魔女のマリオネット

第2話「華麗なるリボンの舞い」

作:びーろく さん

金曜日の夜、OLの仲良しコンビ桐生恵と岡崎美由紀は後輩の宮島由香里を連れてショー
パブ「グリフォン」に飲みに来ていた。
 
由香里は高卒1年目の新人でクリクリとした大きな瞳の童顔と明るい言動で課内ではマス
コットのように皆に可愛がられていた。れっきとした未成年だがこの店でカクテルを飲ん
でいてもそれを咎めるものは当然ながらいない。今日は私服のマリアもボックスに混ざり
女性四人おしゃべりに興じていた。
 
 
「今日はマリアさんのマジックショーは無いんですか。」

「ええ。毎日ステージに立つわけじゃないのよ。」

「あー残念だぁ。マリアさんのマジック凄いのに。由香里ちゃんも見たかったでしょう。」

「うん。恵さんや美由紀さんがよく話してくれるから、ぜひ一度見たいなと思ってたんで
すけど。」

「それはどうもありがとう。それじゃ今日は特別に三人だけに魔法を見せてあげる。これ
なーんだ。」
 
マリアはポケットから銀色のペンダントを取り出し三人に見せた。

「先に付いているのは水晶かな。マリアさん、これがどうかなるんですか?」

「フフフ、さ・い・み・ん・じ・ゅ・つ。深ーく深ーくかけてあげる。とってもいい気持
ちになれるわよ。」

「えーマリアさん、催眠術なんて出来るんですかー。」

「よくテレビでやってるアレでしょ。音楽が鳴り出したら踊り出すとか。」

「私も見たことありますぅ。"お前は猫になる"とか言われて、四つんばいになってニャー
ニャー鳴いてたよ。」

三人とも興味深々といった反応を示す。恵と美由紀は何をいまさらという感があるが、忘
却暗示を与えられている二人は、この前の出来事について催眠術をかけられた事すら忘れ
ている。
 
「それじゃ由香里ちゃんに催眠術をかけちゃいましょう。」

マリアは今回のターゲットである由香里をさりげなく指名した。

「えー、私ですかぁ。」

「そーよ、由香里ちゃんはグリフォンのニューフェイスなんだから当然優先度は一番よ。」

マリアは訳のわからない理由を説明する。
 
由香里も内心、催眠術にかかったらどんな感じなのか興味を持っていた。恵と美由紀も一
緒にいることだし、なによりマリアが女性なので変なことはしないだろうという安心感が
あったから、やってもらおうという気持ちになった。
 
 
「由香里ちゃん、ペンダントの先の水晶を見て。ゆっくり左右に振れるから目で追いかけ
るのよ。呼吸が静かに落ち着いていくわ。気分がリラックスしてなにも考えることが出来
なくなる。だんだん目が疲れてきたでしょう。ほーらもう目を開けていられない。」

古典的な誘導方法だが由香里が協力的な態度を見せていたので、簡単に催眠状態になった。

「かかっちゃったのかな?」

「ただ寝てるだけのように見えるけど。」

恵と美由紀がいらぬツッコミをいれる。

「まだまだ浅い催眠状態よ。やっぱりこっちの言うことに素直に従うようになるまで深い
催眠状態にしなくちゃね。そうじゃないと面白くないでしょう。」

二人はウンウンと頷いている。
 
マリアはさらに由香里の催眠を深化させる。

「これから10数えます。数を数えるたびにあなたは深ーい深ーい催眠状態になっていく
わ。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。さあ雲に乗っているようなフワフ
ワした、いい気持ちになったでしょう。そのままゆったりと身をまかせていなさい。」

