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ヒトミとユミは、他の生徒達の好奇の目にさらされながら、やっとのことで教員控え室の近くまでやってきた。 控室は教員ごとに個室になっている。 「北条」と名札のかかった部屋に一人近づいたヒトミは、ドアが少し開いているのに気づいた。 ちょっと隙間から中を覗く。 |
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「私は……マリア夢見坂の最後のステージのスタッフだったからな……」 そう言うと、エリカはコーチの方へ一歩踏み出した。 |
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エリカは、さっと金色のペンデュラムをコーチの目の前にぶら下げる。ペンデュラムは、薄暗い部屋に射し込む窓の光を反射して、強い輝きを放った。 「よぉく見て……キラキラ光ってとっても綺麗でしょう……」 「ゆったりとしてとってもいい気持ち……瞼がだんだん重くなってきます……重く重ぉく……でもまだ目を閉じてはだめ……光を見つめ続けるのよ……」 「輝きがどんどん強くなってきて、目を開けているのが辛くなってきた……そぉらそら、もう目を開けてるのが辛くてたまらない……」 サングラス越しなので、コーチの目の様子がよく見えないが、エリカには自信があった。 だが…… |
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催眠状態に入っていたと思ったコーチが、いきなり立ち上がりサングラスを外す。 エリカが驚いて体の動きを止めた一瞬、コーチの手がすっと伸びてエリカの頸動脈を押さえる。 エリカの顔がみるみる青ざめていく。 ヒトミは信じられなかった。この学院の教師クラスでも、エリカに瞬間的に催眠をかけられる者など数えるほどしかいないはず。 エリカの体がぐらりと傾きかける。 |
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ドアが勢いよく開き、ヒトミが飛び込んできてエリカの体を支える。 エリカの手をとったヒトミはギョッとした。まるで氷のように冷たくなっている。 たかが暗示で、人間の体にこれほどまでの変化を起こさせるなんて。ヒトミは今まで見たこともない催眠術の威力にぞっとした。 エリカに肩を貸し、ヒトミは教室ではなく、保健室へと向かう。 ヒトミはユミの言った言葉を思い出していた。 |