都内の某私立高校の図書室。ここに、せわしなく働く二人の姿がある。
「橘君、ここの本、配架をお願いするわ。」
「はい、先輩、新刊書コーナーでいいですね?」
『よーし、ちゃっちゃと片付けて先輩の印象度アップだ。』
俺は橘圭介、2年生。いま図書委員なんてやっている。くじで外れてこんな委員になった
時にはがっかりしたけど、いいこともあるもんだ。こんなかっこいい先輩と仕事出来るん
だからね。
ふと、カウンターで作業している「かっこいい」先輩を見やる。
彼女は3年生の諏訪玲子、図書委員長である。きりっとした顔立ちに縁なしメガネがよく
似合う。ちょっと他を寄せつけない雰囲気を持っていて、圭介もまだ仕事の話しかしたこ
とがない。かなりの美人であることは確かだが、その有能さから、「かっこいい」という
言葉がぴったりな人だ。
「橘君、それが済んだらお帰りなさい。」
圭介は、お先に失礼します、と挨拶して帰路についた。
『くうー。諏訪先輩ってクールなところがいいよなあ、俺って「かっこいいお姉さんコン
プレックス」があるのかね。しかもあれだけの美人。いやー、あの上品な口に俺のものを
咥えさせたいぜ!』
尊敬している先輩でも、とりあえず頭の中では辱めてしまうのが圭介の高校生らしいとこ
ろだ。こういう妄想は始まるとなかなか止まらない。他人が見たら思わず引いてしまいそ
うなヤバイ顔つきでとぼとぼ歩いていく。
突然、そんな圭介を呼びとめる声が聞こえてきた。
「おーい、圭介くーん、帰るんでしょ、待って。一緒に歩こ。」
「(どきっ!!)お、おう、桔梗。」
クラスメイトの安斎桔梗がお似合いのポニーテールを弾ませながら駆け寄ってくる。かな
り後ろの方にいたのだが、カモシカのようにバネのある脚力で瞬く間に追いついて来た。
全く息が乱れていない。
「図書委員の当番だったんでしょ、大変だね。」
「そ、そうでもないよ。」
圭介はむりやり頭を普通モードに切り替えた。桔梗は昔から勘が鋭いから、変なことを考
えていたのがばれたら厄介だ。
実は桔梗とは実家が隣同士で幼なじみの間柄である。とても上の名前で呼ぶ気はしない。
取りとめのない話をしているうちに下校する生徒の列も途切れ、裏道に入った頃には俺た
ち以外に人影が見えなくなった。すると、それまで笑顔だった桔梗は急に表情を硬くし、
俺の前にまわり込む。瞬間の出来事だ。
「圭介様、本日も御学業お疲れさまでした。」
・・・そう、クラスメートで幼なじみの桔梗は、俺のお庭番でもある。
あれは高校に入学するために上京する前夜、いきなり親父が「元服だ。」なんて言い出し
たんだ。ふと掛け軸を見ると、「橘家二十八代当主元服式」とか書いてある。俺がその二
十八代目らしい。初耳だ。そもそも一代目って誰だ?