「はい、これでいいわ。」

マリアは由香里の素直な被術者ぶりに満足していた。横で見ていた恵と美由紀は”さっき
と変わりばえしない”などと心の中で思ったが口には出さなかった。
 
「由香里ちゃん目を開けなさい。でも目を開けても催眠術にはかかったままよ。そして回
りのことは全然気にならない。私の声だけが頭の中に心地よく響いてますよ。」

由香里はうなだれていた頭を持ち上げ、ゆっくりと目を開けた。
 
「由香里ちゃーん。見えてますかー。」

恵が手のひらを広げて由香里の目の前で動かす。由香里はまったく反応を示さない。
 
「それじゃどれくらい深く催眠にかかっているか、ためしてみましょうか。」

「由香里ちゃん、これからあなたは猫になるの。3つ数えるとあなたはかわいい小猫にな
ってしまうのよ。3、2、1、はい。」

ぼんやりとあたりを見回している由香里のあごの下をマリアがコチョコチョとくすぐると
由香里は気持ち良さそうに”ニャア”と鳴いた。
 
そのあとも由香里はスキップをしながらトイレに行かされたり、赤ちゃんになってミルク
をおねだりしたりと見事なまでの操り人形ぶりである。
 
「すごーい。完全にいいなりになっちゃうのね。」

「そうよ。ここまでかかればどんな恥ずかしい事でも思いのままにやらせることができるわ。」

「どんな恥ずかしい事でもだってー。」

「マリアさんを敵に回すと催眠術をかけられちゃって何をやらされるか判んないって事ね。
こわーい。」

二人はマリアの催眠術を見せられて、しきりに感心している。
 
そろそろ二人には退席してもらわなければならないのでマリアはおもむろにこう言った。

「それじゃ恵ちゃんも美由紀ちゃんもマリアの操り人形になあれ。」

キーワードを与えられた二人の目は焦点を失った。

「今日は特にお仕事は無いから家に帰りなさい。由香里ちゃんのことは何も心配しなくて
もいいから私にまかせてちょうだい。それじゃ二人とも立って。お店を出ると意識が戻る
からね。」

二人は荷物をまとめるとそそくさと店の外へ出ていった。
 
「さあ由香里ちゃん、もっともっと幸せな気分になりましょう。さあこちらへいらっしゃ
い。」

トロンとした目でマリアを見つめていた由香里はゆっくりとソファーから立ち上がり、マ
リアに手を引かれて店の奥に入っていった。
 
 
マリアの一連の行動を隣のボックスから注意深く観察している一人の女性がいた。上着の
内ポケットに小型テープレコーダーを忍ばせ、これまでのやりとりを小型集音マイクで録
音している。シングルとタイトスカートの上下となるベージュのスーツを着た長い黒髪の
女性は冴木麗子といい、職業は弁護士だった。麗子は東大在学中に司法試験にパスした秀
才で今は示談を主に手掛ける個人事務所を開いている。
 
麗子がグリフォンと関わることになったのは、山口春奈という高校の音楽教師からの「自
分には憶えがないのにAVに出演してしまっている、いったいどうなっているのか調べて
くれないか。」という相談からだった。春奈はこんな相談はどこに持っていったら良いの
かわからずセクハラ訴訟等を多く手掛けている麗子の所へ来たのだった。
 
卒業生から渡されたというそのビデオはダビングを重ねたものらしく画質は劣悪だったが
たしかに依頼人とおぼしき女性の痴態が記録されていた。ビデオの再生が終わって麗子が
春奈を見ると今にも泣き出しそうな顔をしている。
 
依頼内容は弁護士の仕事の範囲を越えてむしろ探偵に近いものだったが、これまで手掛け
てきたセクハラ等の女性の人権を踏みにじる行為の事例には常々強い怒りをおぼえていた
麗子は調査段階から丸ごと引き受けることにした。そして方々に手を尽くし情報を集めた
結果、やっとグリフォンに辿り着いたのだった。
 
マリアが由香里を連れて店の奥に消えると、麗子はテープレコーダーをバッグにしまい、
マリアの後を追いかけて店の奥に入っていった。
 
麗子は事務所に入り、机で資料のチェックを行っていた青年に向かって言った。

「この店の代表に会わせていただきたいわ。ビデオの件で話があると言えば、会わないわ
けにはいかないでしょう。」

その青年の表情が険しくなり抑揚の無い声で「しばらくお待ちを。」と言い残すと奥へ消
えた。
 
数分後、応接室で麗子とマリアが対峙していた。

「冴木麗子さん?弁護士の先生なのね。」

「あなたがこの店の代表者?」

「そう考えていただいて結構よ。弁護士の先生が今日は何のご用かしら。」

「季節の挨拶をしても仕方がないので、単刀直入に言うわ。」

グリフォンには会員制クラブのような下部組織を持つこと、その会員に倫理規定を逸脱し
たポルノビデオを販売していること、販売ビデオに女性をなんらかの方法で操り出演させ
ていたこと、その女性達に売春行為もさせているらしいということ、などの麗子が全精力
を傾けて調べ上げたグリフォンの裏の部分の事実を突き付けた。
 
