蜘蛛のノクターン

外伝 タランテラの章 Part1

作:おくとぱす さん

       外伝 タランテラの章 Part1 

          (一)

 蒸し暑い夏の夜、とある産婦人科病院に産声が響いた。
 だが産婦の苦しみは終わらなかった。
 少ししてもう一つ、別の産声が先の声に重なった。
 双子であった。
 それは問題ではない。
 双子であることは以前から判明していた。
 最初の子が分娩されてから次の子が頭をのぞかせるまで、およそ五十秒の間があった。それもごく当たり前のことだった。
 女の子の一卵性双生児はどちらも五体満足、母体も疲労していたが健康で、そちらにも問題はなかった。
 ――――問題と言えるほどのものではないのかもしれない。
 単純といえば単純なことである。
 最初の子と後の子の出産の間に、時計の針がわずかに動き、日付が変わった。
 それだけである。
 親がそのことを知り、先に生まれた方、まだ七月三十一日であるうちに生まれた方を文月、八月一日になって生まれた方を葉月と名付けた。
 安直と言えば安直であるが、名前として別段おかしなものでもなかったし、両親の顔立ちからいって双子の将来の美貌は約束されており、ちょっと変わった響きで、ふさわしい名前だと周囲も納得した。
 白河文月と葉月はこうして誕生した。

          ※

 双子は順調に育った。
 性格的に、双子は思いきり似たものになるか、全然正反対になるかのどちらかだという。
 白河姉妹の場合、極端なほどに似通っていた。
 実の親でさえ、どちらがどちらかわからなくなるほどだった。
 元々外見はうり二つ。
 その双子は、互いが自分のもう半分の体であることを本能的にわきまえているかのように、何から何まで同じように振る舞った。
 着るものも履くものも、おもちゃも絵本も、まったく同じものを与えられないと嫌がった。食べ物の量さえも同じでないと不満をあらわした。ひとつしかなければ迷わず半分に分けた。
 相手の姿が見えないと、すぐに不安がって泣き出した。
 同じものに興味を示し、同じことに同じだけ熱中した。
 仕草や表情までそろっていた。
 風邪を引くのも一緒だった。片方だけがお腹を壊したときは、もう片方もお腹が痛いと寝こんだ。
 親は、最初のうちこそ気にしないでいたが、次第に眉をひそめるようになった。幼稚園でもいつでも一緒で、園児たちにもそういうものとして受け入れられていると保母から聞かされて、このままでは自我がおかしな風に発達してしまうと考えた。
 あるとき、片方だけ髪を切って、もう片方は可愛らしく縛ってまとめてみた。双子はどちらも相手をみて面白そうにしていた。これならいいかと安心した次の日、引き出しから持ち出したハサミで双子はお互いの髪をめちゃくちゃに切り刻んでいた。短い方と同じにしようとしてうまくいかず、同じにしようと幼い手つきで悪戦苦闘した結果だった。
二人に違うデザインの服を並べ、好きな方を着なさいと促してみた。二人は顔を見合わせ、同じでないならいらないと言い、パンツ一枚で庭に飛び出していってしまった。

 小学校では別々のクラスになり、たちまち問題児扱いされた。
 最初のうちは、しょっちゅう教室を抜け出してもう片方の教室に行こうとした。担任も手を焼いたらしい。
 慣れてくる……というか、周囲の圧力に小学一年生が逆らえるはずもなく、泣く泣く別行動を受け入れさせられてしまった後では、双子の行動に変化があらわれた。
 授業が終わるとすかさず合流するのはもちろんだが、そこで教科書を開きノートを開き、相手が得た知識、先生の言葉、見聞きしたクラスメートの会話からその身振り手振りまでも教えあって、互いの持つ情報を同じにしようとしはじめた。
 当然、そういうことをしているので友達と遊ぶ暇はない。
 毎日予習復習をしているようなものなので、成績はよかった。通知表にはいい評価ばかりが並んだ。ただし、担任からの言葉として、もっと色んな友達と遊ぶようにした方がいいと、毎回書き加えられてもいた。

 ある時、自分の名前の由来を聞いてくるようにという宿題が出された。
「昔は七月のことをふづき、八月のことをはづきといいました。七月三十一日に生まれたから文月、八月に生まれたから葉月です」
 発表するなりみんなに笑われた。
 他の子がみな、健康に育ちますようにとか、立派な人間になりますようにとかいう願いがこめられた名前をつけられていることを初めて知った。
 別に気にするようなことではないはずだった。さしたる意味もなくつけられた名前などこの世にはごまんとある。気にしない人間もいくらでもいる。
 だが、双子はひどいショックを受けた。
 親は、自分たちの将来に関して、特に願うことがなかったのだ。
 オーバーだと大人ならば笑うことができただろう。しかし小学生にとってはそうはいかなかった。親の愛を疑う大事件だった。この年頃の子供にとって親ほど巨大なものはない。
 普通の子ならば家に帰って泣くなりなんなりして放出すればすむことだっただろう。けれども双子は互いの間で衝撃を受け渡しして角を丸め、まったく外に出すことなく心の奥底に埋めこんでしまった。
 親の愛というのは、所詮は子供に文月、葉月と名付ける程度のものにすぎない。
 二人はそのように認識した。
 誰もそのことには気づかなかった。

 やがて、双子は入れ替わることをおぼえた。
 容姿服装はおろか、仕草、知識もまったく変わらない二人を、どちらが文月でどちらが葉月か、誰も見分けられなかった。二人はひそかに相手のクラスに入りこみ、まったくそうと気づかれずに一日を終えた。
 入れ替わりを利用した悪戯もするようになった。最初は片方が道行く人に物を訊ねた後、もう片方がすぐに現れてまったく同じことを訊ね、おかしな顔をするのを楽しむぐらいだったが、次第にエスカレートしてきた。
 目をつけた相手を怒らせる。怒ってつっかかってくると逃げだし、一度角を曲がったあたりですぐに追いつかせる。相手の剣幕を見て泣きだし、あたし何もしてないのに、ひどいと散々に相手を責める。
 アリバイという言葉を知る前から、そういう概念を理解していた。片方がバス停の前などで可愛らしく遊んでいる間に、もう片方が通りすがりのサラリーマンに泥団子をぶつけて姿をくらます。追いかけてきた相手が人前にいる方を捕まえると、大声で泣く。そうすると大抵見ていた人たちがその子はずっとここにいたと証言してくれる。相手は居心地悪くなって逃げ出す。うまくいく時には警察に連れていかれることもあった。
 相手の迷惑などまったく気にすることはなかった。
 親にばれて、ひどく叱られた。
 その場ではしおらしく謝ったが、子供部屋に引きこもると、二人はまったく同時に軽蔑するように笑った。

          (二)