なんだかよくわからない儀式が終わって、親父がやはり時代劇のような口調で話し掛けて
くる。
「お前も明日から一人立ちだ、喜ばしい。だが、橘家の次期当主が一人で上京するのはい
ささか心元ない故、お庭番を付けてやる。まあ、お前には秘密だったが、今までもずっと
お前のお庭番を務めてきた者だからな。気心が知れて安心だろう。」
そう言うと、すーーっと次の間の襖が開く。桔梗が立て膝を立てて座っていた。
「あれ、桔梗、どうしてここにいるの?それにその恰好、日光江戸村に就職するのか?」
いかにも忍者映画に出てきそうな扮装の桔梗が恭しく口を開く。
「圭介様のお供が出来て光栄です。一生懸命お守り致しますので、今後ともよろしくお願
いいたします。」
これには参った。一緒に泣いたり笑ったり、悩みを打ち明けあったりと、大切な幼なじみ
だと思ってたら、お仕事でやってたというわけだ。いきなり敬語まで使われている。
『うん、確かにおかしいとは思ってたんだ。いくら幼なじみとはいえ、学校であれだけ人
気があった桔梗が俺にべったりなんだもの。そうだ、夕日のきれいな浜辺で思わずキスし
ちゃったんだよな。桔梗は「ファーストキスだっだ。ありがとう。」なんて泣きながら喜
んでくれたけど、きっとあれもお芝居だったに違いない。くうーー、男泣きだぜ!!』
「圭介様、いかがなされました?圭介様!?」
「え、ああ!、ごめん。心の傷を反芻してたよ。」
「??。ところで、圭介様はあのような女性が好みでいらっしゃるのですね。」
「あのような女性って、誰のことだよ。」
「図書委員長の諏訪玲子殿です。」
「なんで解った!?もしかして・・・得意の催眠術か!?」
「はい、朝から先ほどわたくしと会うまでの間、圭介様には考えたことは全て口に出して
しまうような暗示をかけさせて頂きました。普段どんな事をお望みなのか、把握しておか
なければなりませんので。」
「じゃあ俺は、歩きながら『咥えさせたいぜ!』なんてしゃべってたわけ?ううっ、立ち
直れない・・。んっ?、朝からだって?そう言えば今朝、あれだけバスが混んでるのに皆
俺から離れようとしてたのは・・・・。」
「そうです。圭介様、ちょっと危ない人みたいでした。」
「しゅうううーー・・・・・・(真っ白に燃え尽きている音)。」
「幼少の頃よりおまもり申し上げたあなた様が、特定の女性に興味を示されるとは・・。
わたくし正直言って複雑な心境です。でも、これは喜ぶべきことなんですよね。」
桔梗は遠い目をして、しきりにうんうんと肯いている。
「そういう事でしたら、わたくしめがセッティングさせていただきます。圭介様に喜んで
いただくのがわたくしの使命ですから!」
「お、おい!お前何か早とちりしてないか、諏訪先輩は憧れているだけで・・・ぶわ!」
相変わらず人の話を聞かない桔梗は、煙幕を張ってその一瞬後には消え去っていた。
圭介は何やらいやーな予感を感じた。
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まもなく、桔梗は図書室にいた。一冊の本を抱え、貸出カウンターに向かって歩いている。
カウンターにいるのは・・・玲子だ。
「貸し出しお願いします。」
「はい、では貸出券を提示して。」
玲子はてきぱきと貸出処理をする。手つきに全く無駄がない。
「はい、では返却期限を守ってね。」
「解りました。・・・・あれ、この本おかしい・・・。」
「どこがおかしいの?破損してるのなら補修するわよ。」
「いいえ、違います。よ〜く見てください。この口絵の写真、動いて見えます。ほら、す
ごく面白い・・・。」
外国のどこかの風景写真が小さく写っている。玲子がじっと見つめているのを確認してか
ら、その写真を少しずつ動かし始める。
「ほら、素敵な写真・・・。こうしてゆらゆらと目で追っていると、あなたはこの写真に
