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〜それでも続く世界〜

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第40話「弔いの呼び水」




 病院に駆けつけた私と澄川はロビーで目を赤く腫らし椅子に座っている有希を見つけた。
「有希!!美世は……何処に居るの?案内して!!」
「…………」
 私の問いかけに有希は振り向きもせずに答えない。
「有希?」
「……行かない方がいい」
「……どうして!?」
「……即死だって……」
「!!」
 即死。その言葉で十分だった。体の力が一気に抜けていく気がした。
「屋上から落ちたから、遺体の損傷が激しくて……肉親以外の面会は無理だって……」
「…………」
「今、美世のお父さんとお母さんが行ってる……」



 何も言えない私に有希が呟くように話し出す。
「それなりにあることなんだって……退院寸前の患者さんの自殺って……」
 この言葉を聞いて私は過剰に反応した。
「美世はそんな事しない!!」
「私だってそう思いたいよ!!……でも実際……美世は……」
 有希はそこまで言って話すのを止める……こんな所で言い争ってもしょうがない……そんな事は分かっていた。涙がどんどん溢れてくる。何度も指でぬぐったけれど、止めることは出来ない。
「もっと美世に優しくすればよかった……澄川君のことで冷たくあたったし……死んでしまったのは私のせいかも……あの子の悩みをもっと聞いてあげれば……」
 有希は泣きながら何度も何度も後悔していた。それに対して私はただ「そんなことないよ」という事しか出来ない。
 今はただ、黙って泣くだけだった。



 そんな二人に澄川が有希に尋ねる。
「あのさ……遺書は無いんだよね」
「……え?……無いみたいだけど……」
「……澄川!!こんな時に何をいってるの?」
「…………」
 澄川は結局それ以上何も言わなかった。
 こうして私達は何もしないまま病院で朝を迎えた。
 もう病院にいてもどうしようもない。美世には会えないし、美世の両親にあったところで、ただイタズラに悲しみを増幅させるだけ。
 だから、私達は家に帰る事にした。



「……とりあえず今は寝ろよ……浅野さんの葬儀の手伝いに行くんだろ?」
 私に言葉を掛けながら澄川は出かける準備をしていた。
「……アンタはどうするの?」
「僕は少し出かけてくる」
「……こんな時によく出かけられるね……」
「こんな時だから出かけるんだ」
 澄川のそっけない態度に……というより、ここに居る事すべてが嫌悪感となった。張り詰めていたものが少しずつ口から漏れる。



「……ねぇ」
「何だよ」
「私達が仲良くしたから……罰が当たったのかな」
「はぁ?!」
「……確かに美世の頼みでココに居たけど……途中からどうでも良くなってたし……美世はそういう所は敏感に分かる子だから……」
 私のせいだ……何となくそう思う。美世には澄川とのことを言ってないけど、ココに来て確実に澄川と仲良くなったのは事実だから。
「何が言いたい?」
「……やっぱりこの家を出るね……」
 この言葉に澄川は大きくため息をついた。
「そんな事をしても意味が無いな……それで浅野に遠慮したつもりか?」
「…………」



「さっき、浅野の頼みでココに居るって言ったよな」
「…………」
 顔を背ける私に澄川は近づいてきて真正面に向かい合う。
「だったら、今度は僕の頼みだ。ココに居ろよ」
「……こんな時によくそんな事が言えるよね……」
「こんな時だから言うんだろ?……今、ココを出て行ったらお前はどうするんだ?」
「…………」
「街をフラフラ歩きながら、悲劇のヒロインでも気取るつもりか?」
「そんな……私は……」
「だったら、今は休め。堂々と浅野を送ってやろうじゃないか」
 澄川は私の両肩に手を置いて、にっこり微笑んだ。
「……強いね」
「……前も言ったが僕は強くない……自分に腹が立っているだけだ…………浅野がこうなったのも全て僕の責任だから……」
「えっ?」
 私は澄川が最後に呟いた言葉の意味が良く分からなかった。
「……浅野の葬儀には戻ってくる……じゃあな」
 それだけ言い残すと澄川は家を出た。



 一人になった部屋で考える。
 有希は『……澄川君のことで冷たくあたったし……死んでしまったのは私のせいかも……』と言って自分を責めた。
 澄川も『……浅野がこうなったのも全て僕の責任だから……』と呟いた。
そして私も自分のせいだと自分を責めた。
 ……もしかしたら生きている人間は死んだ人間に対して少しずつ死んだことへの責任を負うのかも知れない。
 独りでは背負いきれない悲しみをちょっとずつ分かち合うんだ。


 そして世界は今日も続いていく。


 私は寝る事にした。起きたら美世の家に行って何か出来る事があれば手伝おう。有希や澄川に少し感謝をしてベットに横たわった。






 2日後。美世のお葬式が行われた。沈痛な面持ちで担任の先生やクラスメイトも参列している。もちろんその中に私や有希もいた。
 『美世は死んだ』その事を認めなければいけない儀式。
 改めて死んだ人間には多くの人が関わっている事が分かる。一人だと思っていても実はこれだけの人が周りに居る。これを生きていたら美世に見せてあげたかった。
 美世……何故、自殺なんかしたの?
 その時、誰かが私の腕を掴む。慌てて振り向くと隣には澄川がいた。



 澄川は私の腕を引っ張ると、家の外まで連れ出した。
「一体なんなの?!今は葬儀の……」
 私の抗議を澄川は遮った。
「良く聞け……浅野はお前に隠していた事がある……」
「え?……何が言いたいの?」
「…………」
 なかなか結論を言おうとしない澄川に私は苛立った。しばらくして澄川は声のトーンを少し落とし話す。
「実は浅野は『Thread winter』に殺しの依頼をしていた……」
「殺し?!」
「……自分自身の殺害の依頼だ」
「!!!!」
「……だが、最近になって僕が依頼を取り消すように真田に頼んで、アイツも了承してくれた」
「…………」



 でも、美世は死んだ。
「……浅野美世は殺された可能性がある」
「……真田が殺したの?」
「……分からない……今、真田の行方が分からないんだ」
「!!……だったら、やっぱり……」
「分からん。この事は僕が調べる……」
「嫌!!私も手伝う!!」
 こうなったら何としても真田を探し出してホントの事を聞きだしてやる。



 しかし、澄川の答えは私の考えとは違っていた。
「駄目だ……上杉は自宅へ帰るんだ」
「何で?この前は澄川の家に居ていいって……それに、私だって……」
 言われた意味が分からず戸惑う。
「お前は松田元樹という人物を知っているだろ?」
「!!……何でアンタがその名前を……」
「2週間ぐらい前に彼を殺す依頼の話が出た」
「!!」
「その時も僕は無理だと伝え、真田も『この仕事はもう少し後に延期しよう。断るにしても依頼人を説得しなければならない』と言ってくれていた」
「…………」
「だけど、浅野の依頼が取り消されなかった以上、松田元樹って人も殺される可能性が……浅野の事が気に掛かるのは分かる。だが、今は生きている人間を優先して欲しい」
 元樹さんが殺される?……誰がそんなことを?……いや、考えなくても見当はついた。
「……わかった……家に帰る」
 美世の死が夏の終わりを告げる呼び水だったのかも知れない。





第40話 終わり



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第41話「……良かった」




 私は姉と戦わなくてはならない。元樹さんと守るために。
 何の変哲も無い木造二階建ての家。その前に立つ私。
 玄関のドアノブを握る。開きたくないドアがアッサリ開いた。
「あっ……」
 すると玄関には丁度、一番会いたくない相手、姉がいた。私を見ると途端に表情が曇る。
「亜衣ちゃん……どうしてここに……」
「……帰ってきたの……ここ、私の家だよね?」
 私の言葉を聞くと姉の表情が一変した。
「お帰りなさいっ!!そうだよね、ここは亜衣ちゃんの帰る場所だものね!!」
 満面の笑みを浮かべて姉は私の背中を軽く押して中へ招き入れる。廊下を歩きながら姉は呟くように言った。
「……きっと帰ってくると思ってた」
 その口ぶりはまるで私が帰ってくるのを確信しているかのようだった。



 姉に促されてリビングに入る。中には元樹さんがソファーに座っていた。
「あっ…………おかえり」
「あ、あの…………ただいま…………あぁ……良かった」
「…………何が?」
「……いえ……何でも……ないです……」
「…………」
「…………」
 会話が続かない。
 何だか必要以上に私が意識しているみたいだ。私達のぎこちないやり取りを姉は黙って観察している。
 ……とにかく元樹さんが生きていて良かった。



 姉はある程度、間を置いてから話しはじめる。
「じゃあ今日はお料理頑張るから、亜衣ちゃんも手伝ってね」
 本当に楽しそうな姉を見ると『こんなことなら、何回か帰ってやれば良かった』という考えが、一瞬頭を過ぎる。
 でも、その思いを慌てて打ち消す。恐らくこの人が元樹さん殺害を依頼したんだ。とりあえず依頼したという証拠を掴む為に、それと元樹さんに余計なプレッシャーを与えないためにも、暫くは黙って様子を見る事にした。



 私は今まで、自分がこの家に居ると最終的に元樹さんが邪魔になって彼が追い出されたり、殺されるのではないかと思っていた。だから家出したのだけれど、関係なかった。
 結局、姉は自分の気持ち次第でどうにかしてしまう。この家も両親も元樹さんもそして……私も。
 夜、少し豪勢な夕食を食べた。久しぶりにとる3人での食事。両親が死んで以後の楽しかったときが戻ったような気がする。昔はこうやって食べていたんだっけ……



 夕食後、リビングで少し話をしてから、自室に戻りこれからの事を考える。
 元樹さんは平日仕事をしていて会社にずっといるので昼間は大丈夫だと思う。問題は会社の行き帰りと寝ている間という事になる。だとしたら、やる事は……



 次の日、私は元樹さんに付いて行き会社への行き帰りを徹底的に見張る事にした。
「どうして付いてくるの?」
「えっ?……その……なんて言うか……社会見学?」
「ウソをついてた僕が言うのも悪いけど……ウソは良くないな」
「実は……姉と二人きりになるのが……苦手で……」
 私はウソをついた……いや、少しホントかも……これも見張る為だ、しかたない。
「……まぁ。今までの事もあるし、気まずいかもしれないけど……」
「だから、お願いします、会社への行き帰りだけでも家を出るきっかけを与えてくれませんか?」
「うーん………分かった。でも、僕が家に居るときは三人だから、法さんと一緒にいる時間も作る事。これ約束だよ」
「はい!!」
 夜は部屋の前を監視。
 昼間は元樹さんが会社へ行っている間に睡眠。昼夜逆転の生活が続いた。



 こうして一週間、特に怪しい気配もなく時間が流れた。
 何も起きない事から来る緊張の緩みと、慣れない昼夜逆転の生活に私は疲れて元樹さんの退勤時間に寝過ごしてしまった。
 目を覚まし携帯を見ると、駅へ着く時間を1時間オーバーしていた。
 慌てた私は自室を出てリビングに向かう。1時間も過ぎているのだからもう帰ってきてもいいはず。
 しかし、リビングにはソファーに座った姉しかいなかった。
「亜衣ちゃん、どうしたの?そんなに慌てて」
「元樹さんは?」
「まだ帰ってきてないけど……残業じゃないの?」
「そんなはずない。残業ならメールが届くはずだから」
「…………」
 私の言葉を聞いた姉の眉間にはわずかにシワが出来た。



「……ねぇ、亜衣ちゃん。あの人の事が気になる?」
「…………別に私は……」
「だったら、いいじゃない。それとも……私と一緒にいるのが嫌?」
「そうじゃないけど……」
 いつになく強気な態度の姉に私は戸惑った。
「私ね……いつもアナタとアノ人との間に起こったことを気にしてた……もしかしたら、亜衣ちゃんは普通に人を好きになれる人間なんじゃないかって……」
「………何を言ってるの?」
 私の問いを無視して姉は話し続ける。
「でも……私分かったの……あの人の事は関係ない……」
「…………」
「……私と亜衣ちゃんが二人だけになれば済む問題だった」
 そこまで言い終わると口元がわずかに歪む。
「だから……そんな事を気にするのも今日で最後だと思うよ」
「……今なんて言ったの!?」
「これからはこの家に二人っきりで住めるかもね」
「!!」
 やはり、姉は元樹さん殺害を依頼したんだ。私が帰ってきた目的もある程度分かった上で、この人は私に隙が出来るのを注意深く待っていたのだ。



 私は何も言わずに家を飛び出した。今は姉に関わっている暇はない、探す事に専念しよう。幸い、この一週間で通勤退勤時に襲われそうなポイントはだいたいチェックしてある。その一つ一つ探す。しかし、一向に見つからない。
「もう何処かへ連れて行かれたのかも……」
 諦めかけた時、遠くで這うようにこちらへ向かってくる何が見えた。
 紛れもなく元樹さんだった。私を見つけると動きが止まった。
 走って近寄ると、服のわき腹から血が滲んでいた。



「元樹さん!!」
「はは……やられたよ」
「今、救急車を呼びます!!」
 顔はすで真っ青というより白に近く、冷や汗もかいていた。元樹さんの向こう側には辿った後を示すかのように血の跡が出来ていた。
「……相手は女性だったから……何とか……振りほどいて……逃げてきた……」
「じっとしててください!!」
「……亜衣ちゃん……」
「もう喋らないで!!」
「……お姉さんを……許してやって欲しい……」
「……え?」
 元樹さんの口から出てきたのは意外な言葉だった。
「いつかは……法さんに捨てられるんじゃないかって……覚悟はしてた」
「…………」
「まさか……殺されそうになるとは……思わなかったけど……」
「……止めて……元樹さん……もっと怒っていいんだよ……」
 しかし、元樹さんは首を振る。
「……なんで?……好きだからなの?」
「…………」
 何も言わずに元樹さんは微笑んだ後、気絶した。
 暫くすると救急車が到着し、元樹さんは運ばれる。私は救急車へ乗り込み付き添う。幸運にも治療を受けた元樹さんは幸い命を取り留め、私は一晩中病室で看病した。



