佳は保健室の扉をパタンと閉めた。
「さやか、私のことが殺したいほど憎い?」
「いいえ、麗佳さま。私は心から麗佳さまのことを想っています」
「(麗佳さまは、なぜそんな恐ろしいことを聞くのだろう。私は間違っても麗佳さまを傷つけることなんて考えられない・・・・)」
さやかには紛れもなく麗佳への服従心が芽生えていた。麗佳の催眠にさやかは完全に獲り
込まれていた。
「ふふふ、ありがとう。さやか、気分はどう?」
「すばらしいです、最高です」
「(自分の生きる目的は、麗佳さまのために尽くすこと・・それが私の悦び・・・)」
「ふふ、これからは私のためにさやかは存在するのよ、わ・た・し・の・さ・や・か!」
「はい・・・よろこんで」
「(ああ、なんてすばらしい言葉の響きなんだろう・・私のさやか・・わたしのさやか・・わたしのさやか・・ふふふふ・・・うれしいぃ〜、わたしのさやか・・・ウフフ)」
「後から行くわ。先に行きなさい、さやか」
「はい・・麗佳さま」
「そうそう、さやか。わたしの大事にしていたペットが今日いじめられたの」
「えっ、誰です?生徒なら私が呼び出して・・いいえ職員でも私が許さないわ」
「(なんてこと、麗佳さまペットをいじめるなんて許さない。私が懲らしめてやる!)」
さやかの心の声をも聞きながら、麗佳は笑いが止まらないのを必死に我慢して押し殺す。
「私のペットはケガをしていて、もう死んでしまうかもしれないの」
「言って下さい。誰なんです!」
「(麗佳さま、私に言って、そんなひどいことをする奴に罰を与えろと・・)」
「ペットの名は竹島弘子、虐めたのは、智徳院みずは」
「えっ・・・・・・・・・・・」
「智徳院みずはよ」
さやかはみずはの名を聞くと一瞬声を失ったが、すぐに憎悪に燃えた鋭い目つきに変わり
表情も冷たい氷のようにのっぺりと無表情な顔つきが浮かんできた。
「私、その女、知ってます」
「そう、彼女ってあなたの何?」
「別に・・・・ただの生徒です。名家の出を笠に着てわがままし放題のクソ生意気な女で
す。超むかつく!」
「(あんな女をお金をもらって、かばってきたかと思うと自分に腹が立つわ!)」
「さやか・・・『心の扉を閉じなさい』、もう十分よ」
「・・・・?」
「なんでもない・・・ただの独り言。さあ行って!」
さやかは音楽室へ向かって廊下を歩いていった。
「うふふふ、さあIt’showtime!」
誇らしげにさやかの後ろ姿を見送る。
はっと思い出したように麗佳はトイレに駆け込んだ。急いでうがいを何度も繰り返す。
「ぺっぺっぺっ。あ〜失敗!さやかとキスしたから校長のモノと間接キスだわ。しかもあ
のコ舌まで入れて来るしぃ〜ぺぺぺぺぺ。きったないなあ〜、もう超最悪ぅ〜」
口をゆすぎ、鏡に映る自分を見つめる。
「さあ、お楽しみはこれからよ。智徳院みずは・・私のリベンジを受けてみなさい。誰一
人あなたに味方する者がいない中で、あなたはどんな態度にでるの?フフフ・・・」
鏡のむこうで麗佳が麗佳に微笑んだ。
竹島弘子のその後の容体はまだ不明だった・・・・・・・・・・。
To be continued.