 二人は中学生になった。
 幼い頃からの周囲の期待通り、目をみはるような美少女に成長していた。
 髪はショートカットで統一し、活発に動き回って男子の視線を一身――――いや二身に集めていた。
 外見はもちろんのこと、立ち居振る舞いも他の少女たちとはまるで違っていた。
 きわめて大人びて見えた。
 無論それは何事にも距離を取り超然としている態度がそのように見えるだけだったのだが、中学生としては十分に異色だった。
 同年代の子たちが夢中になるようなこと、特に恋愛と人間関係にはまるきり関心を示さなかった。興味深く耳を澄ませることもあったが、あくまで恋愛に夢中になっている相手の態度に興味がありそれを観察しているだけで、恋愛そのものに関しては全然理解がなかった。
 それでも、つきあってくれと申し込む男子が現れた。
「「いいよ」」
 と、二人は声をそろえて答えた。
 好奇心はそれなりにあったのだ。いい機会だった。
 相手は喜んだ。しばらくの間は文字通りの両手に花状態で、皆にやっかまれていた。
 やがて、疲れ切った顔で言い出した。
 二対一というのはおかしい。どんな時でも二人一緒なんて変だ。僕は普通のつきあいがしたいんだ。
「「あっそ」」
 二人はあっさり相手を捨てた。
 自分の半身と他人と、どちらを取るか、考えるまでもなかったのだ。

          ※

 学年が上がった。
 昨年とは逆に、気になる男子があらわれた。
「あいつ、いいね」
「うん、いい」
 文月と葉月、どちらが言ってどちらが答えたという区別は意味がない。口にするのは単なる儀式のようなものだった。二人の会話は一つの魂の内なる思索と変わらない。一つの人格が二つの体を持っているのも同然なのだ。
 二人は今でも同じベッドに寝ていた。別々の部屋になるのはもちろん、二段ベッドでさえもひどく嫌がったので、親はやむなくセミダブルベッドを双子用に買い与えていた。
 二人は抱き合って額をくっつけていた。毎晩していることであったが、その日は雰囲気が違った。
 同じクラスの文月が、その男子の一日の振る舞いをこと細かに語って聞かせた。
「……格好よかったよ」
「そうだね」
 と、聞かされる葉月は見てきたように言う。
 双子は互いの目を見つめ合った。
「なんか、おかしいね」
「うん、熱いね」
「………………」
「………………」
 文月は葉月のパジャマのボタンを外し、葉月も文月のボタンに手をかけた。
 まだつつましやかなふくらみに二人同時に手を伸ばす。腕が斜めに交叉する。
「どきどきしてる」
「してる」
 指が同じタイミングで初々しい色の乳首に触れた。
「「あっ!」」
 甘い刺激をおぼえ、声を上げた。
「何、今の……?」
「すごい……気持ちいい……」
「ここ触ったせいかな……」
「ね、もう一回……」
 二つの手がそろそろと相手の胸へ伸びる。
「んっ……!」
「ぁはっ!」
「あ、あっ、これ、なに……?」
「固くなってる……気持ちいい!」
 二人は夢中になって尖った突起をいじり続けた。
 いつしか、固く抱き合い、乳房と乳房、乳首と乳首をこすり合わせていた。顔から首まで桜色に染め、息を荒げ、うるんだ目を見交わすと、どちらからともなく唇を近づけ、重ねた。
「ん……ふ……」
「んあ……お……」
 舌を差し入れると、向こうも差し入れてきて、自分は気持ちよく、相手も同じように感じていることが伝わってきて、気持ちよさが二重になって、ますます舌を激しく動かし、向こうも動かしてきて、我を忘れた。くちゅくちゅと唇の間で音が鳴った。
 体が熱く、手足がひくひく跳ね、自分で制御できなくなった。
 突然窓の外で猫が鳴き、二人はわれにかえった。
「………………」
「………………」
 それまでとは別の気恥ずかしさに赤面する。
「どうして……こんなことしちゃったんだろ……」
「これ……オナニーってやつだよね……」
 二人の脳裏にあったのは気になる男子の姿と今の行為への羞恥だけだった。相手に恥ずかしい様を見せたことは何とも思っていない。彼女たちにとってはこの場に“他人”は存在しない。一人部屋で自分の体を自分でいじった普通の少女と、精神的には何も違いはなかった。
「気持ちいいよね……」
「ちょっと怖いよね……」
「もう一回、やってみよう……」
「うん、やろう……」
 二人はパジャマの上下を脱いだ。
 ベッドの上にお尻をついて向かい合う。
 二人の裸はこれもまったく違いがない。どういうわけか、ほくろの位置まで一緒だ。
 手を伸ばし、互いに両方の乳首をつまんだ。
「「ん……!」」
 甘い悲鳴が重なる。
 すぐに二人は固く抱き合って横たわった。
 先ほどと同じように乳房をこすり合わせる。今度はもう少し落ちついていられた。つんとした快感と一緒に、腰のあたりに熱いものが満ちて、なんだかうずうずする。くっついている肌がいつもよりもしっとりと感じられて、これも快感。
 迷わずに手を伸ばした。パンティの中に指を忍ばせる。自分はおずおずと相手の秘裂を探り、相手の指がおずおずと自分の秘裂を探ってくる。
「きゃああっ!」
「ひああんっ!」
 信じられないほどの快感が襲ってきた。
「な、何、これ!」
「すごい!」
「もう一回!」
「うん、もう一回……!」
「ひああっ!」
「濡れてる……」
「何、こんなに……」
「恥ずかしいよ」
「だけど、いい!」
「うん、あっ、いい、気持ちいい!」
 二人は互いの下着を脱がせ合った。
「どうなってるの?」
 言った方が大きく足を開き、もう一方がのぞきこむ。
「へえ……なんか、変……グロい……」
「触ってみよっか」
 指を伸ばす。
「「あっ!」」
 触れられた方ばかりか、ふれた方も自分のものに触られたようにびくっと腰を振るわせた。
「気持ちいい! いいよ!」
「こう?」
「あっ、そ、そう、それ! ん、もうちょっとそっと、優しく!」
 あえいでいる方も手を相手の股間に伸ばす。自分がされているのとまったく同じ愛撫を相手に与える。
 二人の指はやがて同時に最も感じる肉芽を探り当てた。
「痛いっ!」
「……舐めてみよっか」
 好奇心と快感が羞恥心を押しのけた。二人は互いの股間に顔をうずめた。
 どちらも背中や足を痙攣させた。だががっしりと相手の腰をかかえこんだまま、夢中になって舌を上下させ続けた。稚拙だったが、敏感な突起にはそれで十分すぎるほどの刺激になった。
 やがて、一緒に高い声をあげて動かなくなった。
「…………すごい……」
「こんなにいいんだ……」
 ぼんやりと天井を見上げて言う。どちらも、ここまでしておきながらなお、意識の上ではオナニーをしたにすぎなかった。この後で二人を尋問したとして、他人といやらしいことをしたことがあるかと聞いたなら、どちらも心からいいえと答えるだろう。
 裸の体をくっつけあって、唇を重ねてから眠りについた。