 次の日。家に帰った私は早速、本格的に荷物をまとめ、準備が終ると一階へ降りた。その先には姉がいて、私と姉は対峙する形になった。
 昨日は姉に先手を取られたが、今日は私がハッキリ言う。
「……良かった」
「えっ?」
「これでホントにアンタを見限る事が出来る……」
「!!」
「もう二度とこの家には帰らないから」
 私の最後通告を受けて、姉の顔色は真っ青になっていた。
「……行かないで」
 もうこれ以上この人と話しをする気はなかった。姉を無視して私は歩き出す。
「行かないで!!亜衣ちゃん……行かないで……」
 すがり付こうとする姉を振りほどいて私は家を出た。





第41話 終わり



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第42話「ご利用は計画的に」




 決心したものは変わらない。もうあの家には帰らない。今まで怖くて考えないようにしてきた選択肢を私は選んだ。
 それは夏休みも終わりに近づき、全てに答えが出始めた季節の終わりにした決心。



 澄川の家に帰った私は元樹さんの事件について話す。
「……そんな幸運があるのか?……」
 澄川は信じられないといった口調で私に言った。
「実際、元樹さんは確かに女に襲われたって……それに、澄川だって、失敗してるでしょ?」
「それはお前のせいだろ……オレは正式な社員でもないし、そのための訓練を受けたわけでもない……もしかしたら襲った相手はプロじゃないかもな」
「え?」
「逃げられるなんて……殺人に慣れていない者の犯行としか思えない……」
「…………」
「…………」
 澄川は考え込んだきり、それ以上は何も答えなかった。なにか心当たりでもあるのだろうか?
 しかし、それよりも、私には気になることがあった。



「それより澄川、真田は見つかったの?」
 真田という言葉を聞くと途端に澄川の表情が変わった。
「……あぁ」
「で?」
「……あぁ……」
「『あぁ……』だけじゃ分からない」
 澄川は言い淀んでいたけど、やがてゆっくり話し出した。
「真田は殺していないと言った……浅野さんは自殺だったらしい……目撃者がいた」
「……そう……」
 やっぱり美世は自殺だったのか……少しやりきれない気分になる。



「話はここからだ……良く聞け……その目撃者は……真田だ」
「!!……じゃあやっぱり……」
「恐らく……証拠はないが……自殺に追い込んだのはアイツだ」
 私達はどうしようもなくてただ、黙る。今すぐにでも真田の所へ行って殴ってやりたい気持ちだけど、そんな事をしても意味がない事は分かっていた。
 何もせず、ただ時間だけが過ぎる。
 やがて澄川は私に顔を向け、ハッキリとした口調で言い始めた。
「浅野さんのことで決心をした」
「決心?」
「『Thread winter』の仕事を辞める」
「!!」



 その言葉に私はどう反応したら良いか分からない。人殺しを止めるというのだから良い事なんだろうけど……後先を考えない澄川の発言に私は釈然としなかった。
「……で、でも皐月さんの入院費……お金はどうするの?」
「別の仕事を見つけて一日中働けば何とかなるだろう」
 澄川は事も無げに答えた。
「一日中働くって……学校だってあるのに何言ってるの?」
「学校は辞める」
「はぁ?そんなの無茶だよ」
「無茶でも真田の世話になるよりはましだ」
「……せめて高校ぐらいは出ておきなさいよ」
「時間の無駄だ」
「…………」
 澄川が仕事を辞めるというのは嬉しいけど、学校も辞めるというのは納得が行かない。
 かといって、皐月さんの事もあるからどうする訳にもいかないし。
 ……でも……だけど…………その時、私の中である考えが浮かんだ。



「だったら、私と契約しない?」
「?」
「私は両親の遺産の半分を自由に出来るの」
 訳が判らないといった様子で澄川は怪訝な表情を浮かべていた。
「私、雇い主。澄川、雇われる人、高校へ行く事が仕事」
「何言ってるんだお前……」
「……アンタにはココに居候させてもらってるし……恩返しをしたいじゃない?」
「……断る、お前には関係ない。オレは誰にも迷惑を掛けたくないし、オレが上杉にココへいてくれと頼んだんだ」
「…………」
「…………」
 多分、こんな発想は断られるだろうなとは思ったけど……今、私が澄川に出来る事をしてあげたい……だから……私は……



「……アンタだけが戦ってると思わないでよ!!」
「?」
 深く考えないで言った一言に次の言葉が続かない。それでも私は無理やりに続けた。
「……真田のせいで美世があんな事になったんだから私も無関係じゃない。真田の手を借りずに皐月さんを助るっていうアンタの手助けをしたい!!」
「…………」
「それと、もうすぐ新学期なのに教室に行ったら、親しい人が二人もいないなんて……嫌だよ……」
 多分、後で言った方が私の本音だと思う。



 一気に喋り少し息切れをしてしまった私を見て、澄川は軽くため息をつく。
「……で?時給はどれだけもらえるんだ?」
「え?……それじゃあ……」
「ただし、高校卒業したら少しずつでも返済するからな」
「え?……あっ……当たり前でしょ!!……『ご利用は計画的に』だから!!」
「お前、さっきはオレを雇うって……」
「あーもう、アンタは一々細かい!!人の挙げ足ばっか取らないで!!」
「趣味なんだ挙げ足取るの……って、物を投げるのは止めろ!!片付けるのはどうせオレなんだから!!」
 こんなやり取りがなんだか凄く落ち着いた。何事にも変え難い時間や関係がそこにはあったように見えた……



 2日後、澄川は真田へ会いに行くと言って家を出た。辞めることを告げに行くのだろう。
 そして、私は元樹さんのお見舞いに病院へ行った。彼は美世と同じ病院へ入院している。病室で見る限り元樹さんは元気そうだった。
 私はホントの事(姉が殺人依頼をしたこと)を言おうか迷ったけど、言うのは止めた……というかもう気付いてるし、これ以上ハッキリした証拠を突きつける必要は無いと思う。元樹さん自身も、退院したらあの家を出ると言っていた。



 元樹さんにお別れを言って、病院から帰ろうとしたけど、帰ってもする事が無い私はある行動を取る事にした。それは単なる気まぐれ……一目見ようを思っただけ。
 美浦皐月。話には聞いていたけど見る必要も無いと思ったし、普段は立ち入り禁止の場所だって聞いてたから、私は一度も彼女の顔を見たことが無かったのだ。
 エレベーターで7階までいくと、関係者以外立ち入り禁止の看板をくぐり、階段で8階へ行く。美世の話だと大きいガラス窓が壁代わりになっているのが皐月さんの病室らしい。階段を上りきると、少し歩いた場所に話の病室は存在していた。そっと中を覗き込む。



 ……しかし、病室はベッドが1つあるだけで誰も寝てはいなかった。不思議に思い、隅々まで良くみようとガラス窓に張り付く。だからだろう、近づく人影に気付かなかった。
「アナタは誰ですか?ココは関係者以外立ち入り禁止です!!」
 その声に私は驚いて後ろを振り返ると看護士さんが立っていた。
「あの……私は……美浦皐月さんの知り合いで……」
「美浦さんなら今、集中治療室で治療中です。面会謝絶なので会う事は出来ません」
「容体は良くないのでしょうか?」
「良くないから集中治療室にいるんです。こちらとしても最善を尽くしますからご安心を」
 突然の事だったのと、事の重大さに私は急いで病院を出て携帯を取り出す。この事を澄川は知っているのだとろうか?念のため私は澄川へ連絡を入れる。



 しかし、電源を切っているらしく、いつまで経っても繋がることは無かった。





第42話 終わり



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第43話「幸せを掴むため」




 とりあえず私は澄川の家に帰った。玄関のドアを開けようとしたけど、鍵が掛かっている。ポストの裏に置いてある鍵を取り出して鍵を開け、部屋に入った。
 部屋の中には誰もいない。私はとりあえず澄川を待つ事にした。



 二時間ほどして玄関のドアが開く。入ってきた澄川はとても疲れた表情を浮かべていた。
「……おかえり」
「…………」
 私を無視しているのか、気付かないのか、部屋に上がるとコップに水を入れ一気に飲み干した。私は澄川へ近寄る。
「……何で電話に出なかったの?」
「!!……なんだ……帰ってたのか……」
 澄川はホントに驚いているようだった。
「失礼な。帰ってきちゃあ駄目なわけ?」
「違うけど……あぁ……電話の事だったな……携帯は真田に返してきた……もともとあれは仕事用だったから」
「……そうだったの……ということは、仕事を辞める事が出来たの?」
「……まぁな」
「良かったじゃない!!……って、そんなことより皐月さんが大変なの!!」
「?」



 私は皐月さんが集中治療室で治療を受けている事を告げた。澄川の表情が厳しいモノに変わる。
「それは本当か!!」
「うん……さっ、早く行きなよ」
「分かった」
 澄川は再び玄関のドアを開けた。出て行く後姿を見て私は思わず声をかける。
「あっ、澄川」
「何?」
 いざ澄川を呼び止めたものの、何を言って良いのか分からない。そんな私を見て澄川は少し微笑んで一言言った。
「行ってきます」
「……行ってらっしゃい」
 ドアが閉まる。澄川は行ってしまった。
 でも、こんなやり取りで何故か安心できる自分がいる。何か二人だけの言葉……送り迎えの言葉……が欲しくて思わず呼び止めたに違いない。そして、私は澄川が皐月さんの元に行ってしまう寂しさを感じている事に気がついた。 あれ?……これじゃあ私がアイツを必要としてるみたいじゃない……



 澄川は2,3日経っても帰ってこなかった。私も元樹さんのお見舞いに病院へ行ったが、8階へ行くのを躊躇してしまう。皐月さんの心配をしている澄川を見ていられない気がしたのだ。
 独りの家に帰り、念のために二人分の食事を作る。しかし、澄川は帰って来ず、私は二食連続同じメニューを食べる日々が続いた。






 時間は過ぎ、8月31日。夏休みもあと一日で終ってしまう。結構、色々な事が起きた夏休み。そのほとんどが悲しい事だった。でも、私はココで生きている。何もすることが無いこの部屋で唯一出来る事……澄川の帰りを待って……
 明日から学校だというのが、せめてもの救いだった。これで昼間はやる事がある。



 そんな取り留めないこと事を考えていた夕暮れ。オレジン色に染まった部屋に突然、携帯が鳴り響く。着信音からしてメールだという事が分かる。画面を見ると、澄川からだった。
『今日、浅野美世について大事な話しがある。開かずの教室に22時』
 私の背筋に冷たいものが走る。確か、澄川は携帯を真田に返したと言っていた。だとすると、明らかに真田からのメールに違いない。私の直感は罠だと告げた。
 どうする?澄川に言う?……しかし、その考えはすぐに却下された。皐月さんの事で手一杯の澄川に負担を掛けたくない。
 暫く、私は自問自答を繰り返した。でも、最終的に出る答えは1つだった。



 ……私がやるしかない。このまま無視ることもできるけど、美世の事が絡んでくると話は別。いつかは真田と直接対決しなくてはならないと感じていた。夏休みの最後には丁度いいイベントだと思う。一度決心を決めると今度は体が震えてきた。武者震いなのか、恐怖なのかそれは良く分からない。
 だから私はベッドの下に手を入れ、目的の物が見つかると取り出した。それは澄川が仕事用に使っていたナイフ。これがあれば澄川がそばにいる気がする。



 外はすでに暗くなり時刻は21時を過ぎる。私は自分なりの正装として学校の制服を着る。出かけ際、次の日の朝食の用意をして冷蔵庫に入れた。
 今回は一人分……澄川の分だ。
 夜道を歩きながら逡巡する。自分の命がかかっている事を意識すると堪らなく恐怖に陥った。でも、美世の事を思うとじっとしていられない。そんな時、胸ポケットの中に入っているナイフがすごく心強かった。



 とうとう学校の前に着いてしまう。ここに入ってしまえばもう後戻りはできない。胸に手を当て一歩を踏み出す。それは覚悟を決めた一歩だった。
 夜の学校について考えてみれば、よくココで寝泊りしたし、あの時は夜の学校は私の味方だったような気がする。少なくとも今は違うけど。何も受け入れない冷たさがあった。昔はその冷たさが好きだったのに……



 階段を上り自分のクラスの前を通り過ぎる。
 このまま2つ教室をやり過ごすと『開かずの教室』だ。澄川と係わり合いを持った教室。「タラレバ」は言わない方がいいけど、あの時私が自分の教室でじっとしていれば、澄川の事も嫌ったままで、美世も死ななかったかもしれない。
 だから……今からの行動がほんの少しかもしれないけど罪滅ぼしになればいい。
 ついに『開かずの教室』のドアの前に立つ。私は大きく深呼吸をして高ぶる気持ちを落ち着かせる。ある程、気持ちの整理が着いたところでドアに手をかけた。すると、ドアはアッサリ開く。きっと、あらかじめ誰かがカギを開けたのだろう。きっと、その誰かと命を懸けた争いをする事になる。
 私は教室へと足を踏み入れた。





 僕は今日も家に帰らなかった。面会謝絶は相変らずだし、出来る事と言ったら集中治療室の前で待つ事だけ。何度も帰ろうとしたけど、家に帰ると待っている人がいるという事が皐月の裏切りになるような気がした。
 だから今日もただココに座っている。すでに外は暗くいつの間にか夜になっていた。病院もすでに消灯時間を過ぎて廊下には誰もいない。椅子に座りながら下を向く。こんな姿勢のままで今日も何時間か過ごす。



 何も考えずに下を向いていると、自分の足に影が重なるのが見えた。ゆっくり仰向くと目の間には真田がいた。
「よぉ、愛しい人の容体はどうだ?」
「……あんたに関係ない」
「つれない事を言うな。オレがこの病院まで運んでやったんだぞ」
「……それについては感謝してる。だが、その恩返しも十分したはずだ」
「オレはいつでもお前の味方だったつもりだろ?」
「……だったら浅野の事はどうなんだ!!」



 僕の言葉を聞くと真田は横を向いてため息をついた。
「……少し前、オレはお前に美世の自殺現場を見たと言ったな」
「…………」
「その場には美世を含めて4人の人間がいた。まずは美世。もう一人はオレ。そして三人目は……」
「黙れ!!くだらん話は聞きたくない!!」
「最後まで聞けよ、聞いて損は無いぜ……三人目は『Thread winter』の社長、そして四人目は……」
 僕は最後まで聞かずに立ち上がり、真田の胸倉を掴む。



