「うおおー、離せー!」
一人の少女の怒号が響き渡った。数人の近衛兵がやっとのことで取り押さえているが、あ
まりの暴れ様に辺りは騒然としている。
ここはザクセン王国の玉座の間。暴れている少女は、まさに現在交戦相手のコルテ王国の
王女、ファイア姫である。つまりは捕虜だ。
「見苦しいぞ、静かにせよ!」
玉座から響くその声に、近衛兵たちは水を打ったように静まり返る。ザクセン王国の若き
女王、カルラである。
先王の突然の死により若くして王位継承した女王であるが、もともと気品がある上、今で
は王としての威厳も感じさせるようになり、近隣諸国に一目置かれる存在である。近衛兵
を瞬時に黙らせるのも道理である。
女王は、その長身を感じさせないしなやかな物腰で、ファイア姫に近づいていく。
「おまえは・・・カルラか!?」
そうよ、とうなずくと、両腕を羽交い締めされたファイア姫は、目に復讐の炎を燃やして
睨み付けてきた。
『無理もないかしら。両親を殺した相手ということになるのだものね・・。』
そう、この戦争でザクセン国軍は、密かに移動中のコルテ国王と后の一団と遭遇し、戦闘
の末全滅させている。しかし、殺したのが王であると解ったのは、全てが終わった後だっ
た。何にせよ王を生け捕りに出来なかったのはザクセン王国の失態である。
結果として、「ザクセン王国のカルラ女王討つべし」と、相手国の戦意を煽ってしまい、
反って勢力が盛り返してしまった。形勢は微妙だ。
そんな折り、『戦姫』として名を馳せた王族のファイア姫を捕らえることに成功した。両
親を失った怒りから冷静さを欠き、前線に出過ぎていたのだろう。
カルラは、ファイア姫との距離を詰めて、正式な仕種で挨拶した。またファイア姫は暴れ
出しそうである。その時初めてファイア姫を近くで見たカルラは息を呑んだ。
『・・なんて美しいのかしら、この子・・・・・。』
コルテ王国のファイア姫と言えば、もともと器量が悪いという噂があるわけではない。し
かし、いつしか『戦姫』の仇名で呼ばれるようになると、その軍功から山のように大きい
猛者と思われていた。
しかし実際のファイア姫は、想像と大分かけ離れていた。戦場に出るためだろうが、髪を
短くしている姫は、その黒目勝ちの眼とあいまってなんとも可愛らしい少女だった。
『このまま地下牢に押し込めてしまうのは惜しいわ。』
そう思ったカルラに、一つの考えが浮かんだ。
「あなた、私の養女としてここで暮らさないかしら。そうすればあなたの身の保証は・・
きゃっ。」
言い終えぬうちに、ファイアは、カルラの顔に唾を吐きかけた。
思わず剣を構える近衛兵たちを手で制し、カルラは余裕の表情で続けた。
「そんな事しないの。どうせすぐに仲良しになれるんだから。」
「何を言ってる、最後の最後までおまえの首を狙ってやる!」
「きっとママのこと大好きになれるわ。ファイアちゃん。」
「ふざけるな!」
怒りで真っ青になり、肩がわなわなと震えている。
「まあ、落ち着いて、このロケット、見覚えがあるかしら。」
微かに揺れるロケットを目で追うファイア。
「何だ、これは・・知らないぞ・・・。」
「もっとちゃんと見てちょうだい・・・。とても魅力的でしょう。」
「・・えっ?・・・。」
「ほうら、こんなにきらきら輝いてるわ・・。なんてきれいなんでしょうね・・・。」
「・・きれ・い・・・。」
「あなたはもう、このロケットから目が離せない。これが大好きですものね・・。」
「はい・・。」
「さあ、このロケットを見てると、だんだん瞼が落ちてくるわ・・。もっと見ていたいけ
れど、見れば見るほど深ーい眠りに落ちていくの・・・・もう神経を張り詰める必要はな
いのよ。安心して眠ってしまいなさい。」
ファイア姫は、羽交い締めをされたまま、がくんと膝を折った。カルラは、姫は貧血で倒