           ※

 二人の夜のひそかな愉しみはエスカレートしていった。
 秘裂に深々と指を埋めてみた。鋭い痛みと共に血が流れた。しばらくはそのせいで気がひけたが、次に試した時には、クリトリスへの刺激にも負けない深い快感が得られた。
 男の“ペニス”というものを入れるともっと気持ちいいらしい。
 試してみたくなった。
 迷わず、気に入っている男の子を誘った。
 中学生が、誘惑に抵抗できるはずもなかった。
 初めてみる男のものを、二人は顔を並べてしげしげと観察した。
 美少女二人に見つめられて、あっという間に相手は興奮の極に達してしまった。苦いと二人は顔をしかめた。
 すぐに回復したものを、まずは文月が入れてみた。
「………………」
 にゅるんという感触は面白い。だけど、動きがなくて物足りない。
 相手の男の子は全身真っ赤にして緊張していて、またしてもあっという間に放出してしまった。裸の女体にまたがられ、これも裸の少女に見つめられるという状況に耐えられなかったのだ。
「「つまんないね」」
 相手への興味が失せ、捨てた。

 もうちょっと慣れた相手なら、違うかもしれない。違わなければおかしい。違うはず。二人は話し合い、論理的にそう結論づけた。
 学校に、割といい感じの男性教師がいた。幸い、独身だった。
 家をつきとめ押しかけた。酒を呑ませて、朦朧となった所を二人がかりで押し倒した。
 上着を脱がせた所で教師が切れた。野獣のようになって二人に襲いかかってきた。
 十分に満足した。やっぱり経験の差だった。上下に重なり唇を重ねる二人の後ろから何度も激しく突きこんできた。二人は自分のよがる顔を見つめながら絶頂に達した。
 ――――翌日、教師は奇妙な顔をしていた。
 探りを入れてきた内容を総合すると、どうやら双子のどちらか一人だけと関係を持ったのだと勘違いしているらしかった。
 その上で、どっちと関係したのかわからなくて、困っている。
(面白い)
 二人は相手が神経衰弱になるまでからかってやった。
 楽しかった。
 悪口を言って相手を泣かせるとかいうレベルではなく、徹底的に相手の精神を突き崩して屈服させる。――――そのことに異様なくらいの興奮をおぼえた。

 三年生になる頃から、二人の見た目に変化が現れた。
 文月はよく外に出て、活発に遊ぶようになった。
 葉月は屋内で静かに本を読んでいる姿が目立つようになった。
 やがて、葉月はメガネをかけた。
 周囲はようやく二人の見分けがつくようになって安堵した。
 それぞれに似たタイプの人間が集まってきた。――――双子は頭の回転が速く、存在感があって、どちらにしても自然と場の中心になることができた。
 まるきり違う取り巻きを作ってから、二人は綿密に目標を定めた。
“文月”が一人の女の子をいじめの標的に指名した。成績優秀な、ややおっとりした感じの、品のいい子だった。学級委員だった。
 相手はたちまちクラスで孤立し、やせこけた。
 そこへ“葉月”が接近した。
 決して文月からはいじめられることのない立場の人間に、相手は藁をもつかむようにしがみついてきた。
 十分に安心させ、気を許すように持ってゆき、親友と思わせて色々な秘密を聞き出した。
「へえ、あんた、そんなことしてたんだ」
“葉月”は度の入っていないメガネを外し、いきなり“文月”の貌になって言った。
「な……!」
 相手が衝撃を受けて奈落へ落ちてゆく様は実に面白かった。

          (三)

 二人は高陵学園に進学した。
 演技はますます巧みになっていた。
 スポーツ少女の“文月”と文学少女の“葉月”はあまり仲がよくなかった。一緒に登下校しているところはおろか、校内で会話さえほとんどしない。
 ――――周囲の誰も、二人が一日おきに入れ替わっているとは気がつかなかった。
 いい目標を葉月のクラスに発見した。
 小野寺智佳子。日本舞踊をやっている、正真正銘のお嬢様。
 半年ほどじっくり準備をした。文月はこのお嬢様学校にしては柄の悪い連中を仲間にした。葉月は智佳子の友達になった。
 計画を発動させた。

 文月がまず取り巻きを連れて智佳子にからんだ。
 体育館の裏、資材置き場に連れこむ。
 縛り上げ、口に雑巾を噛ませて声も出せないようにした。
「あんたのツラが気に入らないのよね」
 二時間にわたって延々と相手をいたぶった。直接体に傷をつけるような真似はしない。その分手口は陰湿で残虐になる。
 途中で取り巻きが色をなくし、泣きながら許してやってくれと言いはじめた。文月は何も言わずに相手の胸元に手を突っ込み、乳首を思い切りつねり上げた。泣き叫ぶ相手の頬を張り、目一杯に広げられた智佳子の秘所を舐めるように命令した。
 温室育ちの智佳子にとって、そこは汚ない場所だった。見られるだけでも恥ずかしくて我慢できないのに、触れられる、それも同じ女性に、顔見知りに、顔をつけられる、舐められる……。耐えきれず、嫌悪感のあまりに嘔吐した。
 ――――智佳子は髪が濡れている以外には外見上どこにも異常なく、しかし制服の下には下着をつけておらず、目つきはうつろ、よろけながら帰っていった。笑いながら見送る文月がもてあそぶカメラには、智佳子の秘所、あられもない姿がたっぷりと収められている。
「どうしたの?」
 しばらく休んだ智佳子が登校してくると、葉月は心から心配そうに声をかけた。智佳子は顔をそむけたが、これは違う人間なのだと思い直し、なんとか笑顔をつくった。
 放課後、文月が姿を見せる。
「お〜のでらさんっ!」
「あれ、文月、いつチカと仲良しになったの?」
「この間、ちょっとね」
 文月は蒼白になった智佳子の腕を取る。
 ……そしてまた、智佳子は閉じこめられ、暴虐の限りを尽くされた。
 今回はもう一人生け贄がいた。バイブを渡され、その子の処女を奪うように命令された。嫌がるとペットボトル三本分の水を無理矢理口に注ぎこまれ、異様に膨らんだ腹を蹴られた。上半身が薄い粥のような吐瀉物まみれになった智佳子は、ほとんど発狂したような顔でバイブを手にとった。
「後ろにもこれ、たっぷり入れてあげて」
 自分が施した浣腸で相手が崩壊するのを、智佳子は真正面から見させられた。