吸い込まれていくみたい・・・。ああ、あなたは今どこにいるのかしら。それすらもわか
らなくなってしまいました。もう考えるのが億劫ですね。どこかをゆらゆらと漂っている
みたい。もう体に力が入らない。ああ、なんて幸せな気持ち・・。」
玲子の目がどんよりと濁る。催眠状態に入ったようだ。普段の玲子はいつも凛とした表情
をしているので、まるで別人のようである。
「さあ、遠くから私の声だけが聞こえています。あなたはもう何も考えられませんから、
この声だけが頼りです。私の声に集中していれば、ずっと楽しい気分でいられるのよ。私
に委ねるだけでいいの・・。」
「諏訪さん、どうしたの、貸し出しに手間取ってるみたいだけど。」
司書の先生が異変に気づいた。だが、離れた場所で作業しているので、まさか催眠術をか
けられているなんて思っていない。
「玲子ちゃん、聞こえるかしら、聞こえたら返事して。」
「はい・・・。」
「あなたをこれからとっても楽しい所に連れていってあげるわ。ほら、とてもうれしいで
しょう?・・・でもその前に、伝言ゲームで遊んでみましょうね。簡単なことよ。これか
ら私が言うことを、同じように次の人に伝えるだけでいいの。玲子ちゃんは感心な子だか
ら、きっと上手に伝えられるわ。ではまず、立ち上がってみましょう。これから3つ数え
ると、体に力が入ってすうっっと立ち上がれる。1、2、3。」
玲子は幽霊のように立ち上がった。目は焦点が合っていない。
「『先生、私、具合が悪いので帰らせてください』。さあ、これをあそこに座っている次
の人に伝えてきて。」
軽く背中を押された玲子は、ふわふわと泳ぐように司書教諭の元へ向かっていく。
「せんせいわたしぐあいがわるいのでかえらせてください。」
「あら、諏訪さん、ほんとにいつもと様子が違うわね。大丈夫?一人で帰れる?」
「私、方向一緒ですから、任せてください。」
桔梗がさっと玲子の肩を抱く。玲子はその反動で少し動いたが、あくまで無表情だ。
「そう・・・。じゃあお願いするわ。諏訪さん、お大事にね。」
二人は図書室を出て扉を閉める。どこまでも続く廊下には他に人影もなく、しんと静まり
かえっている。桔梗は、夢遊病者のような玲子の頬にそっと手を添え軽くキスをした。
「玲子ちゃん、良く出来たわね、気に入ったわ・・・。行きましょ。」
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圭介はアパートに帰ってきていた。親のツテで入れたアパートなのだが、どう見ても一世
帯分ぐらいの広さがある。この広さで格安ということで初めは喜んだが、広いだけあって
一人でいると寂しさ倍増だ。
とりあえずストーブに火を入れたところでドアのチャイムが鳴る。
「はあい!(新聞の勧誘かな?)」
ドアを開けたら、なんと制服姿のままの諏訪玲子がするりと入ってきた。両手はスーパー
で買った食材で塞がっている。
「ふうー、寒かったあ!圭介、お待たせ。台所借りるわよ。」
「は?諏訪先輩、何やってるんですか?」
圭介のそんな問いは全く無視して、黒の革靴を脱いでさっさと上がり込んでくる。
「寒いんだから変な冗談に付き合ってられないよ。・・・あれ、台所どっちだっけ。」
勢いに負けて台所の方を指差すと、そちらへすたすたと歩いて行ってしまった。俺も慌て
て後を追う。
「あの、先輩、どういうことなんですか、一体・・。」
「邪魔だから準備が出来るまで居間でお茶飲んでて。」
返す刀で急須と湯飲みが載ったお盆を持たされた。またしても気圧された圭介は、素直に
居間に戻っていく。
ずずずーーー。はあーお茶がうまい!・・・・いかん!現実逃避してる場合じゃないぞ。
もしかして俺、誰かに担がれてるんじゃないか?隠しカメラがあるとすればこの辺か?
