休み時間の教室は、つかの間の息抜きを楽しむ生徒達の騒ぎ声で溢れかえっていた。
話題はとりとめもないテレビドラマのことや、キャンパス内の新しくできたカフェテリア
のこと。教室のあちらこちらに小島のように群がって時折思い出したように歓声が湧く。
1人だけ、窓側の一番後の席に座る少女は誰と交わることもなく教室の窓から流れる雲を
眺めていた。
「あーっ!もうっ!ヒマーッ!ヒマヒマヒマヒマヒマーったら、ヒマ!」
急にヒステリックに叫んで両手の握りこぶしを振り下ろして机をガンっと音の出るほど叩
いた。周囲が驚いて一瞬彼女に注目するが、関わるのを避けて再び顔をそらす。
「フン、友達でもないってコト?つれないなぁ」
頬杖をついてあたりを見渡す。彼女の声が聞こえていても目を合わせる者はいない。彼女
はクラス内でも浮いた存在だった。
その時、教室の扉が開いて数人の2年生が入って来る。
周囲を見回して目を留めた『窓側の一番後ろの席』に向かってわき目もふらずに進みだし
た。彼女たちの進む先にあったクラスの小島は蜘蛛の子を散らすように散っていく。
現れた2年生の顔を知らぬものはいなかった。誰もが関わりを避けて自分に累が及ばぬよ
うにとあとっずさった。
「神崎輝美だね?」
輝美は無視して頬杖のまま空を見ている。周囲は固唾を飲んで成りゆきを見守る。
「聞こえてるんでしょ!何とか言ったらどう?」
「『ナントカ』!」
「くっ!ざけんなよ。私たちが誰だか、わっかっていてそういう態度とってるの?」
そういって輝美の頬杖の腕を勢いよく払いのけた。緊張した空気が漂う中、それを見たク
ラスの数人の表情が険しくなる。席を立ちあがって輝美と2年生のやりとりを見守った。
クラスの中の雰囲気が輝美の頬杖が払いのけられた瞬間から変わったことを入って来た2
年生は気づかなかった。遠巻きに見ていた生徒がゆっくりと騒ぎの和に近づいて集まって
くる。
「知ってるよ、あんたが池田郁美、それに松永和泉、加藤由香、野々村深雪。そんなの生
徒ID証ぶらさげてんだから一目瞭然!聞くほうが馬鹿!」
輝美は続けて言った。
「・・・・・みんな、みずは様のいる水泳部の2年生、あはは、プールに泳ぐ金魚のフン
だね。あと1人、山元里香ってのがいたハズだけど」
「神崎!あんたが昨日不意打ちをしてケガさせたんでしょっ!」
4人が入れ替わりたちかわり話をつなげる。
「ボクが?、なんでよ?」
「なに笑ってんのよ、里香がお前にやられたって言ってんだよ。どうやったら頬骨にヒビ
が入るほど殴れるのか聞いてみたいと思って来たんだ」
「知らないよ。でも言葉づかい悪いね、松永センパイ・・・」
「ふざけんなよ、お前が里香を殴ったのを見たって何人も言ってるんだよ」
「だったら、どうなのさ。アイツ、ボクの態度が気に入らないってだけで突っかかってく
るんだもん。『ふざけんな!』はコッチのセリフさ、フフ」
「だったら、私たちと一緒に来てもらえる?」
「・・・・・・野々村センパイ、センパイは生徒会の副会長もやっている、ボクら1年に
も評判良くって憧れの『優しいお姉様』なのに、どうしてこの粗野なトリマキと一緒なの
か信じられないってみんな言ってるよ。どうして?是非聞きたいと思ってたんだ」
「答えになってないわ、神崎さん」
少し戸惑った表情を浮べて深雪が言った。大柄な体が少し小さく見えた。
「もし、ボクが『イヤだ』って言ったら?」
「私たちに逆らうっていうことは、みずは様に逆らうってことになるのよ」
誇らしげに郁美がフンっと鼻で笑う。
「みずは様に?まっさかぁ〜!」
驚いた表情をみせる輝美だったが、その顔から不敵な笑みは消えない。この事態を楽しん
でいるようだった。
「私たちがみずは様に今回のことを話せば、あなたなんか一瞬でこの学院からいられなく
なるから!逆らわない方が身のためね」ふてぶてしく郁美が言い放つ。
「アハハハハ、金魚のフンが、そろいも揃ってよく言うよ。ただみずはの影に隠れて、好
き放題やってるだけなのに。みずはがいなくちゃ、何もできやしないくせに。みずはがい
ない間に自分達だけで学院内で幅をきかせて楽しんでるんでしょ!」
「み、みずは様を呼び捨てにするなんて、なんてコなの!私たちは、みずは様の言わばボ
ディーガード的な存在なのよ。みずは様の盾となり、みずは様を侮辱する者には私たちが
制裁を加えるの、みずは様のために!」
「力(リキ)入れて熱弁ふるわない、ふるわない!焦ることないでしょ、図星なんだから。
みずはがいないところじゃ、あんたたちもみずはを呼び捨てにしてるんだよね、きっと。
みずはも大変だなぁ、こんなヤツラがトリマキだなんて・・・」
郁美の眉間に皺がよる、いまいましい下級生にあからさまな憎悪の表情を浮べた。
「みずは様が復学してきたら、ただじゃ済まないから!この教室にいる全員が証人よ!み
ずは様を冒涜したあなたに私たちが制裁を与えるわ、そして、里香の復讐もこめてねっ!」
郁美が思い切り右手を振り上げる。輝美は不敵にも微笑みながら席に座ったまま蔑むよう
な目で郁美を見上げる。一瞬、郁美はその目に射抜かれて動きを止めた。
「やれるものなら、やってみな。ボクを殴ることはできないよ、池田セ・ン・パ・イ!」
「くっ!」
憎々しげな輝美の態度に郁美は輝美の左頬めがけて力まかせに平手を振り下ろした。
“パシーン”っと大きな音が教室に響き渡る。
「な、なんで・・どうして・・?」
郁美の振り下ろした手は輝美の頬に当たることなく、飛び込んで来た生徒を殴り倒した。