 智佳子は気丈だった。地獄から解放された後でなお、落ちこむばかりではいけない、何とかしなければと考えた。
 写真だけは取り返さないとならない。でないと、いつまでも脅されるばかりだ。写真さえなければ先生や親に訴えられる。
 自然、葉月の存在が大きくなった。
 双子の姉の正体をまったく知らないらしいメガネの少女に、智佳子はたくらみを持って近づいた。文月の日常を聞き出し、文月の部屋にあるカメラのことを探り出した。
『チカ、遊びに来ない? 今うち誰もいなくてさ、暇なんだ』
 日曜日、葉月から電話が来た。文月は友達と出かけているという。
 白河家に上がりこんだ智佳子は弾む心を抑えてチャンスをうかがう。葉月がお茶を入れると台所に立った隙に、隣の文月の部屋に忍びこむ。
 カメラと、写真部の機材で現像したらしい自分の写真が引き出しから見つかった。
「けっこう上手く撮れてるでしょ」
「ひっ!」
 音もなく背後に迫っていた葉月が、にっこりしながら智佳子の腕を逆にねじり上げる。
 そこへ別の足音。
「あら、チカじゃない。文月、誘うんだったらボクも呼んでよね」
 まったく同じメガネをかけた“葉月”が廊下を通り過ぎていった。
 ここまでだったら、智佳子はだまされたと思うだけだっただろう。
“文月”はメガネを外し、凶悪な顔で智佳子を縛り上げた。
「な〜にやってんのよ」
 メガネを外したもう一人が入ってくる。これも“文月”の貌。
(……え?)
 今まで“文月”をやっていた方がメガネをかけ、自分で縛ったはずの縄をほどいてくれた。それを新しく入ってきた“文月”が文句を言いながら縛り直す。
 智佳子はわけがわからなくなった。
 どちらかが凶悪な文月で、どちらかが助けてくれる葉月。一度できあがったその認識を、こういう場で急遽切り替えることは難しい。まして今の智佳子は救いの手を心から望んでおり、両方とも敵と考えるのは絶望的すぎるので無意識のうちに避けていた。
 どちらがどちらなのか、懸命に見分けようとする。
 その心の動きを読んで、双子はいいように智佳子を翻弄しながらいたぶってやった。
 夕刻に至り、智佳子の精神はついに限界を超えた。
「もうやめて……ゆるしてください…………なんでもいうこときくから、やめて…………」
 涙も鼻水も垂れ流しながら這いつくばった。
 双子は智佳子を優しくいたわり、シャワーを浴びさせてから、自分たちも裸になった。
 まともな思考力を失った智佳子は、四本の手に全身をまさぐられ、快感に溺れた。
「ああっ! いい、いいです、文月さま、葉月さま!」
「あんたはもうボクたちのもの。わかった?」
「はい……あ、あ、あっ、いっ、イクっ……!」
 次の日から、智佳子は双子のいうことを何でもきくようになった。

          ※

 悲鳴があがる。智佳子は命令されるままに、犠牲者の女の子を嬉々として縛り上げ、長定規で打っていた。赤い筋が白い背中に次々と刻まれる。智佳子は今や心から双子の奴隷に成り下がっている。
 その様を見物しながら双子は言い交わした。
「面白かったけどさあ……」
「面倒くさいよね……」
「もうちょっと簡単な方法ないかな」
 次のターゲットはもう決まっていた。
 有原悠華。生徒会副会長の二年生。長い髪をダサい三つ編みにして、色気も素っ気もない振る舞いを見せる堅物だが、美人だ。
 彼女をぜひともこの智佳子みたいに落としてやりたかったが、智佳子一人だけでもかなり手間がかかった。まして相手が上級生ともなると厄介だ。下級生にいたぶられているらしいという気配をにおわせただけで、二年生はおろか三年生も敵に回る。文月の取り巻きたちも上級生相手は躊躇する。学年の違いというのは大きいのだ。
“葉月”は悠華に近づくために生徒会に入っていたが、どのように落とすべきか方法が見つからなかった。
 手をこまねいているうちに時が流れ、受験のために引退した三年生に変わって悠華は生徒会長となった。

          (四)

 春が来て、双子は二年生になった。

 窓の外は暗い。風に吹き散らされた桜の花びらが月光を浴びて幻想的に舞っている。
 生徒会室に片割れが姿を見せた。
「葉月、帰ろ」
「じゃ、会長、ボク帰りますね」
「はい、お疲れさま」
「あれ、会長は?」
 悠華はむすっとした。
「まだ帰れないわ。このあと、新聞部のインタビューあるの」
「こんな時間に?」
「まったくよ」
 苛立たしげに唇を引き結ぶ。
「他にも三人インタビューしてくるからなんだそうだけど、困るわ。知ってる、二年一組に入ってきた関西の子。すごいやる気あるみたいで、今の新聞部、まるっきり前と違うんだそうよ」
「へえ。じゃ、失礼しまーっす!」

 春の夜風にかすかに桜の芳香が混じっている。
 校舎を出て葉月が振り仰ぐと、花びら乱舞の向こうに、丁度生徒会室の電気が消えたところだった。
 もう終わったのだろうか。それにしても早い。
「あっちは……音楽準備室だね。あの先生まだ残ってるんだ」
 いつもサングラスをかけているものすごい美貌の音楽教師を双子は思い浮かべた。ブラスバンドに入って近づこうかと考えたことがあったが、やめた。どうしてやめたのかと言われたら、気がのらなかったとしかいいようがない。楽器をやるのが面倒くさかったこともあるが、それ以上に、あの教師には近づかない方がいいような気がしたのだった。
「あ」
 忘れ物をした。文月を残し、葉月は生徒会室へ戻った。
生徒会室のドアには鍵がかかっている。当たり前だ。
 なのに中に人の気配があった。耳をつけてみると、ぼそぼそとささやくような声が聞こえた。
(?)
 好奇心がうずき、鍵を開けてみた。合い鍵は勝手に作ってある。夜に智佳子を連れこみ、ひそかにもてあそんだこともあった。
「………………!」
 空気が妙にねっとりとしている。甘酸っぱいようななまぐさいような、おかしなにおいがした。よく知っているにおいなのだが、それとこの生徒会室とが頭の中で結びつかない。
 暗い中に、人影がある。
 机について背を向け、体を揺すっている。
 三つ編みのシルエットは生徒会長の悠華だ。間違いない。
「会長……?」
 声をかけたが反応がない。首が前に垂れる。すぐにのけぞる。
 何をしているのだろうと、近寄った。
「あ……!」
 葉月の手から鞄が落ちた。
 有原悠華、あの堅物の生徒会長が……。
 パイプ椅子に浅く腰かけ、足を大きく広げている。
 制服をはだけ、ブラジャーをめくり、想像以上に豊かな両の乳房をさらけだしていた。
 左手はその乳房を激しく揉みしだいている。下から持ち上げ、形が変わるくらいにこね回し、指の股に突き出した乳首をはさんで刺激を与えている。
 右手はスカートの中に消えていた。微妙な、淫靡な粘着音が葉月の耳に流れこんでくる。
 能面みたいと揶揄される優等生の仮面は引き剥がされ、完全に快楽に支配された、忘我の表情に変わっていた。
 目は開いているが、葉月が側に来ても気がついた様子がない。恍惚として、涙が目尻からあふれている。
 絶え間なく突き上げてくる快楽のままによがり声をまき散らす……そんな感じにしきりに口を開閉させているのに、そこからは洩れてくるのは激しい呼吸音だけで、うなりのひとかけらも出てこない。
「な、何…………どうなってるの……?」
「おもろいやろ」
 いきなり背後から甲高い声がした。
 小学生のような小さな制服姿が後ろ手に扉を閉じ、鍵をかけた。
 髪を頭の両側にまとめた、小作りの可愛らしい顔かたち。大きな目が外からの光を受けてきらりと光った。
「心配せんでええ。インタビューのついでにちょいと遊んでみただけや」
「なにを…………したの……?」
「あ、申し遅れてすまへんな。うち、迫水千尋。ちーちゃんて呼んでな」
 にこっと笑って近づいてきた。異常な状況下なのにその笑顔はあくまで無邪気で、葉月は一瞬自分の方がおかしな反応をしているような気にさえなった。
「会長さんにな、催眠術かけたんや」
「さいみんじゅつ?」
「こんな感じにな。ほれ!」
 間近に来た千尋は、いきなり葉月の目の前に拳を突き出した。のけぞった眼前で指をばっと開く。傘が開く時の音が聞こえたのは錯覚だろうか。
「ほうら、よう見るんや。もうこの手から目が離せへん……」
 千尋の声が低くなっていった。深い響きに葉月はあっさりと引きこまれた。その前に悠華の痴態を見たことで、正常な判断力が失われてしまっている。千尋の声が自分の意志にとって代わってゆく。
「足はもう動かん。でも体は引っ張られるで……体が前に傾いて、この手に額がくっついてしまう…………ほうら、どんどん近づいてきた…………」
「あ……」
 一度のけぞったので体が自然に前に戻ろうとする。それを前にのめったように勘違いして、踏みとどまろうとした。すると背中に負担がかかり、辛くなってきて、体の方が意志を裏切って元に戻ってゆく。自然と「引っ張られる」という暗示が心にしみてくる。姿勢は元に戻ったのに暗示のままに本当に前のめりになって、千尋の手の平に向かって顔を突き出すようになり、首筋が突っ張って顎がぶるぶる震える。逃れられない。視線も千尋のちっちゃな手の平に吸いついたまま、どうやっても外せない。
 千尋から関西弁が消えた。
「さあ、くっつくよ…………くっついちゃったら、まぶたが閉じて、どうやっても開けられなくなるよ…………。ほら、つくよ、つくよ、くっつくよ……」
 一音一音が波のように脳を揺さぶる。妖しい声だった。容赦なく心を捕らえ深淵へひきずりこむ、恐ろしい力があった。
 葉月の額は言われるままに手の平にくっついた。
 するとまぶたが固く閉じてしまった。眉間にしわが寄り、ひくひく震える。
「とってもいい気持ちだよ…………この手から暖かいものがどんどん流れこんでいって……体中の力が抜ける。抜ける……」
 逆らおうとしたが、手も足も痺れたようになって動かせなかった。それどころか気持ちよくなってしまって、力を入れようという気になれない。
 鈴の音が鳴った。なんだろうとかすかに思う。軽やかなのにどこかに重い響きを含んでいて、余韻が体を包みこむよう。不思議な音だった。
「今から三つ数えてこの鈴を鳴らすよ。鈴の音を聞くと、もうどこにも力が入らなくなって、とてもいい気持ちに沈んでいくよ……」
 リ……ィン……。
 葉月から四肢を律する力が失われ、千尋にもたれかかるような形でくずおれた。