心配になって書棚をごそごそと探してみる。その背中がちょんちょんとつつかれた。
「喜んでいただけましたか?」真後ろに制服姿の桔梗がいた。
「うわあ!!いつからいた、どこにいた!!」
あまりの大声に、玲子が台所から声をかけてきた。
「圭介ー、何騒いでるのー?」
「な、なんでもありませえーん。」無理矢理返事をする。
「どうも変だと思ったが、お前の仕業か?」
「はい、玲子殿には記憶操作を施しました。圭介様とは1年越しのカップルでラブラブと
いう設定です。」
「設定って、台本じゃないんだから。どうすんのさ、これから。」
そこへ、あつあつのお鍋を持って玲子が現れた。
「圭介、何ぶつぶつ言ってるの?」
「(どきっ)あ、せ、先輩、紹介します。同じクラスの安斎さんです。」
「・・・何言ってるの?誰もいないじゃない。それと・・冗談でも私のこと先輩と呼ぶの
はやめて。本当に怒るわよ。」
「うん・・わかった・・・玲子。」
諏訪先輩には桔梗が見えてないのだ。そういう術をかけられているんだろう。桔梗が面白
半分で先輩の顔の前で手を振るが、全く気が付く様子がない。
程なく鍋を囲んで2人の食事が始まる。プライベートの諏訪先輩は、ころころとよく笑う
可愛らしい人だった。ちょっと意外だが、新しい魅力発見というわけだ。
「あれ、圭介、口の所にご飯粒付いてるよ。」
えっ、どこどこ、と手であごの辺りを探るが速いか、玲子の手が俺の口元のご飯粒を摘み
取り、それを自分の口に運んだ。
「!!、れ、玲子、ご飯粒、食べちゃったの?」
先輩は、それがどうしたの?という風に首を傾げ、平然としている。
『うひょー、感動だなあ、この前、当番で一緒に弁当食べた時はツンツンしてたのに、こ
こまで二人の仲が進展していたとは(←バカ)。方法は目茶苦茶だったが少しは桔梗に感
謝しなきゃな。あれ、桔梗がいない。』
自分の傍に居たはずの桔梗はいつのまにか先輩の横に移動し、なにやら耳打ちしている。
「あなたは圭介のことが大好きです。でも・・、彼は最近、他に彼女がいるかのような素
振りをみせています。とても不安な気持ちになってきましたね。あなたは彼を自分に繋ぎ
止めたいと思っています。がんばって振り向かせないと、彼は他の女の子の所へ行ってし
まいます。・・・そうだ、あれを試してみましょうね。」
先輩の表情がどんどん曇ってくる。会話も途切れ途切れになってきた。しばらくして、決
断したかのように口を開く。
「圭介・・・。私のこと、今でも好き?」
ああ、もちろん、と調子をあわせる。桔梗は何を企んでいるのだろうか?
「・・うん、わかった。じゃあ御褒美あげるね!」
玲子はおどけた調子で俺の前に座り込む。それからいきなりズボンのジッパーを降ろし、
俺のものをぱくっと咥えた。
「先輩、もとい玲子!!!、何してるのさ!!!」
「えっ、男の人はこういうの好きなんじゃないの?」
「そりゃ否定はしないけど・・・。」
桔梗に対して小声で怒鳴る。
「お前のセッティングってこういうことだったのか!!」
「えっ、圭介様はこういうのお好きかと思いまして。」
「そりゃ否定はしないけど・・・、って、同じ事言わすな!!」
「玲子ちゃん、大好きな彼のものがしゃぶれてとても幸せね。お口の中いっぱいに幸せが
あふれて来る。ああ、彼のものがとってもいとおしい。もっともっと愛してあげましょう
ね。」
その途端、先輩の顔がなんともうれしそうにほころび、俺のものを更に深く咥えなおした。
舌がねっとりと絡みついてくる。
「うわ、気持ちいい!どうしてこんなにうまいんだ!?」
「仮にも橘家次期当主とまぐわおうというのです。ですから特訓していただきました。フ
ランクフルト屋さんで。」
「フランクフルト屋って、あの駅前のやつか?あんな人通りの多い所でまさか・・・。」
「はい、ソーセージを殿方のものに見立てまして。」
「そんな恥ずかしいことさせたのか!!」
「はい、とても恥ずかしかったです。玲子殿はそれはもう情熱的にソーセージを頬張るも
のですから人だかりが出来てしまいまして。わたくし恥ずかしくて、少し離れた場所から
見守っておりました。」
