HITOMI

ACT-03

作:kurukuru さん


 は〜い、ヒトミです。
 今日は朝から3学年合同での体育。
 ……といっても催眠教育の一環だから、ちょっと変わってるの。
 ふつーの体育だったら、あたし、けっこう自信あるんだけどなあ。
 それに、今日から赴任してきた女の先生が、なんかこわそうで……
「私が、今日からおまえ達の催眠実習のコーチを受け持つ……」

   
「岸田だっ!!」
「ひえっ、男言葉っ!!」
「ヒトミ知ってる。あのコーチね、前にいた学校ではバンパイアって呼ばれてたらしいのよ」
「バンパイアって……吸血鬼!?」
「まずは、おまえ達の実力を見る!!出席番号順にグループに分かれて……」

   
「催眠組体操だっ!!」
「さ、催眠組体操!?……なに!?なに!?何なの、それ!!」
「ヒトミぃ、少しはカリキュラムの事勉強しなさいよ。いい、催眠組体操って言うのはね、催眠暗示によって体を硬直させ、通常の肉体では完成不可能と思えるような組体操を演じる種目なのよ」
「ふへ〜〜っ」
 全校生徒が、ほぼ10人ずつに分かれ、それぞれのグループ内で暗示をかけるリーダーが決められる。
「えーーー、あたしが暗示をかける役なのーっ!!」
「そーよ、だって出席番号キリ番の人が暗示をかけるって、コーチが今言ってたでしょ。ヒトミ40番だから」
「あ〜ん、あたし自信ないよお」
「そこの一年のグループ、早くはじめんか!!」
「は、はいっ」
「よーし、こうなったら一か八か、やるしかないっ!!」
「ヒトミ、落ち着いて。一人ずつゆっくり予備催眠をかけていくのよ。私が後ろで支えてあげるから」
「う、うん、ありがとユミ」
「さあ、カオリ……体の力を抜いて。あたしの声に集中するのよ。そう……あたしの声だけを聞いて……」
「だんだん体が後ろへ引っ張られてくるよ。ほら、ほら、どんどん後ろへ引っ張られる……ぐぅーっと後ろへ……後ろへ倒れていくよ……ほぉら、ぐううっと……」
 ヒトミの暗示に従ってカオリの体がゆっくりと後ろへ倒れ始める。
(う、うん、いい感じよヒトミ。その調子)
 こうしてグループ全員をあらかじめ催眠状態にしておいて、難しいポーズをとらせたところで一気に硬直暗示をかけるのが催眠組体操を成功させるコツである。
 一人、また一人と順調にヒトミは催眠をかけ、ヒューマンタワーを組み立てていった。
(……今日のあたし、のってる!!……この調子で行けば……)
 と、ヒトミが思ったその時、
「ほーーっほっほっほっ」
「メデュ……さ、榊原先輩!!」
「そんなにのんびりやってるなら、私のグループに協力してくれないかしら」
「す、すごい……!!」
「こ、これは……D難度の技『亀塔』!!」
「き、きと……」「ヒトミ、大声で言わない!!」
「人を硬直させる事にかけては、あたしの右に出る者はいないのよ。ましてこの短時間で、この技を完成させられる人なんて。たとえあのお姉さまでも……」
「ヒトミ、気にしないで、早く続けよう!!」
「あ、……うん!!」
「あなた達、知ってる?あのコーチ、今度のヒュプノファイトの代表メンバーの強化の為に来たのよ」
「えっ!?ヒュプノ……!?」
「ヒュプノファイト。年に一度開かれる当学院の姉妹校との代表選手による催眠バトル大会……」
「そう、だから、私もメンバーに選ばれる為にコーチにいいところ見せなきゃいけないのよ……ね、分かるでしょ……」
「分かるはずよ……私の言うことをよぉく聞いて……あなた達は私の言うことがよぉく分かる……」
 いつの間にかヒトミ達は、榊原マキから目をそらせなくなってることに気づいた。
(しまった。また催眠術をかけられる……)
 ヒトミはそう思って目をそらそうとしたが、もう遅かった。マキの声が次第に心地よく頭に響いてくる。
「さあ二人とも、こっちへおいで……あなた達はとっても素直でいい子よ……だから喜んで私に協力してくれるの……そぉらおいで……おいで」
 ヒトミの意志が今まさに消えようとしたその時、

 
「ワアアアアアアーーーーーッ!!!」
 大歓声が起こった。

「な、何!?」
 ヒトミ達が正気に戻る。
「あれは!!」
「お姉さま!!」
「す、すごい人数の合体ヒューマンブリッジ!!こ、こんなの見たことない!!」
「幻の秘技……
ヒューマンゴールデンゲートブリッジ!!
「まさか、この短時間の間にこれだけの人数に……」
「さすが、お姉さまーっ!!」

 見とれているうちに、ヒトミたちのグループのタワーが揺らぎだす。
「誰だ!?このタワーの施術者は!!崩れるぞ!!」
「ヒトミ、ヤバイ!!」「え……!!」
「早く追加の暗示をかけるのよ!!」
「えっと、えっと、あなた達はもっと硬くなる、もっともっと……」
「イメージよ。何か強烈に硬い物のイメージを暗示として送り込むのよ」
「あ、そ、そーか、え〜と、え〜〜と……食べ残しのフランスパン……ダメ……そ、そうだ!!」
「あなた達は男の人の●●●●みたいに硬くなる〜!!」

 次の瞬間、ヒトミのグループのタワーは崩壊し、メンバーは全員が地に這いつくばっていた。
「そこまで!!」
「わ〜っ!!」
「……そこのタワーを崩した一年」
(ビクッ!!)「は、はいっ!!」
「グラウンドに残って、ヒューマンブリッジ1時間!!」
「ひ〜〜〜ん!!」

つづく