「その場に誰がいたってどうでもいい!!問題はお前が美世を見殺しにしたって事だ!!」
 しかし、真田は話すのを止めない。
「……美世は『お前と皐月のために死ぬ』と言って死んだ」
「…………」
「オレもそれを望んでる……だから、だからこそ、お前達は幸せにならなくてはならない。そう思わないか?」
「……そんな事は分かっている!!」
「いや、分かってないな」
「どういう意味だ?」
「言葉通りの意味だが……お前が殺しを辞めるならそれでも良い。今までは皐月のためにお前が頑張ってきたんだ」
「?」
 真田の口元が一気に歪む。
「……だったら次はお前が楽をする番だろ?二人で幸せを掴むために」



「!!まさか……」
 僕は真田を押しのけ、急いで集中治療室のドアを抜けて、仕切られたカーテンを開ける。
 しかし、そこには……誰もいなかった。





 教室内は廊下に比べて少し暗く、人の気配がしない。周りの安全をある程度確認すると奥へと進む事にした。慎重に歩く。
教室の中ごろまで進んだ時、突然にドアの閉まる音がした。
 慌てて振り返ると、視界にドアの前にいる人影が入る。相手は私を観察しているのか動こうとしない。かなりの重圧が私を襲う。一歩たりとも見逃せない展開が続く……でも……この人は……誰?
しばらくして、向こうから話しかけてくる。



「なぁ、アンタが上杉亜衣やろ?」
聞きなれない言葉遣いに私は戸惑った。





第43話 終わり



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第44話「眠り姫」




 私はどんな時だって眠っていなければいけなかった。たとえ好きな人が違う誰かを見ていたとしても……



 二年前。
 目が覚めたのは、光彦に刺されてから一週間経った後だと聞いた。真っ先に白が私の目に映る。それが天井だと知るのに数秒かかった。まだ、体が痛くて動けない。そこへ看護師が私を覗き込んでくる。目が合うと、驚いてすぐに何処かへ行った。
 私は自分が何故ここにいるのか理解できずに私は茫然とする。
 その後、暫くして様子を見に来たのは病院の先生ではなく、殺し屋だった。



「よお、気分はどうだ?」
覗き込むように殺し屋は私を眺めてきた。思わず体が仰け反る。
「気分はあんまり良くないなぁ……あれ?私……たしか……刺されて……」
「だが、お前は生きている」
 ようやく記憶の前後関係を思い出した。生きていることが少し嬉しかったが、すぐにその感情には意味がない事に気付く。
「……結局、私はアンタに殺されるんやろ……」
「……オレはお前を殺す気は毛頭ないがな」
「?」



 殺し屋の気分がどうして変わったのかは良く分からないけど、助かったみたい。
「今、光彦を呼んできてやるから」
「!!……待って……まだ呼ばなくてええわ……」
 私はマトモに呼吸が出来なくなって、息を切らしながら話す。
「どうした?」
「……悪いけど……もう少し離れてくれへん?」
「……分かった……」
 殺し屋は私から2,3メートル離れた位置から話しかける。



「この前はオレと話しても平気だったのにな」
「我慢してた……どうせ死ぬんやから……必死やったし……」
「なるほどな」
「見た通りや……まだ……人が近づいたり触れられるのが……怖い……」
「…………」
「だから……アイツが来ても何もしてやれへん……」
 情けない話だけど、離れて話をしていても凄く緊張して気分が悪くなってきた。



 殺し屋は私の言葉を聞くと腕を組んで考え出す。しばらくして、私の方へ顔を向けた。
「わかった……だったらお前はこのまま寝たフリしてろ」
「え?!」
 突拍子もない事を言い出す殺し屋に私は戸惑った。
「何の話かサッパリわからへん」
「わかった、説明しよう……今現在、光彦はお前の入院費を稼ぐ為にある仕事をしている」
「そんなことせんで良いのに……」
「だったらお前が金を払うのか?」
「…………治って、退院したら必ず働いて返すから……」
「退院?病院を出てどうするつもりだ?人に触れられるのが怖いと言っている人間がどうやって働く?まして頼る人もいない、たった独りのお前に何が出来る?」
「…………」
 今の現状を突きつけられた私は黙ることしか出来ない。



「光彦はお前が目覚めるまで仕事を続けると言っていた。このままでいい。寝てさえいればお前は幸せになれる」
「…………でも」
「不安な日々に戻りたいのか?」
「…………わかった」
 結局、私は負けてしまった。光彦がいる時は寝たフリをした。
 この病室は私にとって世間と隔ててくれるシェルタ−だった。この中にいる限り最小限の人と接するだけで済むし、お金は光彦が払ってくれる。
 今まで生きて生きた中でもっとも平穏な日々が続く。人には会えないが、それでも良かった。一日に一回は必ず光彦が様子を見に来てくれたし、薄目を開いて垣間見ることができる彼の顔だけで十分だった。
 苦痛の渦から抜け出して手に入れた平穏は私にとってなによりの宝物。






 そんな関係が一年ほど続き、私の精神も少しずつ回復した。
 今では看護師さんやお医者さんに触れられても緊張しなくなったし、真田さんとも長い間話が出来るようになった。
 後、もう少し。もう少ししたら目を覚ましたフリをして光彦に会おう。そして、この病院を二人で出るんだ。私のささやかだけど叶えたい夢。
 しかし、神様はそう簡単には幸せにしてくれなかった。



 いつものように光彦が病室を覗き込んで暴れだすと、鎮静剤を打つために連れて行かれる。私は光彦がいない事を確認して起き上がろうとすると、視界の端に人影が入ってきた。急いで寝たフリをして薄目を開け、外を伺うと眼鏡をかけた女の子が私を覗き込んでいた。
 眼鏡の奥の目は真剣に私を見ている。よく分からないけど、私は寝たフリを続けた。
 少しして、落ち着きを取りもどした光彦が戻って来ると、女の子に話かける。
 気になったけど、すぐに女の子はいなくなったので、私の中で女の子は「すぐに忘れる人」になるはずだった。



 でも、この日以来、私は気が抜けない日々が続く。光彦だけじゃなく女の子まで来るようになったのがその理由だ。女の子は当初、私をいくらか眺めると(何故眺めていくかは分からないけど)帰って行くだけだったが、次第に光彦が居る時間に合わせて病室前に来るようになる。少しずつ仲良くなるのが傍目からも分かった。
 それでも、私はガラス一枚隔てた病室で二人の経過を見守るしか術はない。焦る心に『光彦を信じるしかない』……そう自分に言い聞かる。



 しかし、光彦はその女の子とキスをした。
 私はその光景を薄目を開けて見ていた……まるで、テレビのキスシーンを見るように……これは他人事だ……私には関係ない……必死で自分に対しての弁解を繰り返した。
 二人がいなくなってから私はベッドの中で丸くなり膝を抱える。何か凄く大切なものを失った気がして……涙が流れた。



好きな人が奪われようとしているのに見て見ぬフリをしました。

自分の平穏な生活を維持するために。

……本当に私は汚い人間です……

それでも……好きな人に好きであって欲しいと願い……泣きました。

私は好きな人を利用して今日も生きています。







「私が上杉亜也だけど……アナタがメールしたの?」
「まぁ、そういう事になるなぁ……まさか来るとは思わへんかったけど……」
教室がうす暗くて顔までは確認できないけど、上杉亜也である以上、殺すしかない。それが契約だから。
「真田はどうしたの!!」
「ここにはおらへんよ……病院にでも行ってるんとちがう?」
こんな状況になっても相手は強気な態度を見せていた。
「こっちも名乗ったんだから、そっちも名乗りなさい!!」
「……名乗ったってアンタ知らんと思うし、そんな意味無いことせえへんよ」
「…………」



 正直言ってこんな事、早く終らせたかった。私は殺すための武器を取り出す。
 それは確実に殺せるように真田から渡された拳銃だった。拳銃を見て一瞬、相手の表情が驚きに変わる。しかし、すぐに表情を元に戻し私を睨みつけてきた。
「もしかして……美世を殺したのは……」
「……アンタ、浅野美世の何なん?」
「……友達」
 友達にここまでしてもらえる浅野美世が少し羨ましくなった。きっと浅野美世は友達も多かったのだろう……私には光彦しかいないけど……



「そう……あの子は私が殺した」
「!!……それ本当?」
「本当やで」
「……そう……」
 上杉亜衣は私の返答を聞くと胸ポケットに手を入れ、ナイフを取り出した。
「そんなもんで私を殺せると思っとるの?こっちは拳銃やで」
「……だから?」
「え?」
「私はここに来る前から死ぬ事なんて覚悟してきた!!」


 そう叫ぶと同時に近くにあった椅子を投げつけてきた。私めがけて飛んできた椅子を腕で防ぐ。椅子が落ちると同時に私は発砲する。
 しかし、正面にはすでに姿はなく彼女は教卓奥に移動していた。
「無駄な抵抗って奴やな」
「…………」
 私は少しずつ教卓に近づいていった。





第44話 終わり



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第45話「夜を駆ける」




 誰もいない病室で僕は怒りに震えていた。
「これはどういうことだ。教えろよ」
「……さぁな、オレにも分からん」
「ふざけるなっ!!」
 僕は真田に掴みかかる。掴みかかったところで真田は動揺する気配すらない。
「『ふざけるな』だと?いい気なものだ……全て……お前のせいだとは思わないのか?」
「何?」
「お前が仕事を辞めるといわなかったら……浅野に関わらなかったら……皐月を刺さなかったら……何も起こらなかった」
 確かに僕の行動が色々な人へ影響を与え、身近な人も死んでしまった。正宗に人格を与えていた時期は誰とも仲良くならず、上手くいっていたような気がする。こうなったのも僕が自分を取りもどしたからだ……
「……でも」
「?」
「……僕は後悔していない。自分の選んだことだ」
「!!………………本当だな」
「ああ」



「これを聞いてもそういえるのか?」
「何が言いたい」
「……皐月はお前の代わりに仕事へ行った」
「?!……待てよ……皐月は……」
「ずっと前から目が覚めてたさ。お前が知らなかっただけだ」
「!!」
 意味が分からなかった……皐月が今まで僕を騙していたなんて……
「何故、それを知ってて今まで黙ってた!!」
「それが彼女の希望だったから」
「ウソをつくな!!」
「だからお前は甘いんだよ。彼女が目覚めたらすぐにでも幸せになれるとでも思ったのか?」
「!!……皐月は何処にいる!!場所はどこだ!!」
「学校……もう遅いと思うがな」
 僕は走り出していた。今は真実がどうのこうのじゃない。彼女を止めよう。話を聞くのはその後だ。





 初夏。キス以来、光彦が来る頻度が減った気がする。ここ最近、顕著になった。一日一回が二日に一回になり、ついには3日経っても私の前には現れない。
 きっと罰が当たったんだ。自分からは何もしないで幸せになろうとした罰。真田の話によれば友達と遊びに行ったみたい。あの子と行ったのだろうか?
「光彦が来なくて寂しいか?」
「別に。たまには遊びに行くのもええんちゃう?」
「余裕だな」
「…………」



 光彦がいなくなったら私は独り。初めは独りになってもしょうがないと思っていた。でも、時間が経つにつれて独りになるのが怖くなる。
 ……この病院から出なくなってどれ位経つだろう……もし、この病院を退院したら世の中は受け入れてくれるのだろうか?
 私をおいて世界はどんどん進んでいく。
「ホントはなぁ……めっちゃ怖い……」
「……だろうな」
 表情を変えずに事実確認かのような真田の口振り。
「我が儘かも知れへんけど……光彦がおらへんようになったら……私……」
「……確かにそれは我が儘だ」
「…………」
 真田は天井に向かってゆっくり煙をはくと、私と向き合う。
「光彦は今までお前のために頑張った……それはオレが保障する」
「分かるよ……光彦の顔が日を追うごとに険しくなっていったから……」



 私は少し前から光彦がどんな仕事をしているか知っている。こんな病室に入院できるんだからお金は相当掛かっているのだろう。だから、仕事内容を知った時に“驚き”と同時に“やっぱりな”という気持ちを持った。
「だったら、今度はお前が変わりにやってやる番じゃないのか?」
「…………」
「好きなんだろ?」
 この一言には逆らえない。
「……うん」
「だったら……わかるよな」
「……分かった……やる……」



 それから一週間以上経った暑い日。真田は病室のドアを乱暴に閉めると一言言った。
「光彦はもう殺しはしないといっている」
「…………」
 ……来るときが来た。
「お前を見捨てる気かもな」
「……しょうがないやん……私じゃあ何にもしてやれへんし……自業自得や」
 自嘲的に言った言葉に反応して、真田は私の肩を掴む。
「違うだろ!!」
「え?」
「自分の力で取りもどすんだ」
「……どうやって?」



 真田は私に一枚の写真を私に向けた。写真には見覚えのある顔が写っている。光彦とキスをした女の子だった。
「お前も知っているだろう」
「…………」
「……コイツを殺せ」
「!!」
「いつまでもココに居るわけにも行かないだろ?」
「…………」
「前から言い聞かせていたはずだ。アイツが駄目になったときは……」
 私は静かに頷いた。



 深夜、ある病室の前にいた。病室前の名札には「浅野美世」と書いてある。ここで始めて私は名前を知った。ドアを静に開ける。病室内は暗いのかと思えばベッドのスタンドライトが点いていて、眠れないのか読書をしていた。彼女はドアが開いた事に気付いてこっちを向く。
「見回りの方ですか?すいません。もうすぐ退院だと思ったら眠れなくて……」
 私は素早く室内に入った。
「!!」
 彼女は私を見ると悲鳴を上げるでもなく、大きく目を開いて動かなくない。
「はじめまして……や、無いよなぁ……」
「……皐月さん?」
「名前まで知っててくれたんや……だったら話は早いな。ちょっとついて来てくれへん?」
「…………」
「手荒なマネはしたくないんや」
「……わかりました」