勢いよく殴ったために、自分の長い髪が顔を隠すほど乱れたまま郁美はあっけにとられた。
その郁美の脇を摺り抜けるようにしてクラスの何人かがすぐさま輝美の周りを取り囲み、
まるで輝美をかばうように立ちはだかって敵意に充ちた冷たい視線で郁美達を睨みつけた。
「だから言ったでしょ、池田センパイ。ボクを殴ることはできないって」
人垣の壁の奥から輝美の声が聞こえた。
ゆっくりと輝美は席を立ち、足元に崩れるクラス委員長の星川陽子の手をとった。
「さすがは委員長、身を呈してクラスメートを守ったってとこかな」
「どうして、かばうの?こんなコ・・・クラスでだって浮いてるっていうじゃない」
「驚かない、驚かない。あなたたちが、みずはの盾だっていうなら、ここにいるクラスメ
ートは、全員ボクを守る盾。それも我が身を顧みない、鉄壁な兵隊・・・・そう、言わば
おもちゃの兵隊かな。そのスイッチはボクが誰かに襲われそうになると自動的に入るよう
にしてあるんだ。まだその与えた暗示の判断に個人差があるのが難点だけど・・・今ので全員スイッチオンになったようだね」
「神崎、あんた一体なに言ってるの?」
「さあ、みんなでそいつらを身動きとれないように押さえつけて椅子に座らせるんだ」
「ちょ・・・やぁ!ちょっとやめてよ!放して!」
「い、痛い、痛いったら。なんなのよ、あんたたち!」
深雪と郁美が抗う間もなく組み敷かれた。
「さわんなよ!・・・・なんなんだ、こいつら・・なんで殴られてもなんともないの?」
「放せ、放せったら・・・ちくしょう!」
由香と和泉が手を振り解いて力にまかせて殴り掛かってもクラスの生徒達は動揺すること
もなく2人を押さえつける。
「その言葉づかいの悪い2人の先輩は黒板の下に這いつくばらせて」
深雪と郁美は教室の一番後ろ、輝美の脇の椅子に押さえつけられ、和泉と由香は教室の最
前列の黒板の下に組み敷かれた。何人もの手が彼女たちを掴み、身動き一つとれなかった。
「神崎!覚えときなよ!絶対仕返ししてやるから!」
「い〜よ〜、松永・加藤の両センパイが仕返しを覚えていられればね。さて、その口の悪
い2人のセンパイ、少し意地悪しちゃおうかな。さあ、みんなでその2人を気持ちよくし
てあげな、服も脱がせちゃっていいからね、は〜いスタート!」
パンっと輝美は手を叩いた。合図と同時に押さえつけられた由香と和泉は制服を剥がされ
てゆく。いくつもの手が2人のカラダに触れていく。
「きゃぁっ!なにすんのよ!やめてよ!やめろって言ってんだろぉーっ!」
「放せ!さわんなぁ〜っ!」
床に大の字に押さえつけられた2人の肌が徐々にあらわになっていった。
「フフフフ、目一杯抵抗してごらんよ、お2人さん。できるものならね、ボクのクラスメ
ート達のペッティングは、すでにプロ並みに研ぎ澄まされてるよ、いいコーチがいてね」
「い、いやぁー!」
恐怖に駆られた郁美が手を振り解いて一目散に教室の扉に向かって走り出す。無表情の生
徒達の何本もの腕が、郁美の襟を捕まえて教室内に引き戻し、深雪の隣に座らせた。
「助けて!お願い、もうあなたには手を出さないから。私たちを教室から出して!」
「あれぇ?泣いてるの、池田先輩? 深雪先輩は声もでないのかな?」
「わ、悪かったわ、謝るから、里香のことはもう何にも言わない・・・・」
「ダ〜メ!せっかくボクのクラスに来たんじゃない、もう少しゆっくりしていきなよ。先
輩方のおかげでいいヒマつぶしができそうなんだもん」
「あなた、一体何なのよ。このコたちに何をしたの?」
「『何なのよ』はヒドいなぁ、そういう時は『何者なの?』とか言うんじゃないの?」
「・・・・・・・・」
「せっかくだから、面白いこと教えてあげる。じゃじゃ〜ん」
輝美は胸に下げたIDカードをケースから抜いて、郁美の目の前に見せびらかした。
「なによ、生徒証じゃない。しかも緑、あなた、ただの一般入学者じゃない。あなたさえ
エラそうにチャラチャラ校内を歩かなければ私たちだって・・・・・・・・」
「フフフ、どうしたの?続けなよ、それ以上言うとボクが怒ると思った?そうなんだって
ね、こんなの身分差別もいいとこだよ。見れば先輩方やクラスメートの大半はシルバーや
ブロンズのストライプのついた、いわゆる特別入学枠で入って来たいいトコ出のお嬢さま。
スポーツ特待生だって家柄が一般ピープルならグリーンだなんて可哀相だよね、でも池田
センパイはシルバーだね、すごいや。お金持ちのお嬢さま?」
「だから、なんなのよ!何が言いたいの?早く私たちを教室から解放なさい!」
「あれ?いきなり強気!可哀相に・・・・しみついちゃってるんだね、選民意識。なら、
池田センパイは、そのあたりから叩いていこうかな。ふふ、ボク、実はこのIDカードも
う1枚もってんの、ホラ!」
ラミネートケースの中に指を突っ込んで重ねたもう1枚のカードを輝美は郁美にかざす。
「なっ・・・なんで、なんで、あんたが・・・なんであんたなんかが、ゴールドなの!」
「へぇ〜、やっぱりコレすごいの?でも先輩に見て欲しいのはそこじゃないの、名前みて
よ、名前、苗字のところを、ね!」
目の前に突きつけられたカードに目を凝らし、その文字をみた瞬間、郁美は肩を震わせて
目を潤ませて輝美を見上げる、すでに声は涙声になっていた。
「なんで・・・・・どうして、どうしてあなたが『智徳院』家なの?」
「えっ・・・・」
押さえつけられている他の3人もその言葉を聞いて凍りついた。
「先輩方だけだよ、教えたの。ボク、みずはの妹なんだ」
「ウソ!ウソよ、みずは様は妹がいるなんてこと一言もおっしゃったことないもの」