れた、と偽り、自分の寝室に運ばせるよう命じた。あまりに危険との声が上がったが、結
局女王の命令には逆らえない。兵たちは渋々退席していった。
「ファイアちゃん、聞こえるかしら?」
「はい。」
目を閉じたまま、素直に返事する。
「いい子ね。あなたは私の声を聞くと、ゆったりした幸せな気分になってくる。さあ、だ
んだん私の声以外は耳に入ってこなくなる。あなたはもうなにも考えられない。ほら、も
うこんなに気持ちよーくなってきちゃった。そのまま身を任せなさい。もっともっと良く
なってくるわ。」
「はい・・。」
「じゃあ、あなたはどこの誰なのか、言えるかしら?」
「コルテ王国の・・ファイア・・。」
「今、何をしているの?」
「戦争・・・父上と母上の仇討ち・・・カルラのせいで・・・!」
ファイアが泣きそうな表情になった。カルラは続けた。
「わかったわ。とても辛かったでしょうね。それじゃあこれから辛いことがなかった昔に
戻っていきましょうね。あなたは今幾つ?」
「18歳・・。」
「そう。ではこれから年を逆に数えていきます。そうするとあなたの年齢はそれと同じよ
うにどんどん若くなっていくの。辛い思い出も、憎しみの感情も、どんどん溶けて消えて
いくわ。頭の中が真っ白になっていくから素直に委ねてしまいなさい。いいわね。はい、
17、16・・・。」
ファイアの顔は、みるみる柔和なものになってくる。
「・・・・5、4、3。あなたは誰?何歳かしら?」
「ファーちゃん。みっちゅ。」
すっかり舌足らずな口調になっている。
「2、1・・・。あっ」
ファイアはもう自分で体を支えられなくなって、椅子から転げ落ちるところだった。間一
髪で受け止め、ベッドの上に仰向けに寝かせることにした。
「ゼロ。さあ、ママのお腹の中に入っていくわ。暖かくて、やさしくて、気持ち良いでし
ょう?」
「うん・・。」
ファイアは、うっとりとした表情で小さく丸くなっていった。まさに胎児である。
「お母さんのお腹の中はとてもゆったりとしています。なんて幸せな気分なんでしょう。
こんなに安心させてくれるママはだれかな?」
「・・・・・。」
「そうよね、まだわからないわよね。じゃあ、これからどんどん大きくなってママに会い
に行きましょうね。あなたが大きくなるとママはとっても嬉しいのよ。あなたも嬉しいで
しょ?」
「これから数をかぞえると、あなたはその年齢になっていきます。いくわよ、はい、ゼロ。
お母さんのお腹から出てきたわ。さあ、あなたはママに会いたくて仕方ありません。あな
たがこれから目をあけると、そこには大好きなママがいます。はい目をあけて。」
ファイアはぼんやりと目を開けた。口に手を当てて、きょろきょろと周りを見回している。
「ファイアちゃん、初めまして。カルラママですよ。」
「ママ・・・カルラママ・・・。」
ファイアはじーーーっとカルラを見つめている。顔ではない、カルラの豊満なバストに目
が釘付けになっているのだ。
「あらあ、ファイアちゃん、ママのおっぱいがほしいの?」
何となく母性本能を刺激されてしまったカルラは、試みに着物をはだけて胸を露にしてみ
る。
「だあ、だあっ!」
ファイアはカルラの乳首にむしゃぶりつき、コクコクと母乳を飲むような動作を始めた。
もちろん母乳など出るはずはないのだが、それでも恍惚の表情で吸い続けている。
『あらやだ、何だかすごく幸せ。お母さんってみんなこうなのかしら。』
突然の展開にむしろカルラの方が感動している。しばらくしてファイアは、満足したかの
ように乳首から口を離す。と、いきなり全身をぷるぷると震えさせた。
「どうしたのファイアちゃん!?あら、何だか温かいわ、もしかして、おもらし!?」
「うぎゃ!、うぎゃー!」