 屋上へ階段を上る途中、彼女が口を開いた。
「いつ……目が覚めた……んですか?」
「……知りたい?」
「……はい」
「2年前」
「!!……澄川君はあなたの事を待ってましたよ」
「そんな事、知ってるわ……私だって会えるもんならとっくに会ってる……アンタなんかにキスなんかさせへん……」
「……全部知ってたんですね」
「知ってたけど……どうしようもなかったんや……」
「……ごめんなさい」
「…………別に謝らんでええよ……」



 屋上に着くと、すでに真田と冴木社長が待っていた。
「ようこそ。浅野美世さん」
「…………」
「ウチの会社はね、一度契約したサービスはキチンとこなさなきゃいけないんだよ」
 彼女はこの状況を見て、すべて察したようだ。
「……ここで私が逃げても……無駄なんですね」
「そうだよ無駄」
 冴木社長は淡々と答える。



「……」
「でも……逃がしてあげてもいいよ」
「え?」
 社長は醜悪な薄笑いを浮かべた。
「目の前に居る女の子と殺し合いをして、勝てばOK」
「!!」
目の前にいる女の子……私のことだ。
「社長、それでは話が違います!!」
「駄目、無駄、無理」
 すぐに真田が社長に訴える。でも、社長と呼ばれる人は聞く耳を持たなかった。
 私と浅野美世は向き合う。まさかの展開に私は戸惑った。彼女は私を凝視する。
「今まで私は皐月さんに勝ちたいと思っていました……澄川君の気持ちは私には向いていなかったから……だからここでアナタを殺せば彼は私のモノになる」
「…………」
 浅野美世の言葉を聞いて私は戦う準備をする。生き延びなければ……光彦に会わなければいけない。その気持ちは私だって同じだ。



 しかし、私の気持ちとは反対に彼女は険しい顔から一変、優しい顔になる。
「でも、そんな事はどうでもいいんです……皐月さん……目が覚めて良かったですね」
「……」
「澄川君とお幸せに」
 浅野美世はフェンスを上りだした。あっという間に向こう側へ移る。
「……なぁ……どういうつもり?」
「私が死なないと澄川君が困るんでしょ?」
「そんな事、簡単に決められるもんなん?」
「……簡単じゃないですよ……でも……だからこそ簡単に決めようと思って……」
 ……この場で思うことじゃないけど、微笑む彼女はとても綺麗だった。



 彼女は社長へと体を向けた。
「殺し合わなくったって最初から勝敗は付いてますから……私の負けです」
「…………」
 社長は黙って彼女を見つめている。
「私は……好きになった人を守るために死にます」
「……ふーん、つまんねー」
「笑わせるつもりもないですから……人を好きなるってそんな事じゃない」
「…………偽善者が……」
 私と真田は何も出来ずに立ち尽くした。薄笑いを浮かべていた社長は初めて難しい顔をする。誰も動けない。
 一人の少女に私達はこの場を完全に支配されていた。



「……喋りすぎだね……うざい……誰かアイツを撃ち殺してよ……」
「寂しい人……アナタには自分のために死んでくれる人はいますか?」
「はぁ?……真田!!早く撃ち殺すんだ!!」
「……拳銃なんて持ってませんよ」
「使えない奴だ!!……だったら、僕がやってあげるよ」
 社長は背広の懐に手を入れると拳銃を取り出し、浅野美世へ向けるが、それより少し早く彼女は屋上から足を踏み出す。
 飛び降りる瞬間、彼女の口が微かに動いた。
「……みんな……ごめんね」
 視界から消えるまでの動作がすごくゆっくりに感じられ、私の手が自然に彼女に向かって伸びた。しかし、私の手はフェンスにぶつかる。
「!!」
 私はどうしようもない後悔と敗北感に襲われた。



 数秒後、鈍い音が屋上に届いた。
 無言で社長は立ち去り、屋上には私と真田が残る。
「死んで好きな人を守るだって?……ふざけるな!!」
「…………」
 何度も屋上のフェンスを殴りながら真田は呟いた。
「皐月……ホントに愛しい人を守りたいなら死ぬな。たとえ……それが人として間違ったことだとしても……生きるんだ……」





 私は少しずつ慎重に教卓に近づいていった。
「どうする気か知らへんけど、もう終わりやで」
「…………」
 次の瞬間、教卓ごと突っ込んできた。何発か発砲するけど、教卓の勢いは止まらずに私へ近づく。駄目だと思った寸前、教卓は横に逸れ上杉亜衣は倒れこむ。肩をおさえている姿を見ると弾は彼女に命中したようだ。
「これで終わりやな」
 ゆっくり銃口を上杉亜衣に向ける。後は引鉄を……
「?」
 彼女が持っていたナイフがたまたま目に入る。そのナイフには見覚えがあった。見間違うはずがない……これは私のナイフだ。何でこの子が持ってるの?
「このナイフ、アナタのもん?」
「……アンタには関係ないでしょ」
「答えて!!答えへんと撃つで!!」
「答えても撃つくせに……このナイフは知り合いのものだけど……」
「…………そいつの事好きなん?」
「……かもね」
「!!」



 その瞬間彼女は私の足首を掴んで、引っ張った。私はバランスを崩して倒れ、弾みで拳銃を手放してしまう。拳銃は遠くへ滑っていく。気が付くと上杉亜衣は私へ馬乗りになっていた。
「形勢逆転……だよね……」
「…………」
「さっきの言葉はウソ。私はそいつの事は何とも思ってないよ……だって、澄川はこのナイフの元持ち主が好きだから……ってこんな事あんたに言っても無駄か……」
「!!」
 彼女の振り上げたナイフは光彦が私を刺したあの時のまま。
 殺される寸前でも『光彦は大切にしててくれてたんや』なんて考えていた。ナイフから光彦の愛情が伝わってくる。最初から光彦を疑う必要なんて無かった。迫るナイフに私は涙が溢れ、自然に口から言葉が漏れる。
「……光彦……ごめん」





第45話 終わり



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第46話「赤色の街」




 走り行く澄川を見送って、オレはタバコを取り出す。これを吸ったら動くとしよう。
「何故、彼に場所を教えたんですか?」
「……有田」
 声の方向へ振り向くと、『Thread winter』の受付嬢、有田が立っていた。
「依頼を阻止されるかもしれませんよ」
「……構わないさ」
「…………」



 こんな事を彼女に言う義理はないが、オレは自分への確認のためにも話す事にした。
「少し前、オレは自分の教え子を見殺しにしてしまった」
「……自分を殺して欲しいと言っていた女の子ですか?」
「あぁ。アイツ……死ぬ間際に『アナタには自分のために死んでくれる人はいますか?』と言った……」
「…………」
「オレは教師で……アイツ等を導いているつもりだったが……どうやら反対だったらしい……オレにも昔、自分のために死んでくれた人達がいた……」
「……白井課長親子のことですか?」
「知ってるのか」
 有田は頷いた。



「オレは……優を助けられなかったことをいつも後悔し続けて……澄川に自分を重ね合わせて……誤魔化してた……」
「…………」
「だからココへ確かめに……そして……澄川は自分のした事を後悔していないと言った……オレとアイツの違いってなんだろう……分からないんだ……」
 オレの問いかけにもならない問いかけに有田は率直に答える。
「……私は真田さんと彼に違いは無いと思います」
「……そうか……やっぱりな……オレもそう思う……だから、後悔するのは止めた」
「真田さん……だから私……ココに来たんですよ」
「?」
「行く気なんでしょ?」
「……何の事だ?」
「誤魔化さないでください」
 有田はオレを見据えたと思うと、突然頭を下げた。
「すいません。私達も知っていたのに何も出来なかった……でも、真田さんが動くなら一緒に行かせてください」
 有田の言葉を合図に周りから数人の影が姿を現す。どいつも見覚えのある顔ばかりだった。



「お前達……何を考えている」
「真田さん、言ったでしょ?『もし困った事があったら言ってくださいね……私達もここの社員ですから覚悟は出来てます』って」
 オレを囲んでいるのは事務所の人間全員だった。
「……明日から事務所はどうするつもりだ?これじゃあ、誰もいなくなるじゃないか」
「社長がいなくなれば、営業してる場合じゃないでしょ?」
「……お前たち……もうちょっと要領良く生きろよ」
「疲れました……要領良く生きるの」
「……オレもだ」





「……光彦……ごめん」
「!!」
 私は聞き覚えのある名前に反応してナイフを軌道修正し、彼女の真横を通過させて床に突き刺す。彼女は何が起こったか分からずに茫然としていたが、しばらくして口を開いた。
「……どういう事……」
「今なんて言った?光彦?……アナタ……澄川の事を知ってるの?」
 私の問いかけに彼女は横を向いて呟くように言う。
「それは私が光彦に渡したナイフや……」
「!!……じゃあ、アナタは……美浦皐月!!」
 彼女……美浦皐月は頷く。この時点で私は彼女を殺さなくてはいけない理由の半分以上を失った。



 私は皐月さんから離れる。彼女はゆっくり起き上がり、私を見つめた。
「話してくれる?何故、皐月さんがココにいるか」
「…………」
 少しずつ彼女は自分の事を話し始めた。
 刺され入院した後、意識を取戻したけど人と接するのが怖くて罪悪感を抱きながら澄川を騙し続けた事や、美世の最後まで、彼女の知っている範囲の話を聞く。
 直接、美世を殺したわけではないけど、皐月さんは間接的に関与していた。
「私は……見殺しにしたんや……こんな酷いことしてもな……彼女は光彦のために死んでくれたんや……私には出来へん……勝負は私の負けやった……」



 皐月さんは酷く落ち込んでいる。彼女も自分なりに思うところがあるのだろう。深刻そうな横顔を見ると私は彼女を励ましたいと思えてくる。
「……美世が死んだのは澄川の為だけじゃないよ」
「え?」
「だって、死ぬ間際に『みんな……ごめんね』って言ったわけで……何だかんだ言って……皐月さんや真田の為にもしたことだと思う」
「…………」
「あの子結構、周りに気を使うから」
「…………」
「落ち込むことないって」
 こんな事を言いながら「慰めて欲しいのは私だよ」なんて思ってしまう。
「それにしても……私が皐月さんに殺されそうになるなんて……」
「初めは……松田元樹っていう人を殺すように言われてたんやけど……依頼人が途中でターゲットを上杉さんに変更してきたんや……」
「……それって……もしかして……」



 静まった教室に遠くからの足音が聞こえる。私は少し身構えた。皐月さんも黙ってドアを凝視する。足音はこの教室の前で止まり、私達に緊張が走る。勢いよく開けられたドアが開くと、そこには見覚えのある人物が入ってきた。
「皐月!!」
「えっ?澄川?!」
 澄川は私の姿に驚く。
「上杉……何でここに?」
「それはこっちのセリフ。よくここが分かったね」
「……真田に聞いたんだ」
「…………」
 しかし、澄川の視線はすでに私にはなく、隣にいる皐月さんを見ていた。



「どういうことなんだ?説明してくれ」
「…………」
 問い詰められた皐月さんは怯えて何も答えられない。二人のやり取りに私は口を挟む。
「あのね、これには事情が……」
「上杉は黙っててくれ……これは二人の問題なんだ」
 『二人の問題』という言葉に私は何か言う術を失った。
「なぁ、皐月……教えてくれよ……なんでこんな事をしたんだ?」
「……ごめん……ごめんな……」
「謝られてもわからない」
「…………」
 澄川に責められて皐月さんは今にも泣き出しそうだった。彼女だって本当はもっと感動的な再会を夢見てたに違いない。そんな皐月さんを見ていられなくなった。



「澄川……」
「黙っていてくれ」
「黙らない!!」
「…………」
 澄川と皐月さんは私を見つめる。
「アンタはどうだったの?」
「何が?」
「人殺しをした気分」
 澄川は眉をひそめる。皐月さんもキョトンとして、私の言ってる事が良く分からないみたいだ。
「……どういう意味だ」
「アンタは真夜中、洗面所で吐き気に襲われてでも人殺しをしていたんだから分かるでしょ?皐月さんだって……アンタの為にこんな事をしたんじゃないの?」
「……確かにそうだが……僕は……皐月だけにはこんな事させたくなかった……」
 私達は何を話すでもなく黙り込む。皐月さんが話し出すのを待っているのだ。
 皐月さんが再び話し出すまでの時間が私達には長く感じられた。
「ごめんな……私が悪かったと思う……ずっと黙ってたし……でも……でもな……私……」
「…………」
 皐月さんが必死に言葉を探している。
 ……にも関わらず、澄川は私達では無くその先を見つめていた。



「どうしたの?澄川……」
 澄川は突然、こっちに向かって走り出す。そして、私の肩を掴んで押しのけるように駆け抜けた。私はただ真横に飛ばされ、壁に体を打ちつける。
 次の瞬間、銃声が響き渡った。
「!!」
 スローに時間は流れ出し、澄川はゆっくりその場に崩れ落ちる。澄川の向こう側に見えたのは…………姉だった。
「結局、自分でやるしかないみたいね……ホントに役立たずな人達」
「…………」
「こっちを向きなさい、亜衣」
 姉はさっきの格闘で弾き飛ばした拳銃を持っていて、私に銃口を向けた。
「す…………澄川!!」
 私は澄川に駆け寄り傷の具合を見る。近くにいる皐月さんはその場で動けないでいた。
「大丈夫か澄川!!今、救急車を呼んでやるから!!」
「……お前は……大丈夫か?……」
「バカッ!!今は自分の心配をしなさい!!」
 私達のやり取りとは別に後ろで声がする。
「言う事を聞いて、こっちを向きなさい!!それとも死にたいの?」
「……上杉さん、あの人が……」



 澄川の服を脱がせる。血液はどんどん溢れんかの勢いで流れていた。
「……澄川っ!!血が止まらない……」
「亜衣、無視しないで!!」
「皐月さんも傷口を押さえて!!早く!!……止まらない」
「でも……拳銃を持ったあの人が……」
「そんな事よりこっちが先!!」
「!!」
「でも……」
「もうあの人は関係ない人だから……澄川しっかりしろ!!」