「う〜ん、ホント言うとみずはの叔母になるんだろうけど。でも、まあ、いいじゃない。
これで先輩方はボクに逆らえなくなった、違う?」
「・・・・・・・・・・・」
「みずはが恐いんだよね、郁美。呼び捨てはイヤ?」
「い、いえ決して・・・・・・・・・そんなコト、あり・・ません」
「ハハハ、言葉使いがかわったね。さすが良家のお嬢さま!家柄やステータスには敏感な
のかな。さて、郁美、郁美ちゃん、今日の不始末どうつけるのかなぁ?」
「・・・・・・・・・・・・・・も、申し訳ございません。輝美様がみずは様の妹さまと
は知らずに大変失礼なことを、わたし・・・」
「アハハハ、『あんた』から輝美様にいきなり変更?でも感心、感心、みずはは注意した
ってボクのコト輝美様って言わなかったモンな。みずはは、郁美たちを『恐ろしさ』で服
従させていたんだろうけど。でも、ボクは違うよ、ボクはみんなを『力』と『快感』で服
従させるんだ」
輝美は向き直ってほとんど全裸に剥がされた由香と和泉に歩み寄っていた。すでに2人と
も声のトーンが落ちて喘ぎ声が漏れていた。
「あ・・・・ん・・・・やめ・・・て・・・・やめて・・・よぉ・・・ん・・あん」
「イ・・ヤ・・・・も・・う、やめ・・ろ・・・あん・・・ふぅ〜んぅっ・・」
すでに抵抗する気力も失せ、されるがままに体を投げ出している2人は、今までに体験し
たことのない感覚が全身を襲っているのか目が潤み虚空を見つめている。身動きのできな
い体を必死によじり、身悶えしていた。
「フフフ、どうですか?センパイ方、カラダをいじられるのって気持ちいいでショ?知っ
てた?この気持ち良さ。知らなかったら『ウブ』ってことだよね。ませた態度とったって
結局はオンナにもなってなかったの?、世間知らずなおバカさん・・・・・」
輝美は膝をついて和泉の脇に屈むと和泉の顎をとって自分に向かせた。しばらくのあいだ、
和泉の顔を両手で持つようにして和泉の目を貫くように瞳をあわせた。カラダに湧き起こ
った快感が続いているのか和泉の表情は呆けたように意志のないものになっていた。
「さあ、和泉。ボクの目を見るんだよ。
ボクの目だけを見るんだ。
ボクの声だけ聞けばいい。
もっともっと気持ち良くなりたかったらボクに委ねるんだ。
ココロもカラダも、カラダもココロも・・・・・」
「・・・・・・・・」
「そう、静かに聞くんだ、ボクの声を。ボクは智徳院輝美、みずは様の妹だよ。
和泉はみずは様には逆らえない、いや和泉はみずは様に従っていたんだよね。
だから、みずは様の妹であるボクにも和泉は素直に従うんだ。
さあ力をすぅーっと抜いてごらん、恐いことは何にもない。
みずはは恐かったかも知れないけれど、ボクは優しくしてあげる。
これから和泉はボクの言葉に耳を傾ける。
そうすれば気持ち良くなれるんだよ。
さぁ、力を抜いて、ボクの目を見るんだ、わかる?和泉・・・・・・どう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は・・・い・・・」
「フフフ、いいコだね。もう和泉はボクのいいなり、ボクの言う通りに動くおもちゃ。
そうココロに決めたら、和泉は気持ちがとても軽くなって気持ちイイ、ほらね。
体があたたかく包まれて、プールに浮いている感じだよ、気持ちいいよね、どう?」
「・・・・・・きもち・・・・いい・・・・」
「和泉を気持ち良くしてあげたのはボク、『輝実様』のおかげだよ、わかる?」
「・・・・・輝実様の・・お・・かげ・・・」
「和泉、和泉はもうボクの『モノ』になったんだ」
「・・・・・・輝実様のもの・・」
「そう、和泉のすべてがボクのもの」
「私の・・・・・すべてが・・・・・輝実様のもの・・・・」
「言ってごらん、ボクのためだけに働くと。ボクの言うことを必ずきくと。
ボクが和泉の主であると、和泉はボクの命令をきくおもちゃになったと」
「わたし・・・・・・・わたしは・・・・・・・・・」
「フン、まだ抵抗するかい?おもちゃは主人を裏切らない、おもちゃは主人に忠実。
和泉がボクのおもちゃで居続ける限り、和泉はいつでも気持ち良くなれる。
和泉は気持ち良くなりたい、ずっと気持ち良くなっていたい、だからボクの言うことには
ずっと従う・・・。言葉づかいにも気をつけるんだ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「気持ち良かったらいってごらん、もう和泉はボクから逃れることはできないよ」
言いながら輝美はクラスメートに目配せで合図を送る、クラスメートというおもちゃ達の
手が再び和泉の性感を刺激し始めた。
「あ〜んんんんん、いぃぃぃぃぃ〜。フゥ〜ンンンンンン」
「和泉、答えるんだ、『和泉は何?』」
「あぁあぁぁぁぁぁ〜ゆ、和泉・・・和泉は・・・おもちゃぁぁぁぁ」
「そう、和泉はおもちゃ、誰のおもちゃ?誰の言うことをきくの?」
「あふん、あぁぁ〜んんんん、和泉は輝美さ・・の・・・・輝美様の言うことをききます」
「そう、それが和泉の『ヨロコビ』・・・いい?それが和泉のヨロコビだよ!」
「はい・・・・・はぃぃぃぃぃ〜っ、そっ、それが和泉の悦びですっぅ!」
「ボクに従うんだ、わかったら頷け!」
「はい・・・・はいぃぃぃぃっ!・・あんんん・・・気持ちイイぃぃぃぃっ!」
全身を快感で身震いさせながら、踊り狂うかのようにバタバタと体をしならせた。
「さ・て・と、次は由香」
楽しげに輝美はつぶやいた。