 千尋は葉月を床に横たえた。
 額の汗をぬぐう。
「まったく、いきなり入ってくるんやない。えらい焦ったで。本気だしてしもたやないか」
 葉月のメガネを外し、かけてみて度が入っていないことに首をかしげた。
 クラスと名前、役職を聞き出す。
「そっか、書記さんか。ま、一度に二人は面倒や、あんたはまた今度な。
 そんじゃ、ええか、今からうちが言うことをよおく聞きい。
 あんたは今うちの催眠術にかかっとる。めっちゃええ気持ちや。何も考えんでええ、幸せな気分や。いつでもこんな気持ちになりたいやろ。せやから、簡単にこの気分になれる魔法の言葉を教えたるで。『葉月はうちの大親友』ていうんや。わかるか、そう聞いたらいつでも、どこでもこんないい気持ちになれるんやで。ええな。わかったらそう言い」
「…………はい……」
「あんたはこの部屋であったことを全部忘れる。ここでは何もなかった。あんたは忘れ物を見つけて、すぐに部屋を出た」
「……はい……」
「よっしゃ」
 千尋は少し考えこんだ。
「それから、ちょいと聞くけど、あんたオナニーしたことあるか? うちに言うのは全然恥ずかしくないんやで。教えてえな」
「あるよ…………」
「そんならな、ええか、何もかも忘れて家に帰って、寝るときになったらな、ものすごくオナニーがしとうなる。体がうずうずしてもうて、どないしても我慢できへんようになる。そんときに自分の体を触ると、もうこれまで感じたこともないくらいに気持ちええ。わかるな。今晩、あんたは最高のオナニーをする。何回イッても終わらへん。何遍でも何遍でも、おかしゅうなるくらいにいき続ける。幸せやで。ほな、このこともきれいさっぱり忘れえ」
 千尋は十数えて鈴を鳴らした。葉月はうつろな目を開いて体を起こし、制服の埃を払い鞄を手にして生徒会室から出ていった。玄関で靴を履き替えると催眠から醒めることになっていた。

「さて、続きや。悠華はん、今めっちゃ幸せやろ。もっともっとええ感じにして、身も心もうちのものになってもらうで。……」
 今の一連の施術の間も悠華は快楽をむさぼり続けていた。目は白目をむき、口からよだれが糸をひき、椅子を濡らし足をつたい流れた愛液が床に水たまりを作っている。声が出せない暗示を与えられているが、そうでなければ絶叫していただろう。堅物の生徒会長はいまや淫楽の虜であった。
 服を脱がせようとした千尋の背後で、またしても扉が開いた。
「……?」
「またあんたか。いかんな、うちの腕錆びついてもうたかな」
 千尋は今出ていったばかりの“白河葉月”の姿を見て頭をかいた。
 つかつかと歩み寄り、目の前に手をかざす。
「メガネどしたん? まあええ、“葉月はうちの大親友”や。わかるな。そうら、ええ気持ちになってきたやろ……」
「何、それ?」
 平然と言われ、目を丸くする。
「ボクは文月だよ。あれ、会長なにやってんの? 何これ、変なにおい。まあいいや、葉月みなかった? いないね。おかしいな、どこいったんだろ? んじゃね」
「ち、ちょっと待ちい!」
 ようやく千尋は“白河シスターズ”に思い至った。転入間もない彼女はこの双子について知識が乏しかった。慌てて後を追う。
「はーづきっ!」
 廊下に出てみると、呼ぶ声はもう遠くに消えていた。
「あかん、あかんでえ!」