 その言葉と同時に姉は私達に向かって発砲した。しかし、弾は逸れ床やガラスを割る。
「そんなにその男が大事?……アナタにとって何なの!!」
「……関係ないでしょ」
「答えなさい!!」
「…………」
 姉は再び発砲し、弾は皐月さんの肩を掠める。
「痛っ!!」
「……チッ……外れた……もう一回」
「止めて!!その人は関係ない!!」
「だったら答えなさい!!」
「…………」
「早く!!」



「……澄川は……私にとって……」
「…………」
「アンタなんかよりよっぽど大切で!!……掛替えの無くて!!……今、一番失いたくない人だよ!!」
「!!」
 誤魔化そうと思えばいくらでも誤魔化せたと思う。でも……この状況で自分の気持ちを偽る事は出来ない。
 そして……何よりも……姉にハッキリとした意思表示が必要だと感じた。
「……なんで?……私じゃ駄目なの?……アナタのためなら何でもしてきたのに……」
「……アンタなんか……絶対、好きにならない……一生独りでいれば良い」
「…………嫌わないで……お願い」



 姉はその場に崩れ落ちるようにして座り込む。私は無視して澄川を介抱していた。
「あっ!!……上杉さん……お姉さんが……」
「?」
 振り向くと姉は自分の頭に拳銃を当てていた。とっさに駆け寄る。
 しかし。姉は引き金を引いた。
「!!」
 ガチッ。
 拳銃は予想を反した音を上げ、辺りは静まる。
 姉はまだ生きていた。その後、狂ったように何度も引き金を引くが、一向に弾は出ない。



 事の結末を待っていたかのように救急車のサイレンが聞こえてきた。





第46話 終わり



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第47話「幸せの行方」




「なぁ……光彦。朝〜!!はよ起きな遅刻するで!!」
「…………」
 呼ばれるままに目を覚ます。見慣れた天井。ここは僕の部屋だ。視界の端では覗き込む皐月の姿が見える。
「あっ、やっと起きたな。いっも言っとるやん、早く寝やなあかんって」
「…………」
「……ん?どうしたん?……もしかして、まだ寝ぼけとる?しょうがないなぁ……顔洗ってシャキッとせなあかんな」
「あ……あぁ……」



 洗面所へ行き顔を洗う。大して冷たくもない水に一向に眠気は覚めない。鏡越しに見える皐月は手際よく朝食の準備をしていた。タオルで顔を拭くとキッチンへ行き椅子に座る。
 炊き立てのご飯に味噌汁、それに焼き魚、日本の朝食。
「我ながらメッチャ上手くできたやん!!いっただきま〜す!!」
 僕もつられて食べ始める……確かに美味しい。
「どう?美味しい?」
「……うん」
 すると皐月はこれでもかというほどの笑みを浮かべた。
「今日から学校行くんやから、しっかり食べなあんで」
「……あぁ」



 朝食を食べ終え、学校へ行く準備して靴を履く。後ろには見送ろうと皐月が立っていた。僕は振り向き彼女に尋ねる。
「あのさ…… 僕達……これでよかったんだよな」
「はぁ?何言っとんの?ええに決まっとるやん」
「良かった」
 安心して下を向いた瞬間、皐月は僕の額にキスをした。
「!!」
「……こんな事しか出来やんけど、頑張って勉強してな!!私も仕事頑張るから!!」
「…………ああ!!いってきます!!」



 季節は秋。ずいぶん周りの景色も変わった。僕は久しぶりの学校という事もあって、登校している人たちに混ざって歩くのが少し気恥ずかしい。クラスに僕の居場所はあるのだろうか……って良く考えたら元々そんなものは無かった。いつも誰とも関わらずに過ごしていたから……
「おはよ〜!!澄川君!!」
「えっ?」
 後ろを振りかえると、上杉亜衣と吉田有希が僕に向かって手を振っていた。
「ねー、ねー、澄川君、久しぶりの登校はどう?嬉しい?緊張する?それとも気持ち悪い?」
「有希、そんな矢継ぎ早に質問しても澄川が困るだけだよ」
「あっ、そっか」
「まぁ、それは置いておいて……澄川、聞いてくれる?さっき有希がね……」
「ちょっと!!それは言わないでって頼んだでしょ!!」
「そうだっけ?」
「もう!!澄川君からもなんか言ってやってよ!!ホント、口が軽いっ!!」  いつの間にか僕をはさんで上杉と吉田が一緒に歩いている。二人が争うように話しかけてきた……なんだか嬉しい。皐月だけじゃなくて僕を受け入れてくれる人がいる事に感謝したい気分だ。



「そうだ、今日のお昼は屋上で皆そろってお弁当食べようか?」
「いいねぇ。私は有希に賛成!!澄川は?」
「……わかったよ」
「じゃあ決まりだね!!」
 上機嫌の吉田はそのままスキップして僕らの数歩前を進む。二人並んで歩く格好になった上杉に確かめたい事があった。
「なぁ、上杉」
「ん?何?」
「こんなに幸せでいいのかな」
「何言ってんの?いいに決まってるじゃん。今までの分取り戻そ」
「……そうだな」
 ……『今まで分』か
 ……あれ?……今までって……僕は何してたんだっけ?



 いつの間にか教室の前に立っていた。僕は緊張してドアを開けるのをためらう。そんな姿を見て上杉は教室のドアを開けた。
「怖がらないで。ここではみんな澄川を受け入れてくれるから」
「……ありがとう」
 一歩、教室へ踏み出す。久しぶり教室。なんだか他人の部屋にお邪魔するような感覚。だけど、自分の席は何となく覚えていてすぐに辿りつく。席に座って周りを見渡す。見慣れない見慣れた風景……その中に見えた一人の女の子。
「あっ……」
「……澄川君……おはよう」
 恥ずかしがりながら挨拶した女の子は……浅野美世だった。



 そして僕は理解する……これは夢……都合よすぎると思ったよ。
 ……でも、いいじゃないか……覚めなければ……それも現実。
 僕は返事をする。
「浅野、おはよう」





 心拍が表示されたモニターには定期的な波があらわれ、命がそこにある事を示している。私の目の前には眠っている光彦が静かな寝息を立てていた。
 あの事件からすでにかなりの時間が経っている。あの後、私の指示で自分が入院していた病院へ救急車は向かった。緊急手術により一命をとりとめた光彦は、8階特別病棟で入院する事になる。丁度、私と入れ違いになった形だ。手術は成功し、後は麻酔がきれて目を覚ますだけだったが、3日経っても目を覚まさず、一週間、二週間たっても状況は変わらなかった。
 そして、一ヶ月。今も眠り続けている。傷口は順調に治り、外見も正常なはずなのに目を覚ますことは無い。



 私は光彦の隣にいる。毎日、毎日何をするでもなく眺めるだけ。きっと光彦は私の事を怒っているのだろうと思う。だから、目を覚まさないんだ。償う術も見つからず今日も彼のそばにいる。
 ふと気付くと私の後ろには上杉さんが立っていた。窓から見える景色もいつの間にかオレンジ色にそまってる。
「なんや……来てたんか……」
「うん……」
「…………」
「今日も起きない?」
「……見た通りや」
 会話が続かない。



 彼女は私に気を遣ったのか他の話題を振る。
「新聞見た?」
「……うん。読んだで」
「真田……凶悪犯扱いだね……」
「……しょうがないやん。アレだけ人を殺したんやから……」
 一ヶ月前、私達が病院に向かっていた時、真田さんは『Thread winter』の社長、冴木の自宅を襲撃。社長やボディーガードを含め7人が殺された。警察は駆けつけた時に現場で一人佇む真田さんを逮捕する。高校教師が起こした大量殺人事件なだけに、マスコミはこぞって取り上げ、社会問題にもなった。世間は教師のモラルだとか快楽殺人がどうだとか騒ぐ。
 でも、『Thread winter』のもうひとつの仕事については取り上げられる事は無かった。どこからか圧力が掛かったのかもしれない。
「……何であんな事したんだろ……」
「さぁ……私が分かっとるのは、殺された社長が相当悪い奴やったって事ぐらいやなぁ」
「…………」
「…………」
 静まった病室に彼女の力なく言った言葉が響く。
「……『Thread winter』に関わった人は……皆、不幸になっていくね……」
 目の前にいる上杉さんや真田さん、浅野美世、そして光彦。不幸の連鎖は止まらない。きっとこれからも不幸が続くのかもしれない……そう思うと自然に言葉が溢れる。



「……光彦はそっとしてやるのがええのかもしれへんなぁ……」
「!!」
「実際、光彦が起きへんのは起きたって何もええことあらへんって分かってるからかもしれへんし……このままが正解かもな……それにこうやって寝とる光彦を眺めるのも悪くあらへん……言い争う事も無いしな……」
 偽らざる私の本音だった。
 しかし、私の言葉を聞いた上杉さんは体を強張らせる。
「どうしたん?」
「…………」
 黙ったまま小刻みに震えていて、何かに耐えているかのようだった。やがて、搾り出すかのように呟く。
「許さない……」
「え?」



 突然、彼女は足を振り上げたと思うと、ベッドを勢いよく蹴っ飛ばした。
「起きなさい!!」
「!!……ちょっと……上杉さん?」
「起きなさいよ!!」
「どうしたの!?止めて!!」
 いきなりの上杉さんの行動に私は慌てた。彼女は光彦の胸倉を掴んで揺さぶる。
「起きろって言ってんだろ!!」
「上杉さん、落ち着いて!!」
「……澄川……アンタはもう目を覚まさす気がないのかもしれない……だけど……そんなの絶対、私が許さない!!」
「もうええやん!!光彦を眠らせてやって!!」
 上杉さんの腕を掴んで顔を覗き込む……彼女は涙を流していた。
「確かに起きたって良い事なんか無いかもしれないけど……私はアンタを引きずってでもこの世界に……どんなに辛い事があっても……続きがある事を教えてやるんだ!!」
 数人の看護師が病室に入り、上杉さんを取り押さえる。病室から出て行くまで言葉にならない、わめき声を上げていた。



 一人病室に残され光彦の衣服を整え布団をかける。それが終り、椅子に腰掛けると私は考えてみた。
 光彦が撃たれた時、上杉さんは自分が殺されるかもしれないというのに臆せず彼の介抱をした。私はといえは拳銃を持った依頼人に怯えて動く事すら出来なかった。
 そして今、私は光彦にこれ以上辛い思いをしたくないから起きて欲しくないと思い、彼女は辛くても起きろと言った。
 どちらが正しいのか……
「…………」
 いや、多分正解は無い。
 ……でも、「光彦には上杉さんのほうが相応しいんじゃないか」と頭を過ぎる。
『アンタなんかよりよっぽど大切で!!……掛替えの無くて!!……今、一番失いたくない人だよ!!』
 上杉さんの言葉が引っかかっている私がいた。まだ彼女に真意は確かめてない。怖くて聞けないのだ。
 彼女がもし光彦のことが好きだといえば……私は独りになる……
 そこまで考えると私はため息が出た。
 なんだ……結局……私は自分の事しか考えてない。凄くいやな奴だ。
 でも……もう私には光彦しかいないから……



 彼は目覚めたときに私を選んでくれるのだろうか……





第47話 終わり



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第48話「元気を出して」




 他の人格に人生をまかせながら生きていた時、ずっと思ってた。
『今度送る人生はずっと笑っていられるものにしたい』
 でも、そんな人生ありえない。
 諦めていた……



「さすが皐月さんね、この玉子焼き美味しい」
「上杉、勝手に食べるの止めろよ」
「良いじゃん。私のあげるからさ」
「上杉の料理は食べ飽きた」
「…………」
 僕らのやり取りを見て浅野が止めに入る。
「まぁまぁ、二人ともケンカしないで」
「そうだよ亜衣、自分の食べなさい。さあ、澄川君、私のお弁当食べて♪」
 壮大なボリュームのお弁当が僕の前に出された。これを食べるのか……



「有希のおかず貰いっ!!」
 上杉の箸が吉田の弁当へ向かう。
「あーっ!!亜衣!!てめー、自分の食べろって言ってんだろ!!」
「有希ちゃん……澄川の前だよ」
「あっ……」
「有希〜、そんな隠なくたってもうバレてるって」
「誰のせいでこうなったと思ってんだよ!!」
「ほらほら、また地が出たよ」
「…………」
 慌てて取り繕う吉田。それをジト目で見つめる上杉。目が点になってる浅野。
クスクス、アハハハ、フフフ、自然に笑い声が出てくる。



 僕らは今日もこうやって昼休み屋上で弁当を食べていた。天気はいつも快晴で、季節はいつまでも秋。殺しの仕事も無ければ、悲しい事もない。
全てが満たされた世界。とうとう手に入れた。
 居心地は最高で僕等はいつも笑ってる。





 病室を前にして少し躊躇する。私はあんまり歓迎されていないからだ。
 ドアをノックする。すると奥から「どうぞ」と聞こえたのでドアを少し開け、顔を出す。
「入っていい?」
「なんだ、亜衣ちゃんか。入って、入って」
 付き添いの元樹さんは笑顔で迎えてくれた。その奥で動く影。後ろに隠れて震えている。
「法ちゃん。怖がらなくていいよ。あのお姉ちゃんはもう怒らないから」
「……でも……あのお姉ちゃん……怖い……」
 私を「お姉ちゃん」と呼んで、元樹さんの肩越しから伺っているのは……姉だ。
 姉はあの後、警察にも捕まる事はなかった。警察を呼ぶと澄川の素性がばれるという配慮からだったが、この事が裏目に出る。
 家に帰った姉は独りになると自殺未遂を繰り返し心身喪失状態に陥り、自らの精神状態を守るために幼児後退をしてしまったのだ。



 元樹さんの言葉にも関わらず、姉は私を怖がって彼のそばから離れようとしない。私は少し離れた所に椅子を置き腰掛ける。元樹さんは震える姉を安心させようと何度も頭を撫でていた。
こうなったのも恐らく私のせいだ……しかし、元樹さんはこう言ってくれる。
「法さんには悪いけど……亜衣ちゃんには感謝してる」
「え?」
「だって……こうやってこの子は僕を頼りにしてくれるんだ……幸せだよ……」
「…………」
 確かに姉は元樹さんを信用しきっている。
昔から姉はいい子で通してきた。それは同時に誰の手も煩わせることなく一人で頑張ってきたという事……心の底では頼ることが出来る人を探していたのかもしれない。