2人は押し黙っていた。身動きとれずに椅子に押さえつけられた郁美と深雪はすでに会話
さえ忘れていた。椅子に隠れて見えない教室の黒板の下では和泉と由香がレイプされてい
る。輝美はまだその中にいて、全裸に剥がされた2人を弄んでいる−2人はそう認識して
いた。教室の生徒が全員輝美の言いなりだったのは、輝美が智徳院家の1人で、しかも、
みずはの妹だったからだと理解した。いや、そうでなければ理解できなかった。深雪のす
すり泣く声が耳について郁美は、はっと我に返った。
「深雪・・・・」
「わたしたちも・・・・・私たちも、きっとヒドいことされるんだわ」
「深雪!落ち着きなさいよ、時計を見てご覧なさい。あと2分で授業が始まる」
「えっ・・・授業?」
「そう、そうすれば先生が来るわ。いくらなんでももう止めるわよ、あのコだって先生に
こんな状況見られてタダで済むわけないもの。いくらみずは様の妹だからって由香と和泉
に、あんなコトしてるんだし・・、だから先生がくれば、このお仕置きもジ・エンド、ク
ラスが何て言ったって、私たちが半狂乱で泣き叫べばとりあえず今の危機から脱出できる」
「そ・・・・そうか。そうね、そうよね!」
「見て!このクラスの時間割、次の生物は早坂先生よ。私、さっき見かけたから絶対いる
わ!先生に助けてもらいましょう!」
「うん!」
深雪は泣き顔のまま、郁美に希望を見出されて立ち直った。その時、輝美の上体が並ぶ机の向こうからひょっこり飛び出した。同時に和泉と由香を辱めていた生徒達も身を起こし
た。和泉と由香の姿は2人からは見えなかった。郁美と深雪に緊張が走る。
「さ、これで、こっちはオワリっと。あとはそっちのセンパイ方だね」
その時2人の待ち焦がれていた始業のチャイムが鳴った。
「輝美さん、始業時間だわ。私たちを解放して」
郁美の声には待ち望んだ時間が来た安堵感と教師がくる安心感からの自信のようなものが
込められているようだった。
「ちょっと!さっき言ったばっかだろ!『輝美様』って・・・・解放?どうしてボクが解
放しなくちゃいけないの?」
「だって、授業が始まったのよ。もうすぐ先生も来るわ!」
「うん、来るよね。で・・・?」
「あなただって、こんな状況・・先生に見られたらまずいんじゃないの?」
「だから?」
「だったら、いますぐ私たちを解放しなさいよ!由香と和泉にも服を着せて」
その時、教室の扉が開いた。
教室の前に着席もせずに生徒達が佇んでこちらを無表情に見ている。
「どうしたの?チャイム鳴ったでしょ、席に着きなさい」
「みんな、先生が席につきなってサ」
教室の隅から輝美の声がした。生徒達は整然と席についた。だが、誰一人座ったまま正
面を向き、ピクリとも動かなかった。その時、早坂の目に飛び込んできたのは、教壇の床
に全裸に剥がれて息荒く悶えるように体をくねらせる2人の生徒の姿だった。
「あ、あなたたち・・・どうしたの一体何があったの?」
血相をかえる早坂に、全裸に剥がれた2人からも、教室からも応えはなかった。
2人の目はよどんだように潤んで早坂が何を言っているのかもわかってはいない。
「保健委員、保健委員は誰?すぐに西ノ宮先生を呼んできなさい!ちょっと、聞いてるの!保健委員は誰?誰でもいいわ、早く先生を呼んできて!」
「先生!真理子先生!助けて!助けて下さい。私たち、このクラスに休み時間中、ずっと
拉致されていたんです。神崎さんが、神崎さんがみんなを指図して、由香と和泉をそんな
ふうにしたんです」
郁美が教室の後ろで椅子に押さえつけられたまま大声で叫んだ。
「池田さん・・・・・あなたたちどうしてこのクラスに・・・」
真理子はここが1年生の教室であることを思い出した。信じられない姿を呈しているのは
2年生の4人だった。輝美は郁美の前に立っていた。数人の生徒だけ着席せず郁美と深雪
を押さえつけていた。誰の目からも輝美が事態の中心にいることが見てとれた。
「神崎さん、これは一体どういうこと?」
「別に、先生には関係ないよ」
輝美は真理子に背を向け、郁美と深雪を見据えていた。睨みつけられた郁美と深雪も輝美
から目をそらす事ができなかった。
「関係あるとか、ないとかじゃないでしょ!一体何があったの、説明しなさい!」
「おもちゃがボクに命令するな」
「なんですって?あなた、何を言ってるの。ちょっと、ちゃんとこっちを見て説明しなさ
いよ。いいわ、私がそっちへ行くから!」
真理子の方へ顔を向けもしない輝美に怒りを覚えながら足早に輝美に向かって歩き出した。
輝美は真理子に背を向けたまま、ぬっと右手を横に伸ばすとパチンっと指を3回鳴らした。
「動くな」
「えっ・・・・・な、なんなの?」
目前まで近づいた真理子はまるでビデオの再生を一時停止したかのようにフリーズした。
「どうしたの?先生、ボクはここだよ」
「・・・・・・・・・・・・どうして、足が・・・・体が動かない」
「先生の行動なんて、ボクの指3回鳴らすだけで止まっちゃうんだよ。肉体支配ってトコ」
「あなた・・・・私に一体何をしたの?すぐ元に戻しなさいっ!」
「言ったよね、ボクに命令するな」
輝美の居丈高な態度に触発されてか真理子の叱責は続いた。
「あなた、一体ナニサマのつもり?このコ達にこんな酷い乱暴して!」
「ウルサイよ、先生」
輝美は平手で真理子の頬を張った。パシーンっと音が響く。真理子の表情が凍った、痛み
がジーンと頬に残り耳鳴りをおぼえる。真理子は、すぐさま輝美に敵意に満ちた視線をお
くる、精一杯の抵抗だった。そんな真理子の表情を鼻で笑いながら、輝美は再び指を3回