 文月は双子ならではの勘で、すぐに葉月を発見した。
「葉月」
 声をかけたが、歩みは止まらない。
「どしたの?」
 前に回ってみると、目つきが妙だ。ロボットのように目がくるんと文月に向く。
「……? ふづき…………だよね……」
「どうしたの!」
 肩をつかんで揺さぶる。葉月は揺さぶられるままに首をがくんがくんと揺らした。
「忘れ物取ってきただけだよ……」
「何かされたの? ……あ、さっきの! あれ、誰?」
「……何言ってんの、生徒会室には誰もいなかったよ……」
「いたじゃない! 会長と、変なちっこいの!」
「“ちっこいの”はないやろ」
 文月は振り向いた。
 千尋が困ったような顔でそこに立っている。
「ええと……?」
「ちょいと、ええか? んっと、こっちが文月はんやったか?」
「違うよ、文月はボクの方!」
「そかそか。んじゃ、葉月はんちょいと借りるで」
 千尋は葉月の腕を取り、横の教室に引っ張っていった。
「ちょっと!」
「大丈夫や、葉月はうちの大親友なんやから」
「え……?」
 先ほども聞いた言葉だ。
 毎日入れ替わっている双子に、片方しか知らない友人がいるはずない。
 だが葉月は唯々諾々と千尋に従うではないか。
「は……葉月?」
 千尋は葉月を椅子にかけさせた。
「あんたも座りい」
 向かい合わせに座るよう促してくる。やけに力のある声で、文月はつい言われる通りに腰かけてしまった。
 葉月は文月に顔を向けている。なのに文月を見ていない。暗い中、メガネの向こうの眼球には生気がまるでなく、ガラス玉のように見える。
 まったく表情の失われた、弛緩した片割れの姿にあっけにとられた。
「どうしちゃったんだよ」
「ちょいとな、うちの催眠術にかかってもろたんや」
「へっ? 催眠術?」
「葉月はんよう見てみい。幸せそうな顔してるやろ。今な、葉月はんは雲の上にふわふわ浮かんでるみたいな、めっちゃ幸せな気分になっとるんや。こんな風に――――ほれ!」
 千尋は文月の目の前にばっと手を開いてつきつけた。
「ほうら、体がもう動かへんやろ。この手を見るんや。じいっと見るんや。なんだかだらーんとしてくるやろ。もう目え離せへんやろ。じいっと見るんや。見るんや……」
 千尋の声のトーンが徐々に下がってくる。文月は体がずうんと重くなってゆくのに焦った。そこへ甲高い声が突き刺さる。
「目が閉じる!」
 手の平がぐんと近づいた。息をのみ、目を閉じてしまう。
「そうら、閉じてしもうた。もう開けられへんで」
 千尋は手の平を文月の額につけて押した。素早くもう片方の手で文月のうなじを押さえて支点にし、頭をゆっくり回しはじめた。回しながらあの魔力ある声で暗示を流しこんでゆく。
「ほうら、回る、回る、頭の中もぐるぐる回る、回って、回って、何も考えられなくなってくる……」
 鈴が数回鳴り、文月もたちまち深い催眠状態に引きこまれてしまった。
「……まったく、あんまり手間かけさせんといて、あんたら」
 千尋は文月の記憶も消し、少々腹立たしかったのか、こちらには“文月はうちの召使い”というキーワードを埋めこんだ。
「さあさあとっとと帰るんや。会長さんの次はあんたら可愛がっちゃるさかい」
 文月は言われるままに立ち上がった。

 目の前を葉月が歩いて行く。何かがおかしいような感じがしたが、何なのか全然わからず、まあいいかと思って葉月に続いた。葉月は何も言わない、こちらを見もしないが、文月にしても話しかける気にならなかったし、葉月のそういう態度を別に変だとも思わなかった。
 外靴に履き替えたところで、突然頭の中の雲が晴れたような感じがした。
「……?」
 確か、葉月が忘れ物して…………取りに戻って、その間ボクはここで待っていたはず……。
 うん、そうだ。自分はここで待っていたのだ。心がつじつまの合わない部分を勝手に修正してゆく。
 葉月が靴箱の向こうから姿を見せた。何か気がかりがあるかのようにしきりに眉根を寄せている。その気分はよくわかった。自分もちょっと変な感じがする。
「何もないよ」
「うん…………そうだね」
 二人は額を合わせた。別行動を取り、違う体験をした後はこうすることにしている。記憶は共有されないが、それだけで心が落ちつくのだ。
 家に帰り、部屋に引っこむと、毎晩通りその日あったことを伝え合った。
「………………」
「………………」
 途中で言葉がなくなった。
 わずかにずれた音波同士が干渉し合ってうなりを生ずるように、玄関でおぼえた違和感が気になって仕方がない。
 だがいくら考えても思いつくことはなかった。
「寝よ」
「うん」
 横になってすぐ、葉月が異様に震えはじめた。
 パジャマを脱ぎ捨て、文月に抱きついてくる。
 文月は目をみはった。生まれてこの方、何もかも一緒だった。初潮は同時に来た。生理の周期も同じ。片方だけが欲望にかられたことは一度もなかった。睡眠欲も食欲も同時。そしてもちろん性欲も。信じられなかった。大袈裟でなく、総毛立った。
「どうしたのさ! しっかりして!」
「だ、駄目、あっ、我慢できない! しよ! アソコ、触って! 舐めて! いじって! 早く!」
 性欲の塊と化した片割れに抱きしめられていると、葉月の感じている欲望が伝わってくるようで、文月もどうしようもなく昂ってきた。あるいは同じように感じなければならないと思いこんでいるせいだったのかもしれない。
 二人は体を重ねた。どろどろに溶けて混じりあった。
文月は絶頂に押し上げられ、満足して大の字になった。
 なのに、横で葉月がまだ指を使い続けている。自分と同じくイッたはずなのに、おさまらないようだ。
「も、もっと! ねえ、もっと!」
 文月の上にまたがり、口に秘所を押しつけてきた。おかしいと思いつつも半身を満足させる方を優先させ、舌を突き出して刺激してやる。葉月は腰にしがみつき、同じことをしようとしたが、与えられる快感があまりに強いのか、激しく震えるばかりで何もできない。愛液で文月の顔をべたべたに濡らし、悲鳴を親に聞かれないために文月の腿に噛みついてきた。
「痛い!」
「ご、ごめん…………で、でも、だけど!」
 上体をずらして布団を口に入れる。手も布団をつかみ、ぐしゃぐしゃになるまで強く握りしめた。
 明らかにおかしい。そう思いつつ、文月は高々と持ち上げられた葉月の秘所に後ろから口をつける。
 舌と指による刺激に葉月は信じられないくらいに悶え、いき続けた。ついには布団を食いちぎり、四肢を凄まじくひきつらせて失神した。
「………………葉月……」
 文月は青ざめた顔で片割れの裸身を見下ろした。別の人間がそこに横たわっているような気がした。――――本来それが正しいのだが、この双子の認識は違うことは再三語った通りである。
自分の秘所に手をもってゆく。
 ……濡れていた。今の葉月の悶えぶりに、頭の中が溶鉱炉のようになっていた。
 葉月はどうしてしまったのかといぶかしむよりも、葉月と同じように気持ちよくなりたいという欲望がはるかに強かった。葉月がこうなった以上、文月もよがらなければならないのだった。
「んっ!」
 我を忘れて指を使った。葉月の痴態が浮かぶ。文月は葉月に同化した。どのくらい興奮すればあのようなよがり方ができるのか。想像すると快感が倍加された。指が自分の指ではないようだった。すぐに絶頂に達した。信じられないほどの快感が灼熱の火砕流のように押し寄せてきた。視界が狭まり、意識が遠くなっていった。ほっとした。

          (五)