「どうした?なんか悩み事でもあるの?」
「…………」
「最近、毎日のように来るじゃないか……澄川君のところへは行かないのかい?」
「……私は行かない方がいいんです」
「……どういうこと?よかったら話してみない?」
 元樹さんは私にまで優しく微笑んでくれる。情けないかもしれないけど、元樹さんに今の真情を吐露した。



 この前、私は寝ている澄川に起きろと言った。もちろん、「澄川に起きて欲しい」という気持ちもあったが、それよりも「私を独りにしないで欲しい」という気持ちのほうが遥かに大きかった……それは私の我が儘だ。傷ついた澄川をさらに鞭打とうとしているような気がして自己嫌悪に陥った。
 ……やっぱり皐月さんの方が澄川には相応しい。
 私は眠ったままの澄川をいつまでも見守るなんて度量はない。だから、姉を見守る事にした元樹さんを見ていたら、皐月さんの気持ちが少しでも分かるかなと思ってここに来たのだ。
 元樹さんは私の話を何度も頷きながら聞いてくれた。
「……私……もうあの病室には行かない方が良いのかなって思えて……」
「…………」
「でも……病室行っても……行かなくても……気持ちだけがどんどん大きくなるし……」
 膝の上に乗せた手がいつの間にか震えて、目に涙がたまる。踏ん切りがつかない自分、溢れる想いをどうしようも出来ない気持ち……惨めに思えてきた……悲しい……



 私の気持ちが頂点に達した時、何かが私の頭に触れた。目線だけ上に遣ると姉の手が私の頭を撫でていた。
「?」
「……元気を出して……お姉ちゃん……」
「!!」
 頭を撫でる手はぎこちなく、声は震えている。私をまだ怖がっているのだ……でも、姉は懸命に励まそうとしていた。私に元樹さんが声を掛ける。
「……これが答えじゃないかな……元気だそうよ……くよくよ考えて何もしないなんて亜衣ちゃんらしくない」
 私はもう涙を止められない。場所もわきまえず声を上げて泣いてしまった。






 再び病室の前。ノックをすると奥から返事が返ってきた。私はドアを開ける。
 室内にはやはり今日も皐月さんが看病をしていた。
「……なんや、久しぶりやな」
「…………ええ」
「まぁ、私の横でよかったら座ってな」
「……うん」
「…………」
「…………」
 私が来たのはこの前以来だったので、緊張した。そう思ってるのは自分だけかもしないけど……会話が続かないのが余計に焦る。
 澄川の顔を見る。相変らず安らかな顔をして眠っていた。目は覚めていないものの澄川の顔を見ると心が落ち着く自分がいた。



「あのさぁ……」
「……えっ?」
「今度来たら言おうと思ってたんやけど……夕方からさぁ……私の代わりにな……光彦を頼めへんかなぁ」
「!!……どういう事?」
 皐月さんの突然の申し出に私は戸惑った。私は澄川の顔を見られれば良いと思っていたから。
「私ばっかり光彦を独占してたらアンフェアかなと思ってな。それに仕事も見つけへんとお金がヤバイし……」
「えっ?えっ?」
「……好きなんやろ?光彦の事……」
「…………」
「遠慮せんでええよ」
「…………」
「…………」
 ふと頭を過ぎる『よくよ考えて何もしないなんて亜衣ちゃんらしくない』という言葉。私は偽るのは止めた。



「……うん……好き」
「…………やっぱりなぁ」
「ごめんなさい」
「何で謝るの?……ホンマ言うとな、この前のアンタ見てたらな……何か自分のやっとる事が間違っとる様に思えてな……身を引こうと思ったんや……」
「…………」
 皐月さんは私と同じ事考えてたんだ。
「でも……やっぱり無理やわ……好きやもん……」
「うん……私もそうだよ」
 結論まで同じだった。



 私の言葉を聞くと皐月さんの表情は明るくなる。
「それやったら、光彦が起きるまで……このままでええやん。起きてから光彦に決めてもらおうって思ってな……あかん?」
 首を振った。
「それ、大賛成!!このまま私達が考えても仕方ないし。澄川は寝てばっかなんだからそれぐらい決めてもらいたい!!」
「じゃあ、決まりやな」
「うん」
「後腐れ無しでよろしくな!!」
「こちらこそ!!」
 何故か意気投合してしまう。こうして私達は共同戦線を結んだ。
 結果はどうであれ後悔をしないことが私にとっての重要事項だと思う。





第48話 終わり



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第49話「やっと言えた……」




 それから私達は昼夜を交代で看病する事にした。
 朝から夕方までは私が、消灯までは学校帰りの上杉さんが担当する。
 多少不平等なのはしょうがない。彼女は高校へ行かなくちゃいけないから。



 夕方、上杉さんと交代して病院を後にする。向かう先は光彦が住んでいたアパート。私はドアを開けた。
 部屋の中で、光彦が今までどんな風に暮らしていたかを拾い集める。私が病院にいて知る事の出来なかったものがたくさんあった。
 テレビの上においてある写真を見る。そこには私の写真の上に浅野美世の写真が貼ってある。



 初めてこの写真を見た時、一緒にいた上杉さんは慌てた。
「こ……これはね……私が……やりました……」
「ふーん」
「……怒ってる?」
「……少し」
 実は全然怒っていなかった。逆に上杉さんの写真じゃなくて良かったと思っていたぐらい。
「ごめん」
「謝るぐらいだったら……この時の事を話してくれへん?」
「え?」
 その時は少しでも自分の知らない光彦を知りたかった。光彦や上杉さんに追いつくために。
 上杉さんは色々な事を話してくれた。
 光彦が別の子に告白されたけど、浅野美世を選んだ事とか、その流れで上杉さんが光彦の家に押しかけた事。何気ない二人暮しの生活。話してくれたこと一つ一つが、彼女は何か決定的な理由で好きになったんじゃなく、少しずつ日々を重ねることで光彦に好意を持ったという証明になった。



「それやったら写真はこのままにしておこか」
「いいの?」
 彼女は驚いたように私を見る。
「ええも何もないよ。これは光彦の思い出やろ?私には関係あらへん」
「私だったら破り捨てるけど……」
「でも、まだ残ってるやん」
「それは……美世の写真だから……」
 上杉さんにとって浅野美世は大切な友達だったのだろう。
「ホントはな……今すぐにでも私の好みに変えてやりたいけど、こういう事は光彦と二人でやりたいからな」
「……そうだね」



 でも……一ヶ月経った今でも私はこの部屋で独りだ。
 写真に向かって話しかける。
『今まで守ってくれてありがとうな……でも、これからは私も光彦を守るから……一緒に生きよな……』





「それじゃあ明日!!」
「うん!!」
「バイバイ」
「さようなら」
 各々自分の家路につく。僕も例外じゃない。
「……っていうかなんで上杉までついて来るんだよ」
「いいじゃん。久しぶりに皐月さんの手料理をご馳走になりたいの」
「昼、弁当食べただろ」
「あー、もう!!うるさいなぁ。皐月さんもこんな男の何処が良いんだか」
「…………」
「なに赤くなってんのよ……変なこと考えているんじゃあ……」
「考えてないっ!!」
「ふーん」



 上杉はジト目で僕を見てくる。明らかに信じてない。
「なんだよ、その『ふーん』ってのは……信用してないな」
「別に〜」
「やっぱり信用してない!!」
 僕の言葉に上杉は笑いながら少し前を振り返りながら歩く。彼女の顔が西日に染まってすごくキレイだった。こういうのが普通の幸せなんだろうな……
「おい、上杉。後ろ歩きなんかしてると人にぶつかるぞ」
「平気、平気!!それに、こうしてないとアンタの顔が見れないでしょ?」
「……今さっき結構凄いこと言わなかったか?」
「そう?……!!」



 ドンッ。
 案の定、上杉は人とぶつかってしまった。
「あっ……ごめんなさい」
「だから言ったろ?人とぶつかるって……!!」
 ぶつかった相手は僕らに話しかけてくる。
「……幸せそうだな。この世界は楽しいか?」
「!!……真田……先生……」
「…………」
 そこには紛れもなく真田が立っていた。
 僕らを見つめるコイツの眼差しは厳しいものだった。僕らは真田を避けるように歩く。
 しかし、真田は行く手を遮るように立つ。



「すいません。どいてくれませんか?」
「…………」
「用があるなら言ってください」
「いつまでココにいるつもりだ?」
「……アンタには関係ないだろ」
 僕の服の裾を引っ張られる感覚がして隣を見ると上杉が僕を心配そうに見つめている。彼女は僕らの雰囲気を怖がっているようだ。
「澄川、行こ」
「……悪い、上杉。先に行ってくれないか?」
「でも……」
「心配しなくても大丈夫……僕は何処にも行かないから」
「わかった……信じてる」
 上杉は真田を睨みながら走り去った。



「ここでの想い出は楽しい事ばかりだ!!帰るつもりはない」
 僕は真田に向かって宣言した。それを受けて真田は腕組みをして考え事をする。
「……そうだな……確かに……ここは楽しい事しかないからな」
「!!」
「…………」
「……いいじゃないかそれで……」
「別に構わないさ……だがな……人を殺してまでも求めた答えがこれか?」
 真田の問いに僕は答える術がなかった。
「……放って置いてくれ」
「…………」
「……もう……辛い思いは嫌なんだよ!!」



 すると……真田の姿にノイズが走り、視界が悪くなる。ノイズは徐々に広がり僕の周りを取り囲んだ。激しい光が身を包み僕の視界は0になる。
「!!」
 ……気付くと僕は夜の山中にいた。
「これは一体……」
「今度は私の質問に応えてください」
 声の方向に振り向くと、そこには美世がいた。
「さっき、『辛い思いは嫌だ』と言いましたね」
「…………」
「……じゃあ聞いても良いですか?……澄川君は実際に何が辛いんですか?……親しい人の死?好きな人に騙されていた事?」
「…………」
「教えて欲しいんです……私は親友を失い、悲しくても頑張って生きてる人を知ってるし、好きな人を騙して後悔しながら生きている人も知ってる……でも、その人達に比べてアナタはどう考えても……」
「僕が甘えてるとでも言いたいのか?」
「別に……私が言いたいのはそんな事じゃないです」
 ……この会話どこかでした覚えがある……何処だっただろう……



「……ホントは好きなんでしょ?」
「……?」
「生きてる事」
「!!……そのセリフは……僕が美世に言った……」
「気付きました?まったく……自分が自分を励ますのに何故こんな苦労をしなきゃいけないんですか?」
「…………」
「……澄川君にも出来るよ……世界を肯定すること」
「……もう遅い」
「まだ遅くないです」
「……僕に出来るのか?」
「簡単です……澄川君を取り巻く世界に落ちている想いを……拾い集めればいいんですよ」
「…………」



『監禁されるとな……時間の経過なんて分からんくなって……違うなぁ……こんなこと言いたいんじゃなくて……それよりもお母さんに見捨てられて……私ホントに独りなんかなぁ……もう死んでもええわって思った……』
『!!』
『でも……でもな……その時に……光彦のこと思い出して……アイツ等の隙を見て……ここまで来たんやんか……』
 危険を顧みずに僕を信じて会いに来てくれた人がいる……



『それにさ……僕……悪くないなって思えてきたし……』
『は?何が?』
『「おかえり」って言う事』
『!!……バカ……』
 そうだよ……向こうでも僕は「おかえり」や「行ってきます」って言える人がいるんだ。
「帰らなきゃ……」



「それやったら……こんなとこで何やっとんの?」
「早く帰らなくちゃ駄目じゃない!!」
「え?」
 気がつくと僕は自分の部屋にいた。目の前には上杉と皐月がいる。
 でも、次にする事は分かっていた。
 それは……ドアを開けて出て行く事。





 窓の外が暗くなり、病室内も明かりが点く。面会時間は過ぎてるけど消灯時間までいられるように頼んである。
「あ〜あ。時間的に不利だよね。こんな事なら学校サボって朝から来ようかな。ねぇそう思わない?」 
 なんてついつい愚痴ってしまう。
 皐月さんと二人で病室にいた時はそうでもなかったのだけど、一人で看病していると自然に澄川に話しかけてしまう。この事を皐月さんに話すと「私もやで」言っていた。
「……それでね。順番で言えば廊下側の席の子達が当たる予定なのにさ『今日は天気が良いから窓側の列にします』だって。ホントムカつく!!」
「…………」
 今日も澄川に学校であった事を話す。楽しかった事。腹が立った事。悲しかった事。つまらない事……でも、何を話しても最後に言う言葉は決まっていた。
『世の中は澄川が思ってるほど悪くないよ……だから……目を開けて……』



「…………」
「ねぇ、聞いてるの?……って聞いてるわけ無いか」
 そして私は席を立ち病室をでる。今日も澄川は起きなかった。
「…………」
「…………」
「……聞いてるよ」
「……!!」
 慌てて振り向く。
「……確かに……ここの寝心地も悪くない。目を開けて良かった」
「あ………」
 感情が一気に流れ出し言葉が詰まって何も言えない。
 あれほど話す事を考えてたのに……
「……どうした?」
「…………」
「…………」
「……お……おかえり」
「……ただいま」
 やっと言えた……これが一番最初に言いたかったこと。
 澄川は笑顔で返事をしてくれた。





第49話 終わり



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第50話「PM4:00」




「なぁ……光彦。朝〜!!はよ起きな遅刻するで!!」
「…………」
 呼ばれるままに目を覚ます。見慣れた天井。ここは僕の部屋だ。視界の端では覗き込む皐月の姿が見える。
「あっ、やっと起きたな。いっも言っとるやん、早く寝やなあかんって」
「…………」
「……ん?どうしたん?……もしかして、まだ寝ぼけとる?しょうがないなぁ……顔洗ってシャキッとせなあかんな」
「あ……あぁ……」