鳴らした。
「おぉ、コワ!反抗的な目だね、気が強いって評判だもんね。痛い、先生?大丈夫だよ、
もう痛みはない、感じるんだ。すごく気持ちいいよ。殴られるたびに感じる・・・」
輝美は右手の平手打ちを右に左に真理子の頬をはたいていく。やがて真理子の敵意の視線
は消え甘い吐息が漏れ始めた。
「フフフフ、感じてるんでショ。早坂先生、指鳴らすだけで今度は先生の感覚を支配した」
「なっ、何を言ってるの!」真理子はうろたえた。
「気持ち良くって、もっと殴ってもらいたくって、みずから頬を差し出す・・・ふふ」
輝美が勢いよく右手を振り上げた時、真理子は進んで頬を出すように首を曲げ、安らかな
笑顔さえ浮かべて打たれるのを待っていた。
「ホラ、フフフフフ・・・・・その顔は、な〜んだ?」
「ウソよ!絶対認めない。あなたは友達や先生に暴力をふるって何が楽しいの?」
「楽しいよ、すっごくね。でも先生も素のままだとやっぱり強情なんだね。言ってたよ、
他の先生たちも早坂先生は気が強いのが珠にキズだって。黙っていればとてもかわいいの
にって。フフフ、知ってた?」
「うるさいわね!アンタなんかに言われたくないわよ!アンタこそ、その男みたいな言葉
使いを改めたらどう?すこしはオンナらしくなるかもよ」
「フフフ、好きだよ先生。素のままの先生って、ボクにいつも反抗的なんだもの。みずは
より、よっぽど苛めがいがあるのさ。みずはも・・・・・、みずはも、こんなふうに壊さ
れていったんだな、きっと。チクショウ、アイツの所為で・・・・」
「えっ、なんのコト?あなた一体何を言ってるの?」
「いいんだよ、先生は。さっき、先生がつまらないヤツの名前なんか出すから思い出しち
ゃったじゃないか」
「・・・・・・・・・・・?」
輝美は指をまた鳴らした。
「さあ、すこし自分の立場をわかってもらわなくちゃ。先生はボクにかまってもらえない
コトに自分でも抗いきれないほどの喪失感と疎外感、孤独に襲われてパニックになるよ」
「なんですって?馬鹿なこと言わないで!早くみんなを元に戻しなさい」
輝美がまた手を振り上げると、真理子は目を閉じて頬を差し出すようにして再び恍惚した
表情を浮べる。その表情を見定めて、フフンと輝美は手を止めた。
「フフン、殴るのや〜めた!もう先生に手を出すのは止めにしよう。授業でも何でも先生
すきにしてていいよ。ボク、もう先生のことシカトする」
輝美の言葉に真理子の表情は一瞬にして歪んだ。
「いやぁっ!どうして?どうして止めるの?ぶってよ、もっとぶってぇ!お願い、ねぇ、
シテよ、私を打ちのめして!・・・・・・・・えっ」
「あはははは、どうだい先生、今の気持ち。自分でも信じられないくらい変な気持ちにな
ったよねぇ〜。先生はボクのことを今日もさんざん叱ってくれたよね」
「ごめん、ゴメンナサイ、謝るから。謝ります、神崎さん、ゴメンナサイ」
「先生、マゾ?ぶたれて楽しいの?」
「っ・・・・・・・・・・」
「言ってごらんよ、言わなきゃ、かまってあげないよ。先生をシカトしようっと!」
「嬉しいのォ!あなたに・・あなたに殴られると感じちゃうの!だからぶって!わたしの
ことイジメテ!お願い!我慢できないのよ、自分で自分の気持ちが抑えられないぃぃっ!」
輝美は真理子の脇に立つとスカートの上からいやらしくヒップをなで上げた。
「あぅっ・・・・あ・・・・ふぅ〜ん・・・・」
恍惚とした表情を浮べる真理子の顔を郁美と深雪に見せるように真理子の顎を掴んで2人
の視線の方へ向かせた。
「ふふふ、簡単な感情の支配ってところかな。どう?お2人さん、これでも教室から出ら
れると思う?まあ、今でも無理だけどね。だってホラ、もう体の自由がきかないだろ」
押さえつけていた生徒達を顎で合図して下がらせる。それでも2人は身動きが取れなかっ
た。ぴったりと体が椅子に張りついてピクリとも動かなかった。
「さっき、ちょっとボクのチカラでひと睨みして、2人の体の自由を奪わせてもらったの。
でも声と感情はいじらないでいてあげてるけど、どう?」
「・・・・・・・・・・・・」
「うっ・・・ううううう」
無言の郁美の隣で深雪はとうとう我慢できずに泣き出した。
「深雪センパイ、泣かないで。でも、わかってくれた?ボクの『チカラ』。ボクは弱いヒ
トを苛めるヤツがキライ。だからボクを苛めようとしたセンパイ達を許さない。でも深雪
センパイは別、センパイはボクにとっても素敵なオネエだから」
「さあ、先生。先生の体はもう自由に動くよ。だから先生には、ここにいる池田郁美に指
導をして欲しいんだ」
「指導?・・・・・・指導って?・・・一体・・・・・・なにをすればいいの?」
「そう、いつもみんなにしてもらってる特別授業さ」
「特別授業なんて、私・・・・別に開いたことは・・・・」
「さあ、真理子、『いちご摘みの特別授業』だよ」
「!・・・あっ・・・」
真理子の意思ある表情が一瞬消し飛んだ。何度か瞬きをした後で妖しげなドロドロとした
含み笑いを口元に浮べた。ふぅ〜っと深くため息をついて清潔そうにセットされた髪を掻
きしだく。顎を突き出し、唇を濡らすようにゆっくりと舌を廻すように唇になぞった。両
腕を自分自身を抱きしめるように肩に廻したり、白衣をかけたスーツのボタンを外して薄
桃色のブラウスの上から大きな胸の膨らみを揉み上げた。体全体がくねくねとしならせて
身悶えしているようだった。ブラウスのボタンが外れてふくよかな胸を覆うブラジャーが
現われる。ズボンが床に落ちスラッっと伸びた細く締まった足がそのスカートを後ろへ