「どんな方法で女の子達を操っていたかと思っていたらどうやら催眠術のようね。さっき
の子みたいにペンダントを使って催眠術をかけていたのでしょう?」

まくしたてる麗子を冷静に見ていたマリアはどうせ納得はしないだろうと思ったがどんな
反応をするかを見るために反論した。

「別に操っているわけじゃないわ。ちゃんとギャラを払って出演してもらっているのよ。」
 
麗子は左手を腰にあて右手でバンと机を叩いてマリアに詰め寄る。

「そんな詭弁が通用すると思うの。こっちは裁判所で争ってもいいのよ。強制ワイセツ、
売春防止法違反、いくらでも犯罪だと立証できるわ。当然こんなスキャンダル、マスコミ
が放っておくはずは無いから、大喜びで”美女を洗脳してAV出演!”とか書き立てるで
しょう。この店は営業できなくなるわ。あなたのマジシャンとしてのキャリアもパーよ。」
 
マリアは冷たい視線を麗子に向け静かに言った。

「いくら欲しいの。提訴せずにここに来たというのは示談で収めるためなのでしょう。」

「切りがいいところで1億。店の営業延長権と女子刑務所ツアーのキャンセル料金と考え
ればけっして高くはないはずよ。」
 
(随分と強気に出るわね。)

マリアにとっては1億円はそう驚くような額ではない。しかし麗子の一連の態度にカチン
ときたのでどういう対処をするか少し思案し、おもむろにソファから立ち上がった。
 
「ちょっと待っていなさい。」

席を立ち奥に引っ込もうとするマリアの背中に麗子の言葉が突き刺さる。

「ヘタなことを考えないことね。私がこの店から帰らなければ情報が友人の手に渡り、こ
の店の裏の顔について全て露見するわ。」
 
実際の所、友人に託す資料はそれほど詳細なものを準備しているわけではなかったが、こ
の言葉は十分に効果があり、これまでも麗子が相手方に一人で乗り込んでいった場合、対
等の立場で交渉出来た。
 
「安心していいわ。あなたはちゃんと家に帰れるから。」

マリアは冷ややかな笑顔を浮かべ、こう言い残して奥へ消えていった。
 
すぐにマリアは戻ってきた。手には一本のビデオテープが握られている。
「実は春奈ちゃんはこういうビデオにも出演しているのよ。これを見ればあなたも考えが
変わると思うわ。」

「いまさら何をあがいているの。あなたがどんな切り札を切ってこようと私とあなたの立
場は変わらないわ。あきらめて条件についての話に応じなさい。慰謝料だけでなく春奈さ
んへの謝罪とかやってもらわなければならない事はいっぱいあるのよ。」

きつい命令口調で麗子はマリアに迫る。
 
「とにかく見てみることね。」

マリアはテープをデッキに押し込み再生ボタンを押した。麗子も仕方がないのでビデオテ
ープの内容を確かめることにした。
 
 
画面に宇宙空間のような映像が映し出された。何本もの直線が渦を巻いたり、さまざまな
色の光がゆっくりと明滅したりと環境ビデオかパソコンのスクリーンセーバーのような感
じである。なかなか春奈が出てこないので麗子がおかしいなと思い始めたところにタイミ
ングよく「さあ、もうすぐ春奈ちゃんが出てくるのでよく見ているのよ。」とマリアの声
がかかる。さらに見ていると麗子は画面に吸い込まれるような感覚に襲われ始めた。いつ
のまにか麗子の隣にきていたマリアがささやく。
 
「さあだんだん目を離すことが出来なくなってきたでしょう。それでいいのよ。リラック
スして画面に集中して。体に力が入らなくなってくるわ。とっても気持ちがよくなる。そ
してもうあなたは私には逆らえない。私の言うことはどんなことでも従ってしまうのよ。」
 
(いけない。これは私に催眠術をかけようとしているんだわ。)

麗子はやっとマリアの催眠誘導に気づき、頭の中で必死に逃げようと思ったが、すでに麗
子はマリアの従順な下僕となりつつあった。
 
「だんだん素直ないい子になってきたわね。あなたはもっともっと私に命令して欲しくな
る。そして私の命令に従うことがとっても楽しくて、とっても気持ち良くて、最高の気分
になれるのよ。」
 