 洗面所へ行き顔を洗う。かなり冷たい水に眠気は一気に覚める。
 鏡越しに見える皐月は手際よく朝食の準備をしていた。その姿をじっと眺めていると彼女と鏡越しに目が合う。慌ててタオルで顔を拭くとキッチンへ行き椅子に座る。
 炊き立てのご飯に味噌汁、それに焼き魚、日本の朝食。
「我ながらメッチャ上手くできたやん!!いっただきま〜す!!」
 僕もつられて食べ始める……確かに美味しい。
「どう?美味しい?」
「うん。皐月ってこんなに料理上手かったんだ」
 すると皐月はこれでもかというほどの笑みを浮かべた。
「今日から学校行くんやから、しっかり食べなあんで!!」
「ああ!!」



  朝食を食べ終え、学校へ行く準備して靴を履く。後ろには見送ろうと皐月が立っていた。僕は振り向き彼女に尋ねる。
「あのさ……毎日……ありがとう」
「はぁ?何言っとんの?ええに決まっとるやん」
「良かった」
 安心して下を向いた瞬間、皐月の顔が僕に近づく。僕は前に見た夢を思い出して緊張した。夢どうりなら皐月は僕に……
 ゴンッ!!
「痛てっ!!」
 皐月は僕の額に頭突きをした。
「気合入った?じゃあ、頑張って勉強してな!!私も仕事頑張るから!!」
「…………ああ、いってきます」
 やっぱり、ここは現実だ。



   季節は秋。ずいぶん周りの景色も変わった。服も冬服だし。僕は久しぶりの学校という事もあって、登校している人たちに混ざって歩くのが少し気恥ずかしい。
 クラスに僕の居場所はあるのだろうか……って良く考えたら元々そんなものは無かった。いつも誰とも関わらずに過ごしていたから……
 でも、これが夢の続きなら、もうすぐ彼女達が来るはず……
「おはよ〜!!澄川君!!」
 やっぱり。
 後ろを振りかえると、上杉亜衣と吉田有希が僕に向かって手を振っていた。
「ねー、ねー、澄川君、久しぶりの登校はどう?嬉しい?緊張する?それとも気持ち悪い?」
「有希、そんな矢継ぎ早に質問しても澄川が困るだけだよ」
「あっ、そっか」
「まぁ、それは置いておいて……澄川、聞いてくれる?さっき有希がね……」
「ちょっと!!それは言わないでって頼んだでしょ!!」
「そうだっけ?」
「もう!!澄川君からもなんか言ってやってよ!!ホント、口が軽いっ!!」
 いつの間にか僕をはさんで上杉と吉田が一緒に歩いている。二人が争うように話しかけてきた。



「そうだ、今日のお昼は屋上で皆そろってお弁当食べようか?」
「いいねぇ。私は有希に賛成!!澄川は?」
「……わかったよ」
「じゃあ決まりだね!!」
 上機嫌の吉田はそのままスキップして僕らの数歩前を進む。二人並んで歩く格好になった上杉に確かめたい事があった。
「なぁ、上杉」
「ん?何?」
「こんなに幸せでいいのかな」
 そして、上杉は『いいに決まってるじゃん』って答えるはず……
「全然よくない!!」
「え?」
「こんな程度で幸せなんて言ったら駄目だからね。もっと幸せになりなさい」
「…………」
「返事は?」
「……うん」
 『もっと幸せになる』……僕にはない発想だ。これじゃあ、夢の中の上杉が言うわけないよな。



 僕はいつの間にか教室の前に立っていた。緊張してドアを開けるのをためらう。そんな姿を見て上杉は教室のドアを開けた。
「心配しなくてもアンタの席はまだあるよ。片付けようとしたヤツがいたけど、殴っておいたから」
「…………」
 一歩、教室へ踏み出す。久しぶり教室。なんだか他人の部屋にお邪魔するような感覚。だけど、自分の席は何となく覚えていてすぐに辿りつく。席に座って周りを見渡す。見慣れない見慣れた風景。
 ……その中に見えた一人の女の子……
「…………」
「……澄川君……おはよう」
 恥ずかしがりながら挨拶した女の子は……もう、いなかった。
 そして僕は完全に理解する……これは夢じゃない……



 退屈な授業が始まる。一ヶ月のブランクはさすがに厳しく、授業の内容が理解できない。授業開始10分で白旗を揚げた僕は周りを見渡した。
 外に目をやると体育で気だるそうに校庭を走っている生徒。教室内を見るとメールやってるヤツ、マンガ読んでるヤツ、手紙のやり取りをしてるヤツ、真面目にノートとってるヤツ、寝てるヤツ。
 やっぱり現実だった。真田の授業はもうないし、浅野美世もいない。クラスのヤツラは僕のことなんてまるで無視だし。



 でも、それが嬉しい。
 夢ではなんとも思わなかったけど、気付く事があった。
 皆が僕を気にしないから、僕を気にしてくれる人の大切さを感じる。
 居なくなった人がいるから、居る人が掛け替えの無いものだと理解できた。
 喜びしか無い世界で本当の喜びなんて見つかるはずが無い。
 ……ここが僕の居場所。
「勉強でもするか」
 僕は黒板の板書をノートに書き込んだ。






 ……それからは本当に楽しかった。
「今日の朝は中華やに、麻婆豆腐に青椒牛肉に……」
「朝から中華……」
「何言っとんの、中国の人は毎日朝から中華やに!!」
「いや、朝は朝の中華があると思うぞ」
「…………」
 ガチャッ
「……わ、わ、わ!!待て、待て!!捨てなくても良いだろ!!」
「じゃあ、食べて」
「……はい」
 皐月は上杉の家に居候していて、わざわざ朝ごはんをつくりに来てくれる。



   夕方からは一ヶ月の遅れを取り戻そうと上杉に勉強を教わる。
「ここさぁ、間違ってるだろ?」
「えっ?どこ?……あっホントだ」
「こっちに代入するべきだろ」
「……確かに」
「…………」
「…………」
「上杉。お前、1ヶ月の遅れを取り戻そうと、僕に勉強を教えようとしているんだよな」
「……うん」
「ありがとう。良い勉強になる」
「…………」
バシッ
「痛っ!!」


 しかし、何より嬉しいのは人殺しをしなくてもいい事だった。そういえば、ナイフを何処へしまったのか覚えていない……まぁ、いい。もう必要ないものだから。






 時間は過ぎ……一ヶ月経ったある日。
 今日も上杉が僕の部屋に来て勉強をしている。この頃になると勉強も完全に追いつき、僕が彼女に教える事が多くなった。余裕が出来た事で、少しずつ昔の事を頭の中整理している……が……ふと、気付くと上杉が僕に話しかけていた。
「……ちょっと聞いてる?」
「え?何だっけ?」
 っと回想している場合ではない。
「明日さぁ……学校終ったら……ヒマ?」
 上杉らしくない逡巡した言い回し。
「まぁ、ヒマと言えばヒマだが……」
「だったらさぁ……あの教室に来てくれない?」
「あの教室?」
「……開かずの教室」
 「開かずの教室」。しばらく聞いていなかった言葉に僕は耳を疑う。



「何で?」
「渡したいものがあるから」
「今くれればいい」
 正直言って行きたくなかった。あの場所にはあまり良い思い出が無いから。
「……今は駄目。持ってないから」
「……面倒くさいなぁ。しかも何であそこなんだよ」
「…………」
 たいした質問ではないと思うのだが、上杉は黙ってしまった。
「…………どうした?」
「あそこじゃないと意味が無いの」
「……分かった」
「じゃあ、明日PM4:00に開かずの教室で。時間厳守だからね」
 上杉があんまり真剣に見つめるから僕は押し切られた。






   夕方、僕は言われたとおりPM4:00に開かずの教室へ来た。
 ゆっくりドアのノブに手をかけ開ける。上杉はすでに教室にいた。教室の窓側にたたずむ彼女の表情は夕日で良く読み取れない。僕等は一定の距離を置いて向かい合う。
「…………」
「…………」
 上杉は僕を見つめたまま何も言わない。仕方ないので自分から切り出す事にした。
「……で?渡したいものってなんだ?」
「……やっぱり来たんだ」
「何だよ、上杉が呼んだんじゃないか」
「そうだけど……」
 彼女はスカートのポケットに手を入れると何かを取り出した。それが何なのか最初は分からなかったけど、夕日に照らされてようやく理解する。
 ナイフ……それも、僕のナイフだった。



「!!」
「この場所が一番だと思ったから」
 そう言い、彼女は刃の部分を僕に向けながら歩み寄る。僕は身構えた。
「……そのナイフでどうするつもりだ」
「?……どうして欲しいの?」
「…………」
「…………」
「……僕を刺すつもりか?」
「そうして欲しい?」
 一気に彼女は近づく、僕はとっさに後ろへ飛びのいた。彼女は遅れてナイフを横一閃振りぬく。すぐ、後ろに飛びのいていたので、風の切る音と共に空を斬った。僕は全然意味が分から無いまま、次の攻撃に備えてさらに身構える。
 しかし、彼女はそれ以上は何もせず、一言言った。
「ウソ」
「え?」
「……んな事するわけないでしょ?はい。これ今まで借りてたから返す」
 今度は刃の部分を自分の方へ向け手渡す。結局、さっきの何だったんだ?良く分からないまま僕は黙って受け取った。その際に彼女の表情が少し寂しそうだったのは気のせいだろうか?



 上杉はそれ以上何も言わず、やたら時計を見たりしてそわそわしている。
 何も用事がなさそうだったので、僕は帰る事にした。
「……じゃあ、僕は帰るから」
「あっ、まって!!」
「……何?」
「ここからが本題だから」
 僕は少しウンザリしていた。その表情が彼女に伝わったのか「笑顔、笑顔」とか言って僕の肩を叩く。叩く力がやたら痛い。笑顔と言っている肝心の上杉が硬い表情をしているのだから説得力が無いし。
「澄川……ここはアンタにしてみたら仕事場だったかも知れないけど、この教室には別の意味があるの知ってる?」
「?……それがどうかしたのか?僕……この教室にはもう……」
「最後まで聞いて!!」
「…………」
「柄にも無く……アンタに対して緊張してるんだから……」
 なるほど。だから、表情が硬いのか……って上杉が緊張?僕とって謎は深まるばかりだった。彼女が僕に対して緊張する事があるのだろうか?
「……わかった。言ってみろよ。この教室が持つ、もう1つの意味を」
「……言うね」
「ああ」
 上杉は胸に手を当て1つ深呼吸をした後、切り出した。
「……有希に聞いた話だけど……この教室は『学校の女の子が伝統的に男の子への告白に使う場所』なの」
「!!」
「……だから……分かるでしょ?」
 今度は僕が緊張する番だった。
「…………」
「……澄川……アンタが……」





第50話 終わり



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evolike
〜それでも続く世界〜


最終話「good vibration」




 皐月さんとは決め事があった。
 それは退院して一ヶ月はお互いに澄川の様子を見るという事。
 私達はお互いの気持ちに歯止めをかけながら過ごした。わかっていても、皐月さんが澄川の家に行っている時は落ち着かないし、それは彼女にしても同じだと思う。
 それと同時に一ヶ月暮らしてみて私の心に『このままで良いかも』という気持ちが浮かんできた。三人このままずっと……でも、このままでは誰もひとつにはなれない。
 誰もが幸せなようで、誰も幸せにはなり切れない状態。
 だから……私は澄川自身に決めてもらおうと、開かずの教室に呼んだのだ。



「……有希に聞いた話だけど……この教室は『学校の女の子が伝統的に男の子への告白場所』なの」
「!!」
「……だから……分かるでしょ?」
 澄川は言っている意味が分かったらしく、緊張した面持ちで私を見た。
「…………」
「……澄川……アンタが……」
「…………」
 私の中で何かが変わる。
「……アンタが好きだって言う人がいるの」
「は?」
「もう少し待って。すぐに来ると思うから」



 この時……もう決める必要は無いと思った。
 結局、私はいつでも誰かと澄川との仲を取り持つ役。有希の時も美世の時も……そして……教室のドアが開く。
「上杉さん、緊急の用事って何なん?……って光彦。何でここにおるの?」
「……皐月」
「4時15分丁度。時間に正確だね」
「どういうこと?説明して」
 皐月さんは怪訝そうな顔を私に向ける。私はあくまでも仲を取り持つ役に徹する。
「説明も何も無いよ。一ヶ月経ったんだから澄川に言う事あるでしょ?」
「!!……でも、上杉さんはどうするの?」
「私?何が?」
「……何がって、アナタも光彦が……」



 私は皐月さんの言葉を強引に遮った。
「澄川!!アンタだってそうでしょ?」
「何が?!」
 急に話題を振られた澄川は焦ってる。
「アンタ、人殺しをして苦しんでいる時、私に言ったよね『たとえ人を傷つけるとしても皐月が目覚めたら好きだと伝えたい』って」
「…………」
「せっかくこんな機会を作ってやったんだからビシッと決めさい」
「……上杉、お前……それで……」
「あ〜そう、そう。あの時アンタは私にもう1つ言ったよね『一緒に暮らしたから情がうつっただけのこと……錯覚だ』って……私もそう思う」
「…………」
「だから……ここでケジメつけてよ。私の情が覚めるぐらいの告白」
 澄川は私を真っ直ぐに見つめている。多分、やせ我慢だって見抜かれてると思う……でも、これが私の出した結論だから。



「……言うよ」
「えっ」
「…………」
 澄川は皐月さんの前へ歩み寄ると目の前で止まる。
「皐月……僕は人殺しもしたし……君を刺した……」
「…………」
「だからこんな事を言う資格はないけど……」
「……そんな事無い……私だって……」
 皐月さんは潤んだ瞳を澄川に向け、少し震えていた。  これから起こる事に目を背けたい気分。だけど……そういうわけにはいかない。私は二人を見つめる。
 澄川は皐月さんにハッキリとした口調で言った。
「君が好きだ」
「!!」
「だから……僕のそばにいてくれないか?」
 皐月さんは俯き、涙をこらえていた。それでも止められず頬から幾筋もの涙が流れる。
「……『そばにいてくれ』やなんて、まるで……プロポーズみたいやな……」
「そのつもりだけど……って、まだ高校生だから嘘っぽく聞こえるかもしれないね」
 彼女は懸命に首を横に振る。
「……光彦……ありがとう」
 皐月さんは言い終わると澄川に寄り添い、二人は抱き合う。
 そして、私は教室を出た。
 不思議と涙は出ない。逆に気持ちはスッキリしていた。
 だけど……誰にも会いたくない。