と蹴った。数分前の真理子とは明らかに変貌した別の女だった。眼差しは妖しく郁美と深
雪を値踏みするように上から下、下から上へと動いている、無言のまま。
「真理子先生・・・・・・・」
郁美と深雪は教師の変貌に絶望に近いものを覚えた。
「フフフフ、郁みん!郁みんにボクのおもちゃ『真理子』の洗礼を受けさせてもらオ!ク
ラスのみんなはもう終っちゃったから、次に誰をターゲットにしようか探しあぐねてたの。
いい時に4人が来てくれたってワケ!いいヒマつぶしさ、本人は授業をしたつもりでいつ
も教室を出て行くんだけどね、記憶の操作なんて、そう難しいことじゃないから」
「あなた・・・一体みんなに何をしたの?まさか催眠術・・・」
「ツツツツ、郁みん!違うでショ、口のキキカタ。いいんだよ、郁みんがそんなこと気に
しなくって。すぐに郁みんも自分自身のカラダでわかるヨ、きっと。今日、この教室を出
る時には、郁みんは真理子先生に辱められたことも忘れて今まで以上にみずはに忠誠を誓
うようになるよ。命すら顧みずにね、文字どおり『みずはの盾』になるんだ」
「イヤ、いやよ・・・・・あなたの思い通りになんか、なりたくない!」
「ふ〜ん、どうなるかね・・・・・・・和泉!由香!」
「・・・・・はい・・・」
「はい・・・・・・・・」
輝美の声にソックスに上履きだけの裸の2人が立ち上がった。恥ずかしげもなく体を隠そ
うともしない2人の目にはすでに意思の光はなかった。
「2人ともこっちへおいで、これから郁みんに先生の特別授業があるから2人はそれを手
伝うんだ。まず2人で郁みんの服を脱がせて」
「・・・・・はい、輝美様。郁美の制服を脱がせます」
「はい・・・輝美様。輝美様のおっしゃるとおりに・・・・・」
「和泉・・・・・由香・・・・・。イヤ、イヤぁ!目を覚まして、やめて!由香!」
「どうだい、2人とも言葉使いが直ったでしょ。ボクもヒトのこと言えるほどじゃないけ
ど、2人の言葉はひどすぎたもんね。きっと2人の変わりようにクラスのみんながびっく
りするよ。これは悪いこと?」
「・・・・・・・・・・・・」
裸の2人はまるで等身大の操り人形のように引きずられるように郁美に近づくとその手は
ゆっくりと郁美の制服にかかる。郁美の体は輝美の言葉に縛られて動けなかった。
「真理子、さあ今日、真理子が教えるのはこのコだよ。たっぷり可愛がってあげてね。」
「ん、ウフ、ウフフ、はいっ!輝美さまぁ」
「どうだい、気分は?ボクが真理子を目覚めさせてあげたんだよ」
「うれしいですぅ、わたし、今日は、今やっと自分に目覚めたみたい」
「そうさ、真理子はボクのためだけに存在するんだ。わかるよね、嬉しいだろ?」
「ハイっ!輝美様」
「じゃ、お願いね。郁美をしっかりと調教してよ」
「ハイ、輝美様。・・・・・・・・・・・・・・ンフフ、池田さ〜ん、ダメよ、輝美様に
刃向かうなんて、許されることじゃないわ。いけないコね、先生がたっぷり教えてあげる
わ、フフフ」
「い、いや・・・・・来ないで!先生来ないで!」
「フフフフ、池田さん、あなたオトコを知ってるの?いいえ、自分で体を触ったコトは?
大丈夫恐がらなくていいのよ、私が今日あなたをオトナのオンナに変えてあげるわ。あな
たは今日目覚めるのよ、その2人のお友達のように・・・・・・・」
「いや、いや!先生正気になって!先生はこの子に操られているの!自分をとりもどして」
「無駄だよ、郁みん。観念したら?そうだ、真理子、この子達には少し社会勉強をしても
らおう。今度一緒に『ナイトメア』に連れていくんだ」
「はい、輝美様」
「『ナイトメア』でちゃんと仕事ができるように、しっかりと真理子が仕込んでね」
「はい、輝美様・・・・・・よろこんで」
「郁みん、たっぷりと先生に教えてもらうんだよ。きっと気に入ってもらえる、この2人
のようにね。最後にボクが郁みんに仕上げをすると、郁みんはボクのために働くことだけ
を考える忠実なおもちゃになるのさ。今日で郁みんは、自分でなくなる。そのかわり、悩
みとか不安とか一切気にしなくてよくなる。フフフフ、幸せだね」
「いやぁぁあ!」
心の奥にまで入り込まれたような恐怖に郁美は悲鳴をあげた。教室の生徒達は整然と前を
むいて無表情だった。
郁美の悲鳴など気にもせず、輝美は脇の深雪に目をむけた。
「さて、野々村センパイ!」
「ひっ・・・・・・・・」
「怖がらないで、センパイには、あんなことは絶対しないよ」
「・・・・・・助けてくれるの?・・・・」
「センパイは、ちょっと特別。なんたって、ボク、センパイのこと大好きなんだモン。新
入生歓迎会でボクにはじめて話しかけてくれたの野々村センパイなの。学院のこと、寮のこと親切に教えてくれて、優しくって、上品で・・・・・・本当のお姉さんみたいに思え
た。センパイはアイツら3人にはない温かさがあったのに、なんであんなのとツルンでい
るのかボクでさえわかんないよ。だから、そのへんのこと、ゆっくり教えてもらいたいの。
センパイのこと、詳しく知っておかなきゃならないし、それにセンパイはコイツらより利
用価値があ・る・か・ら・ね」
輝美の声が急に凄んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「親につけてもらったその名前に感謝だね。いや、怨んだほうが正解かな。とにかくボク
はタイムリーにしてラッキーさ。センパイはまさにうってつけの人間だもの。センパイに
はこれからとっても重要な役どころをやってもらわなきゃならないから、もしかしたら死