「ううっ、先輩が不憫だーー。」
「大丈夫です。ご本人は無意識でやっておりましたから。」
「・・・鬼!」
あまりのテクニックに限界すれすれだ。その様子を察知した先輩は、ますます激しいスト
ロークで責めてくる。程なくして俺は先輩の口の中に大量に放出した。先輩は喉を鳴らし
てうれしそうに飲み下していく。ううっ、先輩ごめんね。
俺のものから口を離して手の甲で拭っている時に、またしても桔梗が耳打ちする。
「良くがんばったわね。これで彼の心は繋ぎとめることが出来たわ。さあ、安心したら今
度はとてもエッチな気分になってきちゃいました。彼とセックスして愛を確かめあいまし
ょう。ああ、もうあなたのあそこは彼のものが欲しくて濡れてきてしまいました。さあ、
彼におねだりしちゃいましょうね。」
先輩の顔がみるみる紅潮し、目が潤んでくる。心なしか息使いも荒くなってきたようであ
る。学校で見る無機物のような雰囲気とはだいぶ様子が違う。
その真剣なまなざしに、思わず目をそらせてしまう。
「ちょっと、桔梗、お膳立てしてくれるのはうれしいけど、なにもそこまで。もう充分だ
よ。先輩が気の毒だよ。」
「えっ、もう良いのですか?殿方は最後は必ずセックスをするものだと思っておりました
が」
「一体なにを見てそう思ったんだか。」
「圭介様のベッドの下にあるたくさんのビデオを見てそう分析致しました。」
「!!、勝手に見るなー!とにかく先輩の催眠術を解いてくれ!」
「・・・わかりました。全て事が済んだら自動的に解けるようにしていましたので、今、
無理に解いたら後遺症が残ると思いますけど。では解きますね。」
「うわあ、さらりと怖いこと言うな!やっぱり解かなくていい!!」
「ではこれをどうぞ、殿方のたしなみ、コンドームです。さて、後は若いお二人にお任せ
して、わたくしはこのへんで。」
「若い二人って、お前、俺と同い年だろー!!わあ、逃げるなこら!!!」
桔梗は窓から出ていってしまった。慌てて駆け寄って外を見たが、もうどこにもいない。
ここは二階の窓なんだが・・・。
そこを、後ろから玲子先輩がそっと抱き付いてきた。
「ねえ、圭介、してちょうだい。私もう・・我慢できない・・。」
「先輩、うれしいですけど・・。それはきっと、先輩の意志じゃありません・・・。」
「また・・先輩だなんて言って。年上の彼女は・・嫌い?」
玲子は大事そうに圭介の手を取り、それを自分の胸の上にあてがった。
「ぷちんっ!(圭介が切れた音)。」
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「橘君、その本はこの棚に並べてちょうだい。」
「・・・・はい。」
翌日の放課後、圭介は玲子と二人で図書委員の仕事をしていた。
当番開始時刻にお互いが顔を合わせた時、玲子は平然と事務的に挨拶したのに対し、圭介
は思わずうつむいてしまった。昨日のことを思い出さない訳にはいかなかった。
・・・あの後、圭介は先輩に欲望の限りをぶつけてしまった。終わった後でにっこりと微
笑みかえしてくれたことが、せめてもの救いだ。
腰が痛いね、なんてお互い笑い合っているところへ再び桔梗が現れ、先輩に二言三言つぶ
やくと、もう何も応えてくれなくなっていた。
桔梗は、無表情の先輩の肩を抱き、「送ってまいります。」と言い残して出ていった。今
日の記憶はもう残っていないということだった。
「橘君、何ぼーーっとしてるの?そっちの端を持ってくれないかしら。」
「は、はい、先輩ただいま。」
「重いから気を付けるのよ。せーの、・・・あいたたたた!(×2)」
二人一緒に腰を押さえてうずくまる。本が詰まった箱は落としてしまった。お互い顔を見
合わせ、どちらからともなく笑いが出た。
「くすくす、ごめんね、橘くん。変ねえ私たち、なんかおかしい、くすくすくす。」
先輩はもうくすくす笑いが止まらないといった感じだ。
そうだよ、この笑顔だよ。昨日の笑い上戸の先輩にまた会えた。あれ?あんだけやりたい
ことやっといて、なんで今更笑顔ごときで喜んでるんだ?俺も訳わかんない奴だな。まあ
いいや、とにかく最高の気分だ!
<おわり>