HITOMI

ACT-01

作:kurukuru さん


 あたしの名前は夢見坂ヒトミ。

 ここ聖メスメル女学院に入学したばかりの1年生。ここは、日本で初の女性催眠術師を養成する学院なの。

 あたしの夢は日本一の女性ステージ催眠術師になることっ!!
 でもぉ、なんか前途多難……

 今日も6時間目の実技課題の凝視法がうまく出来ないで、放課後、友達のユミに付き合ってもらって特訓することになってるんだぁ……
「さあ、ユミぃ、あたしの手をじーっと見てぇ……あなたはだんだん眠くなる、眠くなるぅ〜」
「……ヒトミぃ、あたし退屈で眠くなってきちゃったよぉ……」
 ユミが大きな欠伸をする。
「もぉ、あたしってばぁ才能ないのかなあ」
「そ、そんなことないわよ、きっと練習が足りないだけだって」
「だって、さっきからもう1時間も眠れ眠れって言ってるのよ。これがステージのショーだったらとっくにお客さん帰ってるって」
「そ、そりゃそうだけど……」
「あたしのママは天才的なマジシャンで催眠術も得意だったのになあ……」

 はあーっとため息をついて肩を落とすヒトミ。
「あら、こんなところで居残り練習させられてるの?」

 声のした方を見ると、ヒトミの知らない生徒が立っていた。白のリボンをしているところを見ると、ヒトミたちと同じ1年生ではないらしい。

 この学院では、入学時には全員が初級催眠術師(ブロンズクラス)として茶色のリボンを付けることになっている。カリキュラムをこなして腕が上がり、検定試験に合格した者だけが、中級催眠術師(シルバークラス)の証である白のリボンを付けることが許される。従って上級生と言えども全員がこのリボンを付けているわけではない。
 さらに黄色いリボンをつけた上級催眠術師(ゴールドクラス)ともなると、3年生でも数える程しかいない。生徒達にとって黄色のリボンは憧れの的である。
「ち、違いますっ、これは自主的に……」
 ヒトミがそう言いかけた時、ユミが慌てた様子で耳打ちしてきた。
「ヒトミ、相手にしない方がいいよ。この人悪い噂が……確かメデューサってあだ名の……」
「あら、私のこと知ってるの?そう、私は3年の榊原マキ。人は私のことをメデューサって呼んでるらしいけど、なぜかしらねえ……」
 ニッと口元に薄笑いが浮かぶ。 

「今日は暑いわ。あなた達、ちょっとジュースでも買ってきてくれない?」
「……そうだわ、こんなに暑いんだから……裸で買いに行くってのはどう?」
「帰ろうヒトミ」
「う、うん」ユミに促されて、ヒトミも立ち上がりその場を去ろうとする。
 二人が走り出そうとした瞬間、背後から鋭い声が聞こえた。
「あなた達は動けないっ!!」
 その途端、ヒトミはまるで雷にでも撃たれたような衝撃を体に感じた。と、同時に動けなくなってしまった。
「あ、あれ?どーしたの?やだ、足動かないっ!!」
「あ……あたしも!!」
 二人は必死に体を動かそうとしたが、まるで自分の体ではないようにピクリとも動かない。
「ふふふ、そう、あなた達はもう動けない。体が石のように固まってしまってもう動けない。動かしてごらんなさい……もう体は絶対に動かない!!」
「ふふっ、落ちこぼれさん、私が催眠術のかけ方をじっくりと教えてあげる」
 そう言うとマキは動けなくなったヒトミの前に立ち、じっと顔を覗き込む。
「さあ、いい気持ちにしてあげるから私を見るのよ。私の目を見て。じーっと私の目を見てぇ……」
「…………」
「ほおら、頭がぼんやりとしてきたでしょう。あなたは練習のやりすぎで疲れているのよ……とっても疲れている……」
「ダメよヒトミ!!その人の目を見ちゃダメ!!」
 ユミが叫んだが、ヒトミはもう視線を外すことが出来なかった。
「ふふふ、無駄よ。目をそらそうとすればするほどじっと見てしまう。そうらだんだん瞼が重くなってきた……重ぉく、重ぉおおおくなってきた……」
 マキの命ずるままに、やがてヒトミの瞼がゆっくりと閉じていった。
「そおら、すっかり目が閉じた……もう私の声しか聞こえない」
「さあ真っ暗な闇の中に赤い小さな光が見えるでしょう。それは火よ。その火がだんだん大きくなって炎になるよ。ほうらほら、だんだん大きくなってきた」
「さあ暑くなってきたでしょう。とっても暑くなってきた……もう服を着てるのがつらくなるぐらいに暑くなってきた……」
「……あつい……」
 ヒトミの額に汗がにじみ始めた。
「さあ、暑いから服を脱ぎましょう。大丈夫よ、ここは誰もいない更衣室。ほらゆっくり目を開けてごらん。誰もいないでしょう……裸になっても何も恥ずかしいことはないのよ」

 ヒトミの目が開き、周りを見回す。と同時に、ほっと安堵の表情が浮かび、制服の上着をゆっくりと脱ぎ始めた。
「ヒトミ、目を覚まして!!」
 ユミの懸命な声もヒトミには全く聞こえる様子はない。

 上着が地面に落ち……次にスカート……そしてヒトミの手がブラのホックに掛かったその時……

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