んじゃうかもよ。アイツは、きっとボクが仕返しにくると思ってる。まともに当たるほど
ボクも馬鹿じゃないからね。あんな出来そこないにケガさせられたってつまんないしさ」
輝美の独り言は続いた。
「センパイはヒトを憎んだことってある?ボクなんか、人間できてないから始終怨みっぱ
なしサ。だから、クラスでも浮いちゃったのかなぁ?まぁ、どうでもいいけどね。だって
コイツら、もうボクのオモチャダもん、気に入らなきゃどうにだってできるしね。おもち
ゃにかまってもらうのも、なんだかワビシイしさ。だから、センパイ、ボクはセンパイの
ようなお姉さんがずっと欲しかったんだ。大好きだったお兄ちゃんは、もう・・・いない
し・・・・・・・・・・・。センパイ、立つんだ。立ってボクについてきて、これから大
事な役作りをするからね」
深雪の足は彼女の意に反して、輝美の声に命じられるままフラフラと立ち上がって歩き出
した。
「いや・・・・いやぁ、お願い許して!おねがぃーっ!」
「うるさいなぁ・・・・・もうセンパイは声が出ないよ。口にチャーック!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
口をパクパクさせても声がでない深雪の表情は悲壮な泣き顔へと変わる。
「離れた教室だから大丈夫だけど大声は授業の迷惑。それにこの学院は設備がいいから教
室もしっかり防音だっていうけどね。だから、この馬鹿なオンナがいくらイヤらしい声を
出そうが、悲鳴を上げたって誰も来やしないよ。黙ってついてきてね、深雪センパイ」
裸に剥かれて喘ぎ声をあげる郁美を、まるでヘビが絡み合うように成熟した体と途上の2
人の裸体がなめまわし、淫らに愛撫を続けている。その脇を摺り抜けるように2人は教室
を出た。足早に歩く輝美のあとを引きずられるようにフラフラと美雪が続いた。
院内は異様な雰囲気に包まれていた。職員は一様に表情を強張らせて足早に右往左往して
いる。処置室に大急ぎで運ばれるストレッチャーには血まみれの若い女医が乗せられてい
た。白衣は鮮血で染まっていた。
「すいません・・・・・す・・い・・ま・・せ・ん・・・・・」
「何て取り返しのつかんことをしでかしてくれたんだ、キミは!」
脇に付き添いながら同行する医師が真顔でキレかけていた。
「このまま見放したほうがどれだけ清々するか・・・・・お前の命でも償いきれん」
「そ、そん・・・な・・・お願いで・・す、助けて・・・助けてくだ・・・・さい、死ぬ
のはイヤ・・・・・・・まだ死にた・・くない・・・・・」
「無論、キミには今回の責任を一切合切被ってもらわねばならんからな、無駄死にはさせ
んよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「いった筈だぞ!あのクランケは非常に難しいんだ。治療経験の浅いお前が誰の許可をも
らって、あのクランケに近寄って、しかも診察したんだ!」
「すいません・・・・・なんか・・・・あのコが可哀相で・・・・私、見ていられなくて
・・・・自信あったんです、あのコのココロを開いてあげられる、私なら・・・・・・・
私ならって・・・・・・」
「思い込みも甚だしい、高い授業料だったな。逃げたクランケに、もしものことがあれば、
お前の医師の道どころか、お前の人生そのものが終りになるんだぞ」
「いやぁぁぁ、お願い・・・・・・先生・・・・・何とかしてくださぃぃ」
「本当に初期の催眠状態への導入だけしかしなかったろうな!」
「はい、はい、それだけです、本当に。そうしたら急に掴みかかってきて・・・・・いやぁっ、助けてーっ、殺さないで!やめてぇーっ」
女医はストレッチャーの上で息も絶え絶えにフラッシュバックからか、再びパニック状態
に陥った。医師にしがみついて懇願し、あとはもう言葉にならなかった。
院長室では、院長が落ち着かぬ様子で広い室内をウロウロしていた。
「院長、みずは様のお父様は仕事で来週月曜日まで日本にはお戻りにならないそうです」
受話器をおいて医局長が言った。
「そうか・・・・・」
「連絡をとりますか?」
「いや、待て、待つんだ」
医局の事務員がノックを慌ただしくして入って来た。
「ありました、中央監視室のモニターのビデオにはっきり残ってました。午後2時18分
、今から50分程前に。検査室1Aの廊下非常口から中庭に出て一般駐車場の方へ急ぎ足
で出ていってます。あそこは全くといっていいほど人気がありませんから・・・・」
「服装は?」
「は?」
「患者の服装は何だったかと聞いとるんだ!」
院長の語気が荒い。
「は、はい。みずは様は薄桃色のパジャマ姿のままです。裸足にスリッパで出たようです」
「今の情報を捜索にあたっている医局員全員に知らせるんだ!捜索範囲も駅やバス停まで
広げろ、行け!見つけ次第すぐ収容するんだ、手の空いた看護婦も動員しろ」
医局員は会釈も程々に部屋を飛び出していった。
「大丈夫ですよ、院長。そんなカッコじゃ、そうそう遠くへは行けません」
「もし見つからなかったり、事故にでも遭われたときには間違いなくお前と私の首が飛ぶ」
「・・・・・動員を増やすよう指示します」
顔色を変えて医局長は内線で指示をする。
「智徳院様が帰国される前には事態をなんとしてでも収拾し、何事もなかったように装わ
ねば、この病院の存在すら消し飛んでしまう・・・・」
うめく様に病院長は吐いた。
「今、家には家人は1人もいません、賄いのものだけが留守を守っています。お母様はだ