マリアは指でクイとあごを持ち上げ、虚ろな目の麗子の顔をのぞき込み、さらに暗示を与
えてゆく。
 
「もう大丈夫よ。あなたは私の操り人形になることが出来たわ。もう何も考えられないで
しょう。これから私の命じるどんなことでも素直に従うことができるのよ。さあ体の力が
すっかり抜けてとてもいい気持ちね。しばらくそのままでいてもいいわ。」
 
深い催眠状態に入ってトロンとした目で前を見つめている麗子の横から立ち上がりマリア
はつぶやいた。
 
「ずいぶんいろいろな事を調べたのね。でも催眠術のお勉強が少し足りなかったわ。誘導
の方法はペンダントを使うだけじゃないのよ。ちょっとでも知識を頭に入れておけば、も
う少し警戒しただろうけど。」

「残念だったわね、秀才さん。」
 
 
このまま追い返すことも出来たが、麗子が思いのほか美人だったのと、さっき居丈高に詰
め寄られたことがちょっとしゃくだったのでお仕置きしてやろうと思い、マリアは麗子を
グリフォンのコンパニオンにすることに決めた。
 
「それじゃ、あなたが何者なのかじっくり聞かせてもらおうかしら。」

マリアは麗子を見下ろしながらそういうと、麗子の横に座り両肩に手をかけ最初の暗示を
与えた。

「これから私がいろいろ質問するわ。麗子ちゃんはとっても素直ないい子だから、絶対に
秘密にしなければならないことや、どんなに恥ずかしいことでも、私の質問には正直に答
えちゃうのよ、いいわね。」

「それでは始めるわよ。答える時は大きな声で分かりやすくね。」
 
「年はいくつ。」

「28。」

「結婚は。」

「独身…です。」
  :

今の仕事の内容、金銭状況、人間関係、高校や大学での学生生活、果てはこれまでの男性
経験、週のオナニー回数まで麗子はまったく抵抗できずにあらゆることをペラペラと喋ら
されてしまった。
 
「大体あなたがどういう子か判ってきたわ。ほんと才媛を絵に描いたような子ね。これま
での人生、さぞやチヤホヤされてきたんでしょう。あなたのようなお高くとまった子には
恥ずかしいお仕置きが必要ね。たっぷり可愛がってあげるわ。」
 
マリアはそう言って立ち上がると奥のベッドルームに行き、撮影の準備をしている男達に
告げた。

「織田ちゃん、哲也くん、今日の撮影は練習場で行うからすぐに準備してね。」

「えっ、そうなんですか。」

「ウフフ、どうしてもコンパニオンに加えて欲しいという子がさっき来たからね。由香里
ちゃんはまた今度ということにするわ。とにかくすぐ出かけられるように準備して。」

「はい、わかりました。」
 
マリアは別の部屋でビデオ撮影が始まるのを待たされていた由香里の催眠を解いてやり家
に帰らせた。
 
応接室に戻ってきたマリアは麗子の手を引き、立ち上がらせる。

「これから麗子ちゃんのデビュー作を撮りにいくわ。勝ち気なあなたがどんな恥ずかしい
姿を見せてくれるか、とっても楽しみね。さあ、私についていらっしゃい。」
 
 
四人が向かった先はグリフォンから歩いて10分ほどの所にあるビルの2階のマリアの練
習場だった。15メートル四方ぐらいの広さを持ち、一面がガラス窓でもう一面が鏡張り
となっており、腰くらいの高さに手すりがついている。普段はクラッシックバレエやエア
ロビクスの教室が開かれている所でマリアが所有しているわけではなく、バレエ教室等が
開かれている時以外はマリアが自由に使用していいという契約をビル管理会社と結んでいた。
 