 意味も無く歩く。止まらないように歩く。考えないように歩く。
 誰かに会いたい。でも誰にも会いたくない。
 ……泣きたい。でも、泣けない。
 だから歩く。辺りはすっかり暗くなっていた。






 結局、私の向かった先は自分の家ではなく、病院の屋上だった。フェンス沿いに花が置かれてある場所へと歩く。花の前で私はしゃがむ。
「…………これで良かったんだよね?」
 ここは美世が最後に生きていた場所。あの時はまだ暑かった。
 でも、今は夜風がかなり冷たい。もう、そんな季節なんだ。
「美世でも同じ事したでしょ?……違うかなぁ……」
 もう……我慢する必要は無いよね……私は少しだけ気持ちを開放した。涙が少しだけ出る。
「あれ?……もっと泣けるかなぁって思ったけど……意外に泣けないね……」



「……ここにいたのか」
「!!」
「探したぞ」
「……なんで?」
 目の前に立っていたのは澄川だった。私の潤んだ目を見て彼は気まずそうに横を向く。
「……皐月が家に帰ってもお前が居ないから……探してくれってさ」
「……そう」
「帰るぞ」
 澄川は私に手を差しのべた。でも、私はそれを払いのける。澄川の行為は今の私に一番して欲しくない行為だった。
「嫌」
「…………」
「私の居場所が分かったんだからもう良いでしょ?」
「駄目だ。連れて帰る……皐月と約束したから」
 澄川は私の肩に触れる。
「触らないで!!」
 彼の手が私の目の前で止まる。
「…………」
「……ゴメン……もう少ししたら帰る……だから……先に帰って……」
「…………」



 私の言葉を無視して澄川は私の隣にしゃがむ。
「お前が帰るって言うまで帰らない。それに……」
「…………」
「情けない話だけど……ここに来るのは初めてだ。僕も浅野に挨拶したい」
「……勝手にすれば」
 すると澄川は花の方を向き、美世に話すように喋りだした。
「……皐月から事情は聞いたよ……礼を言わなきゃな……ありがとう」
「…………」
「今まで来られなかった。正直……浅野に会うのが怖かったから……」
「…………」
「……ゴメン」
「…………許さない」
「!!」
 驚いた澄川が私を見る。
「……勘違いしないで。美世の代弁」
「…………」
 すると澄川は何も言わずに花を見る。



 私は美世の代弁を続けた。
「…………アンタなんかに会わなかったら……もっと幸せだったのに」
「…………」
「アンタなんかに優しくされなかったら……こんなに苦しまなかったのに」
「…………」
「アンタなんか……アンタなんか……好きならなかったら……あぁ、もう、何でこんなに悔しいんだろ……化けて出てやろうかな」
「…………」
「責任取りなさいよ……」
「責任?」
「……私達がもっと悔しがるぐらい……幸せになりなさい」
「……うん」
「…………」
「……上杉の気持ち無駄にしないよ」
「……だったら……許す」



 私達はそれから少しの間、黙っていた。お互いに考えることがあったのだと思う。そして私は澄川に訊きたい事があった。
「…………ねぇ、これだけ訊いていい?」
「何?」
「もし……夕方、ナイフを持って刺そうとしたのが私じゃなくて皐月さんだったら飛びのいた?」
「……僕を試したのか?」
「……別に……ただ……皐月さんなら澄川は黙って刺されたような気がしてね」
 直前で皐月さんに譲った理由はここにある。
 澄川は何も答えず、ただ黙っていた。でも、その沈黙が私には十分な答え。最初から勝ち目が無かったのかもしれない。
 私の中で締め付けていた気持ちは解けていった。



「帰ろうか?」
「……うん……あっ、でも……少し待って……」
「?」
「……あのさ」
「何?」
 私はこれ以上溢れてくる涙を拭いきれなくなっていた。
「……ここで……もう少しだけ……泣いていい?」
「……うん……肩ぐらい貸そうか?」
「バカ……胸を貸しなさいよ」
 私は澄川の胸の中で泣く。かすかに聞こえる澄川の心音が私を慰めてくれた。






 ……1週間後。
 澄川と皐月さんは二人でこの街を出て行く事にした。
 もともと澄川は偽名で学校に入学していたので、本名でやり直す為。皐月さんは裏切られた母親が近くに住んでるので辛いという理由で、ここからいなくなる。
 私はというと……いつものように学校へ行くだけ。
 鞄の中身を確認して玄関を出ると、そこには荷物をまとめた皐月さんが立っていた。彼女は私に近づくと話しかけてくる。
「私、ここから出て行くこと謝らへんからな」
「うん」
「……やっぱり、上杉さんが澄川の近くに居ると……何かと不安やから……」
「わかってる……私が皐月さんでもそうすると思う」
 私の返事を聞くと皐月さんはガッカリしたような表情を見せた。
「あーあ……上杉さんがもうちょっと嫌なヤツやったら良かったのになぁ……そしたら、もっと簡単に嫌いになれる……」
「…………」
「でも、言っとくわ……私、アンタの事……大嫌いや!!」
「ご心配なく。私も大嫌い!!」
「良かった」
「私も」
 そして、私達は微笑んだ。



「ホンマに見送りに来やへんの?」
「うん。学校あるし」
「光彦がそこの角まで来てるんやけど……会ってく?」
 遠慮がちに言った皐月さんの提案に私はハッキリと答える。
「遠慮しておく」
「……そう」
「じゃあ、私いくから」
「あっ、待って!!」
「駄目、待たない。もう、絶対に止まらないって決めたから」
 私は学校に向けて、振り向かずに進んだ。






 授業中……新任の有田先生が現国の授業をしている。なかなか分かりやすい。真田とは大違いだ。皆、食い入るように授業を受けている……まぁ、男子の場合は先生が若い女性だからだろうと思うけど、女子までキチンと受けている……珍しい。



 ……ふと「今頃、澄川達は何やってるのかなぁ」なんて思う。二人には本当に幸せになってもらいたい。
 もちろん『澄川と幸せになりたい気持ち』は私にもあった。
 でも……澄川の隣にいなくても良い……主役にならなくてもいい……結果だけでは……気持ちの深さは分からない。
『あのさ……僕達はそんなに意識しあうような関係でもないだろ?』
 澄川が昔、私に言った言葉……それで、いいと思う。
 サヨナラが強い繋がりを創ることだってある事を信じたい。
 思い出すと、まだ心が揺れる………だけど、いつしかその揺れが心地良い思い出に変わる日が来るはず。



 そんな事を考えていると、有希から携帯にメールが届く。
『今日の放課後、2組の谷口君に告るから「開かずの教室」に呼び出してくれる?』
 私は苦笑いした。





「evolike」 完



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evolike
〜それでも続く世界〜


あとがき




 「evolike」どうでしたか?喜んでいただけましたでしょうか?
 つまんなかった、面白かった、色々感想はあると思いますが、この時間は作者の独り言にお付き合いください。



 読んですぐなので、まずはエンディングの話を書きたいと思います。
エンディングを正式に決めたのは、6月の終わり頃です。(遅っ!!)某イタリアンレストランでバイトの後輩oms-Vさんと軽い激論(軽いのに激論?)を交わしました。(少しウソ)
 主な議題は
・第47話以降の展開
・ラストをどうするか
の二つでした。



 第47話以降の展開については、僕は今載せてあるような話を書きたいと思っていましたが、少し不安があったのです。それは、第43話から第46話までで盛り上げたのに、第47話以降を書くことで間延びしないか?という不安でした。(47、8話で話をまとめて、終らせるか否かという事です)
 oms-Vさんは「間延びする」と答えてくれたのですが、僕の中でどうしても第47話以降が書きたい……というか第47話以降が「evolike」で書きたかったところ……という気持ちがあって……無理やり書いてしまいました。
 これには理由があってサブタイトルである「それでも続く世界」をつけようと思った理由に亜衣に第47話の「……私はアンタを引きずってでもこの世界に……どんなに辛い事があっても……続きがある事を教えてやるんだ!!」って言わせたかったからなんです。
 これだけは最初からイメージがありました。
 もし、間延びしてるなぁと思った方がいらっしゃったら、それは僕のせいです。ごめんなさい。わかってて、やってしまいました……



 次にラストの展開ですが、これも候補がいくつかありました。まずは三人で仲良く暮らすエンド。次に亜衣または皐月が振られて終るエンド。最後にバラバラになるエンド。  oms-Vさんはここまで来たのだから「三人で暮らす」がいいのではと提案。そして僕は「亜衣が振られる」がいいと言ってしまいます。
 この理由もサブタイトルから来ています。「それでも続く世界」と書いている以上、皆が幸せになる世界は駄目だと思ったからです。(←わがまま)
 それでも、ラブコメ好きとしては皆幸せエンドも捨て難い……とか迷ってました。それで、相談する事でやっぱり「亜衣が振られる」エンドにしようと決めました。



 何か今書き出してみると、ことごとくoms-Vさんの意見をフイにしてるような……(汗)
 でも、oms-Vさんに相談する事が自分の意見の訳を考える機会を与えてくれ、迷いが吹っ切れたのです。感謝してます。






 次にこの小説を書く前に考えた事です。
 この話を書く前に絶対守ろうと思っていた事がありました。それは……
「主人公を殺さない」です。
 一応、上杉亜衣と澄川正宗の二人が主役なんですが、この二人だけは責任を持とうと思いました。(他のキャラは?)
 僕は一年半前に「suicide magic」っていう小説を書きました。その話の中で、主人公は死んでしまったんです。それに関しては悔やんでませんが、「evolike」は『一年後の自分が「suicide magic」みたいな話を書いたらどうなるか?』みたいなコンセプトがあったので、逆に主人公が死なないで終る話を書きたかったのです。
 この話をバイトの後輩oms-Vさんに話したら「めずらしいですね」って言われた。(言った本人は憶えてないと思うけど)
 それだけ「suicide magic」を意識していたのだと思います。



 実際、「evolike」を書く前は「suicide magic」シリーズばかり書いていたので、自分の中で「これだけじゃない!!」っていう気持ちがありました。(だから「super nova」が放置してあるのですが……)





 んで、最初に考えていた設定は少し違いました。
・タイトルが「slaughter dance」から「それでも続く世界」になり、最終的に「evolike」に落ち着く。

・主人公達以外全員死ぬ。(皐月も含め。というか最初から死んでいる設定。でも、澄川は死んでないと聞かされていて人殺しを続ける)
 しかも、主人公達(亜衣と澄川)はそれぞれの道を行き結ばれない。
(理由)
 キャラそれぞれに愛着が出てきて止める。

・皐月には血の繋がらない警察官のお姉さん(母の再婚相手の連れ子)がいて、尋ねてきた皐月を追っ払う。(犯罪者の妹は要らない)しかし、後に後悔し妹を捜索するうちに「Thread winter」の事に気付き、澄川たちに近づく。
(理由)
 話がややこしくなるので却下。

・とにかく3話に一回ぐらいの頻度で人が死ぬ。
(理由)
 第1話書いた時点で無理だと気付く。というか酷すぎる。

・澄川の最後の仕事は亜衣を殺すこと。
(理由)
 これが一番の失敗。真田編で好きな人を殺すネタをやってしまったので中止になった。



 最初はもっとダークな話にしようと思ってました。
 その名残として「evolike」には第0話が存在します。「evolike」を始める一ヶ月前ぐらいに短編として載せました。→
これ
 これを読んだoms-Vさんが「今回はダークですね」って感想くれたのを憶えてます。(言った本人は覚えてないと思うけど……)
 でも、意気込んだわりに実際は……気にしない気にしない。(自棄)






 最後に……
 1月28日の日記によるとこの日から「evolike」を始めたらしいです。だから、完成するのに約6ヶ月かかったという事になります。長かったような、短かったような……気付いて後ろ向いたら、長い道が出来ていた感じ?
 最初は全部完成してから載せようと思ったいました。もし、そうしていたらまだ完成してなかったか、途中で投げ出していたと思います。



 結構色んなことがありました。載せ始めて一ヶ月ぐらいして、美世編がつまらないという指摘を受けて少しへこんだり。(すぐ立ち直りましたが)
 4月頃は3,4回しか更新しなかったとか、その反動なのか5,6月はハイペースで更新。
 とにかく「evolike」の事ばっか考えてました。バイトしてても気を抜いたら小説の事考えてたり。アホですよ。えぇ、アホです。たかが素人の妄想にここまで真剣になるとは……でも、そんな自分が好きだったり♪(←最悪)



 特にバイトの後輩oms-Vさんには多大な迷惑をかけてしまいました。
 年上という特権(?)と利用して、頼まれてもいないのに2月の中頃「evolike」の今後の展開を40分以上に渡って語ったり。(しかも、その時の展開とは全然違う展開になってるし)
 その後も再三再四、oms-Vさんに相談する始末。一番酷かったのはここ1,2ヶ月ぐらい。会うたびに小説の話ばかりしてしまいました。かなりしんどかったと思います。この場を借りまして……ごめんなさい!!
 だって、oms-Vさんは凄いいいアイデアを持ってるんだもん!!(開き直り?)  冴木社長が登場で来たのは彼のお陰ですし(そのお陰で話がかなり動いた)、第43話辺りの皐月が登場する話をした時も、いい反応を見せてくれたので自信がつきました。さらにエンディングに関してもお世話になりっぱなし。
 oms-Vさん、もう「evolike」に苦しむ事は無いですよ。(笑)
 本当にありがとう。



 他にも掲示板に書き込んでくださった皆様ありがとうございます!!
 書き下ろしにしなくて良かったな実感しております。反応を聞きながら書いていくことが凄く楽しいと教えてもらいました。一素人のしょぼい妄想に付き合ってくださって感謝してます!!
 情けない話ですが、いくら感謝しても陳腐な言葉しか思いつきません……ごめんなさい。
 とにかく最強(←強?)に感謝してます!!



 ということで「evolike」これにて終了。(あっさりな終わり方)





あとがき 終り



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