いぶ前に亡くなられていらっしゃるし、妹の輝美様は、みずは様と同じ高校の寮にお入り
になってるはずです」
「学校・・・医局長、学校だ。その学校の周りにも人をつかせるんだ」
「輝美様にもご一報をいれておいたほうが・・・・・」
「いや、それはいかん。そうなれば当然智徳院様の耳に届く、それはマズイ。彼女には
知らせず、もしみずは様を学校付近で見つけたら即収容して病院に連れ戻すんだ」
「わかりました、ただちに・・・」
医局長は部屋を出ていった。
「駆け出し医師の中途半端な催眠治療がばれたら、私は・・・・この病院は・・・」
院長は唇を噛んで肩を落した。
授業中の人気のない廊下を歩く2つの人影。足早に先を急いで歩く深雪のあとを輝美は後
ろ手に手を結んでスキップをしてついていく。口元からはハミングさえこぼれていた。ふ
っと深雪が立ち止まって振り返り輝美を見つめる。
「ん?・・・・・なに?」
「輝美ちゃん、んふふふ、わたしの輝美ちゃん」
両腕を大きくひろげて愛しげな表情で深雪は輝美を招き入れようとする。
意味ありげに含み笑いをうかべながら、一歩いっぽゆっくりと輝実は深雪に歩み寄る。
「あぁぁ〜、輝実ちゃん・・・・わたしのだけのものよ」
力一杯両手で抱きしめると深雪は輝実に頬擦りをした。
「深雪ネエがボクのものになった・・・・・・うれしいな」
「言って、もう一回言って」
「み・ゆ・き・ネェ!」
「あぁあぁあ、好き、大好きよ、輝美ちゃん、わたしの輝美ちゃん!わたしはずっとあな
たのモノよ。わたし、ずっとあなたを見守ってきたんだもの。あなたに害をなす人間はわ
たし絶対ゆるさない!」
「フフフ、カ・ン・ペ・キ!」
「えっ、なに?」
「なんでも・・・・、深雪センパイはボクの大事なオネエだもんね」
輝美の言葉に深雪はぎゅっとあらためて輝美を抱きしめた。
「そうよ、何でも言って。わたし、あなたの言うことなら何だってよろこんでするわ。あ
なたは、わたしの命なんだもの。あなたのコトを思わない時なんてないわ」
「あつつつ、痛い、痛いよ。そんなにキツく抱かないで。でも深雪ネエの胸、気持ちいい
なぁ・・・オンナのボクがいうのもなんだけど柔らかくて気持ちイイ」
「輝美ちゃんに気に入ってもらえてスゴクうれしい!わたしの全てがあなたのモノよ」
輝美を抱いたまままるで母親のように深雪は微笑んだ。
「ずっと、こうして甘えていたいな。でも・・・・・・」
「わかってるわ。もう言わないで、あなたの心を不安にさせるような存在、わたしが絶対、
絶対!許さない!憎らしい・・・・・いいえ、憎い、憎いわ、憎いの!」
「深雪ネエの顔コワイよ、すっごくコワイ」
「あっ・・・ごめんね。輝美ちゃん、わたしに全部まかせてあなたは安心してクラスのみ
んなと楽しく過ごしなさい、いい?」
「うん・・・・・・・」
「輝美ちゃんはヒトを憎んだことってある?わたしなんか人間ができてないから、あなた
のことを良く思わない人全てを始終怨みっぱなしなの。でもわたし何ともないわ、わたし
は、あなたのために働くのよ、あなたのためになれると、わたし・・・とてもうれしい」
「ボク、保健の西ノ宮が大キライ。アイツ、ボクのするコト邪魔するんだもん」
「なんてヤツ、教師のクセに・・!」
「殺しちゃってよ、学校に来れなくしちゃってよ。『命令』だよ」
「!!!、( メ イ レ イ ・・・・・・・)、はい・・・・・わたし野々村深雪は輝美
様のご命令に従う従順なおもちゃです。わたしは輝美様のために西ノ宮先生を殺します」
「いけね、うっかりキーワード言っちゃった。でも仕上がりは上々だね、さあ元の優しい
深雪ネエに戻ってボクを可愛がって!」
輝美は指を3回クリックして鳴らす。
「行こう、深雪ネエ」
「えぇ、輝美ちゃん。わたしの輝美ちゃん!」
「なんだか恥ずかしいけど、まっいいか・・・・・」
2人は輝美の教室に戻ってきた。教室の後の扉を開けると全裸の郁美たちが床に転がって
まるで3匹のヘビのように絡み合って悶えている。
「あ〜ん、もっとぉ〜もっとぉぉぉぉお」
「ねえ、私も、私にもぉ〜!いじってぇ〜、もっとしてぇ」
「アハ、アハハハハハ、いいっ、すっごくいいぃぃ。もっと、ねぇ〜もっと!」
「あはは、見る影ないね。いい気味、でもちょっとやり過ぎた? 真理子・・・・・」
股間の破瓜の血を見て輝美は苦笑した。
「申し訳ありません・・・・・」
真理子が全裸のまま淫妖に微笑みながら言った。
「別にいいよ、こんなヤツ。さて、さっさとコイツも「おもちゃ」にしよっと。みずはの
親衛隊はこれからはもっともっと過激にするんだ。でも深雪ネエはもうこんなヤツらと一
緒じゃなくていいからね。そうだ、ちょっとテスト!深雪ネエ、この馬鹿女もさっきまで
ボクを苛めようとしてたんだ。ひどいでしょ、お仕置きに顔を踏んでよ、できる?」
「えぇ、輝実ちゃんが喜んでくれるなら・・・・・・こう?」
深雪は上履きのまま平然と郁美の顔を煙草でも踏み消すように踏みにじった。郁美の表情
は呆けたまま、顔を踏みにじられても笑んでいるようだった。
「わたし、輝美ちゃんのことを苛める人は許さない」
「OK、OK。上出来だよ」
その時、輝美の携帯にメール着信の音が鳴った。
「やっと、メデゥーサも重い腰上げたかな。もう準備は万端整ったよ、アルテミスの最期
に向けて今日がスタートだね・・・・」
携帯を操作して送られて来たメッセージを読む。
「《ハトが逃げた M》」
「ハト?何それ・・・・・・・・・・」
輝実は首をかしげた。
To be Continued.