 二人は折り重なったまま目を覚ました。そろってくしゃみをした。
「「………………」」
 じっと見つめ合う。昨夜のことは夢のよう、だけど決して夢ではないことは、乾いて手や足に白くこびりついている尋常でない量の愛液と、くいちぎられた布団が証明している。文月の太腿には歯形が残っていた。
 脳裏に快感の残滓がまだこびりついていた。靄のかかったような目つきで唇を重ねた。舌を絡めるとまた濡れてきた。
「……変だよ」
「どうしちゃったんだろ」
 お互いが自分の分身であることを確かめるようにしっかりと抱き合う。そうしていると何もおかしいことはない気がしてくる。
「今日はボクが文月」
「うん、ボクが葉月だね」
 それは毎朝目を覚まして最初に確認することだった。
基本的には毎日入れ替わるが、場合によってはそのままの時もある。中学校での修学旅行の時がそうだった。
「シャワー浴びよ、葉月」
「そうだね、文月」
 この二人の自己認識は、あえていうなら「白河文月葉月」とでもいうべきもので、決めてから一時間ぐらいの間ひたすらに名を呼び合って確認しておかないと、自分がどちらなのかわからなくなってしまうのであった。
 パジャマを着直すと、“葉月”がメガネをかける。太腿に歯形のある、昨日“文月”だった方だ。
 二人は一緒にシャワーを浴びた。親はいつものことなので何も言わなかった。

 昼休み、“葉月”は図書室で有原悠華と会った。
 いつも仏頂面で頭を軽く下げるだけの悠華が、どうしたわけか親しげな微笑みを浮かべ、隣に座ってきた。
 それ以上何か話しかけてくるわけでもないのだが、やけにこちらをちらちらうかがってくる。目をやると、慌てて視線をあらぬ方へそらした。その首筋がほんのり赤くなっている。……
 やけに色っぽい。
 まるで恋人相手のような態度だ。
 こうなる理由がなにかあるのか。だが“昨日の葉月”からは何も聞いていない。
「ここにおったんか」
 小鳥がさえずるような可愛い声がかけられた。
 悠華が、待ち人来たれりとばかりに嬉々として立ち上がる。
「すまへんな、食堂で埋まってたんや。えらい混むんやなあ。ほな、行こか」
 立ち去りがてら、千尋は葉月に顔を寄せてきた。
「昨日の夜、恥ずかしいことしたやろ」
 目をみはる。どうして知っているのだろう?
「放課後、ちょいとつきあってえな」
 意味ありげな笑みを残す。悠華を連れて立ち去る千尋の後ろ姿を、葉月は唖然として見つめた。あんな小学生みたいな生徒、見たことがない。でも同じ学年だ。新年度からの転入生だろうか。いくら考えてもこれまで会った記憶がなかった。

 放課後になると、早速千尋が姿を見せた。
「あんた、どうしてあんなこと……!」
「まあ待ちいな。話は……そやな、こっち来てや」
 人通りの少ない階段、非常扉の陰に連れこまれる。
「昨日、燃えたやろ?」
 にやにやしながら言ってきた。
「な、何のことさ!」
「隠さんでもうちには全部わかっとる。めっちゃ気持ちよかったやろ? 何回ぐらいいきはった、ん?」
 葉月は真っ赤になる。羞恥半分、怒り半分。もしかしたらのぞいていたのだろうか? まさか! でも……。
「どうして知っとるのか不思議やろ。実はな…………秘密の話やさかい、耳貸しいな」
「……」
 葉月は唇を噛みしめながらも膝に手をついて身をかがめる。
「実は…………葉月はうちの大親友やねん」
「……はあ?」
「え?」
 何とも奇妙な顔で両者は見つめ合った。
「……だから、それが何なの? 大体、ボクとあんたがいつ仲良しになったのさ?」 
「な、なんで……?」
「アホらし。あんた関西人のくせにギャグ下手くそだね。もうちょい修行してきた方がいいよ」
「ギャグちゃうわ。……」
 千尋は考えこみ、それからはっとした。結んだ左右の髪がぴんと跳ね上がったように見えた。
「なあ、ちょっと。……“文月はうちの召使い”ちゃうか?」
 途端に“葉月”の意識が溶けた。組んでいた腕がほどけ、だらりと垂れ下がった。挑戦的に千尋を睨んでいた目つきから力が失われ、無表情になってふらふらする。
「やっぱりか。入れ替わってたんやな。全然気づかへんかったわ。見事や」
 千尋は一人うんうんうなずき、
「ほな、あんたの名前聞かせてえな」
「……白河……葉月……」
「文月やろ?」
「ボクは……葉月だよ…………」
「どういうこっちゃ?」

“葉月”の意識は元に戻った。周りには誰もいない。
 突然、使命感が心に沸き起こった。文月を生徒会室に連れていかなければならない。そして、有原会長と一緒に、暗くなるまで残っていなければならない。
 文月を探した。
 騒ぎが起こった。教師たちが走ってゆく。
 下の階で、階段の所に人垣ができていた。
 その中に文月と智佳子を見つけた。
「どうしたの?」
「ケンカだよ」
 伸び上がってみると、文月の取り巻き三人が折り重なって倒れ、足首や腕を押さえてひいひい言っていた。
「馬鹿だよ。一年になめられたくないっていきがって。あいつはやばいって何度も言ったのにさ」
 視線の方向を見ると、階段の上で一年生が男性教師に囲まれていた。背が高く、猫背だった。かなりの美人だが、斜にかまえ、ふてくされた顔をしている。勝手にあいつらが転んだだけだと言っていた。
「足払い一発で、他の二人をまきこんでごろごろごろ。あんな所でからんだあいつら、ほんとに救いようがないね。チカと仲良くなるためだけに仲間にしたんだし、もう手ぇ切るか」
「その方がいいよ。それよりさ……」
 葉月は文月の腕を引いた。