練習場に入るとすぐに撮影スタッフの二人が手際良く機材のセットアップを行ってゆく。
 
マリアの後に付いて練習場に入ってきた麗子にやさしく声をかける。
 
「もうちょっとしたら、あなたにグリフォンのコンパニオンとしての初めてのお仕事をし
てもらうわ。楽しみに待っていなさい。」

「はい…。」

すっかり従順になった麗子はマリアの顔を見つめて素直に返事をした。
 
「マリア姉さん、準備オッケーです。」

撮影準備が整ったので、マリアは麗子が高校で新体操部に所属していたことを聞いた時に
思いついたことを実行に移すことにした。
 
マリアはトロンとした目をして練習場の隅に立っている麗子に近づき暗示を与え始めた。

「麗子ちゃんは高校時代に新体操部で活躍していたのよね。それじゃその時まで時代をさ
かのぼりましょう。これから数を数えていくから、あなたはその数字の年齢に戻るのよ。
28、27、26、25、24、23、22、ほーら大学生になった。まだまだ戻ってい
くわ。21、20、19、18、17。」

「もうすっかり高校生になってしまったわ。さあこれからクラブ活動をするための準備を
しましょう。あなたは今、更衣室に来ているので服を脱いでレオタードに着替えましょうね。」

麗子は目の焦点を失ったまま、身に付けているベージュのスーツをするすると脱ぎ始めた。
パンティーまで脱ぎ終わり全裸になったところでマリアが言った。
 
「さあ、ちゃんとレオタードに着替えることが出来たわね。それじゃこちらへいらっしゃい。」

いきなり時間を進められた麗子はレオタードを身に付けたものと思い込まされてしまった。
 
「いい子ね。それじゃよく聞いて。」

マリアは全裸の麗子の肩を抱き耳元でささやき始める。
 
「あなたはインターハイ予選を間近に控えているの。今日は学校での壮行会であなたの演
技をみんなに見てもらうのよ。ここは会場の体育館で、あなたのインターハイでの活躍に
期待する人達で館内は満員になっているわ。観客は麗子ちゃんの華麗な演技が始まるのを
ワクワクしながら待っているのよ。」

マリアは麗子が現在置かれている状況を頭の中に刷り込んでいった。状況が明確になるに
つれだんだんと麗子の目に生気が戻ってくる。
 
「いいこと、私は新体操部の顧問なのよ。二人で大会に向けて一生懸命練習したわね。だ
から麗子ちゃんは私のことをものすごく信頼しているの、わかったわね。」

この暗示により、巧みに麗子より精神的に優位に立ちマリアに対して麗子がさらに従順に
なるように仕向ける。
 
「それと、やっぱり髪型を変えた方がいいわ。」

そう言ったあとマリアは麗子の長い黒髪を一つにまとめポニーテールにし、大きなリボン
を結んであげた。

「これで女子高生らしくなったわね。それじゃ頑張っていきましょう。」
 
「哲也くん、隣の部屋に新体操用の小道具があったはずだから、捜して持ってきてちょうだい。」

「わかった、じゃちょっと行ってくるね。」
 
「姉さん、ありましたー。」

ほどなくして哲也が新体操用の小道具が入ったダンボール箱を持って帰ってきた。
 
マリアは箱の中からリボンを取り出し麗子に握らせた。

「麗子ちゃん、まずはリボンの演技からよ。練習の成果を存分にみせるのよ。」

「はい。」 

力強く返事をした麗子は小走りに練習場の中央に行き背筋をピンと伸ばし最初のポーズを
とった。形のよいバストが足が長くスリムな麗子のプロポーションに映える。このプロポ
ーションにほとんど化粧をしていない顔、ポニーテールの髪型、股間の薄いヘアーといっ
た要素が加わり、とても20代後半の年齢とは思えないほどに若々しく見える。
 
マリアがラジカセのボタンを押すと音楽が流れ出し全裸の麗子はリボンをくるくる回しな
がら踊り始めた。
 
音楽はマリアがいつもステージで使っているものなので麗子の演技はアドリブなのだが、
それなりにサマになっているのは麗子の運動神経と演技センスが人並以上のものであるこ
とを物語っている。
 
麗子が大きく足を上げたり、拡げたりするたびに秘部が見え隠れするのが妙にエロティッ
クで、予想していたより刺激的な内容になりそうだなとマリアは思った。
 
やがて音楽が鳴り止み、麗子はフィニッシュのポーズをとった。そのあと彼女には見えて
いるであろう四方の客に向かって深々と頭を下げている。
 
腕を抱えこれを見ていたマリアは、パチパチパチと手を叩きながら練習場の中央から戻っ
てきた麗子を迎えた。

「素晴らしかったわ、麗子ちゃん。」

「ありがとうございます!」

マリアに誉められた麗子は心底嬉しそうだった。

「呼吸が落ち着いたら今度はこん棒の演技を見せてちょうだい。」

「はい。」
 
 
結局、全ての種目について麗子は踊らされる羽目になった。最後のフープの演技のフィニ
ッシュで片足を大きく上げてエビぞりのポーズを取った麗子にマリアのリクエストが飛んだ。