精神が赤ちゃんの戻っているファイアは、行動パターンまで赤ちゃんに戻っているのだ。
下着が濡れて気持ち悪いのだろう。とうとう泣き出してしまった。
「もう!世話の焼ける赤ちゃんね!!」
慌てて下着を脱がし、股間を拭いてやった。
ここまでやらせてんだから、少しは遊んだっていいでしょ。とばかりに、本当の赤ちゃん
みたいに股間にシッカロールをパタパタとはたいてやった。気持ち良いのだろうか。ファ
イアは指をしゃぶりながらうっとりとしている。しかしうっとりとしているのはカルラも
同様である。
『この子のオマ○コって、とってもきれい、ああ、何だか食べちゃいたいくらいだわ。』
そう思ったカルラは、無意識のうちにファイアの性器に口を付けていた。乱暴にするとす
ぐに壊れてしまいそうなその部分を、丹念に舌を這わせていく。ファイアは初め、自分の
股間で起きているその様子を不思議そうに眺めていたが、程なく嬉しそうに声を上げた。
「あむっ、あむっ!」
『あら、この子、赤ちゃんのくせに反応してるわ。それにしても、なんて無防備な恰好で
舐められているのかしら。さっきまではあんなに抵抗していたくせに。あれから1時間も
経たないうちに、この私に自分からこんなはしたない姿を晒しちゃうなんて、思ってもみ
なかったでしょうね。後で教えてあげたらこの子もう立ち直れないんじゃないかしら。』
性器から口を離したカルラは、ファイアの無邪気な笑顔を覗き込んだ。
「もう、あなたは捕虜として連れてこられたんだぞお。私はあなたの親の仇なんだぞお。
それなのにこんなに無防備に感じちゃって、解ってんの?このこのこのこの!」
カルラは、ファイアの頬を人差し指でつんつんと突く。
「きゃあ、きゃあ!(ぽかっ!)」
「うぐっ!・・・・・・・・・・・!!!」
大喜びのファイアは、両手をグーのまま大きく振りまわした。それがカルラの鼻に直撃し
たのだ。あまりの痛さに声も出ない。
『ううっ、この子、赤ちゃんだけど腕力強いわー。『戦姫』に対してちょっと油断したわ
ね・・・・。』
カルラは悪ふざけを中断した。
「はい、では、またどんどん大きくなっていくわよ。1、2、3。あなたの誕生日のお祝
いに、たくさんの国の方が駆けつけています。4、5、・・・・18。はい、18歳にな
りました。さあ、あなたのママは誰ですか?」
「・・・・・。」
宿敵を母と呼ぶことに対して、心のどこかで抵抗があるのだろうか。なかなか言い出せな
いでいる。
「ちゃんと言ってくれると、ママとってもうれしいな。」
「・・・・カルラ・・カルラお母様。」
この一言で、カルラは成功を確信した。
「そう、よく言えましたね。その通りよファイア。ではこれから3つ数えると、あなたは
目を覚まします。とてもすっきりした、爽快な気分です。あなたは、今歩んだとおりの人
生を送ってきて、ちょうど、大好きママと一緒にお話をしてるところです。ファイアは甘
えん坊のお姫様です。目が覚めたらうんと甘えていいのよ。1,2,3。」
「お母様!」
目が覚めるやいなや、ファイアはカルラに抱き着いていった。
「もう、ほんとにいつまで経っても甘えん坊さんなんだから。」
カルラは確かに年上だが、ファイアくらいの娘を持つほどの年齢差はない。通常なら違和
感を持つ組み合わせであるが、催眠術にかかっているファイアにとって何の疑問も生じな
かった。
「あら、お母様、顔に何か付いていらっしゃるわ。」
先刻、ファイア自身が吐いた唾の跡が、カルラの頬に白く残っているのだった。しかし、
カルラはわざと知らない振りをした。
「あら、なにかしら、ファイアちゃん、ママの顔をぺろぺろしてきれいにしてくれる?」
「はあい!」
ファイアはカルラの頬についた自分の唾を、愛おしそうに舐めとっていった。
(第二話に続く)