(………………)
 自分がどこにいて、何をしているのかわからない。
 何かを訊ねられ、何かを答えたような気がする。何かを言われ、忘れたようでもある。頭がぼんやりしてものを考えられない。それが心地よい。
 突然、意識が元に戻った。
「……え?」
「……あれ?」
 隣に、同じ顔があった。
 椅子に座っていた。生徒会室だ。天井には半分だけ点いた蛍光灯。窓にはカーテン、隙間にのぞく外は暗い。
「どや、気分は?」
 椅子に逆向きに腰かけた迫水千尋が目の前にいた。愛くるしい顔をわずかにかしげている。なんだか彼女とはずっと前からの親友だったような気がした。思わず微笑んだ。千尋も笑いかえしてきた。
「あんたら、おもろいわ」
 千尋はしみじみと口にした。
 あらためて、いつの間にここに来たのか気になった。どうして“文月”が一緒にいるのだろう。いつ並んで座ったのか、こんな時間まで何をしていたのか、わからない。だけどあまり気にならないのも不思議だ。千尋の大きな目を見ていると、どうでもいいことに思えてくる。
「あんたら、うちの催眠術にかかってたんや」
「そうなの?」
「へえ」
 顔を見合わせた。どこかにおかしなところはないか、丹念に観察しあう。その様を千尋は興味深げに見つめていた。
「まだかかったまんまなんやで。そやからうちの言うことはなんでもきいてしまう。どないなことでもしてしまう。裸になれ言うたら手が勝手に動き出す。そこん窓から飛び降りい言うたらにこにこして飛び降りるんやで。
 ……どや、怖あないか」
「怖い?」
「そう?」
「信じてへんな。ほな、後ろ向いてみい。絶対に振り向けへんで」
 二人はやろうとして、どうしてもできなかった。振り向いてはいけないという気持ちが一気に大きくなって、逆らおうとすると吐き気さえした。
「どや。手も足も動かせへんねんで。やってみい。椅子から立つこともできんから」
 本当だった。二人は椅子の上で真っ赤になって力んだが、体が椅子にへばりついたようになっていた。
「あんたらの体はうちのものや。これでもまだ平気か?」
「……すごいね」
「不思議だね」
 二人が言うと千尋はますます感じ入った顔になった。
 ――――二人には嘘がつけなくなるという暗示が与えられていた。心に思ったことがすぐにそのまま口に出てくるようにされているのである。
 千尋は手を叩いた。
「ほれ、こっちきいや」
二人の後ろでわんと声がした。
 下着姿、四つんばいで千尋の元にすりよってきたのは……堅物の生徒会長、有原悠華。お尻をふりふり、舌を突き出してはあはあ言っている。
「これ、うちのペットや。催眠術でペットにした。こないなこともできるんや。こいつには何でもさせられる。……そやな」
 千尋は悠華の額に手を当て、鈴を鳴らした。
「人間に戻る。戻る…………。
 あんたは今砂漠におる。右も左も、どっちを向いても砂だらけ。めちゃくちゃ暑い。肌がじりじり焼けてくる。喉が乾いて仕方ない。このままやったら死んでまう。水が欲しい。水、水……水のことしか考えられへん……」
 悠華は床に倒れ、喉を押さえてぜいぜい言い出した。血走った目になっていた。心なしか、肌がかさかさになったようだ。
 千尋が差し招くと、今ひとつの気配が背後で動いた。
 小野寺智佳子が、人形のような顔つきになって千尋の所に歩いてきた。
「パンツ脱いで、スカートめくりい。……」
 智佳子はうつろな目つきのまま言われた通りにする。陰毛は綺麗に剃られている。先日双子が遊んだ名残だ。
「もちっと足開いて。そうや、そのまま。もう体はぴくりとも動かせへんで。
 あんたはこれからだんだんおしっこしとうなってくる。肩を叩くとしとうなってきて、我慢できんようになる。もう一回肩叩いたらな、どないにこらえようとしてもこられられんくなって、洩らしてしまうんや。ええな。んじゃ、まずひとつ、ほれ」
 それから悠華を抱え起こした。
「さあ、水をあげるで。まだ死んじゃあかん。もうちっとの辛抱や、頑張りい。……」
千尋の導くままに、悠華は智佳子の股間に顔をおしつけた。
「ほれ!」
 智佳子の肩を叩く。顔中をしかめて尿意に耐えていた智佳子は、数秒抵抗したが結局逆らえず、貯めていたものをほとばしらせた。
 悠華が至福の表情で喉を鳴らす。下唇をつたったしずくが下着に黄ばんだしみを作った。アンモニア臭が漂う。
「すごい、幸せや。生き返る。一滴残さず飲まなあかん。こぼすなんてもったいない。次いつ飲めるかわからんのや。全部飲んで、きれいに最後まで舐めなあかんで」
 悠華はうっとりとして飲み続け、途切れると舌を突き出して残りの一滴までも舐め取ろうとした。
 千尋は今度は智佳子の耳に暗示を吹きこむ。
「すっきりすると、今度はおかしな気分になってくる。大事なとこを舐められとると、気持ちようなってくるんや」
 智佳子を椅子に座らせ、足を大きく開かせる。悠華がまだ乾いた顔つきでしがみついてくる。千尋がささやく。智佳子の秘所は悠華にとって果物。皮をむいて、丁寧に舐めていると、とっても甘くておいしい汁がにじみ出てくる。……
秘所を熱心にいじくられ、智佳子の体が痙攣しはじめた。
「ああう、あう、あひ、はあっ!」
「次に鈴鳴らすとな、あんたの意識は元に戻る。でも心はうちのもののまんま、何でもうちの言うとおりになる。ほな」
 リ……ィン……と鈴が鳴った。
 智佳子は目をしばたたき、それから自分の現状に気がついて驚愕した。
「な、何、これ!」
 錯乱した顔で周囲を見回し、“主人”文月葉月に気づいて救いを求めてくる。
「何ですか、これ! やめて、やめさせてください! お願い!」
「それは無理や。大体、やめてほしいんか? ほうら、めっちゃ感じてきとるやろ」
 千尋に額をつつかれると、たちまち智佳子の首から上がゆでられたように真っ赤に変わった。反り返って突き出した制服の胸が、ブラジャー越しなのにつんと突き出してきたのがわかる。
「ほうら、気持ちええ。こんなの初めてやろ。ちょびっと触れられただけで、体中にびりびり電気がはしるみたいや。たまらん。そやろ?」
「く…………ぅあっ! はああっ、きゃあんっ!」
 智佳子の股間、悠華の口元でぺちゃぺちゃと音が鳴りだした。
 悠華が恍惚とした吐息を洩らす。智佳子の声がオクターブ上がる。
「あんたうるさいわ。ほれ、これでもう声が出せへんようになった。どないに感じても少しも声は出えへん。ただな、イク時だけ、イクッて小さく言えるんや」
 千尋は双子に向き直った。
「……で、どないや? うちの指ひとつであんたらもこないになってまうんやで。正直に言いや、怖いやろ?」
「……ちょっとは。でも……」
「面白い!」
「うん!」
「智佳子落とすのにあんなに苦労したのに、これなら簡単だ!」
「会長狙ってたんだけど、いいな! まぜて!」
「色んな子に恥ずかしいことさせてみたい!」
「ボクたちのアソコ舐めさせてみたい!」
 堰を切ったように二人は欲望を吐き出し続けた。途中でおかしいと気がついたが、止まらなかった。
「そっか。ようわかった。どうやらあんたらとは趣味があいそうやな。うちもな、一人じゃ何かとやりにくいんで、仲間欲しかったんや。あんたら、おもろいし、ええ感じやわ」
 千尋は手を伸ばしてきて文月の額に触れた。
「目え閉じて。体が動くようになる。……」
 葉月にも同じことをする。鈴が鳴り、二人はそろって椅子から飛び上がった。
「「………………?」」
 二人に千尋が手をさしのべてきた。
 その瞬間、椅子の智佳子がくぐもった声で
「イクッ!」
 と叫んだ。広げた太腿、さらけ出されている腹が大きく波打ち、顎をのけぞらせてぐったりとなった。それまで自分でめくり上げていたスカートが手から離れ、悠華にふわりとかぶさった。
「……ああいうこと、ボクにもできるようになるの?」
「練習すればな。うちが教えたるさかい、頑張りや」
「色々教えてね!」
 双子は目を輝かせ、文月は千尋の右手、葉月は左手を握った。
「それじゃ、二人とも、あたしの目を見て……」
 関西弁の消えた声で千尋は言った。
「お近づきのしるしに、ちょっとしたプレゼント。握っているその手が最高の性感帯になる。ほうら、気持ちよくなる。ものすごく感じてきて、立っていられなくなる。あっという間にイッちゃうよ……」
「ああああっ!」
「ひいいいっ!」
 千尋の手から強烈な電流のようなものが流れこんできて、双子の体内で荒れ狂った。双子は手を握ったままへたりこみ、腰をのたうたせて絶頂に達した。
「ま、今後ともよろしゅうな」
 双子はその声を夢心地のうちに聞いた。    


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