「麗子ちゃん、そのポーズのまま動かないで。」

すかさずビデオカメラが近づき、頑張ってフィニッシュのポーズを維持している麗子をぐ
るりと一周した。大きく拡げられた汗でキラキラ光る秘部を念入りに撮られている。
 
「麗子ちゃん、これで全部終わりよ。ご苦労様。」

フィニッシュのポーズを解いた麗子にマリアが歩み寄る。

「よく頑張ったわね。とっても素敵だったわ。」

「いえ、そんな…。」

肩で息をしている麗子はマリアのねぎらいの言葉に頬を赤らめ照れ笑いを浮かべた。
 
「姉さん、急がないと。もうすぐ10時ですよ。」

哲也が思い出したように声を上げた。この練習場は午後10時になるとオートロックが掛
かり対人センサーが動き出すので、それまでに外に出なくてはならない。今日この練習場
を使用することは予定になかったので、ビル管理会社には深夜利用の申請は行っていなか
った。
 
「着替えてる時間はないわね。みんな、このまま外に出るわよ。」

「麗子ちゃん、これから事務所に戻るからついてきなさい。」

「はい。」

麗子はマリアの後についてビルの外に出た。

「ついでだから撮っておくか。」

「そーすね。」

全裸で歩きだした麗子に向かって照明が焚かれビデオカメラが回り出した。
 
グリフォンまでの帰り道は路地裏とはいえ週末なので行きかう人々は少なくない。途中で
逢う人々は全裸の麗子を見て驚くが、ビデオカメラを回している織田がストリーキングビ
デオのゲリラ撮影をしている旨を伝えると皆は一様に納得した。暗示によりレオタードを
着ていると思い込まされている麗子は前を隠すことなく堂々と歩いている。
 
ビデオのフレームに入らないよう道の反対側を歩いているマリアは(ここで催眠を解いた
らどうなるのかな。フフ恥ずかしさのあまり自殺に走っちゃうかしら。)なんて意地悪な
思いを巡らせていた。
 
麗子はグリフォンに関する調査を打ち切り今後一切関わらないことと、今まで集めたグリ
フォンに関する資料を破棄することをマリアに命じられ家に帰された。もちろん今日の出
来事は全て忘れさせられ、”マリアの操り人形”のキーワードを与えられてである。
 
 
「どうですマリア姉さん。きれいに撮れてるでしょう。」

「うまいじゃない、織田ちゃん。」

撮影された映像はかなり激しく動きまわっている麗子をほとんどフレームの中央に収めていた。

「グリフォン初の体育会系企画ビデオ、これはいけますよ。」

「姉さんこんなのはどう?今のコンパニオンの中から学生時代、運動部に所属していた子
たちを集めて運動会をする。」

「どこかの体育館を貸し切りにでもするつもり?たとえ全員裸としても、あまりに健康的
すぎてかえって白けるんじゃない?」

「ああ、そうかもしれませんね。」
 
そして満面の笑みをたたえ全裸で新体操を踊る麗子が映しだされるディスプレイを見なが
らマリアは言った。

「このビデオを見せて自分が何をしたのかを判らせてやれば、あの子の高飛車な態度も少
しは改まるかもね。とにかくこれまでに無いタイプのカードが一枚、手に入ったことは喜
ばしいことだわ。」

「それじゃ織田ちゃん、ビデオの編集お願いね。別に急がなくていいから。」

「はい、わかりました。」
 
それから数日後、依頼者の山口春奈の方に冴木麗子から連絡が入った。その内容はビデオ
の出所がどうしても突き止められなくこれ以上の調査は無理ということとギャラは交通費
等の直接費のみで結構ですということだった。
 
「ああ大切なことを忘れていたわ。ビデオのことに気づいちゃった春奈ちゃんを"再教育"
してあげなきゃね。彼女の電話番号は何番だったかしら。ずいぶんと御無沙汰だけど。」

マリアは独り言をつぶやきながらアドレス帳をめくり、受話器を手にした。
 
−おわり−


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